特定技能制度を活用してミャンマー人労働者を採用したい企業担当者にとって、「在留期間はどのくらいか」「どの手続きを踏めばよいか」「費用はどの程度か」といった疑問は少なくありません。
ミャンマーでは政府認定の送り出し機関が存在し、現地での手続きや書類準備が必要なうえ、日本側での登録支援機関やビザ申請の準備も求められます。
そこで本記事では、ミャンマー人特定技能外国人を受け入れる際の手続きフロー、在留期間や更新のポイント、初期費用とランニングコストまでわかりやすく解説します。
特定技能とは?
特定技能は、2019年に新設された在留資格制度です。
少子高齢化による労働力不足が深刻化する日本において、介護・建設・農業・外食業などの特に人材確保が困難な16の特定産業分野で、一定の専門性・技能を持つ外国人の就労を認めるものです。
即戦力となる人材を確保できる制度であるため、近年多くの企業が活用しています。
ここでは、まず特定技能の基礎知識について解説します。
特定技能1号・2号の違い
特定技能には1号と2号の2種類があり、以下のように求められる技能水準や在留期間、家族帯同の可否などに違いがあります。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 技能水準 | 相当程度の知識または経験を必要とする技能 | 熟練した技能(1号より高い水準) |
| 在留期間 | 通算5年以内 | 上限なし(更新可) |
| 対象分野 | 16分野 | 11分野 |
| 家族帯同 | 原則不可 | 要件を満たせば可 |
| 支援義務 | あり(企業または登録支援機関) | なし |
ミャンマー人の受け入れは現状、特定技能1号が中心です。1号は義務的支援の実施が必要なため、登録支援機関への委託コストも含めて予算を練ることが求められます。
特定技能外国人を採用する方法や手続き手順については、以下の記事をご覧ください。
参考記事:特定技能外国人を採用するには?手続き方法や注意点を解説
特定技能のミャンマー人採用が増えている理由

特定技能のミャンマー人在留者数は、出入国在留管理庁の公表データによると、2024年12月末時点で特定技能1号が27,337人、2025年6月末時点では35,557人と、わずか半年で約1.3倍に増加しています。他の送り出し国と比較しても増加のペースは際立っており、日本における特定技能外国人の主要な送り出し国のひとつとして存在感を高めています。
ここでは、特定技能のミャンマー人採用が増えている主な理由を解説します。
国外での就労希望者が増加しているため
ミャンマーでは2021年2月に国軍によるクーデターが発生し、民主化が後退して以降、経済の悪化や雇用環境の悪化が続いています。各国からの経済制裁も重なり、国内での就職難や大卒者の失業が深刻化したことで、海外での就労を希望する若者が急増しました。
また、ミャンマーでは特定技能の評価試験が介護・外食・農業・建設・宿泊の5分野で実施されており、なかでも介護・外食分野の受験者数・合格者数は他の送り出し国と比較しても非常に多い水準です。特定技能試験の実施頻度が高く合格者の母数が大きいことも、企業側にとって採用しやすい要因のひとつとなっています。
※ミャンマーで実施される特定技能評価試験の分野は変更される場合もあるため、最新の試験実施状況を確認してください。
日本人との親和性が高い
ミャンマー人が日本企業に馴染みやすい背景には、言語や文化・宗教といった側面があります。
まず、ミャンマー語は日本語と同じ「SOV型(主語-目的語-動詞)」の語順であり、文法構造が近いため日本語を習得しやすい傾向があります。また、ミャンマーでは日本語学習への意欲も非常に高く、2025年7月実施のJLPT(日本語能力試験)1回だけでミャンマー国内の応募者数は93,277人、受験者数は76,960人にのぼっています。
参照:JLPT|2025年第1回(7月)実施国・地域別応募者数・受験者数
またミャンマー人の約9割が仏教徒であり、「他者のために働くことで徳を積む」という価値観が根付いている傾向にあります。年上や年配者を敬う国民性とも相まって、介護・外食・宿泊といった対人サービス業との相性が非常に高いといえます。
特定技能のミャンマー人を受け入れる方法・手続き

ミャンマー人を特定技能として採用する場合、現地からの採用と日本国内在留者の採用とでは手続きの流れが大きく異なります。
ここでは、現地の送り出し機関から日本に入国するまでのステップを整理します。
ミャンマーにいる人材を採用する方法
ミャンマー現地から人材を採用する場合、ミャンマー政府認定の送り出し機関を通じた手続きが必須です。
他の送り出し国と比べて独自の手続きが多く、入社までに数か月以上かかるケースもあるため、入社希望日から逆算してスケジュールを立てることが重要です。
- 受け入れ企業がミャンマー政府認定の送り出し機関と合意
- 送り出し機関が求人情報・雇用条件をミャンマー労働省(MOLIP)に提出
- 求人内容が承認されたら、候補者が募集される
- 面接・選考が行われ、内定者が決定する
- 内定者が海外就労トレーニングに参加
- スマートカード(OWIC)を取得
- 雇用契約の締結
- 在留資格認定証明書交付申請 やビザ申請
- 入国後、入社
特にステップ6のスマートカード(OWIC)は、ミャンマー人が海外で就労する際にミャンマー政府が所持を義務付けている海外労働許可証です。
スマートカードがなければミャンマーから出国できないため、取得状況は入社スケジュールに直結します。取得に時間がかかる場合もあるため、早めに手続きを進めるよう外国人本人に案内しておくことが重要です。
日本国内にいる人材を採用する方法
すでに日本に在留しているミャンマー人を採用する場合は、現地採用と比べて手続きがシンプルです。送り出し機関を経由する必要がない場合が多く、以下の流れで採用を進めることが可能です。
- 求人募集・採用活動を行い、ミャンマー人と雇用契約を結ぶ
- ミャンマー人本人が在留資格変更許可申請を行う
- 許可が下りれば特定技能として就労開始
ただし、在留資格変更許可申請の際には支援計画書をはじめ、申請に必要な書類には支援計画書や雇用契約書など受け入れ企業が作成・提供する書類が複数含まれます。書類不備があると審査に時間がかかるため、登録支援機関に書類作成のサポートを依頼することも有効な選択肢です。
現地採用・国内採用いずれの方法であっても、手続きの流れを事前に把握し、余裕を持ったスケジュールで進めることが重要です。
特定技能のミャンマー人を受け入れる費用相場

特定技能のミャンマー人を受け入れる際の費用は、採用時に一度発生する初期費用と、雇用継続中に毎月発生するランニングコストに分かれます。国内採用か現地採用かによっても金額は異なるため、自社の採用方法に合わせて試算しておくことが重要です。
ここでは、特定技能のミャンマー人を受け入れる際にかかる初期費用と毎月のランニングコストの内訳・費用相場を解説します。
初期費用
初期費用の合計目安は、国内採用で約45〜100万円、現地採用で約65〜150万円程度です。
採用方法や利用する機関によって費用は大きく異なるため、事前に複数社から見積もりを取ることをおすすめします。
以下に初期費用の内訳・費用相場についてまとめました。
| 費用項目 | 内容 | 費用相場 |
|---|---|---|
| 送り出し機関への手数料 | 現地での選考・渡航準備・手続きサポート費用。 ミャンマー政府の規定により上限1,500米ドル(約22万円)とされている。(詳細は最新の公的情報をご確認ください) |
10〜22万円程度 |
| 人材紹介会社への紹介手数料 | 国内外の人材紹介会社を通じて採用する場合に発生。 | 20〜80万円程度 |
| ビザ申請費用 | 在留資格認定・変更申請の申請手数料および行政書士報酬。 | 10〜20万円程度 |
| 渡航費 | 現地採用の場合の航空券代(企業負担が一般的)。 | 5〜15万円程度 |
| 住居準備費 | 敷金・礼金・家具家電など入居初期費用。 | 15〜30万円程度 |
ランニングコスト
初期費用とは異なり、ランニングコストは雇用継続中に毎月発生するため、長期的な視点で予算を組むことが重要です。
特に特定技能1号の受け入れでは、支援業務を登録支援機関に委託すると、継続的に費用がかかる点に注意しましょう。
以下にランニングコストの内訳・費用相場についてまとめました。
| 費用項目 | 内容 | 費用相場 |
|---|---|---|
| 給与 | 同職種・同等スキルの日本人と同等以上の報酬が必要。 | 職種・地域による |
| 社会保険料(企業負担分) | 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険。 | 給与の約14〜16% |
| 登録支援機関への委託費用 | 特定技能1号に義務付けられた支援業務の委託費用。 | 月2〜3万円程度/人 |
| 住居補助・生活支援費 | 家賃補助や生活サポートにかかる費用(義務ではないが対応する企業が多い)。 | 月1〜3万円程度 |
費用の詳細については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
参考記事:特定技能外国人の受け入れ費用はいくら?企業が負担するコストまとめ
特定技能のミャンマー人を受け入れて人材不足を解消へ
この記事では、ミャンマー人特定技能外国人の受け入れフロー、費用、支援機関利用のポイントを解説しました。
ミャンマー人を特定技能で受け入れる際には、デマンドレターの承認やスマートカード(OWIC)の取得など、他の送り出し国にはないミャンマー独自の手続きが必要です。
また、受け入れにかかる費用は初期費用とランニングコストに分かれており、特に現地採用の場合は送り出し機関への手数料や渡航費なども見込んでおく必要があります。
事前に手続きと費用の全体像を把握し、自社に合った受け入れ体制を整えましょう。

