特定技能外国人を採用する際、給与に関する疑問は多くの企業担当者が抱える課題です。
「最低限どのくらいの給料を支払うべきか」「残業代や手当はどう扱うのか」「日本人社員との給与格差は問題にならないか」といった不安を抱える担当者も多いでしょう。
特定技能制度では「日本人と同等以上の報酬」が法的に義務付けられており、最低賃金の遵守から手当・控除の取り扱いまで、幅広いルールを正しく理解しておくことが必要です。
そこで本記事では、特定技能1号・2号の給料相場や支払額の決め方、社会保険や手当の考え方までをわかりやすく解説します。
特定技能の1号・2号と給与の関係
特定技能の在留資格には1号と2号があり、それぞれの技能水準や在留条件の違いがあります。
どちらの資格を持つ人材を受け入れるかによって、待遇設計の考え方が変わってくるため、まずは1号・2号の基本的な違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 技能水準 | 相当程度の知識・経験を要する技能 | 熟練した技能(より高い専門性) |
| 在留期間 | 通算5年上限(1年以内ごとに更新) | 上限なし(3年・1年・6か月ごとに更新) |
| 家族帯同 | 原則不可 | 可能(配偶者・子) |
| 支援義務 | あり(受入れ機関または登録支援機関による支援が必須) | なし |
| 対象分野 | 16分野 | 11分野 |
ここでは、特定技能の1号・2号それぞれの給与水準の特徴について解説します。
1号の給与水準の特徴
特定技能1号は、特定産業分野において相当程度の知識や経験を持つ人材が対象です。給与設定にあたっては、以下の点を押さえておきましょう。
- 同じ業務に従事する日本人労働者と同等以上の報酬を支払うことが、法的に義務付けられている
- 最低賃金を下回ることは認められない
- 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた時間外労働や、深夜(22時〜翌5時)の勤務に対しては割増賃金の支払いが必須
また、1号には受け入れ機関または登録支援機関による支援義務があるため、給与体系の整備とあわせて、支援にかかるコストも含めた雇用計画を立てることが重要です。
2号の給与水準の特徴
特定技能2号は、1号よりも高い熟練技能を持つ人材が対象です。給与設定にあたっては、以下の点を踏まえた待遇設計が求められます。
- 熟練した技能・豊富な実務経験を持つ人材のため、1号よりも高い給与水準が求められる
- 長期就労が可能なため、勤続年数や習熟度に応じた昇給制度を設けることが重要
- 同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬・手当を支給する原則は1号と同様に適用される
- 1号と異なり、支援義務がないためランニングコストを抑えられる
また、2号では家族帯同が認められており、配偶者や子どもと日本で生活することが可能です。
生活基盤が安定することで定着率が高まりやすく、住宅手当などの家族向け福利厚生を充実させることで、採用競争力の向上にもつながります。
【業種別】特定技能外国人の給料の相場

特定技能外国人の給料の相場は、月給18万円〜30万円程度です。
厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、特定技能外国人の平均月給は211,200円となっています。ただし、この数字はあくまで全分野の平均であり、業種や地域、経験年数によって大きく異なります。
以下は、出入国在留管理庁が公表した特定技能外国人に対する賃金の支払状況(令和3年・分野別月平均支給額)をもとにした業種別の月平均支給額です。
| 業種 | 月平均支給額 |
|---|---|
| 建設 | 285,339円 |
| 自動車整備 | 249,481円 |
| 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業 | 240,641円 |
| 造船・舶用工業 | 239,748円 |
| 介護 | 223,531円 |
| 外食業 | 233,543円 |
| 飲食料品製造業 | 236,634円 |
| 漁業 | 206,096円 |
| ビルクリーニング | 207,313円 |
| 農業 | 194,358円 |
| 全分野平均 | 231,979円 |
※本データは令和3年(2021年)に出入国在留管理庁が公表したものです。最低賃金の引き上げや物価上昇の影響により、現在の実際の給与水準はこれより高くなっている可能性があります。
参照:令和6年賃金構造基本統計調査
参照:出入国在留管理庁「特定技能制度の現状について」
業種によって給与水準に差が生じる主な理由は、業界全体の賃金相場・仕事の専門性・労働環境の違いによるものです。
例えば、建設業は専門技能が求められる職種が多く、他業種と比べて高い給与水準となっています。一方、農業やビルクリーニングは業界全体の賃金水準がやや低めであるため、相場もそれに連動する傾向があります。
特定技能外国人の給与額の決め方・基準

日本人と同等以上の待遇を確保するためには、以下のようなルールを正しく理解しておく必要があります。
- 日本人と同等以上の賃金を設定する
- 最低賃金・同一労働同一賃金の原則
- 手当・賞与も日本人と同様に支給する
ここでは、特定技能外国人の給与額を決める際の3つの基準について解説します。
日本人と同等以上の賃金を設定する
特定技能外国人の給与は、同じ業務に従事する日本人労働者と同等以上の額に設定することが法的に義務付けられています。
ここでいう「同等」とは、同一の職種・業務内容・責任範囲・勤務条件で働く日本人のことです。
「外国人だから」という理由のみで基本給を低く設定することは認められません。職務内容が同じであれば、報酬も同等であることが原則です。
最低賃金・同一労働同一賃金の原則
特定技能外国人にも、日本人と同様に最低賃金法が適用されます。
最低賃金には以下の2種類があり、いずれか高い方を適用しなければなりません。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 地域別最低賃金 | 都道府県ごとに設定された最低賃金 |
| 特定(産業別)最低賃金 | 特定の業種・職種ごとに設定された最低賃金 |
また、2020年より厚生労働省が定める「同一労働同一賃金ガイドライン」が適用されており、雇用形態や国籍にかかわらず、同じ業務・責任範囲であれば待遇差を設けることは認められません。
なお、寮費・光熱費などを給与から控除する場合も、控除後の手取り額が最低賃金を下回らないよう注意が必要です。
手当・賞与も日本人と同様に支給する
給与の決め方において見落とされがちなのが、手当・賞与の扱いです。
日本人従業員に支給している手当や賞与は、特定技能外国人にも同等の条件で支給する必要があります。
「日本人にだけ支給して外国人には支給しない」という運用は法令違反となります。
主な手当の種類と考え方は以下のとおりです。
| 手当の種類 | 考え方 |
|---|---|
| 通勤手当 | 交通費の実費を支給する |
| 住宅手当 | 日本人と同じ支給条件で提供する |
| 皆勤・精勤手当 | 出勤率に応じて日本人と同基準で支給する |
| 賞与(ボーナス) | 日本人に支給している場合は同等以上を支給する |
賞与については法律上の支払い義務はありませんが、日本人に支給実績がある場合には、特定技能外国人にも同等の支給が求められます。支給基準・時期・金額の算定方法は、雇用契約書や就業規則に明記しておくことが重要です。
特定技能外国人の給料に関する注意点

特定技能外国人の給料に関しては、割増賃金の適用や控除の説明など以下のようなさまざまな場面でトラブルに発展するケースがあります。
- 残業・休日出勤時の賃金は「割り増し」
- 控除に関する説明を丁寧に行う
ここでは、特定技能外国人の給料に関するその他の注意点を解説します。
残業・休日出勤時の賃金は「割り増し」
特定技能外国人に時間外労働・休日出勤・深夜勤務をさせる場合、労働基準法に基づく割増賃金の支払いが義務付けられています。これは日本人・外国人を問わず適用されるルールであり、例外は認められません。
割増賃金が適用されるケースと割増率は、以下のとおりです。
| 種類 | 支払う条件 | 割増率 |
|---|---|---|
| 時間外(残業手当) | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき | 25%以上 |
| 時間外(月60時間超) | 1か月の時間外労働が60時間を超えたとき | 50%以上 |
| 休日(休日手当) | 法定休日(週1日)に勤務させたとき | 35%以上 |
| 深夜(深夜手当) | 22時〜翌5時の間に勤務させたとき | 25%以上 |
割増賃金の計算は、基本的には、手取り額ではなく基本給を含む支給総額を基礎として算出します。また時間外労働と深夜労働が重複する場合は、割増率が合算されます(例:時間外+深夜=50%以上)。
タイムカードや勤怠管理システムで労働時間を正確に記録し、給与明細と整合性が取れるよう管理体制を整えておくことが重要です。
控除に関する説明を丁寧に行う
日本では給与から社会保険料や税金が控除されますが、母国でこのような制度に馴染みがない外国人にとっては、額面と手取りの差に戸惑うケースが少なくありません。「聞いていた金額と違う」というトラブルを防ぐために、控除に関する説明を採用前・入社時に丁寧に行うことが重要です。
主な控除項目と目安は、以下のとおりです。
| 控除項目 | 控除率・金額の目安 |
|---|---|
| 健康保険・厚生年金 | 月給の約14〜15%(労使折半) |
| 雇用保険 | 月給の約0.6% |
| 所得税・住民税 | 月給の約5〜8%(所得・扶養状況により変動) |
| 寮費・光熱費 | 1〜3万円程度(社宅提供時) |
説明の際は、特定技能外国人が十分に理解できる言語で行うことが求められます。控除の名称・仕組み・理由を母国語や本人が理解できる言語で書面にまとめて渡すと、認識の齟齬を防ぐことができます。
特定技能外国人の給料設定は法遵守が重要
この記事では、特定技能外国人の給料水準や業種別目安、決め方の基準、注意点を解説しました。
特定技能外国人の給料設定において最も重要なのは、「日本人と同等以上の報酬」という原則を形式だけでなく実態として守ることです。業種別の相場を参考に自社の給与水準を検討したうえで、基本給だけでなく社会保険・手当・賞与・控除も含めた明確な給与体系を整備し、本人が理解できる言語で丁寧に説明することが求められます。
適切な水準の給与と透明性のある待遇は「人材の定着率向上」にもつながるため、適切な特定技能外国人の給料設定を理解し、法令遵守を徹底しましょう。

