飲食店のように店舗を構えることなく、カフェやスイーツ、ラーメン屋などを開業する手段として、キッチンカーに注目が集まっています。
飲食店を店舗で開業する場合、開業資金として1,000万円~1,500万円程度必要になりますが、キッチンカーは比較的少ない資金で開業できる点が特徴です。
そこで今回は、キッチンカーの開業資金の目安を業態別で紹介しながら、資金調達の方法や開業資金を抑えるポイントについても詳しく解説します。
【業態別】キッチンカーの開業資金の目安
キッチンカーの開業資金は、350万円~800万円が目安です。業態や車両の大きさなどで左右されますが、飲食店の店舗を構えるのと比べて半分ほどの資金で開業できます。
キッチンカーの開業資金は、業態によっても変動するため、まずはキッチンカーの開業資金の目安を業態別で紹介します。
ここで紹介している金額はあくまで目安であり、実際に必要な資金は設備や車両の種類、メニューの数、従業員の有無などの要因で左右される点に注意しましょう。
キッチンカーでカフェを開く場合の開業資金
キッチンカーでカフェを開く場合の開業資金は、200万円~300万円が目安です。キッチンスペースを最小限に抑えられるカフェは、キッチンカーの中でも比較的低コストで開業できる業態といえます。
近年では、コーヒーをメインに扱うカフェ業態以外にも、タピオカドリンクやバナナジュース、フレーバーティーなど、メニューの多用化も顕著です。
カフェ業態のキッチンカーによっては、マフィンやマドレーヌ、パンなどの軽食を提供しているケースもあります。
食事を提供する場合は、設備も必要になるので目安金額よりも開業資金が高くなると考えておきましょう。
キッチンカーで軽食・ファストフードを販売する場合の開業資金
キッチンカーで軽食やファストフードなどを提供する場合、開業資金は300万円~500万円程度必要です。
カフェと比べて広い調理スペースが必要になるため、車両サイズが大きくなるほか、厨房機器の導入費用も加算されます。
その分、メニューのレパートリーを広げやすい傾向にあり、オフィス街や大学・専門学校の周辺など、ランチタイムの需要が見込める業態です。
キッチンカーでラーメン屋を開く場合の開業資金
キッチンカーでラーメン屋を開く場合、開業資金は250万円~500万円が目安です。調理スペースが必要になるため、飲食関連の業態は開業資金が高くなる傾向にあります。
ラーメン以外に餃子や炒飯など、ほかのメニューも提供する場合は、設備の追加にともなう費用が加算されるため、メニュー選びは慎重に行いましょう。
また、近年はスープがない「油そば」を提供するケースも増えています。ラーメン屋はメニュー次第で、初期費用だけでなく運転資金も上下する点に注意が必要です。
参考記事:ラーメン屋を開業するには?必要な資金や準備の流れと成功につなげる3つのポイント
キッチンカーでスイーツ・パンを販売する場合の開業資金
キッチンカーでスイーツやパンを販売する場合、開業資金は300万円~600万円程度必要です。
取り扱うメニューによって異なりますが、専用の厨房機器を導入する必要があるため、設備にかかる費用が高くなる傾向にあります。
また、別のキッチンで作ったスイーツやパンを個包装で販売する場合、菓子製造業許可証の取得が必要になる点に注意しましょう。
参考記事:キッチンカー(移動販売)開業に必要な資格一覧!調理師免許の必要性や便利な資格まで徹底解説
キッチンカーをフランチャイズで開業する場合の資金目安
キッチンカーをフランチャイズで開業する場合、開業資金の目安は100万円~400万円です。しかし、フランチャイズに加盟するには、加盟金やロイヤリティの支払いが必要になります。
一方で、キッチンカー事業を展開しているフランチャイズ本部に、指導してもらいながらキッチンカーを開業できる点がメリットです。
加盟金やロイヤリティの金額は、フランチャイズによって異なるため、受けられるサポートに見合う金額かを見極めて加盟先を選ぶと良いでしょう。
フランチャイズに加盟すると、収益の一部をロイヤリティとして支払う必要がありますが、個人で開業することに不安がある場合におすすめです。
キッチンカーの開業資金の内訳
キッチンカーの開業資金は、以下の項目に支出する費用を指します。
- 車両購入費用・設備資金・備品購入費などの初期費用
- 資格取得費・維持費
- 仕入れ代・水道光熱費・ガソリン代・出店料・人件費などの運転資金
基本的にキッチンカーの開業資金でもっとも支出額が大きくなるのは、車両購入費用です。とくに、新品の車両を購入するには数百万円単位の資金が必要になります。
また、開業後に売り上げが伸びてくるまでは、運転資金を開業資金で賄わなければなりません。キッチンカーを開業する際は、初期費用だけでなく、6カ月~1年分程度の運転資金も準備しておきましょう。
キッチンカーの開業に必要な自己資金の目安
キッチンカーの開業に必要な自己資金は、100万円~300万円が目安です。可能であれば、開業費用を全額自己資金で賄えた方が融資を受ける必要がなくなり、収益の中から返済していく負担を軽減できます。
開業資金は、日本政策金融公庫の創業融資などを活用して融資を受ける選択肢もありますが、基本的に融資を受けたい金額の30%程度は自己資金が必要です。
自己資金ゼロでも融資申請可能ではあるものの、審査に通らず融資が受けられない可能性が高くなるので注意してください。
キッチンカー開業に向けた資金調達の方法
キッチンカー開業に向けて、開業資金を調達する方法は以下の3通りです。
- 自己資金を貯める
- 補助金・助成金制度を利用する
- 融資を利用する
それぞれ、資金を確保する際のポイントや、制度の活用方法について解説します。
自己資金を貯める
キッチンカー開業に向けて、まずは自己資金を貯める必要があります。自己資金は、最低限融資を受ける金額の30%程度は確保しておきましょう。
自己資金ゼロで開業できる場合もありますが、運転資金がないまま開業しなければならず、経営が軌道に乗る前の段階で廃業せざるを得なくなる可能性があります。
また、融資金額が増えるほど、返済金額も大きくなるため、融資金額の30%に留まらず可能な限り貯めておくことが大切です。
補助金・助成金制度を利用する
キッチンカーを開業する際、補助金・助成金制度が利用できる場合があります。補助金・助成金制度は支給型の支援金制度のため、返済する必要がないのも特徴です。
具体的には、以下の補助金・助成金制度がキッチンカーの開業時に利用できる可能性があります。
- ものづくり補助金
- 創業支援等事業者補助金
- 地域雇用開発助成金
- 小規模事業者持続化補助金
補助金・助成金制度を利用する場合、支給要件を満たしている必要があるため、すべての事業者が利用できるとは限りません。また、申請期限が設けられている制度もあるので、期限内に申請することが重要です。
そのほか、東京都の飲食事業者の業態転換支援事業や、福岡県久留米市の久留米市販路開拓促進事業費補助金など、自治体が独自に運営している制度もあります。
融資を利用する
キッチンカーの開業資金を調達する手段として、融資を利用するのも方法の1つです。融資は、銀行でも実施されていますが、取引実績がないはじめて開業する方の場合、審査に通らないケースが多くあります。
はじめて経営にチャレンジする方におすすめなのは、日本政策金融公庫の創業融資です。過去に実績がない人でも利用できる融資制度のため、キッチンカーの開業にも活用できます。
ただし、事業計画書の作成や資金計画の立案、ある程度の自己資金も必要になるので、事前の準備を入念に行うことが大切です。
キッチンカーの開業資金を抑えるポイント
キッチンカーの開業資金は、高額になるほど準備に時間がかかる上に、融資金額が増えて返済にも時間を要します。
そのため、いかに資金を抑えて開業するか、という点も検討しておくことが成功につながるポイントです。キッチンカーの開業資金を抑えるには、以下のポイントを意識しておくと良いでしょう。
- キッチンカー用の車両サイズを慎重に選ぶ
- 車両や厨房機器の導入を中古・リース・レンタルからも検討する
- メニュー数を増やし過ぎない
- 出店場所を事前に検討しておく
キッチンカーの開業時に大きな費用負担になるのが、車両の購入費用です。軽自動車で開業したり、中古のキッチンカーを購入したりすれば、費用を大幅に抑えて開業できます。
また、販売するメニューの数が増えるほど、仕入れ金額が高くなったり、設備が追加で必要になったりするため、最初はある程度絞っておくことがポイントです。
加えて、キッチンカーの出店場所が遠方になると、移動のためのガソリン代が必要になります。ある程度開業の段階で、出店場所を検討しておけば、出店料も明確になって資金計画が立てやすくなるでしょう。
参考記事:キッチンカー開業は軽自動車(軽トラ)でもできる?価格や改造時の注意点について解説
まとめ
キッチンカーの開業資金は、店舗型の飲食店を開業するのと比べて低コストなので、経営初心者の方にも始めやすい点が魅力です。
また、キッチンカーは営業場所や時間にとらわれることなく営業できることから、ランチ時間帯のみ、週末のみ、など時間を限定して副業で始める方も多くいます。
キッチンカーで顧客の反応を見ながら経営のノウハウを学び、将来的には店舗を開業するなど、飲食店開業に向けたステップアップにもおすすめです。