高齢化や後継者不足が進む農業分野では、慢性的な人手不足が大きな課題となっています。特に、収穫期や繁忙期に必要な人材を確保できず、経営に影響が出ている農業法人や農家も少なくありません。
こうした中で注目されているのが、外国人材を即戦力として受け入れられる「特定技能 農業」です。特定技能「農業」では、耕種農業や畜産農業に関する幅広い業務へ従事できるほか、農業分野では派遣雇用も認められているため、繁閑差に応じた柔軟な人材活用も可能です。
一方で、「どこまで業務を任せられるのか」「受入れには何が必要なのか」「技能実習との違いは何か」と疑問を感じている方も多いでしょう。
そこで本記事では、特定技能「農業」の制度概要から業務範囲、受入要件、採用の流れまでをわかりやすく解説します。
特定技能「農業」とは?
特定技能「農業」とは、2019年4月に創設された在留資格「特定技能」のうち、農業分野に特化した制度です。
特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野で、一定の技能や日本語能力を持つ外国人材を即戦力として受け入れるために創設されました。農業分野では、栽培管理や収穫、選果、飼養管理など、農作業全般に幅広く従事できる点が特徴です。
これまで農業分野では「特定技能1号」のみが中心でしたが、2023年6月の閣議決定により、「特定技能2号」の対象分野にも追加されました。これにより、一定の技能水準や実務経験を満たした外国人は、在留期間の上限なく日本で働き続けられるようになっています。
さらに、2023年秋からは農業分野の特定技能2号評価試験も開始され、長期就労へ移行できる環境が整備されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制度開始 | 2019年4月 |
| 対象区分 | 特定技能1号・特定技能2号 |
| 主な業務 | 耕種農業、畜産農業、関連業務など |
| 特徴 | 即戦力外国人を受け入れられる |
| 2023年改正 | 農業分野が特定技能2号対象に追加 |
担い手不足が深刻化する農業現場において、特定技能は即戦力の外国人材を確保する現実的な選択肢の一つです。
参考記事:初めての外国人採用ガイド!在留資格の種類や手続きをわかりやすく解説
特定技能「農業」で従事できる業務範囲
特定技能「農業」でできる業務内容は、大きく3つに分かれています。
耕種農業
耕種農業では、野菜・果樹・穀物・花きなどの栽培に関する業務へ従事できます。特に、収穫や出荷時期に人手が集中する農園では、特定技能外国人の活用によって繁忙期の人材不足を補いやすくなります。
主な業務内容は以下の通りです。
- 土づくり
- 播種(種まき)
- 育苗
- 施肥
- 農薬散布
- 収穫
- 選果・集出荷
- 施設園芸管理
※耕種農業と畜産農業は業務区分が異なるため、取得した区分の業務にのみ従事可能です。
畜産農業
畜産農業では、牛・豚・鶏などの飼養管理に関する業務へ従事できます。畜産業は毎日の作業が必要になるため、継続的に働ける外国人材を確保しやすい特定技能制度との相性が良い分野といえます。
具体的には、以下のような業務が対象です。
- 餌やり
- 搾乳
- 健康管理
- 畜舎清掃
- 繁殖補助
- 出荷管理
※耕種農業と畜産農業は業務区分が異なるため、取得した区分の業務にのみ従事可能です。
関連業務
特定技能「農業」では、主たる業務に付随する関連業務にも従事可能です。
例えば、以下のような業務が含まれます。
- 農業機械の清掃・整備
- 資材運搬
- 農産物の梱包
- 出荷作業
- 作業場の清掃
ただし、これらはあくまで農業に付随する業務として認められているため、加工工場での製造専業や農業と無関係な作業をメイン業務として行うことは原則認められていません。
特定技能「農業」を取得する外国人側・企業側の要件
特定技能「農業」を取得するには、外国人側・企業側それぞれが要件を満たす必要があります。
外国人側の要件
外国人本人が特定技能「農業」を取得するためには、「試験ルート」または「技能実習ルート」のいずれかを満たす必要があります。
| 取得ルート | 主な要件 |
|---|---|
| 試験ルート | ・農業技能測定試験に合格 ・日本語試験(JLPT N4相当以上)に合格 |
| 技能実習ルート | ・農業分野の技能実習2号を良好に修了 ・試験免除で特定技能へ移行可能 |
試験ルートでは、農業分野で働くために必要な技能や日本語能力を確認されます。一方、技能実習を良好に修了した人材は、すでに一定の現場経験を有していると判断されるため、試験が免除されます。
また、特定技能1号では18歳以上であること、健康状態に問題がないことなども必要条件です。
参考記事:外国人採用に必要な日本語能力の確認方法とは?業種別の目安・採用後の教育まで解説
企業側の要件
特定技能外国人を受け入れる企業側にも、適切な雇用管理や支援体制を整えることが求められます。
主な受入要件は以下の通りです。
- 一定期間以上、労働者を雇用した経験があること
- 適正な雇用契約を結び、報酬額が日本人と同等以上であること
- 労働・社会保険・税金関連法令を遵守していること
- 外国人への支援体制を整備していること
- 農業特定技能協議会へ加入すること
- 過去に入管法違反など重大な法令違反がないこと
また、特定技能1号では、生活オリエンテーションや住居確保支援、日本語学習支援などの「支援計画」を実施する必要があります。
なお、農業分野では繁忙期に合わせた派遣雇用も認められていますが、派遣元・派遣先双方に追加要件が設けられているため注意が必要です。
| 区分 | 主な要件 |
|---|---|
| 外国人側 | ・技能試験・日本語試験合格、または技能実習修了 ・18歳以上 ・健康状態が良好 |
| 企業側 | ・適正雇用契約の締結 ・支援体制整備 ・協議会加入 ・法令遵守 |
技能実習修了者ルートはすでに現場経験を持つ即戦力を確保しやすく、試験ルートは国内外の幅広い人材を対象にできます。自社の採用ニーズに応じてアプローチルートを検討しましょう。
特定技能「農業」の外国人を採用するまでの流れ
特定技能「農業」の採用には、人材確保・要件確認・協議会加入・在留申請など複数のステップがあります。
特定技能外国人を受け入れるまでの基本的な流れは以下の通りです。
- 採用したい業務内容・人数・雇用形態を整理する
- 外国人本人が特定技能「農業」の要件を満たしているか確認する
- 人材紹介会社・登録支援機関などを通じて人材を募集する
- 雇用契約を締結する
- 支援計画を作成する
- 農業特定技能協議会へ加入する
- 在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更申請を行う
- 在留資格許可後、入社・就業開始となる
特に、農業分野では繁忙期に合わせて採用を進めるケースが多いため、在留申請や住居準備が間に合わないと、必要な時期に人材を確保できない可能性があります。
また、耕種農業・畜産農業で従事できる業務区分が異なるため、採用前に任せたい業務内容が制度上問題ないか確認しておくことも重要です。
参考記事:外国人採用の方法とは?|在留資格・手続き・注意点まで徹底解説
特定技能「農業」を活用して人手不足を解消しよう
この記事では、特定技能「農業」の制度概要から、従事可能な業務範囲、受入要件、採用の流れまでを解説しました。
特定技能「農業」は、耕種・畜産の幅広い現場業務を任せられる即戦力の在留資格です。特定技能1号・2号の両方が対象となっているため、短期的な人材確保だけでなく、長期的な雇用や人材育成にもつなげやすい制度となっています。
また、農業分野では、農業・漁業のみに認められている「派遣雇用」を活用できる点も大きな特徴です。
一方で、特定技能外国人を安定的に定着させるためには、住居支援や生活サポート、日本語コミュニケーション支援など、受入れ後の環境整備も重要になります。
就業者の高齢化と担い手不足が加速する農業において、特定技能「農業」は持続可能な経営基盤を守るための有力な手段です。自社の経営スタイルや繁閑パターンに合った雇用形態を選び、外国人材の受入れを着実に進めていきましょう。

