特定技能制度を活用した外国人雇用が拡大するなか、フィリピン人材への注目が年々高まっています。
2022年6月時点では特定技能の在留資格を持つフィリピン人は8,681人でしたが、2024年12月末には約3.2倍の28,180人にまで急増しており、国別の受け入れ人数では3番目の多さとなっています。
参照:特定技能在留外国人数(令和4年6月末現在)
参照:特定技能在留外国人数(令和6年12月末現在)
しかし、「なぜフィリピン人が選ばれるのか」「フィリピン特有の手続きはどう進めればいいのか」「費用はどの程度かかるのか」といった疑問を持つ担当者も少なくありません。
そこで本記事では、特定技能のフィリピン人を受け入れるメリットから、具体的な手続きの流れ、必要費用までをわかりやすく解説します。
フィリピン人の特定技能人材を選ぶメリット

フィリピン人は、特定技能人材として多くの業種で採用が進んでいます。その背景には、フィリピン人ならではの強みがあります。
- 英語力とコミュニケーション能力の高さ
- 海外就労への理解が高い国民性
- 介護・宿泊・外食分野との相性の良さ
ここでは、フィリピン人の特定技能人材を選ぶメリットを解説します。
英語力とコミュニケーション能力の高さ
フィリピン人の共通言語はタガログ語ですが、学校教育や公的な場で英語を学んでおり、約9割以上のフィリピン人が英語を使えると言われています。
他国の人材では簡単な英語も伝わらないケースがある一方、フィリピン人とは英語でのやり取りが可能なため、現場での意思疎通がスムーズになります。
また、特定技能外国人の受け入れ企業には、外国人が理解できる言語での支援体制を整えることが求められます。英語対応が可能なフィリピン人材であれば、支援体制の準備も格段に容易になるでしょう。
海外就労への理解が高い国民性
フィリピン国内の平均月収は約12万円で、日本やアジア諸国と比べて賃金が比較的低い傾向にあります。若者を中心に国外で出稼ぎする人が多く、その割合はフィリピン人全体の約1割を占めています。海外で働くことへの抵抗が少なく、就労意欲の高い人材が多い点は、採用側にとって大きな魅力です。
また、フィリピン人は家族への思いやりが強く、母国の家族を支えたいという意識から高い就業意欲を持つ傾向があります。長期的に安定して働いてもらえる可能性が高い点も、企業にとってのメリットといえます。
介護・宿泊・外食分野との相性の良さ
フィリピン人の多くは明るく寛容な性格で、見ず知らずの人とも気軽にコミュニケーションを取れる国民性を持っています。普段の生活から多くの外国人や民族と接しており、異文化に対する高い適応能力を持つため、新たな環境にもスムーズに馴染みやすい傾向があります。
こうした特性は、対人サービスが求められる介護・宿泊・外食分野において特に発揮されます。利用者や顧客と日々向き合う業務において、持ち前のホスピタリティ精神と柔軟なコミュニケーション能力が強みになります。
フィリピン特有の送り出し制度とは

フィリピン人を受け入れる場合、日本側の在留資格手続きだけでは完結しません。
フィリピン政府が出稼ぎ労働者を保護・管理するための独自制度への対応が別途必要となるため、この仕組みを事前に理解しておくことが、スムーズな受け入れの前提となります。
ここでは、フィリピン特有の「送り出し制度」について詳しく解説します。
MWO(旧・POLO)の審査が必要
MWO(Migrant Workers Office:移住労働者事務所)とは、日本国内に設置されたフィリピン政府の出先機関です。日本で働くフィリピン人労働者の権利保護や福祉支援を目的としており、受け入れ企業はMWOによる審査を受けなければなりません。
具体的には、フィリピン認定の送り出し機関と人材募集に関する取り決めを締結したうえで、雇用契約書のひな型などの必要書類をMWOに提出し、フィリピン労働担当官との面接に臨みます。
審査を通過し、雇用主として適正と認められた場合に、MWOから認証印が押印された書類と推薦書が交付されます。
DMW(旧POEA)への登録が必要
DMW(Department of Migrant Workers:フィリピン移住労働省)は、海外で働くフィリピン人労働者(OFW)の保護や支援、海外就労に関する手続きを一元的に担うフィリピンの政府機関です。以前はフィリピン海外雇用庁(POEA)という名称でしたが、2022年秋の組織再編によりDMWへと改称されました。
MWOの審査を通過すると、DMWへの雇用主登録が可能となります。登録にあたっては、MWOから交付された認証書類と推薦書を送り出し機関を通じてDMWへ提出します。
DMWへの登録が完了してはじめて、現地の送り出し機関からフィリピン人材の紹介を受けられるようになります。
二国間取り決めの仕組み
日本とフィリピンは二国間の取り決めにより、フィリピン人労働者の送り出しに関するルールを設けています。フィリピン人労働者を不当な条件での雇用や人身売買などから守ることが、この仕組みの目的です。
具体的には、受け入れ企業は原則として「フィリピン(MWO・DMW)認定の送り出し機関」と契約したうえで手続きを進める必要があります。認定を受けていないブローカーを通じた採用は認められていません。
二国間取り決めのない国からの特定技能外国人の受け入れと比べると、MWO審査やDMW登録といったフィリピン独自の手続きが加わる分、全体のスケジュールに余裕を持って準備を進めることが重要です。
特定技能フィリピン人の受け入れ手続きの流れ

特定技能フィリピン人の受け入れ手続きは、以下の7つのステップで進みます。対象者がフィリピン国内にいる場合の流れをまとめました。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 1.送り出し機関との取り決め | フィリピン政府認定の送り出し機関と契約締結 | 非認定ブローカーとの契約は不可 |
| 2.MWOでの審査 | 必要書類を提出し、英語での面接を受ける | 通過後に認証書類・推薦書が交付される |
| 3.DMWへの登録 | MWOの認証書類をDMWへ提出し、雇用主登録をする | 登録完了後に人材紹介が開始される |
| 4.雇用契約締結・在留資格申請 | 雇用契約締結後、在留資格認定証明書を申請する | 審査期間は通常1〜3か月 |
| 5.査証(ビザ)申請 | 在留資格認定証明書交付後、日本大使館で査証(ビザ)の発給申請を行う | 認定証明書の交付が前提 |
| 6.出国前手続き | 出国前オリエンテーション・健康診断を実施し、OEC(海外雇用許可証)を取得 | フィリピン側の出国許可手続き |
| 7.入国・就労開始 | 全手続き完了後に入国し、就労開始 | 入国後も義務的支援の実施が必要 |
日本側の在留資格手続きとフィリピン側の手続きを並行して進めることが、スムーズな受け入れのポイントです。
フィリピン人特定技能の採用にかかる費用相場
フィリピン人材の受け入れには、採用時に発生する初期費用と、受け入れ後も継続してかかる費用があります。事前に費用の全体像を把握したうえで採用計画を立てることが重要です。
以下に、特定技能フィリピンの採用にかかる初期費用・継続費用の費用内訳・相場をまとめました。
【初期費用】
| 費用項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 人材紹介手数料 | 10〜30万円/回 |
| 送り出し機関への手数料 | 10〜60万円/回 |
| 在留資格申請費用 | 10〜20万円/回 |
| 入国時の渡航費用 | 5〜10万円/回 |
| 住居の準備費用 | 居住条件による |
【継続費用】
| 費用項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 在留資格更新費用 | 3〜6万円/更新のつど |
| 義務的支援委託費用(登録支援機関) | 2〜4万円/月 |
| 給与・福利厚生 | 諸条件による |
費用内訳や相場を把握したうえで、予算を組むことがスムーズな受け入れにつながります。
特定技能外国人の受け入れ費用の詳細については、以下の記事もあわせてご参照ください。
参考記事:特定技能外国人の受け入れ費用はいくら?企業が負担するコストまとめ
フィリピン人の特定技能採用を成功させるために
この記事では、特定技能のフィリピン人を受け入れるメリットや手続きの流れ、必要費用、注意点について解説しました。
フィリピンは政府主導の送り出し制度が整備されており、MWO審査やDMW登録といった特有の手続きが必要です。これらを把握せずに進めると、スケジュールの遅延や想定外のコスト発生につながる可能性があります。
また、初期費用だけでなく継続費用も含めた費用内訳や相場を事前に理解し、支援体制を整えておくことが円滑な受け入れのポイントです。
フィリピン人の特定技能採用を検討する際は、制度と実務の両面を整理し、自社に適した受け入れ体制を構築しましょう。

