多くの飲食店やさまざまな施設で導入されている会計設備として、券売機が挙げられます。従来からあるボタン式券売機に加えて、近年では多言語表示機能も備わっているタッチパネル式券売機も登場しました。
しかし、業種・業態によっては、券売機の導入に適していないケースもあるので、自店舗で導入する際は最適な会計・清算設備を選定することが重要です。
本記事では、券売機のメリット・デメリットについて詳しく解説しながら、導入に向いている店舗の例やおすすめの活用事例について紹介します。
券売機の種類と特徴
券売機は、大きく分けて以下2種類の機種があります。
- ボタン式券売機
- タッチパネル式券売機
それぞれの特徴や強み、導入後に活用できる機能について見ていきましょう。
ボタン式券売機
ボタン式券売機は、従来からある現金を投入してボタンを押し、任意の食券や各種チケットを購入する設備です。基本的には現金決済が主流ですが、近年ではキャッシュレス決済端末と連携して、多様な決済手段に対応できる機種も登場しています。
駅にある乗車券を購入するための券売機もありますが、飲食店向け・施設向けの機種とは機能が異なる点が特徴です。飲食店では食券、施設では入場券や利用券を購入する設備として導入されることから、食券機や発券機とも呼ばれています。
タッチパネル式券売機
タッチパネル式券売機は、タッチパネルディスプレイを操作して任意の食券や利用券を購入するタイプの設備です。比較的コンパクトでスリムな製品が多く、小規模店舗・個人店舗でも導入しやすい形状をしています。
タッチパネルに大きな画像や動画を映せるため、視覚的に訴求しやすい点が特徴です。また、ボタン数分のメニューのみの販売に留まるボタン式券売機と比べて、販売できるメニュー数にもほとんど制限がありません。
さらに、多言語表示機能を搭載した多言語対応モデルやキャッシュレス決済専用機も多く、店舗・施設に合わせた設備を導入できます。ただし、ボタン式券売機よりも導入費用が高くなる傾向にあるので、補助金・助成金制度などをうまく活用して導入すると良いでしょう。
参考記事:券売機とは?食券機(食券自販機)・発券機・精算機との違いや活用シーンについて解説
参考記事:【2025年最新】券売機の導入に利用できる補助金・助成金制度5選|制度ごとの補助上限額や申請要件も紹介
飲食店で券売機を導入する5つのメリット
飲食店で券売機を導入するメリットは、以下の5項目です。
- オーダー受注の手間を削減できる
- 釣銭ミス・オーダーミスを抑止できる
- 衛生的に会計対応ができる
- 事前決済で食い逃げのような犯罪を抑止できる
- 売上データを分析して集客・販促に活用できる
それぞれ、具体的に券売機導入前と比べてどのような違いがあるのか、券売機を導入することで得られる効果について解説します。
オーダー受注の手間を削減できる
券売機を導入すると、オーダー受注の手間を削減できるメリットがあります。店舗の従業員が注文を聞きに行く業務がなくなるため、料理のサービングやテーブルのバッシング作業に注力できるでしょう。
とくに、小規模店舗・個人店舗など、従業員の数が限られている店舗において、オーダー受注の負担を軽減できるのは大きなメリットです。
食券や利用券の発券に対応している券売機だけでなく、キッチンプリンターやキッチンディスプレイとの連携により、自動的にオーダー情報がキッチンに共有されるものもあります。
自店舗の業務オペレーションに合わせて、券売機の機種を選定すれば大幅な業務効率化を実現することが可能です。
釣銭ミス・オーダーミスを抑止できる
釣銭ミス・オーダーミスを抑止できるのも、飲食店で券売機を導入するメリットの1つです。
券売機で決済・注文対応を自動化できるため、店舗スタッフが現金の受け渡しを行う際に釣銭を間違えたり、注文を受ける際に聞き間違えたりするのを抑止できます。
釣銭ミスやオーダーミスは、繰り返すうちに店舗の損失につながる課題となるため、券売機の導入による抑止効果は収益の確保においても効果的です。
衛生的に会計対応ができる
衛生的に会計対応ができるのも、飲食店で券売機を導入するメリットです。券売機での清算は顧客が自ら操作するため、現金の受け渡しやクレジットカードの受け渡しも発生しません。
店員と顧客の接触を最小限に抑えられることから、食品を扱う飲食店における衛生面の強化にも役立ちます。現金に触れるたびに手洗いをする頻度も減少するので、店舗スタッフの負担軽減にもつながるでしょう。
事前決済で食い逃げのような犯罪を抑止できる
券売機は、事前決済・事前精算による注文方式を採用しており、後払いによる食い逃げリスクを抑えられるメリットもあります。
事前に会計を済ませた顧客にのみ対応すれば良いため、店舗側にとっても安心感がある設備です。また、顧客も財布に入っている金額を勘違いして注文してしまうような失敗をせずに済むので、支払いトラブルを未然に防ぐことにもつながります。
売上データを分析して集客・販促に活用できる
飲食店で券売機を導入すると、売上データを分析して集客・販促に活用できるメリットもあります。
近年の券売機には、POSレジシステムが備わっているものや売上集計機能が備わっているものがあり、どのような商品がいつ売れたのかを簡単に把握できる点が特徴です。
雨の日に売れにくい商品や、季節によって売れ行きが変動する、時間帯によって注文が増えるサイドメニューがあるなど、売れ行き予測や傾向把握に役立ちます。
これにより、原材料仕入れの過不足を防ぎ、商品ロスや売り切れによる収益機会の減少を回避できるでしょう。
飲食店で券売機を導入する3つのデメリット
飲食店で券売機を導入する場合、以下3つのデメリットに注意が必要です。
- 導入費用がかかる
- 停電・システムエラーなどのトラブルが発生するリスクがある
- 追加オーダーが入りづらい
以下では、これらのデメリットが生じる理由やカバーするための対処方法について解説します。
導入費用がかかる
飲食店で券売機を導入する際、導入費用がかかるデメリットがあります。券売機の導入費用は、1台あたり約70万円~150万円が目安です。とくに、タッチパネル式券売機の方が費用が高くなる傾向にあり、100万円を超える機種も少なくありません。
ボタン式券売機も大型のものは費用が高くなるため、導入コストの捻出は券売機を導入する際の大きな課題です。
補助金・助成金制度が活用できないか、リースやサブスク・レンタルなども検討しながら、導入費用の負担方法を検討する必要があります。
参考記事:券売機は購入・レンタル・リース・サブスクどれが一番お得?価格・費用の目安について解説
停電・システムエラーなどのトラブルが発生するリスクがある
券売機を導入した場合、停電・システムエラーなどのトラブルが発生するリスクがあります。電源を利用して稼働している券売機は、停電が発生して電源が途切れた場合、使用できなくなるためです。
また、システムエラーのような予期せぬトラブルが発生することもあるため、万が一券売機が稼働しなくなった場合に備えておく必要があります。
例えば、予備電源を準備しておく、複数台の券売機を導入して1台使用できない状態になっても対応できるようにするなど、対策方法を事前に検討しておきましょう。
追加オーダーが入りづらい
追加オーダーが入りづらいのも、飲食店で券売機を導入するデメリットの1つです。券売機は、入店時に注文と会計を同時に行うため、食事中に再度食券を購入しなおす負担から追加オーダーが入りにくい傾向にあります。
そのため、ラーメン店であればトッピングメニュー、定食店であればサイドメニューやドリンクなど、初回の注文自店で顧客単価を上げられる工夫を講じておくことが大切です。
また、追加注文に対応できるようにするためには、券売機ではなくモバイルオーダーシステム・タブレットオーダーシステムなどを導入すべきかも含め、オーダー方式を検討すると良いでしょう。
参考記事:モバイルオーダー導入のメリット・デメリットや導入事例、導入までの流れを解説
券売機の導入に向いている店舗の特徴と共通点
券売機の導入が向いているのは、すべての飲食店ではありません。飲食店によっては、かえって接客サービスの質が低下したり、店舗オペレーションが複雑化したりする可能性があるためです。以下では、券売機の導入に適している飲食店の例を紹介します。
ラーメン屋・定食屋などメニュー数が限定されている飲食店
ラーメン屋・定食屋など、メニュー数が限定されている飲食店には、券売機の導入が向いています。とくに、混雑しやすいランチタイムは、券売機でオーダーと会計を自動化することにより、接客や料理提供に注力できるようになるでしょう。
ボタン式券売機の場合は、「左上の法則」を意識して、左上のボタンにもっとも人気な商品や看板メニューを表示させ、販売することがポイントです。
可能であれば料理写真を掲載して顧客がイメージしやすいよう、視覚情報から訴求できるように工夫してみるのも良いでしょう。
カフェ・ファストフードなどの回転率が高い店舗
カフェやファストフードなど、店舗の回転率が高い飲食店も、券売機の導入に向いています。ボタン式券売機を導入する選択肢もありますが、カフェやファストフード点におすすめなのはタッチパネル式券売機です。
タッチパネル券売機なら、セットメニューやトッピング、カスタマイズなど、細かな注文選択にも対応できます。キャッシュレス対応券売機もあるので、多様な決済方法に対するニーズが高い、比較的若い世代の顧客が多い店舗にも最適です。
キッチンプリンターやキッチンディスプレイとの連携に対応している機種も多いので、注文・会計からオーダー・料理提供までがスムーズに行なるでしょう。
スタッフ数が少ない小規模飲食店
スタッフ数が少ない小規模飲食店も、券売機の導入に向いています。券売機は、オーダー受注・会計業務を自動化してくれる設備なので、ホールスタッフが少ない店舗での導入に最適です。
最小限の人員で店舗を営業できるようになるので、人件費削減にもつながります。オーダーミスや釣銭ミスも抑止してくれる上に、売上集計やレジ締め作業も自動化することが可能です。
店舗の業務効率化を図る上で、券売機は小規模飲食店に最適な設備といえます。
参考記事:券売機導入に向いている飲食店は?設置に向いている店舗の特徴と機種の比較ポイント
こんな使い方もおすすめ!券売機の活用事例
券売機の導入に向いているのは、飲食店だけではありません。以下では、飲食店以外で券売機を活用している事例や、券売機の意外な機能について解説します。
温浴施設・フィットネスジムの入場券・回数券・備品販売
温浴施設・フィットネスジムの回数券販売や入退館管理に、券売機を活用している施設が多くあります。券売機で清算してもらうことで、釣銭ミスの抑止とフロント業務の負担軽減につなげている事例です。
施設利用券販売のほか、歯ブラシや髭剃りのような備品の購入用に設置してあるケースもあります。
そのほか、遊園地の乗り物券のように、ミシン目付きで切り離せるチケットが販売できる機種もあるので、施設のオペレーションに合わせてうまく券売機を活用すると業務効率化に効果的です。
アミューズメント施設の入園券販売+セキュリティゲート
アミューズメント施設の入園券販売を券売機で行い、セキュリティゲートで入退館を管理している事例もあります。
券売機で発券するチケットに、QRコードを印字し、セキュリティゲートでそのQRコードをかざすとゲートが開く仕組みです。
アミューズメント施設では、チケット確認のためにゲートに人員を配置する必要がありましたが、この方法であれば無人ゲートで運用できます。
券売機メーカーによってさまざまな機種が販売されているため、運用方法次第で飲食店のみならずさまざまな施設で活用できる設備です。
まとめ
券売機を導入するメリットを最大化するには、自店舗にマッチする券売機を選定する必要があります。また、モバイルオーダーを導入すべきかも含め、店舗のオペレーション全体をイメージしながら、券売機の導入方法を検討することが大切です。
券売機によって、備わっている機能やキッチンプリンター・キッチンディスプレイとの連携可否が異なるため、機種を選定する際は価格だけでなく詳細もきちんと確認しておきましょう。