飲食関連の事業を始める際、店舗を出店するか、キッチンカーを出店するか、迷っている方も多いのではないでしょうか。
どちらにもメリットはありますが、これまで飲食店を経営してきた経験がない方や、新たなジャンルの飲食店を開業したい場合にはキッチンカーがおすすめです。
今回は、これからキッチンカーを開業しようと考えている方に向けて、キッチンカーと店舗型飲食店の違いや、キッチンカーを開業するまでの流れについて解説します。
また、開業準備をスムーズに進めるためのポイント、開業資金の目安も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
キッチンカーと店舗型飲食店の違い
キッチンカーと店舗型飲食店の違いは、店舗の有無だけではありません。それぞれに強みも異なるため、集客・販促戦略の立案においてもまったく異なる施策が必要になります。
まずは、キッチンカーと店舗型飲食店それぞれのメリットを理解し、自身がどちらの開業方法に適しているか、検討することが大切です。
キッチンカーのメリット
キッチンカーを開業するメリットは、以下のとおりです。
- 開業資金・運転資金が安く抑えられる
- 集客が見込める場所に移動して開業できる
- 人件費が抑えられる
- 店舗家賃(テナント料)の負担がない
- キッチンカー関連の補助金・助成金を利用できる
キッチンカー事業は、比較的低コストで開業できることから、飲食店を経営した経験がない開業初心者の方におすすめです。
店舗の家賃(テナント料)もかからないため、自己資金・開業資金を抑えて開業できます。また、キッチンカーは出店場所も固定されません。駅前やオフィス街、ショッピングモール、イベント会場など、集客が見込めるさまざまな場所で出店できる利点もあります。
店舗と比べて一度に対応できる来客数に限りがあるため、キッチンカーで提供するメニューの選定や価格設定について検討しておくと良いでしょう。
店舗型飲食店のメリット
店舗型飲食店のメリットは、以下のとおりです。
- コンセプトを表現しやすい
- リピーターの獲得による収益化が見込める
- 店舗前を通過する人を集客できる
- さまざまな料理を提供できる
- 将来的に多店舗展開もできる
店舗型飲食店は、キッチンカーと比べて対応できる来客数が多いため、料理のラインナップを増やせるメリットがあります。料理の原材料を保管しておくスペースも広いため、幅広い顧客ニーズに対応したメニューを開発できる点が魅力です。
また、同じ場所に出店し続けることから、リピーターも獲得しやすく、常連客が定着することで収益の安定化も図れます。
将来的には店舗経営のノウハウを活かして、2店舗目、3店舗目と展開していけるため、多店舗展開を視野に入れている方に最適な開業方法です。
参考記事:飲食店開業までの流れと必要資格|開業準備はいつ始めるのがベスト?
キッチンカーを開業するまでの流れ7ステップ
キッチンカーを開業する場合、以下の流れに沿って開業までの準備を進めるケースが一般的です。
- 開業までのスケジュールを立てる
- コンセプト設計・メニューの検討・事業計画書の作成を行う
- 開業資金・運転資金・出店場所を確保する
- キッチンカーの入手や内装工事・外装工事を行う
- 設備や備品を揃える
- 資格・許認可の取得手続きを行う
- 広告宣伝を行いながら開業する
ここからは、開業準備のステップごとに、具体的にどのような準備を進めれば良いのか、意識しておきたいポイントを踏まえて解説します。
開業までのスケジュールを立てる
キッチンカーを開業するには、まず開業までの大まかなスケジュールを立てることから着手しましょう。いつ頃開業したいのか、開業日から逆算することが大切です。
また、毎月どれくらいの資金を貯めていけるか、開業までに必要な手続きや車両・調理機器類の手配などにかかる時間も念頭において、余裕をもったスケジューリングを行います。
コンセプト設計・メニューの検討・事業計画書の作成を行う
開業までのスケジュールを立てたあとは、コンセプト設計や提供するメニューの検討・開発、事業計画書の作成を行いましょう。
開業する目的や具体的なメニューの値段(仕入れ値から計算)、想定される顧客単価、1日の売上金額など、詳細にイメージすることが重要です。
イベント出店のようなリピーターの獲得が難しい場所での出店を検討している場合は、思わず目に留まる珍しいメニューや季節に応じてコールド・ホットフード(スイーツ)を提供するなど、メニューにも工夫を講じましょう。
開業資金・運転資金・出店場所を確保する
キッチンカーの開業にあたり、開業資金や運転資金の準備、出店場所の確保も進めていきます。開業資金は、車両購入代や厨房機器の導入、原材料の仕入れなどにかかる初期費用だけでなく、運転資金として出店料やガソリン代・水道光熱費、仕入れ代などを数カ月~半年分程度確保しておくことも重要です。
また、出店場所もいくつかリストアップしておき、出展費用の有無や出店許可が得られるかなども確認しておきましょう。
キッチンカーの入手や内装工事・外装工事を行う
資金が貯まり、ある程度開業までの見通しが立ったら、キッチンカーとして利用する移動販売車両の入手や内装工事・外装工事を行いましょう。
コンセプトに合わせて外観をデザインしたり、調理がスムーズに行えるよう、調理工程と導線を意識した内装設計も重要になります。
参考記事:キッチンカー開業は軽自動車(軽トラ)でもできる?価格や改造時の注意点について解説
設備や備品を揃える
キッチンカーを開業する際、設備や備品を揃えることも欠かせません。厨房機器だけでなく、レジ設備や看板・のぼり類のほか、持ち帰り用のトレー、使い捨てカトラリーなどの消耗品の準備も必要です。
とくにキッチンカーは、キャッシュレス決済への対応の有無が売上を左右する場合があります。持ち運びができ、かつ端末本体に通信接続やレシートプリンターが内蔵されているような、キャッシュレス決済端末を導入することで、収益機会を逃さずに営業できるでしょう。
参考記事:ポータブル型決済端末おすすめ5選!持ち運びに便利なクレジットカード決済対応機種や特徴・違いを解説
資格・許認可の取得手続きを行う
ある程度キッチンカーの準備が整ってきたら、資格・許認可の取得手続きを行いましょう。キッチンカーを開業するにあたり、食品衛生責任者の資格取得が必要になります。
また、移動してキッチンカー営業の場所を変える場合は、移動先の出店場所を管轄している保健所で、営業許可申請を都度行わなければなりません。複数の場所で出店する場合は、とくに注意が必要です。
広告宣伝を行いながら開業する
キッチンカーの開業準備が整ったら、営業開始を広告・宣伝しながら開業しましょう。SNSをうまく活用したり、出店する地域の周辺でチラシ配布を行ったりして、開業を認知してもらうことが重要です。
複数の営業場所を行き来する場合は、出店する曜日や時間帯などを周知し、リピーターの獲得につなげましょう。
自店舗の業態や取り扱っているメニューに関連したフードフェスや、大型の音楽イベントなどに出店するのも、収益が見込める出店方法です。
ただし、イベント出店には出店料の負担が生じるため、価格設定などの見直しを行って、収益をきちんと確保できるように準備する必要があります。
キッチンカー開業準備をスムーズに進めるポイント
キッチンカーの開業準備では、さまざまな項目の確認や対応に追われるため、余裕をもってスケジュールを立てていても時間に追われやすくなります。
キッチンカーの開業準備をスムーズに進めるには、以下の3項目を意識しておくことが大切です。
- 余裕をもってスケジュール・準備計画を立てる
- 仕入れ先や出店場所の選定を早めに行う
- 必要な準備物をリストアップしておく
それぞれ、なぜこれらの項目を意識すべきなのか、その理由や準備を円滑化するためのポイントについて解説します。
余裕をもってスケジュール・準備計画を立てる
キッチンカーを開業する際は、余裕をもって準備計画を立てることが、スムーズな開業準備につながります。スケジュールに余裕がないと、慌てて対応しなければならなくなり、結果的に確認漏れやミスが起こりやすい状態になるためです。
資金計画では、融資申請や補助金・助成金申請にかかる時間を考慮する、許認可申請の手続きでは、期間内に申請書を提出できるように早めに準備しておくなど、余裕をもった対応を心掛けましょう。
仕入れ先や出店場所の選定を早めに行う
キッチンカーの開業では、仕入れ先や出店場所の選定を早めに行うことも大切です。車両も購入していよいよ開業が近づいてきた、という段階で探していると、思うように見つからず、時間がかかる可能性があります。
また、仕入れ先との契約締結や、出店場所の営業許可証の取得なども必要になるため、事業計画を立てる段階で早めに候補をリストアップしておくと良いでしょう。
必要な準備物をリストアップしておく
キッチンカーの開業では、必要な準備物をリストアップしておくのも効果的です。目の前の対応しなければならない事項に集中していると、営業を開始してから過不足が見つかって、追加での対応が必要になります。
事前に必要なものや手続き関連のリストを作成し、完了次第チェックしていけば、見落としを抑止することが可能です。また、次に対応すべき事項も把握しやすくなるため、事前に必要なものや対応事項のリストを作成しておくと良いでしょう。
キッチンカーに必要な開業資金の目安
キッチンカーの開業資金の目安は、約300万円~800万円です。キッチンカーのサイズや、新品の車両を購入するか、中古車両を購入するか、などでも費用は大きく変動します。
また、ドリンクメニューよりも調理が必要な食事系メニューを取り扱う場合の方が、厨房機器の導入にかかる費用負担が大きくなる点にも注意が必要です。
キッチンカーの開業に必要な資金を確保するには、自己資金を貯めて融資を受ける方法のほか、国や自治体が運営している補助金・助成金も活用できます。
申請要件を満たしているか、開業予定地の自治体で独自の制度が設けられていないかなど、リサーチしてみると良いでしょう。
キッチンカー開業に必要な資格・許認可
キッチンカーの開業に必要な資格・許認可は、以下のとおりです。
- 食品衛生責任者
- 運転免許(車両サイズに応じて)
- 飲食店営業許可証
- 車両の構造変更申請
- 開業届(個人事業主の場合)
とくに、食品衛生責任者の資格は、営業許可証の申請を行う際に必要になります。講習を受けて試験をパスすれば取得できますが、営業許可証の取得申請を行う前の段階で取得しておくことが大切です。
また、調理師免許に関しては、キッチンカーを開業する上で必須ではありません。調理に携わる場合も同様で、調理師免許がなくてもキッチンカーは開業できます。
一方で、調理師免許を取得していると、食品衛生責任者の講習受講が免除される利点があるのも特徴です。個人事業主として開業する場合、開業届の提出も必要になります。
そのほか、キッチンカー開業時に必要な資格・許認可については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
参考記事:キッチンカー(移動販売)開業に必要な資格一覧!調理師免許の必要性や便利な資格まで徹底解説
まとめ
キッチンカーを開業する際、スムーズに準備を進める上で欠かせないのが、開業準備全体の流れを把握することです。
いつ頃にどのような準備を進めておけば良いのか、全体的なスケジュール感を把握していれば、期限に追われることなく早めに対応できるようになります。
また、キッチンカー経営は、将来的に店舗型飲食店を開業したい、という方の試験的な開業手段としてもおすすめです。週末のみ、ランチタイムのみ、など自由に営業時間を設定できるので、副業から始めてみるのも良いでしょう。