ホテル・旅館では慢性的な人手不足が深刻化しており、注目されているのが在留資格「特定技能」の宿泊分野です。
一定の技能と日本語能力を持つ外国人材が、ホテルや旅館の幅広い現場業務に従事できる制度として、多くの宿泊施設で導入が進んでいます。
一方で、「どこまでの業務を任せられるのか」「1号と2号の違いは何か」「企業側にはどんな要件があるのか」と疑問を持つ担当者も多いでしょう。
そこで本記事では、特定技能「宿泊」の制度概要から、任せられる業務範囲、受入要件までをわかりやすく解説します。
特定技能「宿泊」とは?

特定技能「宿泊」とは、2019年4月に創設された在留資格「特定技能」のうち、宿泊分野に特化した制度です。
特定技能制度は、深刻な人手不足が続く産業分野で、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れるために創設されました。宿泊分野も対象である16分野に含まれており、ホテル・旅館などで即戦力人材として働くことができます。
また、2023年に対象分野の見直しが行われ、宿泊分野も特定技能2号の対象となりました。
これにより、一定の熟練技能を持つ外国人材については、より長期的な雇用・定着を目指しやすくなっています。
特定技能1号と2号の主な違い
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 通算5年まで | 更新制で上限なし |
| 技能水準 | 基礎的な技能 | 熟練した技能 |
| 日本語能力 | 一定水準が必要 | 試験等で確認 |
| 家族帯同 | 原則不可 | 要件を満たせば可能 |
| 受入企業の支援 | 支援義務あり | 原則不要 |
これまで宿泊分野では1号のみでしたが、2号追加によって長期雇用を前提とした人材戦略を立てやすくなり、現場リーダー候補として育成していく動きも広がっています。
特定技能「宿泊」で任せられる業務・任せられない業務
特定技能「宿泊」で従事できる業務範囲は、フロントから清掃・レストランサービスまで広範にわたります。
ただし、すべての業務を自由に任せられるわけではなく、制度上認められている業務範囲を正しく理解しておくことが重要です。業務内容を誤ると、在留資格違反と判断されるリスクもあるため注意しましょう。
| 区分 | 具体的な業務内容 |
|---|---|
| 対象業務 | ・フロント業務(チェックイン・チェックアウト、予約受付、館内案内など) ・企画・広報業務(キャンペーン・特別プランの立案、HP・SNSによる情報発信など) ・接客業務(レストラン配膳、問い合わせ対応など) ・館内販売業務(土産物販売、売店対応など) ・上記に関連する販売、備品の点検・交換などの付随業務 |
| 対象外業務 | ・ホテルや旅館の経営・管理業務 ・料理人、シェフなど専門性の高い調理業務 ・宿泊業と関係のない業務への専従 ・風俗営業法に関係する業務 |
特定技能「宿泊」の特徴は、単一業務だけでなく、宿泊施設内の幅広い接客・運営業務に横断的に従事できる点です。フロント対応を行いながら、繁忙時にはレストランサービスや客室対応をサポートするなど、現場状況に応じた柔軟な配置が可能です。
一方で、総支配人のような経営業務や専門的な調理技術が求められる料理人業務を主業務として任せることは認められていません。また、清掃のみなど単純作業だけに従事させる運用も制度趣旨から外れるため注意が必要です。
参考記事:ホテル・旅館での外国人採用ガイド|在留資格と雇用の流れを解説
特定技能「宿泊」を取得する要件と方法
特定技能「宿泊」を取得するには、技能と日本語能力の両方で一定の基準を満たす必要があります。
取得方法は大きく分けて「試験ルート」と「技能実習からの移行ルート」の2つです。採用対象者によって必要な手続きや準備が異なるため、それぞれの特徴を理解しておきましょう。
1.技能測定試験と日本語試験に合格する
海外在住者や留学生などが特定技能「宿泊」を取得する場合、原則として以下2種類の試験に合格する必要があります。
| 試験区分 | 内容 |
|---|---|
| 宿泊分野特定技能1号評価試験 | フロント業務・接客・安全衛生・宿泊サービスなど、宿泊業務に必要な知識や技能を確認する試験 |
| 日本語試験 | 「日本語能力試験(JLPT)N4以上」または「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格する必要がある |
宿泊業では接客業務が多いため、最低限の日本語コミュニケーション能力が重視されます。特にホテル・旅館では、外国人宿泊客だけでなく日本人利用者への対応も求められるため、採用時には試験結果だけでなく会話力も確認することが重要です。
参考記事:外国人採用における日本語レベルの考え方|採用基準・教育方法を解説
2.技能実習2号を修了して移行する
もう一つの方法が、宿泊分野の技能実習2号を良好に修了した外国人材が、特定技能1号へ移行するルートです。
この場合は、宿泊分野との関連性が認められれば、技能試験と日本語試験が免除されます。
技能実習経験者は、日本での就労経験や生活経験があるため、以下のような点から即戦力として採用しやすい傾向があります。
- 日本語でのコミュニケーションに慣れている
- 接客マナーを理解している
- 宿泊施設の業務フローを把握している
一方で、すでに他社で就労しているケースも多いため、待遇やキャリアパスを明確に提示しなければ採用競争が激しくなる点には注意が必要です。
特定技能「宿泊」を受け入れる企業の条件と注意点

特定技能「宿泊」の外国人を雇用するには、企業側もいくつかの要件を満たす必要があります。
特に宿泊分野は、旅館業法や業界特有のルールが関係するため、一般的な外国人採用よりも事前確認が重要です。申請直前で要件不足に気づくケースも少なくないため、あらかじめチェックしておきましょう。
- 旅館業法に基づく「旅館・ホテル営業」の営業許可を受けている
- 風俗営業法に該当する施設ではない
- 特定技能外国人を適切に支援できる体制がある
- 外国人と結ぶ雇用契約が適正である
- 日本人と同等以上の報酬を支払う
- 宿泊分野特定技能協議会へ加入している
- 過去に入管法・労働法令違反など重大な問題を起こしていない
特に重要なのが、「宿泊分野特定技能協議会」への加入です。2024年6月以降の運用では、在留資格申請前に「宿泊分野特定技能協議会」への加入が求められます。最新の要件や適用条件は、必ず公式情報で確認してください。
さらに、以下のような運用面も事前に整理しておくとスムーズです。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 配属計画 | フロント・清掃・レストランなど、どの業務を担当させるか整理する |
| 教育体制 | 接客マナー・館内ルール・緊急時対応などの研修を準備する |
| 生活支援 | 住居確保や行政手続き支援など、生活面のフォロー体制を整える |
| 多言語対応 | マニュアル翻訳ややさしい日本語の活用を検討する |
特に協議会加入は申請前に完了が必要なため、採用スケジュールに余裕を持って進めることが重要です。
参考記事:初めての外国人採用での注意点は?トラブルを防ぐポイントを解説
特定技能「宿泊」の外国人材を採用して人手不足を解消しよう
この記事では、特定技能「宿泊」の制度概要から、従事可能な業務範囲、受入企業の要件をまとめて解説しました。
特定技能「宿泊」は、ホテル・旅館における深刻な人手不足に対応するために創設された制度であり、フロント業務、客室清掃、レストランサービス、館内販売など幅広い現場業務を任せられる点が大きな特徴です。
インバウンド需要が高まる今、特定技能「宿泊」は宿泊施設の人手不足を解消する有力な手段です。制度の仕組みを正しく理解したうえで、自社に合った受入体制を整えましょう。

