特定技能外国人を採用する際、「何か助成金を受けられないか」「補助金制度はあるのか」と疑問を持つ企業担当者は少なくありません。
実は、「特定技能専用」の助成金という制度は、基本的に存在しません。
ただし、雇用に関する一定の条件を満たすことで活用できる助成金制度はいくつかあり、うまく活用すれば採用・支援にかかるコストを大きく削減できる可能性があります。
一方で、「特定技能外国人を雇っているから受給できる」と誤解したまま申請すると、不支給となるケースもあります。
そこでこの記事では、特定技能外国人の雇用に活用できる主な助成金の種類・対象条件・申請の流れに加え、申請時に注意すべきポイントまでを企業担当者向けにわかりやすく解説します。
特定技能の助成金とは?

特定技能の助成金を申請する前に、最初に制度の仕組みを押さえておくことが欠かせません。
まず、ここでは助成金制度の基本的な概要について解説します。
「特定技能専用」の助成金は基本的に存在しない
国が設けている助成金制度の多くは、「外国人だから使える」ではなく、「一定の雇用条件や取り組みを満たしているから使える」という設計になっています。そのため、特定技能という在留資格そのものを対象とした専用の助成金制度は、基本的に存在しません。
つまり、「特定技能外国人を雇用しているから受給できる」のではなく、「特定技能外国人を雇用しながら、一定の条件を満たす取り組みを行っているから受給できる」ということを押さえておきましょう。この点を誤解したまま申請すると、不支給となるリスクがあるため注意が必要です。
参考記事:特定技能外国人を採用するには?手続き方法や注意点を解説
補助金と助成金の違い
「補助金」と「助成金」は混同されやすいですが、財源・申請方式・採択の有無など、いくつかの点で異なります。特定技能外国人の雇用に関連した制度は助成金が中心のため、まず両者の違いを整理しておきましょう。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 主な財源 | 国・地方自治体の予算 | 雇用保険料(労働保険料) |
| 申請方式 | 公募制・審査制 | 要件を満たせば原則支給 |
| 採択の有無 | あり(予算上限に達すると締め切り) | なし(要件を満たせば受給可能) |
| 返済義務 | なし | なし |
| 主な管轄 | 経済産業省・都道府県・市区町村 | 厚生労働省 |
助成金は要件を満たしていれば原則として受給できるため、補助金と比べて申請のハードルが低い傾向があります。一方、補助金は都道府県や業種ごとに独自に設けられているケースが多く、公募期間が限られているため、情報収集のタイミングが重要です。
※補助金・助成金についての内容は変動する場合があるため、公式情報もご確認ください。また、条件を満たして申請しても、支給対象にならない場合もあるためご注意ください。
これらの前提を踏まえたうえで、具体的に活用できる制度を見ていきましょう。
【全国】特定技能外国人の雇用で活用できる主な助成金

特定技能外国人の雇用に関連して活用できる代表的な助成金を紹介します。いずれも要件を満たして初めて受給できる制度です。自社の状況と照らし合わせながら活用を検討しましょう。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備に取り組む事業主に対して、その費用の一部を助成する制度です。
言語の壁や文化・慣習の違いによるトラブルを未然に防ぎ、外国人労働者の職場定着を促進することを目的としています。
特定技能外国人の支援計画と親和性が高く、特定技能外国人を雇用する企業が最も活用しやすい助成金の一つといえます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成額 | 1制度導入につき20万円(上限80万円) |
| 助成率 | 対象経費の2分の1(中小企業は3分の2) |
| 主な対象経費 | 通訳費、翻訳機器導入費、翻訳料、弁護士、社会保険労務士等への委託料、社内標識類の設置・改修費など |
参照:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)は、従業員のスキルアップや資格取得を目的とした訓練(OFF-JT・OJT)にかかる費用や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
特定技能外国人も要件を満たせば対象となるため、受け入れ後の育成コスト削減に活用できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成対象 | 訓練にかかる経費・訓練期間中の賃金の一部 |
| 助成率・助成額 | 【中小企業の場合】 経費助成:45〜75% 賃金助成:1時間あたり800〜1,000円(規模・訓練種別により異なる) |
雇用調整助成金
雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、従業員を休業・教育訓練・出向させる事業主に対して、その賃金の一部を助成する制度です。
特定技能外国人も雇用保険の被保険者であれば対象となります。繁忙期・閑散期の差が大きい業種や、経営環境の変化に直面している企業にとって、雇用維持の手段として活用できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 助成対象 | 訓練にかかる経費・訓練期間中の賃金の一部 |
| 助成率・助成額 | 【中小企業の場合】 経費助成:45〜75% 賃金助成:1時間あたり800〜1,000円(規模・訓練種別により異なる) |
※教育訓練を行った場合は、1人1日あたり1,200円の加算があります。
参照:厚生労働省|雇用調整助成金
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
非正規雇用労働者の正社員転換や処遇改善に取り組む事業主を支援する助成金です。
ただし、在留資格が「特定技能1号」の外国人は正社員化コースの対象外となる点に注意が必要です。
一方、特定技能2号は在留期間の制限がなく更新可能なため、正社員化コース・処遇改善支援コースともに対象となります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な助成額 | 【重点支援対象者の場合】 有期→正規転換:1人あたり80万円(大企業は60万円) 無期→正規転換:1人あたり40万円(大企業は30万円) |
【自治体別】特定技能外国人向けの主な助成金
国の制度に加え、都道府県・市区町村が独自に設けている助成金もあります。介護・建設など業種別に手厚い支援がある地域もあるため、自社の業種・所在地に合った情報をこまめに収集しましょう。
※対象経費や補助額については年度ごとに変更される場合があるため、最新情報は自治体の公式ページでご確認ください。
ここでは特定技能外国人向けに活用できる代表的な自治体の制度を紹介します。
【北海道苫小牧市】外国人材受入企業支援事業
苫小牧市では、特定技能外国人を含む外国人材を受け入れる企業に対して、受け入れにかかる費用の一部を補助する独自の支援事業を設けています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限額 | 20万円 |
| 補助率 | 対象経費の2/3 ※1,000円未満の端数がある場合は切り捨て |
【東京都】特定技能制度に基づく外国人介護従事者の受入れ支援事業
東京都では、公益財団法人東京都福祉保健財団を通じて、特定技能制度に基づいて介護分野で外国人を受け入れる事業者向けの支援事業を実施しています。
介護分野や日本語学習に関する研修費用や受け入れ体制整備にかかる経費の一部を補助するもので、介護人材の確保に課題を抱える都内の事業者にとって活用価値の高い制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助基準額 | 特定技能外国人1人当たり67万円に事業月数を乗じた額を12月で除した額 ※1円未満の端数がある場合は切り捨て |
| 補助率 | 対象経費の1/2 |
※令和7年度は終了し、令和8年度の実施は未定です。最新情報をご確認ください。
参照:公益財団法人東京都福祉保健財団|特定技能制度に基づく外国人介護従事者の受入れ支援事業
【鹿児島県】農業分野における特定技能外国人の受入れ支援事業
鹿児島県では、農業分野において派遣形態で特定技能外国人を初めて雇用し、その活用に取り組む農業者等を対象とした支援事業を実施しています。
農業分野は季節による繁閑の差が大きく派遣での受け入れが認められている分野のため、初めての受け入れに不安を持つ農業者に向けた実践的な支援内容となっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限額 | 20万円 |
| 補助率 | 対象経費の1/2以内 |
参照:鹿児島県|農業分野における特定技能外国人の受入れ支援事業
特定技能の助成金を申請するポイント

助成金を確実に受給するためには、申請前に押さえておくべきポイントがあります。要件を満たしていても、手続きの順序や書類の不備によって不支給となるケースがあるため、事前の準備が重要です。
取り組みを実施する「前」に計画届を提出する
助成金の多くは、取り組みを実施する前に「訓練計画届」や「キャリアアップ計画書」などの書類を提出することが受給の前提条件です。
取り組みを先に実施してから申請しようとしても受理されないケースがあるため、申請の順序を必ず事前に確認することが大切です。そのため、取り組みを決めた段階で速やかに所轄のハローワークや労働局、助成金コンサルタントに相談することをおすすめします。
雇用保険への加入が大前提
国が管轄する助成金のほとんどは、雇用保険の適用事業主であることが受給要件の一つとなっています。
また、助成金の種類によっては、特定技能外国人本人も雇用保険の被保険者であることが求められるケースがあります。
雇用契約の内容や労働時間が、雇用保険の加入要件を満たしているかどうかを、受け入れ前の段階で確認しておきましょう。
参考記事:外国人採用時の雇用保険手続きの方法|加入条件・必要書類を解説
書類・証拠書類は漏れなく保管する
助成金の申請には、取り組みの実施を証明する書類の提出が求められます。書類が不足していたり、内容に不備があったりすると不支給となるリスクがあるため、取り組みの開始時点から整理・保管しておくことが重要です。
主な必要書類の例を以下にまとめました。
- 出勤簿・タイムカード
- 賃金台帳
- 訓練の実施記録・受講証明書
- 領収書・請求書(対象経費にかかるもの)
- 雇用契約書
不明点がある場合は、ハローワークや社会保険労務士、助成金コンサルタントに相談しながら進めると安心です。
特定技能の助成金を活用して外国人雇用コストを抑えよう
この記事では、特定技能外国人の雇用に際して活用できる助成金・補助金の種類と、申請時に押さえておくべきポイントを解説しました。
「特定技能専用」の助成金は基本的に存在しませんが、雇用環境の整備や人材育成に取り組む事業主であれば、人材確保等支援助成金・人材開発支援助成金・雇用調整助成金など、条件を満たすことで活用できる制度が複数あります。
また国の制度だけでなく、自治体独自の補助金・助成金も組み合わせることで、受け入れにかかるコストをさらに削減できる可能性があります。
申請の手続きや要件に不安がある場合は、ハローワークや社会保険労務士への相談も積極的に活用しながら、助成金をうまく活用して自社に合った外国人材の受け入れ体制を整えていきましょう。

