人手不足が深刻化する中、特定技能の在留資格をもつ外国人採用を検討している企業は年々増えています。特に、製造業・建設業・外食業・介護などの特定産業分野では、日本人だけでは人材確保が難しい状況が続いています。
しかし、特定技能外国人の採用は、通常の採用活動とは異なり、在留資格の要件確認や支援体制の整備、各種申請手続きなど、事前に理解しておくべきポイントが多くあります。
そこで本記事では、特定技能に関する業種で外国人採用を行いたい企業向けに、特定技能制度の基本知識、受け入れ要件、採用の流れ、注意点までをわかりやすく解説します。
特定技能外国人採用とは?

特定技能外国人採用とは、国内で深刻な人手不足が続く16種の特定産業分野において、「一定の技能」と「日本語能力」を有する外国人を即戦力として雇用することを指します。
特定技能の在留資格は2019年4月に新設されました。従来の技能実習制度とは異なり、「労働力確保」を目的とした制度である点が大きな特徴です。単純労働を含む幅広い業務に従事できるため、人材不足に悩む企業にとって有効な選択肢となっています。
現在、特定技能は以下の16分野で認められています。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業(旧:素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 自動車運送業
- 鉄道
- 林業
- 木材産業
これらの分野に該当する事業を行う企業であれば、一定の条件を満たすことで特定技能外国人の受け入れが可能です。
企業側の受け入れ要件
特定技能外国人を受け入れる企業は、出入国在留管理庁が定める運用要領に基づき、大きく3つの基準を満たす必要があります。
| 基準 | 内容 | 主なポイント |
|---|---|---|
| 1.企業自体の基準 | 企業が適正に外国人を受け入れられるか | ・直近1年以内に解雇者・行方不明者がいない ・過去5年間に出入国・労働法令違反なし ・外国人から保証金や違約金を徴収していない ・受け入れ費用を外国人に負担させていない ・報酬を口座振込で支払っている |
| 2.雇用契約の基準 | 労働条件・契約内容が適正か | ・分野ごとに定められた業務内容に従事させる ・日本人と同等以上の報酬 ・外国人であることを理由に差別しない ・一時帰国希望時に休暇を付与 ・帰国費用を負担できない場合は企業が負担 |
| 3.支援体制の基準 | 外国人が安心して働ける支援が整備されているか | ・母国語での支援が可能 ・支援責任者・担当者を選任し、定期面談を実施できる ・過去2年以内に中長期在留者の受け入れ実績または支援経験があり、適切に支援業務を実施できる者を支援責任者・担当者として選任していること |
特定技能外国人を受け入れる際、企業が自社で支援体制を整えられない場合は、登録支援機関に委託することも可能です。
具体的には、以下のケースが該当します。
- 直近2年間に特定技能外国人の受け入れ実績がない
- 社内に外国人への支援を行える担当者や体制がない
この場合、登録支援機関が支援計画の作成や日常的なサポートを代行します。支援業務を委託することで、法令に沿った適切なサポートが提供され、企業は安心して特定技能外国人を採用活動に取り組めます。
特定技能外国人を採用するメリット・デメリット

特定技能外国人を採用する際には、メリットとデメリットを理解しておくことが重要です。事前に把握することで、採用後のトラブルやミスマッチを防ぐことができます。
メリット
特定技能外国人を採用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 即戦力となる人材を確保できる
- 多言語対応が可能になる
- 単純労働も含めた幅広い業務に対応できる
即戦力となる人材や多言語対応可能な人材を確保できるため、人手不足の解消に大きく寄与します。特に、単純労働から専門業務まで幅広く対応できる点が企業にとっての大きな魅力です。
デメリット
特定技能外国人を採用することで、以下のようなデメリットが発生します。
- 日本人採用にはない複雑な手続きが必要
- 言語や文化の違いに対するサポートが必要
- 社内体制や受け入れ体制の整備が求められる
特定技能外国人の採用には複雑な手続きや、言語・文化の違いに対応する体制の整備が不可欠です。これらを事前に理解し準備することで、スムーズな採用と定着につながります。
特定技能外国人の採用までの流れ・やるべきこと
特定技能外国人を採用する際は、段階ごとにやるべきことを整理し、余裕を持って準備することが重要です。採用の流れを把握することで、手続きの抜け漏れやトラブルを防ぐことができます。
以下に、採用までの流れを6つのステップにわけてまとめました。
- 受け入れ要件の確認
- 人材募集・面接
- 雇用契約の締結
- 支援計画の策定
- 在留資格の申請を行う
- 就業開始
特定技能外国人を採用するには、各段階で必要な手続きを漏れなく進める必要があります。そのため、チェックリストを用いるのもおすすめです。
外国人採用の詳しい流れや必要な書類は、以下の記事をご覧ください。
参考記事:外国人採用の準備方法丨必要書類や在留資格の種類・手続きの流れを解説
特定技能外国人を採用する際の注意点

特定技能外国人を採用する際の注意点には、「在留資格の取得条件を満たしているか」「適切な支援体制を整えているか」が挙げられます。これらの点を守らないと、採用後の就労開始や在留資格取得に支障が生じる可能性があります。
そこで、ここでは特定技能外国人を採用する際の具体的な注意点について解説します。
技能試験と日本語試験に合格する必要がある
特定技能外国人として就労するには、採用予定の分野に応じた「技能試験」と「日本語能力試験」に合格していることが基本的な条件です。
技能試験は、受け入れ企業が属する業種ごとに定められた業務を適切に遂行できる能力があるかを評価するもので、実務に直結する内容となっています。
一方、日本語能力試験は、職場でのコミュニケーションや業務指示の理解、報告・連絡・相談が円滑に行えるかを確認するために課されます。
ただし、技能実習2号を良好に修了し、同一分野へ移行する場合には、特定技能1号への変更にあたり技能試験および日本語試験が免除されるケースがあります。また、特定技能2号では新たに日本語能力試験が課されていません。
特定技能外国人を採用するには、原則として「技能試験」と「日本語能力試験」への合格が必要ですが、技能実習修了歴や移行分野によっては免除される場合もあります。候補者の在留資格や経歴を必ず確認しましょう。
協議会の構成員への加入が求められる
特定技能外国人を受け入れる企業は、分野ごとの運用に基づき、特定技能所属機関協議会への加入が求められます(加入時期や手続きは分野・状況により異なる場合があります)。
協議会は、外国人が安心して就労・生活できる環境を整えるための組織です。加入することで企業は適切な支援体制を維持しやすくなります。具体的には、定期的な面談の実施や支援計画の確認、トラブル発生時の相談・対応などが円滑に行えるようになります。
協議会へ加入することで、最新の法令や運用ルール、研修情報なども共有されるため、法令違反や手続き漏れのリスクを減らすことにつながります。
そのため、特定技能外国人を採用する企業は、早めに協議会へ加入し、支援責任者・担当者と協力して計画的な受け入れ体制を整えることが重要です。
特定技能外国人を採用して即戦力を獲得しよう
この記事では、特定技能に関する業種で外国人採用を行いたい企業向けに、受け入れ要件や必要な手続き、注意点を解説しました。
特定技能外国人は、単純労働を含む幅広い業務に従事できる即戦力人材であり、人材不足解消に有効な手段です。採用にあたっては、企業自体の基準、雇用契約、支援体制の3つの要件を満たす必要があります。また、技能試験・日本語試験の合格や協議会への加入など、法律の順守や支援体制の整備も重要です。
そのため、特定技能外国人を採用するには、早めの準備と必要書類・手続きの整理が必要な一方、計画的に進めることで、企業の成長や業務効率化につながる大きなチャンスとなるでしょう。

