券売機を購入するには、1台あたり70万円~200万円程度の費用がかかります。券売機の導入費用を抑えるために、中古で購入したり、レンタルやリースを活用する方法もありますが、補助金・助成金制度が活用できることをご存知でしょうか。
近年、券売機もキャッシュレス化やキッチンプリンター・キッチンディスプレイとの連携が進み、さまざまな機能が備わっている機種も登場しています。
補助金・助成金制度を活用できれば、そのような最新機器も費用負担を抑えて導入できるでしょう。そこで本記事では、券売機導入時に活用できる補助金・助成金制度を5選ピックアップして紹介します。
券売機導入に利用できる補助金・助成金制度とは
券売機導入に利用できる補助金・助成金制度とは、国や自治体が推進している社会課題への取り組みや職場環境の改善などを行う企業に対し、支援金を支給するものです。
融資とは異なり、返済不要で支給してもらえるため、事業で新たな設備を導入する際の負担を大きく軽減できます。
券売機導入に利用できる補助金・助成金制度もいくつかあり、券売機を導入する目的や券売機導入で達成できた成果によって、支給割合が変動するものがあるのも特徴です。
券売機導入に利用できる補助金・助成金制度5選
券売機導入時に利用できる補助金・助成金制度は、以下の5つあります。
- 中小企業省力化投資補助金
- IT導入補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 業務改善助成金
- 働き方改革推進支援助成金
まずは、制度ごとの特徴や支給対象となる条件、支給金額について詳しく見ていきましょう。
中小企業省力化投資補助金
出典:中小企業省力化投資補助金
中小企業省力化補助金も、券売機の導入時に活用できる補助金制度です。中小企業の売り上げ拡大や業務効率化を支援するための制度で、生産性向上による賃上げを目的としています。
券売機のほか、配膳ロボットや自動清掃ロボット、スチームコンベクションオーブン、自動フライヤーなどの導入時にも活用できる点が特徴です。
カタログに掲載されている製品の中から、省力化効果のある汎用製品を注文する場合は「カタログ注文型」、オーダーメイド性がある個別設備やシステムの構築なら「一般型」が利用できます。
カタログ注文型 | 一般型 | |
---|---|---|
投資内容 | 簡易で即効性がある 省力化投資 | オーダーメイド性のある 多様な省力化投資 |
補助対象 | カタログに掲載された 省力化効果のある汎用製品 | 個別現場の設備や事業内容に 合わせた設備導入・システム構築 |
補助上限 | 最大1,500万円 | 最大1億円 |
補助率 | 1/2以下 ※従業員数の要件あり | 1/3~2/3まで ※従業員数の要件あり |
カタログ注文型は、従業員数5人以下なら補助金額上限200万円まで、6人以上20人以下なら補助上限額500万円までです。従業員数が21名以上の企業では、最大1,500万円の補助が受けられます。公募期間は、令和8年9月末頃まで随時募集されているので、券売機や店舗設備の導入にぜひ活用しましょう。
参考サイト:中小企業省力化投資補助金
IT導入補助金
出典:IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の労働生産性向上を目的に、業務効率化やDX化に取り組む事業者を支援する目的で設けられた制度です。業種を問わず利用できる点が特徴で、券売機やセルフレジなどIT機器を導入する場合、「通常型」に該当します。
また、インボイス制度への対応を目的に、会計・受発注・決済のいずれかの機能が備わっている機器類を導入する場合は、「インボイス枠(インボイス対応類型)」の支給対象です。
適用条件 | 補助率 | 上限金額 |
---|---|---|
ソフトウェア導入費 | 3/4以内、4/5以内※1 | 50万円※2 |
ソフトウェア導入費 | 2/3以内 | 50万円〜350万円以下※3※4 |
ハードウェア購入費 | 1/2以内 | PC・タブレットなど:10万円 発券機・レジなど:20万円 |
※1 中小企業は3/4以内、小規模事業者は4/5以内
※2 「会計」・「受発注」・「決済」のうち1機能以上を有することが機能要件
※3 補助額50万円超の際の補助率は、補助額のうち50万円以下については3/4(小規模事業者は4/5)、50万円超については2/3
※4 「会計」・「受発注」・「決済」のうち2機能以上を有することが機能要件
引用:インボイス枠(インボイス対応類型)|IT導入補助金2025
申請期間は、2025年3月31日(月)から5月12日(月)の予定となっています。IT導入補助金の申請を行う際は、IT導入支援事業者のサポートサービスを活用すると良いでしょう。
小規模事業者持続化補助金
出典:小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の持続的な経営を支援するための制度です。創業型や一般型(通常枠・災害支援枠(能登半島地震被災者向け))など、さまざまな枠組みが設けられています。
一般型(通常枠) | インボイス特例 | 賃金引上げ特例 | 創業型 | |
---|---|---|---|---|
補助額 | 50万円 (特例込みで最大250万円) | 最大100万円 | 最大200万円 | 200万円 (特例込みで最大250万円) |
補助率 | 2/3(賃金引上げ特例活用事業者のうち赤字事業者は3/4) | 2/3(賃金引上げ特例活用事業者のうち赤字事業者は3/4) | 2/3(賃金引上げ特例活用事業者のうち赤字事業者は3/4) | 2/3 |
小規模事業者持続化補助金は、一般型・創業型などの枠組みに対し、インボイス特例や賃金引上げ特例に対応することで支給金額が増額される仕組みです。
2025年度も補正予算が組まれており、公募が開始される見込みです。(2024年度は5月頃開始の実績あり)
また、公募期間は年間に複数回あるものの、公募受付期間が短いため、申請を予定している方は早めに準備を進めておく必要があります。
申請に不安がある場合は、小規模事業者持続化補助金の申請サポートや申請代行サービスを活用するのも選択肢の1つです。
参考サイト:小規模事業者持続化補助金
業務改善助成金
出典:業務改善助成金
業務改善助成金は、企業の業務効率化や生産性向上を目的とした設備投資を支援する制度です。助成金を受け取るには、事業所内の賃金を一定水準引き上げる必要がありますが、引き上げ幅に応じて助成金額もアップします。
コース区分 | 事業場内最低賃金の引き上げ額 | 引き上げる労働者数 | 助成上限額 右記以外の事業者 | 助成上限額 事業場規模30人未満の事業者 |
---|---|---|---|---|
30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | 60万円 |
2〜3人 | 50万円 | 90万円 | ||
4〜6人 | 70万円 | 100万円 | ||
7人以上 | 100万円 | 120万円 | ||
10人以上 | 120万円 | 130万円 | ||
45円コース | 45円以上 | 1人 | 45万円 | 80万円 |
2〜3人 | 70万円 | 110万円 | ||
4〜6人 | 100万円 | 140万円 | ||
7人以上 | 150万円 | 170万円 | ||
10人以上 | 180万円 | 180万円 | ||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | 90万円 |
2〜3人 | 90万円 | 120万円 | ||
4〜6人 | 150万円 | 190万円 | ||
7人以上 | 230万円 | 230万円 | ||
10人以上 | 300万円 | 300万円 | ||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | 150万円 |
2〜3人 | 150万円 | 240万円 | ||
4〜6人 | 270万円 | 290万円 | ||
7人以上 | 450万円 | 450万円 | ||
10人以上 | 600万円 | 600万円 |
※10人以上の上限額区分は、<特例事業者>のみが対象
また、助成率は現状の最低賃金額によっても、適用される割合が異なります。
900円未満:9/10※2025年度はこの区分と生産性要件を廃止900円以上950円未満:4/5、一定の生産要件を満たした場合9/10950円以上:3/4、一定の生産要件を満たした場合4/5
- 1,000円未満 4/5
- 1,000円以上3/4
2025年度もすでに補正予算が組まれているため、実施される見通しです。補助金申請開始日程は3月初旬時点で公表されていませんが、申請の準備は事前に進めておきましょう。
参考サイト:業務改善助成金
働き方改革推進支援助成金
出典:働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金は、生産性向上や労働時間短縮への取り組みを支援するための制度です。
取り組む業務改革の内容に応じて、以下4つのコースが設けられています。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間適正管理推進コース
- 団体推進コース
券売機の導入に際し、この助成金制度を利用する場合は、労働時間短縮・年休促進支援コースに該当します。ただし、時間外労働時間を80時間以下ないし60時間以下に減らす、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入するなどの改革が必要です。
- 成果目標1から3の上限額および賃金加算額の合計額
- 対象経費の合計額×補助率3/4
- 常時使用している労働者数が30人以下かつ、特定の取り組みにかかった金額が30万円を超える場合の補助率は4/5
助成金の支給上限額は480万円に設定されています。以下は、常時使用する労働者数が30人以下の中小企業事業主の支給金額です。
引き上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11人~30人 |
---|---|---|---|---|
3%以上引き上げ | 30万円 | 60万円 | 100万円 | 1人当たり10万円 (上限300万円) |
5%以上引き上げ | 48万円 | 96万円 | 160万円 | 1人当たり16万円 (上限480万円) |
また、令和7年度は、賃金の引き上げ率に応じて新たな加算枠が設けられています。
- 賃金を3%以上引き上げた場合、労働者数に応じて、助成上限額を6万円~最大60万円加算、賃金を5%以上引き上げた場合は、24万円~最大240万円加算、賃金を7%以上引き上げた場合は、36万円~360万円加算。
参考サイト:働き方改革推進支援助成金
券売機導入時に補助金・助成金を申請する際の注意点
券売機導入時に補助金・助成金を申請する際、注意しておくべきポイントは以下の3項目です。
- 申請受付期間に注意する
- 申請要件を満たしているか確認する
- 必要書類に不備がないようにチェックする
それぞれ注意すべき理由や、具体的にどのような点を意識すれば良いのか、詳しく解説します。
申請受付期間に注意する
券売機の導入に補助金・助成金制度を利用するのであれば、必ず申請の受付期間を確認しましょう。補助金・助成金制度によっては、申請期間が短いものもあるため、事前に準備しておく必要があります。
申請受付期間を過ぎてしまうと、次年度以降に申請しなければならなくなる上に、場合によっては制度自体が終了してしまう事態にも陥りかねません。
また、制度によっては申請期間内でも、予算額に達した時点で受付終了となるケースもあるので、申請受付開始後すぐに申請できるように、情報収集を小まめに行うことが大切です。
申請要件を満たしているか確認する
券売機の導入に補助金・助成金制度を活用する場合、申請要件を満たしているか確認する必要があります。申請受付期間内に申請しても、申請要件を満たしていなければ支給対象から外れてしまうためです。
申請要件は、補助金・助成金制度ごとに異なるため、利用したい制度の内容をよく確認した上で申請しましょう。
自店舗が申請要件を満たしているか不安な場合は、補助金・助成金制度の申請サポートを行っている券売機事業者の中から、導入する機種を選ぶのもおすすめです。
後述の「補助金・助成金を活用して導入するのにおすすめの券売機」で解説していますので、ぜひ参照ください。
必要書類に不備がないようにチェックする
券売機の導入に補助金・助成金制度を活用する際、申請時の必要書類に不備がないように複数回チェックしておきましょう。申請要件を満たしているにもかかわらず、書類の不備で支給が受けられないという事態を避けるためにも注意が必要です。
また、申請受付が開始されてから必要書類を揃えるよりも、申請受付開始前から準備しておくと、余裕をもって書類をチェックできます。
補助金・助成金を活用して導入するのにおすすめの券売機
補助金・助成金を活用して導入するのにおすすめの券売機は、新紙幣対応券売機や、キャッシュレス決済に対応している券売機です。一般的なボタン式券売機でも、キャッシュレス決済に対応できる機種があるので、収益機会の拡大を図るために導入を検討してみると良いでしょう。
また、タッチパネル式券売機であれば、キャッシュレス決済に対応しているだけでなく、多言語表示や多言語音声案内にも対応している機種があります。購入するには100万円以上する設備も多くありますが、補助金・助成金を活用すればこのような最新機種もコストを抑えて導入できるでしょう。
補助金・助成金を利用して導入できるキャッシュレス決済対応の券売機については、以下の記事で編集部おすすめの製品を紹介しています。こちらもぜひ参考にしてください。
まとめ
券売機は、中古で購入すると新紙幣対応の機種ではなかったり、製造事業者の保証対象外になっていたりするケースも多いため、可能であれば新品の購入がおすすめです。
国や自治体ではさまざまな補助金・助成金制度を設けているため、積極的に活用して店舗の設備を拡充しましょう。また、補助金・助成金を利用する際は、券売機だけでなく店内全体のDX化を検討してみるのもおすすめです。
「勤怠管理システムや予約システムを導入したい」「店舗アプリやモバイルオーダーシステムも検討している」など、大幅な設備投資にも補助金・助成金制度が活用できます。
券売機だけでなく、ほかのシステムや設備への投資も念頭に置きながら、制度を積極的に活用しましょう。