試行錯誤した1号店が軌道に乗り、2店舗目、3店舗目と出店を考えるようになると、多くの経営者が「この先、どうやって店舗数を増やしていくか」と考えます。そのときに選択肢となるのが、直営で増やしていくのか、それともフランチャイズ(FC)で増やしていくのかという問題です。
私のところにも、フランチャイズ展開についての相談をよくいただきます。
私自身、直営の外食企業やFC本部で加盟開発・店舗開発・スーパーバイザー(SV)を経験し、フランチャイズ相談員として多くの経営者の方とお話ししてきました。また、会社経営時には自らFCに加盟した経験もあります。
その経験から感じるのは、直営とFCのどちらが正解ということではなく、経営者の考え方や会社の成長ステージによって、最適な方法は大きく変わるということです。
自分の会社は直営とFC、どちらが向いている?
直営に向いているのは、ブランドやサービス品質を自社でしっかり管理したい企業です。また、出店資金を確保でき、店長や社員を育成する仕組みがある会社にも向いています。
直営なら、会社の方針を店舗に直接伝えることができ、新しい商品やサービス、業務改善もスピーディーに実行できます。店舗の利益も基本的には自社に積み上がっていきます。
一方で、出店するたびに物件取得費、内装工事費、設備投資、人材採用費などが必要になります。店舗数が増えれば、本部の管理負担も大きくなります。
FCに向いているのは、すでに店舗運営が仕組み化されており、自社資金だけに頼らずスピード感を持って拡大したい企業です。
加盟店の資金や人材を活用できるため、直営よりも少ない資本で店舗網を拡大できます。
ただし、FCでは店舗を運営するのが別の経営者になります。そのため、直営のように本部の指示だけですべてを動かすことはできません。接客やサービス品質に差が出たり、加盟店との考え方の違いからトラブルになることが多々あります。
多店舗展開に失敗しやすい店舗とは?
これまでさまざまな店舗を見てきましたが、失敗しやすい店舗には共通点があります。
それは、「店長が優秀だから成り立っている」「社長が現場に入るから成り立っている」などの店舗です。例えば、店長が変わった途端に売上が落ちる、ベテランスタッフが退職すると店舗運営が回らない、教育方法が人によって違う、といった状態です。
社長、SV、店長それぞれ言っていることが違うことはよく見られるケースで現場のスタッフは混乱します。このような店舗をそのまま増やしてしまうと、店舗数が増えるほど問題も増えてしまいます。
「1店舗目が成功したからFC展開ができる」と考えるのも、経営者が陥りやすい判断ミスの一つです。
1店舗が成功した理由が、立地なのか、商品力なのか、店長の能力なのか、社長自身の営業力なのかを分析しないままFC化すると、加盟店では同じ結果が出ない可能性があります。
最低でも3店舗は直営で検証したいところです。
「標準化できている」とはどういう状態か?
よく店舗運営で標準化という言葉がでますが、私は、「誰が運営しても一定の水準まで再現できる状態」が一つの判断基準だと考えています。
具体的には、以下の項目があげられます。
標準化の判断基準
- 採用した人材を一定の基準で教育できる
- 接客や店舗オペレーションがマニュアル化されている
- 店長が変わっても大きく売上が落ちない
- 売上、利益、人件費などの数値を毎月管理している
- 店舗の問題を本部が数字で把握できる
- SVが店舗を臨店して、具体的な改善指示を出せる
つまり、「良い店を作る能力」ではなく、「良い店を繰り返し作れる仕組み」ができていることが重要です。
直営かFCかは「店舗数」ではなく経営戦略で決める
FC本部として成功している会社を見ると、必ずしも加盟店数が多い会社とは限りません。むしろ、加盟者数は少なくても、1人のオーナーが2店舗、3店舗と複数店舗を経営している本部には注目すべきです。
「このビジネスなら、もう1店舗出したい」と加盟店オーナーに思ってもらえているからです。
直営には直営の強みがあり、FCにはFCの強みがあります。大切なのは、「店舗を増やすこと」から考えるのではなく、「自社は何を強みに、どのような会社を作りたいのか」から逆算することです。
そして、その前提となるのが標準化です。
直営であってもFCであっても、まずは「良い店舗を作る」のではなく、「良い店舗を繰り返し作れる仕組み」を構築すること。
それが、多店舗展開を成功させるための最も重要なポイントではないでしょうか。

