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2026/09/10

値上げしたのに利益が残らないのはなぜ?飲食店の原価率が想定とずれる原因と毎週見る仕組みを解説

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飲食店の原価率がすれる原因

「去年から二度、値上げをしました。それなのに、月末に出てくる数字がほとんど変わらないんです」
こういう相談を、ここ一年で何度も受けています。値上げは軽い決断ではありません。常連さんの顔が浮かびますし、メニュー表も券売機も作り直しになります。それだけのことをやって手応えがない、というのは相当こたえます。

私は株式会社Core Drivenの代表として会社を経営し、自分でも物販を併設したカフェを経営しています。同時に飲食コンサルティング会社の執行役員として、サポート先の数字を毎週見ています。値上げの前後で店の数字がどう動くかを、毎週見続けている立場です。

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これまでの“検索する時代”から“AIに相談する時代”へ変化が訪れています。チェックリストで店舗のAI対策具合をチェックしながら、足りない部分の対策方法もご紹介しています。
目次

しても利益が増えるとは限らない

日本政策金融公庫が2025年9月中旬に行った調査で、販売価格を引き上げた飲食業830社の利益の動向が示されています。

値上げした飲食業の動向 図1 値上げを実施した飲食業の利益の動向
出典:日本政策金融公庫「価格動向に関するアンケート調査結果」図表16

その後の利益が「増加した」と答えたのは12.8%。「変わらない」が51.7%、そして「減少した」が35.5%でした。

値上げをして利益が増えた店より、減った店のほうが多いのです。

この調査だけで、利益が残らない原因までは分かりません。仕入れ価格や人件費の上昇、客数の変化も影響するからです。一方、私がサポート先で繰り返し見てきたのは、値上げ後に店の中で起きた変化に、売り方や費用の使い方の調整が追いついていないケースです。価格は上がっていても、その分だけ利益が増えるとは限らないのです。

では、値上げをした店の中で何が起きているのでしょうか。
値上げの後、店の中では四つの要素が動きます。

値上げ後に動く四つのもの 図2 値上げ後に動く四つの要素

値上げ後に動く四つの要素

  • 値段:上げた商品と、据え置いた商品
  • 注文の数:一会計あたりの点数
  • 何が売れたか:売れ筋の顔ぶれと、売り方ごとの比率
  • 値上げの効果を守るためにかけた費用:販促、広告、増量、シフト

この四つの要素は別々に動くとは限りません。価格を上げた商品から据え置きの商品へ注文が移り、注文を守ろうとしてサービスや広告を増やすこともあります。価格だけを見ていると、こうした変化が重なって利益を押し下げていることに気づけません。

客数が変わらなくても注文の中身は変わる

値上げをしても、必ず客足が落ちるとは限りません。飲食店ドットコムを運営するシンクロ・フードは、2023年3月の調査で、既存メニューを値上げした店舗に客足の変化を尋ねています。

値上げをしても客足は変わらない 図3 既存メニューを値上げした店舗の客足の変化
出典:出典:飲食店ドットコム(株式会社シンクロ・フード)調べ/調査期間:2023年3月6日〜13日

調査全体では374店が回答し、既存メニューを値上げした店舗の回答では「変化はない」が72.8%、「減った」が22.1%でした。思ったほどお客様が離れず、安心された方も多いと思います。

しかし、客足が変わらなくても、注文の中身が変わっていることがあります。ここが、客数だけを見ていると気づきにくいところです。

私は値上げをした店舗の商品分析を、AIを使って何件も細かく見てきました。そこで繰り返し起きているのが、「据え置きの商品に注文が移る」「一会計あたりの注文点数が減る」という二つの変化です。例えば居酒屋なら、値上げ後も支払いを同じ程度に収めるため、追加の一品を見送ることがあります。図4は二人客の注文を例に、具体的な価格を置いたものです。

居酒屋の注文例 図4 客数と客単価が同じでも注文点数が減る例

値上げした商品から、据え置きの商品へ注文が移ります。
看板メニューを上げると、その隣にある据え置きの商品に注文が寄る。支払い額を抑えようとする、お客様の自然な反応です。

一会計あたりの注文点数が減ります。
これまでメインと一緒に頼まれていた一品が落ちる。二人で一つをシェアするようになる。私が見てきた中では、全メニューを一斉に上げた店で、この動きが目立ちました。
私がサポートしている店舗では、値上げの翌週の出数にもう出ていました。
問題は、月末の平均値だけでは、この変化の内訳が分からないことです。理由は二つあります。

会計単価と全体の原価率に隠れる変化 図5 会計単価と全体の原価率に隠れる変化

一つ目は、単価の上昇と注文点数の減少が打ち消し合うからです。
図4では、二人で来店したお客様の注文が7点から6点に減っても、会計は4,200円、一人あたりの客単価は2,100円のままです。一会計あたりの売上を「会計単価」と呼ぶと、会計単価は「平均商品単価 × 一会計あたりの注文点数」で決まります。商品の値上げ分と、頼まなくなった一品の分が相殺されれば、客単価は変わりません。

二つ目は、全体の原価率が商品の売上構成比で変わるからです。
全体の原価率は、商品ごとの「売上に占める割合 × その商品の原価率」を合計したものです。原価率の高い商品に注文が寄れば、各商品の売価や食材原価が変わらなくても、全体の原価率は上がります。値上げで下がるはずだった原価率が、売れ筋の変化によって想定ほど下がらないことがあるのです。

売り方でも同じことが起きます。テイクアウトとデリバリーの比率が高いサポート先で、1週間分の販売実績とレシピ原価を突き合わせたことがあります。手数料を引く前の食材原価率で、店内32.2%、デリバリー25.5%、全体26.8%。売り方によって6.7ポイント違いました。同じ週、食材そのものの値上がりが原価に与えた影響は、売上のわずか0.17%です。

この週の分析では、仕入れ値の上昇よりも、どこで何が売れたかが原価率を大きく左右していました。ただし、食材原価率が低い売り方ほど利益が残るとは限りません。デリバリー手数料や包材費、広告費は別に確認します。

月末の原価率を見れば、上がったことは分かります。分からないのは、値段・注文の数・何が売れたかのどれが動いた結果なのか、という理由のほうです。平均値には、理由が残りません。

商品の役割と値上げ後の売れ方を先に見込む

全部の商品を一律に上げれば、原価率も計算どおりに下がる。そう考えると、注文点数の変化を見落とします。私が見てきた店では、全メニューを一斉に上げた後に、ドリンクのおかわりやサイドメニューが減ることがありました。

こうした一品は、もともと原価率が低いことも多い。そこから先に注文が落ちれば、残った注文は原価率の高い商品に寄り、全体の原価率も想定ほど下がりません。

値上げの設計とは、上げる商品と幅を決めることだけではありません。上げた後に売れ方がどう変わり、その結果として利益率がどこに落ち着くかまで先に見込んでおくことです。そのために私が勧めているのは、商品を「集客」「利益」「看板」の三つの役割で捉えることです。

商品の3つの役割 図6 商品の三つの役割

商品の三つの役割

  • 集客のための商品:原価率が高くてもいい。お客様に来ていただくための商品と割り切る
  • 利益を確保する商品:原価率を抑え、店の粗利をここで作る
  • 店の看板になる商品:原価が高くても外さない。むしろ店の武器として残す

この三つの役割は重なっていて構いません。看板商品が集客も担う店は多いですし、看板で利益を確保できる店もあります。原価率の高い商品と低い商品を組み合わせ、店全体で目標に届けばよいのです。値上げの候補は、原価率だけで決めず、注文数の多さ、粗利額への貢献、お客様の納得感を合わせて考えます。

ただし、ここで一つ落とし穴があります。

役割を決めて値上げをした店でも、「これまでどおり売れれば利益率は大丈夫」と考えたままでは、計算がずれることがあります。値上げ後に、値上げ前と同じ売れ方が続くとは限らないからです。

架空の例で書きます。以下はすべて税抜きで、価格以外の条件をそろえた試算です。看板商品(原価400円)が30食、その他の商品(原価300円)が70食売れている店で、看板は据え置き、その他だけを10%上げたとします。

原価率と粗利益の比較 図7 売れ方による原価率の差と粗利額の変化

項目 値上げ前 想定
(売れ方が同じなら)
別の想定
(看板に注文が寄る)
看板商品 1,000円 30食 30食 40食
その他 1,000円→1,100円 70食 70食 60食
売上 100,000円 107,000円 106,000円
原価 33,000円 33,000円 34,000円
粗利額 67,000円 74,000円 72,000円
原価率 33.0% 30.8% 32.1%

売れ方が変わらなければ、原価率は30.8%まで下がる計算です。ところが、据え置きの看板商品に注文が寄ると32.1%になります。値上げ前の33.0%よりは改善していますが、想定より1.3ポイント高い。粗利額も67,000円から72,000円に増えているので、この例は値上げの失敗を示すものではありません。売れ方によって、得られる改善幅が変わることを示しています。

だから設計の段階で、「注文が看板に寄ったら原価率と粗利額はどうなるか」まで試算しておきます。試算しておけば、翌週の出数を見た時点で、想定内か想定外かを判断できます。

値段の取り残しも起きます。同じ商品が、店頭だけ据え置きでデリバリーだけ上がっていた店もありました。売り方ごとに価格を変える設計自体はあり得ますが、それが意図した差なのか、改定漏れなのかを確かめておきます。

利益が伸びた実例もあります。実際に私が支援した店舗では、客単価を引き上げた後、売上だけでなく利益も伸びました。ネット予約は前年の3倍を超え、口コミサイトの閲覧数は2.7倍、売上は前年比で2割近く増えています。値上げと同時期に、お客様からの関心も高まった事例です。値上げだけの効果としては切り分けられませんが、商品や見せ方、集客の工夫を含めて、利益を伸ばせたケースです。

値上げは怖いものではありません。怖いのは、上げたあとに何が起きたかを確かめないことです。答え合わせは、値上げの後にしかできません。

売上を守ろうとする現場の判断で、費用が増える

値上げをした後、店長はお客様を逃がさないために動きます。店長にとって最重要KPIになりやすいのは売上です。売上目標を守ろうとするほど、価格を変えた後も満足してもらえるように、接客やサービス、販促で調整しようとします。

一つ一つは必要な判断でも、その調整が費用にどう表れているかは共有されないまま進むことがあります。すると、売上は維持できているのに、値上げで増えたはずの利益が残りません。

私がサポートしている店舗でも、売上を守るために「シフトを厚くする」「サービスを増やす」「広告を増やす」という三つの動きが見られました。

売上を守るためにかかる費用 図8 売上を守るための調整で増える費用

例えば、値上げ後に接客の質を落としたくないから、シフトを厚くする。割高だと思われたくないから、量を増やしたり、お通しを少し良くしたりする。客足を落としたくないから、広告を追加する。店長は、経営者に代わって良かれと思って動いています。

ところが、売上が最も強く求められる指標になっていると、追加した人件費や食材費、広告費は後回しになりがちです。売上を維持するための調整を重ねるほど、別のところでコストが上がる。現場の工夫が、結果として値上げの効果を吸収してしまうのです。

特に、店舗で動かせる広告費は、使った金額が経営者に見えにくいことがあります。
Uber Eatsの公式ブログは、2023年の説明で、週の売上の2〜6%をマーケティング予算の目安として紹介しています。また、リスティング広告費は毎週の支払額から差し引かれ、別途請求はないとしています。入金額だけを見ていると、売上を守るために広告費をどれだけ使ったのかが埋もれます。

私がサポートしている店舗では、デリバリーの広告出稿が15日間止まっていたことに、誰も気づいていませんでした。使った金額だけでなく、そもそも何の施策が動いているかも、現場と経営者の間で共有されていなかったのです。

参考:Uber Eats 公式ブログ「Uber Eats リスティング広告入門」2023年3月

店長の判断が間違っているとは限りません。お客様の満足度や、長い目で見た売上を守るために必要なこともあります。問題は、現場が売上を守るために行った調整と、会社に残る利益がつながらないままになっていることです。売上目標は達成していても、費用が積み上がって利益が減っていた。実際にそうなった店を見ています。

なぜ気づけないのか。「売上だけで順調だと捉えてしまうこと」と「費用がまとまって見えるまでに時間がかかること」が重なっているからです。

売上と費用で状況が見えるタイミングが違う 図9 売上と費用が見えるタイミングのずれ

まず、売上だけを見ると、費用の増加を見落としやすいからです。
シフトを厚くしたり広告を出したりして売上が維持できていると、そのためにいくら使ったかまで確認せず、うまくいっているように見えてしまいます。

一方、費用を集計するタイミングは遅れがちです。
人件費や外注費は締めや請求の確認を経て確定し、入金から差し引かれる広告費は精算明細を見なければ内訳が分かりません。売上は毎日見えていても、その裏で増えた費用は別の帳票に散らばっています。

そのため、売上が維持できている間は「うまくいっている」と受け止められがちです。費用がまとまって見える月次の締めになって、初めて利益が残っていないと分かります。そのころには、同じシフトやサービス、広告を翌月も続けているかもしれません。

値上げ後に何を増やしたのかが共有されず、費用の把握も遅れる。この二つが重なると、売上を守るための調整で利益を減らしていても、気づくまでに時間がかかります。

四つの要素の変化を毎週同じ表で見る

月次の締めが翌月10日から15日になる店では、数字が確定するころには次の仕入れ価格が動いていることもあります。だから私は週で見ることにしました。支援先では日次の商品別数値はぶれが大きく、月次では対応が遅れる。週次が、変化を捉えて調整するための現実的な単位でした。

大事なのは、週次で見る四つの要素を、仕入れの計上を待たない数字だけで組むことです。値段は売価表から。注文の数はレジの出数と伝票数から。何が売れたかは、出数にレシピから計算した食材費を掛けて。守るためにかけた費用は、デリバリーの管理画面の広告レポート、シフト表、販促の実施記録から取ります。人件費や広告費は、週次では見込み額を置き、月次の確定額と照合します。

なぜ仕入れの計上を待たないのか。入力の遅れだけで、数字が大きく変わることがあるからです。

未計上分があると費用は低く見える 図10 未計上の仕入れによる比率のずれ

私がサポートしている居酒屋では、月の半ばに入力済みの仕入額を使って食材費の比率を計算すると21.4%でした。ところが、仕入れの計上が追いつくと28.9%になりました。納品書や請求書の入力が営業の後に回り、数日遅れるためです。未計上分が残った数字では、本当に費用を抑えられているのか判断できません。

そこで週次では、販売数に最新のレシピ原価を掛けた「理論原価」を使います。これは売れ方の変化を捉える数字です。実際に使った食材費とは区別し、月次では期首在庫・仕入れ・期末在庫から求めた使用額とも照合します。廃棄や盛り付け量のずれは、理論原価だけでは見えません。

比べる相手も決めておきます。私は値上げ前4週の平均を基本にしています。前年とは商品構成が違う場合もあり、直近の状態を基準にしたほうが変化を捉えやすいからです。ただし、営業日数、曜日構成、天候、宴会の有無は合わせて確認します。季節性が強い店では前年の数字も補助的に見ます。

出数上位10品の顔ぶれが一週入れ替わっただけでは、すぐに価格を変えません。二週続いたら詳しく見る、という目安を置いています。ただし、急な出数の落ち込みや価格設定のミスは、その週に確認します。順位だけでなく、出数そのものと売上構成比も見ます。

値上げの後に毎週同じ表に並べて見るべき四つの要素は、下記の通りです。(値段/注文の数/何が売れたか/守るためにかけた費用。それぞれ2項目ずつ、全部で8項目です)

4つの変化を管理表にまとめる 図11 四つの変化を毎週の管理表に集める

値段

  • 値上げした商品と据え置いた商品が、売り方(店内・テイクアウト・デリバリー)ごとに一覧で分かります。取り残しは、据え置いた看板や片方の売り方など、自分では気づけない場所で起こります
  • ここに項目テキストを入力

注文の数

  • 客数と、会計ごとの注文点数が別々に取ります。会計単価は「平均商品単価×一会計の点数」で、値上げの後は点数のほうが先に動きます。
  • 値上げした商品の出数を、値上げ前4週の平均と並べて確認します。注文点数の減りは月の平均ではなく、翌週の出数に出ます。

何が売れたか

  • 出数の上位10品の顔ぶれが、週ごとにどう入れ替わったか分かります。お客様が据え置きの商品に寄ったかどうかは、上位の入れ替わりの最初に出ます。
  • 売り方ごとの原価率を、レシピから計算した食材費で出した後、商品ごとの「売上の割合×原価率」から全体を組み直せます。全体の原価率はこの掛け算の合計で、各商品の条件が同じでも、売上構成比で動きます。

値上げの効果を守るためにかけた費用

  • 値上げの後に増やした販促・広告・増量・シフトが、売上から差し引かれるものも含めて金額で分かります。入金から控除される費用や、月次でまとめる費用は、週の管理表から漏れやすいです。
  • 追加した人件費や広告費を、粗利の増加額と同じ表に並べましょう。増量分の食材費をすでに粗利に反映した場合は、再度引きません。期間や営業日数、税込・税抜の基準をそろえ、季節性や客数の変化も踏まえて、利益が残っているかを判断する目安にします。

この8項目は、いずれもレジの商品別売上明細と伝票別明細、売り方別の売価表、レシピ表、デリバリー管理画面の広告レポート、シフト表、販促の実施記録から取れます。

ただし、8項目の出どころは、それぞれ別のシステムに分かれています。正直、毎週これだけの場所から数字を取り出して同じ表に並べるのは、月次の締めより重い作業です。ここで止まる店がほとんどです。

集計と文章化を仕組みにして判断は人が担う

この突き合わせを手作業で続けるのは、個人店にとって重い仕事です。レジ、デリバリーの管理画面、シフト表、販促の記録。それぞれにログインし、期間を指定してCSVを取り出し、商品名の表記をそろえて先週と並べる。私自身、コンサルタントとして何年もこれを手でやってきました。一店舗分で半日かかることもあり、毎週続けるためには作業の仕組み化が必要でした。

いまは、データの取得・定型集計を自動化し、照合や文章化にAIを組み合わせることで、私の支援先ではこの手間を大きく減らしています。サポート先ごとに仕組みを自分で組み、何を店長に知らせ、何を知らせないかを決めるまでに、何度か作り直しました。

AIを使った自動集計修二運用 図12 自動集計とAIを使った週次運用

飲食業界には、データをまとめて店長や経営者に文章で届ける取り組みが広がっています。丸亀製麺は2025年10月、従業員と顧客のスコアなどから改善策を生成するAI機能を発表し、同年12月から全店舗で運用する計画を公表しました。

また、PwC Japanが支援したリディッシュの実証実験では、POS・気象・SNS・財務などのデータを集約し、飲食店経営者約500名を対象に、AIで分析・要約する日報などを検証しています。こちらは2023年の実証と試験配信について、2024年2月に公表されたものです。

どちらも、この記事で紹介する原価・販促費の週次管理そのものではありません。ただ、分かれていたデータを整理し、現場が読める形で届けるという点は共通しています。

出典:トリドールHD 2025年10月15日発表
出典:PwC Japan 2024年2月29日発表

ただし、AIに渡す前に数字が整っている必要があります。
ここが実際にはいちばん難しい。

包材の費用が食材の原価に積まれていて、売り方ごとの原価率が実態とずれていた店がありました。飲み放題のドリンクが売上0円で登録されていて、何が売れたかの記録から消えていた店もありました。原価管理のシステムは入っているのに、棚卸のための設定が終わっておらず、実際に使った食材費がそもそも出せない店もあります。

こうした例では、製品の性能を論じる前に、設定と運用を確かめる必要があります。区分や記録がずれたままAIに渡しても、そのずれを含んだ分析が返ってくるからです。

AIを業務で使うために、手前で次の三つを整えておきます。

AIを使う前に整える3つの条件 図13 AIを業務で使うための三つの条件

1明細を取り出せる

レジ・デリバリーの管理画面・仕入れの数字が、商品別・売り方別の明細のまま表計算に落とせるかを確認。

2知らせる基準を決める

値段・注文の数・何が売れたか・守るためにかけた費用。この四つのうち、どれが先週からどれだけ動いたら店長に知らせるかを、あらかじめ決めておく。

3決まった形で届く

その知らせが、店長や経営者が管理画面を見に行かなくても、毎週決まった形で届くようにする。

また、ただAIに数字を渡せばよいわけではありません。商品コード、売り方、対象期間、税区分、食材原価の定義をそろえ、店舗で追う指標と通知の基準を先に決めておきます。合計や原価率などの定型計算は表計算やプログラムで行い、AIには整理したデータと指標の定義を渡します。

ここで必要なのは、毎回の指示で元データの意味を推測させないことです。定義や照合ルールを設定として保存すれば、指示の繰り返しや処理量を抑えられます。AIが候補を挙げた商品名の対応や異常値は、人が確認する仕組みも残しておきます。

私がサポートしている店舗では、AIがやるのは、商品名を突き合わせることと、先週から動いた項目を文章にすることの二つだけです。月曜の朝、動いた項目だけが三、四行で店長に届きます。全部の数字を渡すと、誰も見なくなります。

そして、AIが出すのは「先週から何が動いたか」までです。値上げした商品の出数が落ちたとき、値段を戻すのか、セットにして守るのか、もう一週様子を見るのか。それを決めるのは店長と経営者です。AIは判断の材料を毎週同じ形で届ける役で、判断そのものは人が握ります。ここを逆にすると、現場はAIの出した文章をそのまま実行するだけになり、値上げの調整が誰の判断でもなくなります。

AIがなくても、レジの商品別明細を先週と値上げ前4週の平均に並べるところから、手で始められます。この仕組みを作れるかどうかは、レジやオーダーの仕組みが売り方ごとに数字を分けて残し、明細のまま外に出せるかで決まります。入れ替えを検討されるなら、機能の多さより先にそこを見てください。

人が毎週繰り返すと重い集計や照合作業を仕組みに任せれば、店長と経営者は、起きた変化を確かめて手を打つことに時間を使えます。

まずは、値段・注文の数・何が売れたか・守るためにかけた費用の四つを、毎週同じ表に並べてみてください。売上が維持できていても、注文点数や商品構成が変わっていないか。粗利が増えていても、その分を追加費用が上回っていないか。値上げ後の答え合わせを続けることで、次に何を調整するべきかが見えてきます。

AIに選ばれる店舗になるためのWeb対策

AIに選ばれる店舗になるためのWeb対策

これまでの“検索する時代”から“AIに相談する時代”へ変化が訪れています。チェックリストで店舗のAI対策具合をチェックしながら、足りない部分の対策方法もご紹介しています。

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AIは何を見て「おすすめ店舗」を判断するのか AIに取り上げられやすくする5つのポイント まず取り組みたい「3つのWeb対策」

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