キッチンカーを開業する際に問題となりがちなのが、資金不足です。この資金不足を解決する方法の一つが融資です。融資を利用するには、基本的な仕組みや手続きの知識が必要になります
このコラムでは、キッチンカー開業で融資を受ける際に必要な基礎知識を解説します。
キッチンカー開業で融資は受けられる?
キッチンカーは開業前でも融資を申し込むことができ、車両・厨房設備などの設備資金や、仕入れ・出店料などの運転資金の調達に活用できます。
とくに創業時の選択肢となるのが、日本政策金融公庫の創業融資です。「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象としており、設備資金・運転資金に利用できます。
ただし、申し込めば必ず融資を受けられるわけではありません。融資審査では事業計画などが確認されるため、キッチンカーの購入・製作費、厨房設備費、仕入れ費用など必要な資金を整理し、売上・利益や返済を見込んだ事業計画を準備することが大切です。
キッチンカー開業で利用できる主な融資
キッチンカー開業時の主な融資先には、日本政策金融公庫のほか、自治体の制度融資、地方銀行、信用金庫などがあります。創業前・創業直後で実績が少ない場合は、まず日本政策金融公庫や自治体の創業者向け制度融資を確認するとよいでしょう。
| 融資先・制度 | 特徴 | キッチンカー開業での活用例 | 確認したいポイント |
|---|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 | 創業者向けの融資制度があり、創業前から申し込み可能 | キッチンカー購入・製作費、厨房設備費、仕入れなど | 事業計画や申込条件、適用される利率などを確認する |
| 自治体の制度融資 | 自治体・金融機関・信用保証協会などが連携して提供する融資制度 | 車両・設備の購入や開業後の運転資金など | 対象者、融資限度額、金利、保証料などが自治体によって異なる |
| 地方銀行 | 地域の事業者向けに創業融資などを取り扱っている場合がある | 設備資金や運転資金など | 創業者向け商品の有無や融資条件を金融機関ごとに確認する |
| 信用金庫 | 営業地域が定められており、地域の中小企業や個人事業主を主な対象としている | キッチンカーの設備資金や開業後の運転資金など | 営業地域や会員資格、融資条件などを確認する |
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、融資限度額が7,200万円で、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内です。ただし、実際の融資額や適用条件は審査などによって異なります。
また、自治体の制度融資は地域によって制度内容が異なります。キッチンカーを開業する地域が決まったら、自治体の創業支援制度も確認し、日本政策金融公庫などと比較しながら資金調達方法を検討しましょう。
キッチンカー開業なら日本政策金融公庫の創業融資を確認

キッチンカーの開業資金を融資で調達する場合は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」が選択肢のひとつです。新たに事業を始める方だけでなく、事業開始後おおむね7年以内の方も対象となり、車両などの設備資金と仕入れなどの運転資金に利用できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 資金の用途 | 事業開始時・事業開始後に必要となる設備資金・運転資金 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 設備資金の返済期間 | 20年以内(据置期間5年以内) |
| 運転資金の返済期間 | 原則10年以内(据置期間5年以内) |
| 担保・保証人 | 創業期の方は原則として無担保・無保証人で利用可能 |
新規開業・スタートアップ支援資金とは
新規開業・スタートアップ支援資金は、これから事業を始める方や、事業開始後おおむね7年以内の方を対象とした日本政策金融公庫の融資制度です。
キッチンカーをこれから開業する場合も対象となり得るため、車両購入や厨房設備などに必要な自己資金が不足している場合の資金調達方法として検討できます。
ただし、融資を受けるには審査があります。創業計画書などをもとに事業計画の内容が確認されるため、必要な開業資金だけでなく、売上や経費、返済まで見据えた計画を立てておきましょう。
設備資金・運転資金に利用できる
新規開業・スタートアップ支援資金は、キッチンカー開業に必要な設備資金と運転資金の両方に利用できます。
設備資金には、事業で使用する車両や機械などの購入費が含まれます。そのため、キッチンカーの車両購入・製作費や厨房設備なども、事業に必要なものであれば融資対象として相談できます。
一方の運転資金は、商品の仕入れや諸経費の支払いなど、事業を継続するために必要となる資金です。キッチンカーの場合は、食材・容器などの仕入れ費用をはじめ、開業後の運営に必要な費用を見込んで資金計画を立てる必要があります。
融資限度額・返済期間
新規開業・スタートアップ支援資金の融資限度額は7,200万円で、設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内で返済します。
また、設備資金・運転資金ともに据置期間は5年以内です。据置期間とは、原則として元金の返済をせず、利息のみを支払う期間を指します。
ただし、7,200万円まで必ず借りられるわけではありません。実際の融資額は、必要な資金額や事業計画、審査結果などによって決まります。キッチンカーの購入・製作費や設備費などを見積もり、必要な金額を明確にしたうえで申し込みましょう。
担保・保証人
これから創業する方や事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人で日本政策金融公庫の創業融資を利用できます。
創業時は担保として提供できる資産や事業実績が十分にないケースもあるため、無担保・無保証人で申し込める点は創業者にとって利用しやすいポイントです。
ただし、利用する融資制度や申込者の状況などによって条件が異なる場合があります。実際に申し込む際は、日本政策金融公庫に最新の条件を確認してください。
申込条件
新規開業・スタートアップ支援資金の基本的な対象者は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方です。
また、適正な事業計画を策定し、その計画を遂行する能力が十分にあると認められる必要があります。日本政策金融公庫では、創業計画書の提出などを通じて事業計画の内容を確認しています。
キッチンカーの場合は、販売するメニューや出店方法、必要な開業資金、売上・経費の見込みなどを整理し、事業として継続できる根拠を示せるように準備しておきましょう。
なお、飲食物を販売するキッチンカーは営業許可が必要です。創業前などでまだ許認可を取得していない場合でも、今後取得することが確実であれば融資を利用できる場合があるため、日本政策金融公庫へ相談して確認しましょう。
キッチンカーの開業資金はいくら必要?自己資金の目安も解説

キッチンカーの開業資金は、車両や設備の選び方によって大きく異なりますが、300万~500万円程度がひとつの目安です。車両の購入・製作費だけでなく、厨房設備や調理器具、営業許可、販促費、開業後の運転資金まで含めて準備する必要があります。
一方で、開業資金の全額を自己資金で用意する必要はありません。自己資金で不足する部分については、日本政策金融公庫などの融資を利用して調達する方法があります。
| 費用項目 | 費用の目安 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 車両購入・製作費 | 150万~400万円程度 | 車両購入、キッチン部分の架装・改造など |
| 厨房設備費 | 20万~80万円程度 | 冷蔵庫、シンク、給排水設備、調理機器など |
| 調理器具・備品費 | 5万~20万円程度 | 鍋、フライパン、包丁、容器、消耗品など |
| 許可・手続き関連費 | 2万~5万円程度 | 営業許可や食品衛生責任者の講習など |
| 販促・開業準備費 | 10万~50万円程度 | 看板、のぼり、チラシ、メニュー制作など |
| 運転資金 | 30万~100万円程度 | 食材仕入れ、出店料、燃料費、駐車場代など |
上記はあくまで目安であり、各項目を単純に合計した金額が必ず開業資金になるわけではありません。車両価格にシンクや給排水設備などの製作費が含まれているケースもあります。実際に必要な金額は、車両や販売メニュー、設備構成などを決めたうえで見積もりましょう。
参考記事:キッチンカー開業に必要な資金はいくら?自己資金の目安・費用内訳・資金調達方法を解説
キッチンカーの自己資金はいくら用意すればよい?
日本政策金融公庫の創業融資には、現在「開業資金の○割以上」といった一律の自己資金要件はありません。そのため、以前の制度をもとに「最低でも開業資金の10分の1が必要」と考える必要はありません。
ただし、自己資金をまったく準備しなくても問題ないという意味ではありません。日本政策金融公庫の創業計画Q&Aでは、創業資金の調達総額に占める自己資金の割合について、調査データでは24%と紹介されています。
たとえば開業資金が400万円の場合、24%は約96万円です。これは融資を受けるために必要な最低額ではありませんが、自己資金と借入金のバランスを検討する際の参考になります。
自己資金だけでなく開業後の運転資金も確保する
融資を検討する際は、キッチンカーを購入するためのお金だけでなく、開業後の運転資金まで含めて資金計画を立てることが大切です。
キッチンカーを購入した時点で手元の資金を使い切ってしまうと、売上が安定するまでの食材仕入れや出店料、燃料費、駐車場代などを支払えなくなる可能性があります。
日本政策金融公庫も創業計画書のセルフチェックで、事業開始後の運転資金や赤字を補てんする資金について検討するよう案内しています。車両・設備などの初期費用と開業後に必要な資金を分けて計算し、余裕を持った資金計画を立てましょう。
必要な開業資金から融資希望額を算出する
融資希望額は先に決めるのではなく、「必要な開業資金-自己資金」を基本に考えます。
たとえば、キッチンカーの開業に400万円必要で、自己資金として100万円を用意できる場合、残りの300万円をどのように調達するか検討します。融資だけでなく、自己資金やその他の資金調達方法を含めて計画を立てることがポイントです。
融資を申し込む際には、車両や厨房設備の見積書などを用意し、「なぜこの金額が必要なのか」を説明できるようにしておきましょう。日本政策金融公庫の創業計画書でも、設備資金・運転資金と、それを自己資金や借入金などでどのように調達するのかを記載する形式になっています。
キッチンカー開業の融資を受けるための流れ

STEP1資金計画を立てる
まずは、キッチンカーの車両購入・製作費や厨房設備費、仕入れ費用、開業後の運転資金などを洗い出し、必要な開業資金を算出します。見積書などを取得し、できるだけ具体的な金額で資金計画を立てましょう。
STEP2資金調達方法・融資先を検討する
必要な開業資金と自己資金をもとに、不足する金額をどのように調達するか検討します。融資を利用する場合は、日本政策金融公庫や自治体の制度融資、地方銀行、信用金庫などから候補を選び、融資条件や返済期間などを比較しましょう。
STEP3必要書類を準備する
利用する融資制度が決まったら、申込条件を確認して必要書類を準備します。日本政策金融公庫で創業融資を申し込む場合は、創業計画書のほか、設備資金を申し込む場合には見積書などが必要です。必要書類は申込内容によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
STEP4融資を申し込む
必要書類がそろったら融資を申し込みます。日本政策金融公庫ではインターネットからの申込みにも対応しています。開業予定時期や自己資金、事業経験、必要な資金などを整理したうえで手続きを進めましょう。
STEP5面談を受ける
申込後は、必要に応じて担当者との面談が行われます。創業の目的や事業経験、販売するメニュー、出店方法、売上・経費の見込みなどについて説明できるよう準備しておきましょう。
STEP6審査・融資実行
提出書類や面談などをもとに審査が行われます。融資が決定した場合は契約手続きを行い、指定した口座への入金を経て融資が実行されます。審査や手続きにかかる期間は申込内容などによって異なるため、開業予定日から逆算して余裕を持って申し込みましょう。
キッチンカー開業の融資審査で確認されるポイント
キッチンカー開業の融資審査では、自己資金の金額だけでなく、創業の動機やこれまでの経験、必要な資金、売上・収支の見通しなどを含めて事業計画全体が確認されます。日本政策金融公庫も、創業計画書で創業動機、経営者の略歴、資金計画、事業の見通しなどを確認する形式としています。
融資審査に向けて確認したいポイント
- キッチンカーを開業する目的や事業内容が明確になっているか
- 飲食業や販売するメニューに関連する経験・スキルがあるか
- 必要な開業資金と資金の使い道を具体的に説明できるか
- 自己資金と借入金のバランスに無理がないか
- 売上予測に客単価・客数・営業日数などの根拠があるか
- 借入金を無理なく返済できる収支計画になっているか
とくに重要なのは、希望する融資額だけを示すのではなく、「なぜその金額が必要なのか」「どのように売上を確保して返済するのか」を具体的な数字で説明できるようにすることです。
キッチンカーの場合は、車両や厨房設備の見積額に加え、販売メニュー、客単価、想定客数、出店日数、原価、出店料などを整理すると、売上・収支計画の根拠を示しやすくなります。日本政策金融公庫の創業計画書セルフチェックでも、見積金額の妥当性や運転資金、売上・原価・経費の計算根拠、利益から借入金を返済できるかなどが確認項目として示されています。
キッチンカー開業の融資に関するよくある質問
キッチンカー開業時の融資について、申込時期や営業許可、融資実行までの期間など、よくある疑問を解説します。
キッチンカーを購入する前でも融資を申し込めますか?
キッチンカーを購入する前でも、創業に必要な車両の購入費などを設備資金として融資の相談・申込みができます。
日本政策金融公庫では、車両の購入など事業に必要な設備資金を融資対象としています。設備資金を申し込む場合は見積書の提出が必要になるため、先にキッチンカーを購入するのではなく、購入予定の車両や製作内容を決めて見積書を取得しておくとよいでしょう。
営業許可を取得する前でも融資を申し込めますか?
創業前でまだ営業許可を取得していない場合でも、今後許可を取得することが確実であれば融資を利用できる場合があります。
日本政策金融公庫では、許認可が必要な事業は原則として許認可が必要としていますが、創業前などの理由で未取得であり、今後取得することが確実な場合は利用できるケースがあるとしています。キッチンカーは飲食店営業などの許可が必要になるため、開業地域を管轄する保健所への確認も並行して進めましょう。
参考記事:キッチンカー開業に必要な資格・許可一覧!食品衛生責任者や調理師免許の必要性を解説
融資を申し込んでから入金までどのくらいかかりますか?
日本政策金融公庫では、融資を申し込んでから融資が決まるまでの平均所要日数を2~3週間程度と案内しています。
ただし、融資条件や支店の混雑状況などによって、さらに時間がかかる場合があります。また、融資決定後には契約などの手続きも必要です。キッチンカーの購入・製作や営業開始のスケジュールに影響しないよう、開業予定日から逆算して余裕を持って融資の準備を進めましょう。
自己資金なし・自己資金ゼロでもキッチンカー開業の融資は受けられますか?
自己資金なし・自己資金ゼロでも融資を申し込める場合はありますが、希望どおりの融資を受けられるとは限りません。
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では、現在「創業資金総額の10分の1以上」といった一律の自己資金要件は設けられていません。そのため、自己資金が少ないことだけを理由に、融資を申し込めないとは限りません。
ただし、融資では事業計画や資金計画などをもとに審査が行われます。自己資金ゼロでキッチンカーを開業する場合は、車両・設備費だけでなく、食材の仕入れや出店料など開業後の運転資金も借入れに頼ることになるため、資金繰りには注意が必要です。
自己資金が少ない場合ほど、必要な開業資金を具体的に算出し、売上の根拠や返済計画まで含めて無理のない事業計画を立てたうえで融資を相談しましょう。自己資金をきちんと確保できている方が、安定した事業計画を立てられていると判断され、融資が受けやすくなる可能性もあります。
キッチンカー開業において融資は心強い味方
融資はキッチンカーの開業資金を効率的に調達できる心強い味方です。審査があるため苦手意識を持ってしまう方もいるかもしれませんが、返済可能性が見込める計画であれば、相談に乗ってもらえるケースも多くあります。融資を受ける際は臆せず、自分のやりたい事業について、誠実な対応を心がけましょう。

