近年、小売店(特にセルフレジを導入しているスーパーやコンビニ)では、万引きによる不明ロスが深刻な問題となっており、万引きの被害額は推計値で3460億円にもなります。そして万引き被害認知件数は推定件数で3460万件となっていますが、認知されているのはわずか0.3%とされています。
店舗にとっては深刻な問題であり、その万引きの手口と対策を解説していきます。
セルフレジの仕組み
セルフレジとは、顧客自身が商品のスキャンや支払いを行う無人のレジシステムのことを指します。
従来の有人レジと異なり、店舗スタッフの介入を最小限に抑え、顧客が自らのペースで精算を完了させます。
基本的な仕組みとして、商品をバーコードリーダーでスキャンし、支払い方法を選択、現金やクレジットカードなどで決済を行います。
一部のシステムでは、AIカメラや重さ検知センサーを利用して商品登録ミスや万引きを防ぐ機能も備えています。
参考記事:セルフレジの仕組みとは?RFIDタグ方式やショッピングカート連動型など最新設備を紹介
万引きされやすい理由

セルフレジは、無人で監視が少ないため、有人レジに比べて万引きがされやすくなります。
顧客がシステムを悪用したり、不慣れな操作で商品のスキャン漏れが発生することも一因となります。
監視の不足
セルフレジは、有人レジと比べてスタッフの監視が行き届きにくい傾向があります。とくに複数台を少人数で管理している店舗では、従業員の目が届かない時間が発生しやすく、不正行為やスキャン漏れが見逃される原因になりやすいです。
システムの悪用
セルフレジでは、商品のバーコードを意図的に読み取らない、安価な商品のバーコードを貼り替えるなど、システムの仕組みを悪用した不正行為が発生するケースがあります。無人精算である点が、不正のハードルを下げる要因にもなっています。
不慣れな操作
セルフレジに慣れていない利用者の場合、操作ミスによるスキャン漏れが発生することがあります。故意ではなくても未精算状態となるケースがあり、店舗側としては通常ミスと万引き行為を判別しづらい点が課題です。
心理的プレッシャーの欠如
有人レジでは店員との対面対応があるため、不正行為への心理的抑止力が働きやすい傾向があります。一方、セルフレジは顧客自身で会計を進めるため、監視されている意識が薄れ、万引きのハードルが下がる場合があります。
店内レイアウトの問題
セルフレジの設置場所によっては、監視カメラやスタッフから見えにくい死角が発生することがあります。店舗の奥側や出入口付近など、人目につきにくいレイアウトでは、不正行為が起こりやすくなるため注意が必要です。
万引きの手口とはどんなものがあるのか
商品のバーコードをスキャンせずに袋に入れる、安価な商品のバーコードを高価な商品に貼り付ける、複数商品をまとめてスキャンするなど、セルフレジの穴をついた手口が万引きに利用されます。
バーコードスキャン漏れ
セルフレジの最も一般的な万引き手口の一つは、意図的なバーコードスキャン漏れです。顧客が商品のバーコードをスキャンせずに袋に入れることで、支払いを回避します。この手法は、特に小さな商品や同じ商品を複数購入する場合に多く見られます。商品のスキャンが必要ないように見せかけることで、未払いのまま商品を持ち出すことができます。
バーコードのすり替え
高価な商品に安価な商品のバーコードを貼り付けることで、安価な価格で精算する手口です。この方法は、顧客が商品を購入する際に、高価な商品のバーコードを意図的に安価な商品のバーコードに置き換えることで、支払い額を大幅に減少させることができます。
複数商品まとめスキャン
複数の商品を一度にスキャンすることで、スキャナが一部の商品を読み取らないようにする手口です。例えば、二つの商品を重ねて一度にスキャンすることで、片方の商品がスキャンされずに未払いのまま通過することがあります。この方法は、特に混雑時や忙しい時間帯に行われやすいです。
重量センサーの回避
セルフレジには重量センサーが設置されており、スキャンされた商品の重量と袋に入れられた商品の重量が一致するかを確認します。しかし、顧客はこのセンサーを欺くために、袋に入れる際に商品の重さを分散させたり、重量検知のタイミングをずらしたりすることがあります。例えば、重い商品を軽い商品と一緒に入れて重量を分散させることで、センサーの検知を回避することができます。
不正な返品
スキャンせずに持ち出した商品を、後日返品する際に購入したと偽り、現金やギフトカードと交換する手口です。この方法では、購入記録が存在しないため、店側が万引きを見抜くのが難しくなります。返品時にレシートを偽造することもあります。
これらの万引き手口は、セルフレジの監視が少ないことやシステムの隙を突いた行為が原因です。店舗は、これらの手口に対応するために、AI防犯カメラの導入やスタッフの定期巡回、顧客教育の強化など多角的な対策を講じる必要があります。
万引きが発生した場合の対応とは

店舗運営者は、万引きが発生した場合に備え、以下の知識をもっておくことが重要です。
万引き発生時に店舗が取るべき対応
万引きが発生した場合、店舗側は冷静かつ適切に対応することが重要です。万引きは刑法235条の窃盗罪に該当し、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
現行犯で発見した場合は、速やかに警察へ通報し、身柄を引き渡す対応が必要です。一方で、店舗スタッフによる過度な拘束や暴力行為はトラブルにつながる可能性があるため、必要最小限の対応に留めることが求められます。
防犯カメラ映像の取り扱いと再発防止
万引き対応では、防犯カメラ映像の管理も重要なポイントです。映像は証拠として有効ですが、プライバシー保護の観点から適切に管理し、警察提出時には正式な手続きを踏む必要があります。
また、万引き被害が継続して発生している場合は、店舗レイアウトや運用方法の見直し、防犯設備の強化も検討すべきです。スタッフ教育を実施し、万引き発生時の対応フローを共有しておくことで、店舗全体で適切な対応を取りやすくなります。
セルフレジの万引き対策で効果的な方法一覧
セルフレジの万引き対策では、単に監視を強化するだけでなく、「不正を検知する仕組み」と「万引きを起こしにくい運用」の両方を組み合わせることが重要です。
近年は、AI防犯カメラや重量センサー、POSデータ分析などを活用した対策を導入する店舗も増えており、万引きの抑止だけでなく、スキャン漏れやオペレーションミスの削減にもつながっています。
セルフレジの種類や店舗規模によって適した対策は異なるため、自店舗の運用に合った方法を選定することが大切です。
| 対策方法 | 主な効果 | 向いている店舗 | 確認したいポイント |
|---|---|---|---|
| AI防犯カメラ | 不審行動・スキャン漏れの検知 | スーパー・ドラッグストア・大型店舗 | AI検知精度、POS連携の有無 |
| 重量センサー | 未スキャン商品の持ち出し防止 | フルセルフレジ導入店舗 | 誤検知率、商品重量設定 |
| スタッフ巡回・専任配置 | 万引き抑止・顧客サポート | 高齢者利用が多い店舗 | 巡回頻度、有人サポート体制 |
| 防犯タグ・ゲート | 未精算商品の持ち出し防止 | 高額商品を扱う店舗 | 対応商品、設置コスト |
| セルフレジレイアウト改善 | 死角削減・監視強化 | 小売店・コンビニ | カメラ位置、スタッフ視認性 |
| POSデータ分析 | 不正発生時間帯・商品分析 | 多店舗展開企業 | 分析機能、アラート機能 |
▼Bizcan編集部のワンポイントチェック!
Bizcan編集部がセルフレジ関連サービスを調査する中で、実際の店舗では「万引き対策を1つだけ導入しているケース」よりも、「クラウドカメラ+スタッフ巡回」「重量センサー+防犯ゲート」など複数の対策を組み合わせているケースが多く見られます。
特にセルフレジ導入店舗では、故意の万引きだけでなく、操作ミスによるスキャン漏れも発生しやすいため、「不正防止」と「誤操作防止」の両面から対策を検討することが重要です。
参考記事:クラウドカメラの購入方法は?通常の防犯カメラとの違いや導入メリットも解説
セルフレジ導入時の万引き対策
セルフレジの万引き対策は、店舗の損失を防ぎ、安全で効率的な運営を維持するために不可欠です。具体的には、AI防犯カメラの導入やスタッフの定期巡回、重量センサーの利用、防犯タグの活用などが有効です。
また、セルフレジのレイアウト改善や顧客教育、ソフトウェアのアップデート、専任アシスタントの配置も重要です。これらの対策を組み合わせることで、万引き行為を抑止し、顧客と店舗の両方にとって安全な環境を提供できます。
ここではいくつかの対策方法を紹介します。
AI防犯カメラの導入
店内にAI防犯カメラを設置し、セルフレジエリアを監視します。AIが不自然な動きを検知すると警告を発する仕組みが有効です。
参考記事:セルフレジにAIカメラを導入しよう!画像認識型AIレジの仕組みとメリット・デメリット
スタッフの巡回
定期的にスタッフがセルフレジエリアを巡回し、万引き防止のための抑止力を強化します。顧客に対する声かけも効果的です。
バーコードスキャンの徹底
セルフレジのシステムに重量センサーを導入し、スキャンされた商品の重量と購入商品の重量が一致するか確認します。
防犯タグの活用
高価な商品には防犯タグを付け、未払いの状態で持ち出されるとアラームが鳴る仕組みを導入します。
セルフレジのレイアウト改善
セルフレジエリアの配置を工夫し、スタッフの目が届きやすい場所に設置します。また、監視カメラの死角を無くすように配置を調整します。
顧客教育と啓発
セルフレジの正しい使い方を案内するポスターや動画を設置し、顧客に対してシステムの利用方法を教育します。
ソフトウェアのアップデート
定期的にセルフレジのソフトウェアをアップデートし、システムの脆弱性を修正し、セキュリティを強化します。
セルフレジアシスタントの配置
セルフレジエリアに専任のアシスタントを配置し、顧客のサポートを行うことで、万引き行為を抑止します。
店舗内の標識と警告表示
店内に「防犯カメラ作動中」や「万引きは犯罪です」といった警告表示を設置し、万引きを思いとどまらせる環境を作ります。
データ分析と改善策の導入
セルフレジの利用データを分析し、万引きの発生しやすい時間帯や商品を特定し、それに応じた対策を導入します。
セルフレジの万引き対策としては、技術的対策、運用的対策、顧客教育など多角的なアプローチが必要です。これにより、セルフレジの安全性を高め、店舗運営の効率化を図ることができます。
参考記事:セルフレジの防犯対策方法まとめ!万引きを防ぐ導入のポイントとは
セルフレジの万引き対策は総合的に実施する
セルフレジの万引き対策は、店舗の安全と効率的な運営を維持するために不可欠です。
万引きGメンや定期的なスタッフの巡回、セルフレジエリアの配置改善以外にも、昨今AIの進歩によって技術的な対策も可能になってきました。
これらの対策を講じることで、不正行為の検知と抑止が可能となり、万引きリスクを低減できます。
万引き対策は総合的に実施することで、セルフレジの運用を安全かつ効果的に行えるでしょう。
万引き防止に向けた継続的な努力が、店舗の信頼性と将来的な経営の安定につながります。

