小売店や飲食店など、さまざまな店舗で会計・清算用端末として導入されているPOSレジは、近年幅広い進化を遂げています。
セルフレジや券売機(食券機)、キャッシュレス決済端末にPOS機能が搭載されているものもあり、店舗によって導入する機種は多種多様です。
今や当たり前の店舗設備となったPOSレジですが、具体的にどのような仕組みになっているのかご存知でしょうか。
本記事では、POSレジとはどのような設備なのか、POSレジの具体的な仕組みやPOSレジ導入のメリットについて詳しく解説します。
POSレジとは
POSレジとは、POSシステムが備わっているレジ設備のことを指します。そのため、一般的なキャッシュレジスターだけでなく、セルフレジや券売機などもPOSシステムが備わっていれば広義ではPOSレジの一種です。
また、POSレジは、機種やサービスによってさまざまな種類のものがあり、業種・業態に特化した機能が備わっているものもあります。
さらに、複数店舗の情報を一元管理できるものもあり、単なる決済・会計用の端末としてではなく、業務効率化や負担軽減につながる設備として、大小を問わずさまざまな店舗で導入されている傾向です。
参考記事:POSレジとは?POSシステムとの違いや機能と導入するメリット・デメリット
POSレジとPOSシステムの違い
POSレジとPOSシステムの違いは、システムが備わっている設備を指すか、システム全体を指すかという点にあります。POSシステムが備わっているレジのことを「POSレジ」と呼ぶため、POSレジはハードウェアの呼称です。
POSレジやPOSシステムの「POS」は、「Point of sales」の略称で、日本語では販売時点情報管理を意味します。POSシステムが備わったPOSレジのような設備を通じて会計を行うと、その情報が自動的にPOSシステム上で記録される仕組みです。
POSシステム上で収集した販売情報や顧客情報をもとに、傾向を分析して在庫管理を行ったり、マーケティング施策を実施したりします。
参考記事:POSレジ・POSシステムの違いとは?主な機能・メリットと導入方法まとめ
POSレジの種類
POSレジの種類は大きく分けて5つあります。また、一般的なレジ設備としてではないものの、POSシステムが備わっている設備があるのも特徴です。
名称 | 詳細 |
---|---|
ターミナル型POSレジ | ディスプレイ・キャッシュドロア・レシートプリンター・バーコードリーダーなど、必要な設備が一体になっているタイプのPOSレジ。 |
パソコン型POSレジ | クラウドPOSレジをパソコンにインストールして、パソコンをレジ設備として利用するタイプのPOSレジ。別途周辺機器の導入が必要。 |
自動釣銭機搭載型POSレジ | 自動釣銭機が搭載されているタイプのPOSレジ。ターミナル型POSレジやタブレット型POSレジなど、さまざまなタイプのPOSレジと併用できる。 セルフレジ・セミセルフレジとして導入したい場合にも最適。 |
タブレット型POSレジ | iPadやAndroidタブレットなどのタブレット端末に、クラウドPOSシステムやPOSアプリをダウンロードして使用するタイプのPOSレジ。 |
スマホPOSレジ・ モバイルPOSレジ |
スマートフォンにクラウドPOSシステムやPOSアプリをダウンロードして使用するタイプのPOSレジ。飲食店のハンディPOS端末として導入する店舗も多い。 |
その他 | POS機能が備わったそのほかの設備。セルフレジや券売機、キャッシュレス決済端末などもある。 |
POSレジシステムは、種類によって特徴があるため、自店舗に合う設備を選ぶ必要があります。機能はもちろん、レジ設備本体の機種についても比較検討しておきましょう。
参考記事:POSレジの種類はいくつある?特徴や強みと最適な機種の選び方
参考記事:POSレジの機能一覧|業種別のおすすめ機能と選び方のポイント
POSレジの仕組み
POSレジでは、以下の流れでレジでの会計操作やデータの記録・蓄積・分析が行われる仕組みです。
- 商品購入・サービス利用情報の照会
- レジ操作による支払い・会計
- レシートやクーポン券の発行
- 在庫調整
- 売上・顧客データの記録
- レジ締め・集計
- レポート作成・分析
それぞれ、具体的にどのような動作を行い、なにができるのか、活用シーンの例とともに解説します。
商品購入・サービス利用情報の照会
POSレジでは、まず顧客が購入した商品・利用したサービス内容の照会を行います。小売店の場合は、商品1点ずつに記載されているバーコードをPOSレジのバーコードリーダーで読み取り、商品登録を行う段階です。
飲食店の場合は、POSレジと連携しているモバイルオーダーシステムの情報から、顧客が利用していた客席のオーダー内容を照会します。
ポイントカードや会員証をもっている顧客の場合は、提示されたポイントカードの情報をPOSレジで照会し、残高の利用有無を確認する「顧客管理機能」を活用することも可能です。
レジ操作による支払い・会計
照会した情報をもとに、レジ担当者がPOSレジを操作して、支払い・会計を行います。合計金額の提示や決済手段の選定、対応などのPOSレジ機能を活用する段階です。キャッシュレス決済を顧客が選択した場合は、選択された手段で決済対応します。
セルフレジの場合は、顧客が自ら決済手段を選んで会計操作を行うため、店員の対応が必要ない機種があるのも特徴です。
レシートやクーポン券の発行
会計を終えると、POSレジがレシートやクーポン券を発行します。レシートに次回利用できる割引情報が記載されるケースもあれば、自動的に顧客のアプリにクーポンが送られる仕様の設備もあるため、機種選定時に確認しておきたいポイントです。
キャッシュレス決済ユーザー向けに、紙ではなく電子レシートを提示するシステムもあります。ターミナル型のPOSレジ以外を導入する場合は、レシートプリンターを別途連携導入することで、レシートやクーポン券の印刷に対応することが可能です。
在庫調整
POSレジを通じて会計操作を完了すると、POSシステムが自動的に在庫調整を行います。とくにリテールビジネス(小売業)に多いシステムで、在庫の残量が販売と同時に自動で減る「在庫管理機能」を活用するケースです。
ECサイトの販売状況と連動して店舗在庫量を管理できるもののほか、飲食店の場合はオーダー数に応じた品切れ表示に対応しているものもあります。また、商品の賞味期限・消費期限を記録できる商品管理機能が利用できる設備があるのも特徴です。
売上・顧客データの記録
POSレジを通じて行った販売データは、POSシステム上にPOSデータとしてリアルタイムで記録されます。いつどこでどのような商品が売れたのかが記録されるため、需要傾向をチェックすることが可能です。
また、ポイントカードや会員証を活用すれば、登録されている顧客情報も収集できます。顧客の属性情報取得や、来店頻度の記録も可能なので、リピーター獲得に向けた施策の実施に活用できる点が特徴です。
レジ締め・売上集計
POSレジには、レジ締めや売上集計ができる機能も備わっています。とくに、自動釣銭機搭載型POSレジで、キャッシュレス決済にも対応していれば、レジ締め作業をほぼ自動化できるのもPOSレジの強みです。集計した売上データは、日報として自動的にPOSシステム上に記録されます。
レポート作成・分析
POSレジは1日分の業務を終えると、日報としてレポート作成を行える機能があります。売上の傾向や時間帯別の消費動向、顧客の傾向など、さまざまな情報を収集することが可能です。
このデータを蓄積していくことで、前年度との比較を行ったり、過去数年間の売上傾向を予測して仕入れ量を調整したりすれば、商品ロスや在庫不足を抑止できます。
また、雨の日や特定の曜日・時間帯の客足が減少しやすい、といった傾向があれば、ピンポイントで利用できるクーポンを発行するような集客・販促施策の実施に活用するのも効果的です。
POSレジを導入するメリット
店舗の会計設備としてPOSレジを導入するメリットは、以下の3項目です。
- 売上管理・在庫管理が容易になる
- キャッシュレス決済に対応しやすい
- 外部システムとの連携で業務効率化が図れる
それぞれ、具体的にPOSレジを導入することでどのような変化があるのか、導入前の業務オペレーションと比較しながら解説します。
売上管理・在庫管理が容易になる
POSレジを導入すると、売上管理・在庫管理が容易になるメリットがあります。POSレジを導入すれば、売上や在庫変動がPOSシステムによって自動的に記録されていくためです。
一般的な手打ち式のキャッシュレジスターの場合、レシートロールに記録された売上情報を確認する作業に手間がかかります。また、在庫量も目視や手作業で確認しなければなりません。
このような負担がなくなるのは、POSレジの導入による大きなメリットの1つです。
キャッシュレス決済に対応しやすい
POSレジを導入すると、キャッシュレス決済に対応しやすくなるメリットもあります。一般的なPOSシステムの多くは、キャッシュレス決済機能を搭載していることが理由です。POSレジと専用の決済端末やバーコードリーダーと組み合わせれば、簡単にキャッシュレス決済に対応できます。
店頭に会計用のQRコードを設置する方法で、キャッシュレス決済を導入することも可能です。しかし、顧客に金額を入力してもらう作業が生じる上に、支払ったフリをする万引き行為などへの対策を講じる必要があります。
POSレジなら、そのような負担もなく簡単にキャッシュレス決済に対応できるため、レジ業務の負担を軽減できるでしょう。
外部システムとの連携で業務効率化が図れる
POSレジを導入すると、さまざまな外部システムと連携できるようになり、業務効率化につながるメリットもあります。
POSシステムを提供しているサービス事業者によって、連携可能な外部システムは異なりますが、予約管理システムや勤怠管理システムなどと連携可能なケースは少なくありません。
外部システムと連携できれば、これまで分散していた予約管理や従業員の勤怠記録の管理が、POSシステム上で一元化できるため、管理業務の効率化につながります。
参考記事:POSレジのメリット・デメリットとは?費用目安や選び方・導入時の注意点を解説
まとめ
POSレジは、単なるレジ設備ではなく、店舗の経営判断にも影響するデータ収集ツールの1つでもあります。
会計の効率化はもとより、店舗運営全体の業務オペレーションを効率化し、職務経験の長さによる仕入れ調整の差や、レジ打ちスピードの違いなど、業務の属人化解消にも役立つ設備です。
業務の効率化が実現できれば、結果的に従業員の負担軽減にも影響を及ぼし、人件費削減にも効果が期待できます。