小売店や飲食店など、身近な店舗で目にする機会も多いレジシステムですが、コンビニエンスストアで数多く導入されているものがPOSレジです。
コンビニのPOSレジは、企業ごとに機能が異なるのも特徴で、各社顧客満足度の向上や業務効率化などを目的に、さまざまな工夫が講じられています。
セルフレジの導入やキャッシュレス決済への対応など、さまざまなサービスや顧客体験を提供してくれるPOSレジですが、コンビニ各社では具体的にどのような設備が導入されているのでしょうか。
今回は、コンビニ大手3社が導入しているPOSレジの特徴や傾向と、導入が進む無人店舗・レジレスとはなにか、メリットやおすすめサービスについて詳しく解説します。
POSレジとは?
POSレジとは、POSシステムが備わっているレジ設備のことです。Point of salesの頭文字を取ってPOSと呼ばれており、日本語では「販売時点情報管理」を意味します。
POSシステムが備わっている設備は、一般的な対人レジだけではありません。セミセルフレジ・セルフレジや券売機、決済端末など多種多様にあるのも特徴です。
POSシステムが備わっているレジで会計を行うと、自動的に会計を行った日時や商品の情報が記録されます。この情報をもとに、売れやすい商品の時期や傾向、時間帯などを分析・予測し、仕入れ量の調整や集客・販促に活用するケースが一般的です。
参考記事:POSレジ・POSシステムの違いとは?主な機能と導入方法まとめ
コンビニ大手3社のPOSレジの現状と傾向
さまざまな業種で活用されているPOSレジですが、コンビニの場合は企業によって異なる点があります。セルフレジ化を進める企業もあれば、POSレジ単独でレジ担当者を置かずに店舗を経営する、「無人店舗型営業」が増えつつあるのも現状です。
では、コンビニ大手3社では、具体的にどのようなPOSレジを導入しているのでしょうか。ここからは、コンビニ大手3社のPOSレジ導入における現状と傾向について解説します。
コンビニ大手で利用されているPOSレジのメーカー
コンビニ大手では、以下3メーカー製のPOSレジを導入しています。
- 東芝TEC
- NECプラットフォームズ
- 富士通フロンテック
いずれも、POSレジを提供している大手メーカーであり、シェアの多くを占めている企業です。周辺機器の充実度の高さが魅力の東芝TEC、POS設備のラインナップが豊富なNECプラットフォームズ、小規模店舗にも人気のタブレットPOSレジも充実している富士通フロンテックなど、各社特徴があります。
2017年頃に大幅刷新
コンビニ大手3社では、2017年頃にPOSレジシステムが大幅刷新されました。
- ファミリーマート:2017年7月に約11年ぶりとなるPOSレジの全面刷新を実施、2018年2月末に全店で導入完了
- セブンイレブン:2017年10月から順次導入。2018年3月末までに全店で導入完了の計画
- ローソン:2017年11月から全国の店舗で刷新。2019年初頭頃までに全店舗での導入完了
いずれのコンビニも、約10年ぶりのシステム刷新を行っている点が特徴です。タッチパネル式のPOSレジを導入したり、セルフレジを導入したりと、各社決済サービスの充実を図っています。
無人店舗化の広まり
近年、コンビニでは無人店舗化も広まっています。有人店舗が維持されている一方で、オフィスビル内のコンビニや学校の売店など、小規模店舗を無人運営するケースです。
無人運営が可能になったことにより、人件費の負担なく店舗を経営できるようになりました。人件費の負担で店舗経営の採算が取れなくなるような事態を回避できるため、省スペースや利用者が限定されるような立地での開業も進んでいます。
セブンイレブンのPOSレジ運用における特徴と傾向
セブンイレブンでは、POSレジのレジキーボタンを一部残す形で、新たなPOSレジを導入しました。残されているレジキーボタンは、顧客の性別や年齢層を記録するためのもので、POSレジの売上管理・分析機能を活用する上で重要なファクターです。
セブンイレブンは、ローソンやファミリーマートと比べてポイントカードの利用率がやや低い傾向があり、このレジキーボタンでの操作を残すことで、顧客情報の収集を補完しています。
また、新たなPOSレジの導入によって、クレジットカードの「タッチ決済」にも対応できるようになりました。さらに、外国人従業員向けの多言語表示機能も導入し、従業員の働きやすさとスムーズな顧客対応の両立につなげています。
ローソンのPOSレジ運用における特徴と傾向
ローソンでは、レジキーボタンを完全に無くしたタッチパネル式のPOSレジを導入しています。視覚的・直感的に操作できるシステムが特徴で、顧客側にもディスプレイがあるため、顧客にとっても利用しやすい設計が特徴です。
自動釣銭機も搭載することで、店員による釣銭のミスが発生するのを抑止しています。また、タッチパネル式POSレジを導入したことで、POSレジ画面における多言語表示機能も利用できるようになりました。
これにより、外国人従業員が自国の言語で表示させたシステムを操作できるようになり、外国人労働者の雇用に対するハードルを下げ、人手の確保と均一化されたサービスの提供につなげています。
ファミリーマートのPOSレジ運用における特徴と傾向
ファミリーマートでは、POSレジに備わっているレジキーボタンの中から「客層ボタン」を廃止し、レジ設備の省スペース化を実現しました。
客層ボタンで顧客情報の収集を行っていた従来のPOSレジと比べて、ボタン数が大幅に減ったことからレジがコンパクトになっています。
客層ボタンの廃止によって収集できなくなった顧客情報に関しては、利用率の高いTポイントカードの情報と紐づける形で収集し、分析に活用している点が特徴です。
客層ボタンは、従業員の主観による性別・年代の打ち分けが行われていましたが、Tポイントカードでの情報収集に注力することで、より正確な顧客情報の取得につなげています。
コンビニ大手で進むレジがない無人店舗「レジレス」とは
コンビニ大手では、有人店舗とは別に、無人で店舗経営を行う「レジレス」を活用した無人コンビニが増加しています。従業員がいなくても24時間営業を実現できる画期的な手段で、人手不足への対策や人件費の削減にも役立てている取り組みです。
無人店舗では、セキュリティゲートやAIカメラ・顔認証システム、重量センサーなどとPOSシステムを連携させ、事前に登録したキャッシュレス決済で商品代金を支払います。
レジを通す必要がなく、必要な品物をそのまま持ち出せるため、買い物時間の短縮と従業員なしで24時間営業を実現する利便性の高さの両立を実現させている点が特徴です。
一般的なPOSレジと同様、POSデータとして収集した売上データをもとに、商品管理・在庫管理も実施できます。
セルフレジの一種として注目されており、レジ操作の必要がないため、顧客にとっても利用しやすいサービスです。
参考記事:セルフレジの種類と特徴は?メリット・デメリットと導入で解決できる課題・注意点
無人店舗・レジレスのメリット
無人店舗・レジレスを導入するメリットは、以下の3項目です。
- 人件費が削減できる
- レジの待ち時間を解消できる
- 学校・オフィスビルなどにも出店しやすい
ここでは、無人店舗・レジレスを経営するメリットや、無人経営を行う効果と有人店舗との違いについて解説します。
人件費が削減できる
無人店舗・レジレスでの店舗経営は、レジ業務の削減により人件費も削減できるメリットがあります。無人で経営できるため、基本的に人件費が発生する業務が、店舗の清掃業務や商品の補充にあたる従業員に限定されるためです。
人件費が削減できれば、店舗の収益を最大化できるため、これまでは不採算見込みで開業できなかった立地・店舗規模でも出店が可能となっています。
レジレスの導入時には、重量センサーが搭載された商品棚やAIカメラ、セキュリティゲートなどのさまざまな設備画必要になることから、開業にかかる初期費用が高いのも特徴です。
一方で、無人店舗運営での人件費削減による収益の最大化と、24時間営業の実現により、開業費用の回収にかかる時間の短縮にもつながっています。
参考記事:セルフレジの価格はどれくらい?導入費用を抑える3つのポイント
レジの待ち時間を解消できる
無人店舗・レジレスなら、レジの待ち時間を解消できるメリットもあります。レジレスを導入している無人店舗は、顔認証やセキュリティゲートでQRコードを読み取らせるなどして、個人を特定した上で買い物を行う店舗です。
AIカメラや商品棚の重量センサーによって、どのような商品を手に取ったのかを自動で解析し、顧客が持ち出した商品の会計額をあらかじめ登録しておいた決済手段で支払います。
そのため、商品のバーコード読み取り・登録、現金の受け渡し・キャッシュレス決済による清算など、一般的なレジで行われる会計操作をすべて省略することが可能です。
結果的にレジに並ぶことがなくなり、よりスムーズに買い物を終えられる仕組みとして、顧客体験の向上にも寄与しています。
学校・オフィスビルなどにも出店しやすい
無人店舗・レジレスは人件費が削減できるため、採算を取ることが難しい学校やオフィスビル内でも、出店しやすいメリットがあります。
出店スペースが限られていても比較的経営が成り立つため、従業員の確保が難しい地方での開業も可能です。
社員への福利厚生を目的として出店したいと考えている企業のニーズや、学食にはない品揃えができる学校内の売店のような形で店舗を開業できる手段として注目されています。
無人店舗・レジレスの導入におすすめのサービス3選
無人店舗・レジレスの導入は、コンビニだけでなく個人店舗や小規模店舗でも広まっています。求人募集をかけても人が集まらず、経営が成り立たなくなるような事態を回避できるためです。
ここからは、実際に無人店舗やレジレスを導入する際におすすめのサービスを3選紹介します。同じレジレスでも、サービスを提供している企業によって設備に特徴があるので、比較検討した上で利用してみると良いでしょう。
TOUCH TO GO
レジレスを導入する際、店舗の規模によっては1,000万円以上の初期費用が必要になることがあります。AIカメラや重量センサー、セキュリティゲート、クラウド型のPOSシステム、アプリ開発など、各種費用が必要になるためです。
株式会社Toutch TO GOが提供している 無人店舗ソリューション「TTG-SENCE」なら、初期費用約400万円からレジレスによる店舗経営が実現できます。
AIカメラや重量センサーなどのシステムを活用した店舗設備が特徴で、無人店舗ながら高セキュリティを実現できるのも魅力です。
店舗面積200㎡超の大型店舗や、自販機ほどの省スペースでの出店にも対応しています。
AI STORE LAB|株式会社セキュア
出典:株式会社セキュア
株式会社セキュアでも、AIを活用した無人店舗の開業に対応しています。店舗を利用したい顧客は、事前にユーザー登録(顔写真や決済手段の登録など)を行っておき、店舗のセキュリティゲートで顔認証による入店管理を行う仕組みです。
商品をチョイスしたのち、退店ゲートで決済確認が行われ、入店時と同様に顔認証によって決済が完了できます。
株式会社セキュアは、AI顔認証やAIカメラ、入退室管理システムも手掛けている企業のため、ハイレベルなセキュリティと、最新のAI技術による売上・在庫管理やデータ分析も実現可能です。
ELESTYLE
出典:ELESTYLE株式会社
ELESTYLE株式会社では、無人販売向けのソリューションを多面的に提供しています。無人販売用のラックやセルフ決済システム・セルフレジ・無人レジ、無人販売用冷蔵庫、自動販売機など多種多様な設備に対応しているのも特徴です。
決済ソリューションの「One QR」を活用した店舗づくりを基軸としており、小売事業者向けの無人販売店舗経営のほか、飲食店のセルフ決済にも対応しています。
比較的規模の大きな事業者向けのサービスとなっているため、既存店舗のノウハウを活かして、最新POSレジを活用した無人店舗経営による事業拡大を図りたいと考えている方に最適です。
まとめ
コンビニ各社では、POSレジの刷新を通じて従業員の労働環境改善や顧客体験の向上など、さまざまな取り組みを行っています。
無人店舗・レジレスの取り組みもその1つであり、今後は有人店舗のみならず、このような無人店舗も広まっていくかもしれません。また、無人店舗・レジレスは、人手不足による店舗経営の課題を解消する手段としても注目されています。
コンビニ大手だけでなく、個人経営の店舗や小規模店舗、売店などでも導入が進んでおり、店舗の開業を予定しているのであれば、新たな店舗開業手段の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。