店舗アプリは、顧客とコミュニケーションが取れ、リピーターの確保や顧客育成の施策が打ちやすいため近年注目されています。
そこで今回は、株式会社アイリッジ アプリビジネス事業本部 ビジネスパートナー部部長 吉岡大輔様とアプリビジネス事業本部ビジネスパートナー部リテールグループアカウントエグセティブ 佐藤太一様に、店舗アプリについてお話を伺いました。
―――ずばり貴社が得意としている店舗施設の課題解決は何かを教えてください
我々はアプリ開発、特にネイティブアプリやLINEミニアプリの開発を通じて、商業施設など、実店舗を持つ企業とエンドユーザーをデジタルでつなぐという役割に強みがあります。
その課題解決の方法については、施設によってさまざまですが、たとえば物理的な会員カードをアプリに移行したい、あるいは既にネイティブアプリは運用しているがアプリはインストール障壁も高いことからLINEミニアプリにも会員証機能を持たせた顧客接点を拡大をしたいというニーズがあります。また、コミュニケーションの観点では、物理的なカードではお客様への通知手段が限定的となる(取得している住所に向けたDM発送やメール配信等)ため、LINEでお知らせを送りたいといったニーズも多いです。さらに、来店を促進するための施策として、クーポン、ポイント、スタンプなどを活用するケースもあります。
そもそも商業施設というのは“箱”なんですよね。中にはアパレルだったり、雑貨店だったりといったテナントが入っていて、お客様はそのテナントを目的に来店されるわけです。つまり、商業施設自体とお客様との関係って、実はそこまで深くないことが多いんです。
そのため、商業施設としては来店を促進し、テナントの売上が上がらないと意味がない。売上がレベニューシェアや従量課金で決まることも多いです。
テナントの売上が上がらないと、当然ながら商業施設全体の売上にも跳ね返ってきません。そうなると、お客様を「囲い込みたい」というニーズが出てくるわけですが、実際に囲い込めるのはテナントのお客様なんですよね。そのあたりに苦労されている企業様が多い印象です。
―――お客様が抱える課題はどのような課題が多いですか?
お問い合わせの入り口で一番多いのは、やはり物理的な会員カードの電子化です。
「会員カードをLINEに移行したい」といった内容でのご相談は増えてきています。カード紛失や劣化リスクがあり顧客情報の一元管理が難しいという課題があるため、電子化ニーズが高まっていると考えています。
また、決済機能やスタンプカードなど、顧客との接点を強化するための機能追加をご希望されるケースも増えています。こういった機能は、利便性の向上だけでなく、リピート率の向上や顧客体験の最適化にもつながってきます。
会員カード電子化のメリットとしては、単に物理的なものからデジタルに置き換わるに留まらず、デジタル会員証を利用したユーザーの来店や購買履歴、属性情報をもとに適切な通知ができるという点が大きいです。
たとえばデジタル会員証やスタンプカードの利用履歴をもとに直近3ヶ月ご来店がないと思われるお客様に対して「最近いらっしゃってないようですが、いかがですか?」といった通知を送れるようになります。
物理カードやメールだけだと通知性が弱いですが、LINEだと個別通知ができて、かつ開封率が高いというのが特徴です。
―――何か具体的な解決事例があれば教えてください
我々のご支援先の一つである京王百貨店様で言うと、元々会員向けのプログラムとして、京王パスポートカードというものがあり、当時はアプリなどもやっていらっしゃいませんでした。
LINEミニアプリが初めてのオウンドアプリですが、いわゆる物理カード保有を前提とした会員サービスでしたので、お客様から取得できている情報は住所や、メールアドレスだけでした。そのため何か通知を送りたいと思っても、紙のDMやメールしか送れない状況だったんです。
そこでデジタル接点を強化して、LINEでよりコミュニケーションを取っていきたいということで、ミニアプリで会員証が出せるような仕組みを開発することになりました。
ミニアプリができたことで、ユーザーは物理カード不要でLINE上で会員証が出せるようになり、また会員限定クーポンなどもLINE上で受け取れるようになりました。元々京王百貨店様はLINEの公式アカウントを運用されていて、当時5万人ぐらいの友だちがいらっしゃいましたが、ミニアプリを提供開始後はこれらのメリットもあり友だちも順調に増えて、現在は4倍以上になっています。
―――お客様から喜ばれているポイントを教えてください
アプリに関して考えられる幅が広いことかなと思っています。企画段階から開発中、運用を開始した後まで、担当者の方と密にコミュニケーションを取り、サポートできる点がとても多いと自負しています。多分そこがお客様からすると安心されて、喜ばれているポイントかと思います。
要件定義に対応できる会社はたくさんありますが、開発会社で企画から考えられるところは多くありません。我々は作った後のプロモーションのご支援もできるので、そういうところが強みでもあり、信頼いただいている点でもあると考えています。
実は、企画支援系のお話をいただくことも多いです。たとえば、PoCでモックのアプリを作りたいとか、社内で上申するための資料を一緒に作ってください、というのもありますので、それに対応できる点が評価されているのかなと思います。
―――貴社を一言で表すとどのような会社ですか
アプリを軸として様々な課題を解決できるプロです。
デザインだけのご相談もあれば、本当に企画だけの相談もありますし、開発だけの依頼もあります。でも、あまりそれで終わりというお取引がないんですね。
たとえばとある鉄道会社様の事例では、スタートはアプリでしたが、現地にカメラを設置して、その画像を解析してアプリで混雑度を可視化したりとか、あとビーコンを使って時差通勤を促進するためのキャンペーンを企画したりとか、いろんなことを担当させていただきました。
一言で言うと、お客様が抱えている課題に対して、それを解決するための施策を手法にとらわれずご提案し実行までできる、さまざまな分野の専門家が集まった会社です。
―――最後に今後の展望を教えてください
これまではネイティブアプリでずっと開発をしていましたが、時代の流れもあり、LINEのご相談が非常に増えました。
我々も、ネイティブアプリにこだわらず、ネイティブアプリで培った企画や開発のノウハウをそのままLINEに移行していくべく、LINEミニアプリの自社開発には非常に力を入れているところです。
また、ネイティブアプリに関してはAPPBOX(アップボックス)という自社プロダクトがあり、こちらで開発からマーケティングまでを広くカバーしていこうとしています。そして、アプリだけに閉じず提案の幅を広げていくために、先ほど申し上げた企画フェーズからプロモーションまでトータルでコンサルティングを行えるところを、今後さらに伸ばしていく予定です。
―――ありがとうございました。