「AI電話の導入事例を知りたいが、どの業界でどのように活用されているのかわからない」
「メリットやデメリットを踏まえて、自社に導入する価値があるのか判断したい」
AI電話の導入時に、このように悩む方もいるでしょう。
AI電話は業界ごとの課題を解決し、業務効率化やコスト削減、顧客満足度向上に貢献する有力なツールです。近年ではAI電話自動応答サービスの進化により、コールセンター業務や企業の電話対応が大きく変わりつつあります。
本記事では、業界別のAI電話システムの導入事例8選を紹介しながら、メリット・デメリットや導入時の注意点について解説します。導入を検討している企業や自治体での運用にも役立つ内容となっていますので、ぜひ参考にしてみてください。
AI電話とは?基本概要としくみ
AI電話とは、人工知能(AI)を活用して、電話対応業務を自動化するシステムです。音声認識や自然言語処理などのAI技術を駆使し、顧客からの問い合わせや予約対応を人間のオペレーターに代わってAIが行います。これにより、24時間365日の対応が可能となり、業務効率化や顧客満足度の向上が期待できます。
AI電話のしくみについては、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
参考記事: AI電話自動応答サービスとは?仕組みやメリットなど基礎知識を解説
企業が抱える電話対応の悩み
多くの企業は、電話対応に関して以下のような課題を抱えています。
- 電話対応に追われてコア業務が進まない
- 頻繁な電話で業務の集中力が途切れる
- 営業電話の応対に多くの時間を取られる
- 外出中や留守中の電話対応ができない
- リモートワークへの移行にともない電話応対が難しい
上記のような課題への対策を講じていないと、業務効率ダウンや社員のストレスが増加しやすくなります。特に、電話対応が多い部署では、作業の中断が頻発し、生産性が大きく下がりかねません。こうした電話対応の問題を解決するためには、AI電話システムを活用した電話業務の自動化が有効です。
では、実際に企業ではAI電話をどのようにして業務に役立てているのでしょうか。次章では、AI電話の実際の導入事例を紹介します。
AI電話自動応答サービスの導入事例8選【業界別】
AI電話自動応答サービスは、さまざまな業界で導入が進んでおり、業務効率化や顧客満足度アップに貢献しています。
- コールセンター
- 企業の問い合わせ・受付
- 自治体
- その他業界
ここでは、業界別に8つの導入事例を紹介し、各業界でのAI電話システムの活用方法と効果を解説します。
コールセンターのAI電話導入事例
コールセンターは、顧客対応の最前線として重要な役割を担っていますが、人手不足や応対品質のばらつき、業務効率化の難しさなど、多くの課題を抱えています。このような問題の解決手段として、AI電話自動応答サービスの以下のような機能が活用されています。
- 音声認識と自然言語処理
- 24時間365日の自動応答
- 業務システムとの連携
それぞれの機能を活かした導入事例が以下の通りです。
1 時間最大3,000件の受付が可能に
損害保険ジャパンは、2023年1月から運用を開始した対話型AIを活用することで、1時間に最大3,000件規模の電話対応が可能となりました。その結果、大規模災害時でも顧客からの電話に迅速に対応でき、被害を受けた顧客を長時間待たせることなくサポートできる体制を実現しています。
参考サイト:損害保険ジャパン コールセンターに NTT Com の対話型 AI を導入
定型問い合わせの自動化でコールセンターの応答性を改善
株式会社テレビショッピング研究所は、定型問い合わせの自動化を目的にAI電話自動応答サービスを導入し、コールセンター業務の効率化を実現しました。
- 導入前:顧客対応の入電数が予測しにくく、人員配置や教育に課題を抱えていたため、AIによる自動応答を検討。
- 導入後:商品のサイズ交換対応をAI化した結果、該当業務の約50%を自動化。AIを定期購入商品の配送日変更受付にも活用し、業務負担軽減と顧客満足度向上を実現。
AI対応とコールセンタースタッフの対応を分けることで、業務負担の軽減と顧客満足度向上の両方を実現している事例です。
参考サイト:株式会社テレビショッピング研究所 配送変更やサイズ変更受付の約半数を自動化し、コールセンターの応答性を改善
企業の問い合わせ・受付でのAI電話導入事例
企業の問い合わせ対応や電話受付業務においても、AI電話自動応答サービスの導入が進んでいます。そこで、2つの企業での導入事例を紹介します。
AI電話代行を活用した企業事例については、以下の記事でも紹介しているのでぜひご覧ください。
参考記事:AI電話代行を活用した成功事例とその効果について
言った言わないのトラブル減少&業務効率アップ
ダイドー不動産はAI電話の導入で、業務効率化と顧客対応の質の向上を実現しています。
- 導入前:電話対応に多くの時間を割かれ、送金業務などの重要な業務に集中できなかった。
- 導入後:AI電話代行サービスの録音・文字起こし機能により、問い合わせ内容を事前に把握できるようになり、顧客対応の質が向上。録音機能の活用により、「言った言わない」のトラブルが減少し、スタッフの心理的負担も軽減。
電話対応に追われることなく、送金業務などの重要な業務に集中できる体制が整いました。AIの活用は、業務効率化だけでなく、働く環境の改善にも有効な手段です。
参考サイト:AI電話代行サービスの活用で言った言わないのトラブルが減少。業務への集中・効率化が可能に【株式会社ダイドー不動産】
AIオペレーター導入で顧客のストレス&オペレーターの負担が軽減
ヤマト運輸株式会社は2020年11月、集荷依頼の電話対応にAIオペレーターを導入し、顧客の待ち時間短縮とオペレーターの負担軽減を実現しています。
- 導入前:電話による集荷依頼はオペレーターが対応していたが、時間帯によっては電話がつながりにくい状況が発生し、顧客にストレスを与えていた。
- 導入後:AI導入により、電話の待ち時間が短縮され、顧客のストレスとオペレーターの負担を軽減。業務効率もアップした。
この事例も、AIの活用が顧客対応の質向上だけでなく、労働環境の改善にも大きく貢献することを示しており、今後さらなる活用の可能性が期待されます。
参考サイト:「AIオペレーター」による自動受付で集荷依頼-クロネコヤマト
自治体のAI電話導入事例
自治体においてもAI電話自動応答サービスの導入が進んでおり、業務効率化や住民サービスの向上に役立っています。具体的な導入事例が以下の通りです。
自治体のAI電話導入事例は、以下の記事でも紹介しているのでぜひチェックしてみてください。
参考記事:AI電話で自治体業務を効率化!導入事例3選&課題解決のポイントを解説
電話の自動発信で業務時間を6分の1に削減
鹿児島県の鹿屋市立図書館では、AI電話自動応答サービスを導入し、未返却本の督促業務を効率化しました。
- 導入前:従来、職員が手動で未返却本の督促電話をかけていたが、対象者が多いと対応が追いつかず、業務が煩雑化していた。
- 導入後:AI導入によって、一度に約100件の自動電話発信が可能となり、督促業務にかかる時間が従来の6分の1に削減。多くの本の返却にもつながった。
この事例から、自治体におけるAI活用は、将来的にさらに広がると考えられます。
参考サイト:電話の自動発信で業務時間を6分の1に削減した鹿屋市立図書館の取り組み
対応時間外も住民からの電話問い合せに自動応答
名古屋市は、新型コロナウイルス感染拡大にともなう住民からの問い合わせ増加に対応するため、AI電話自動応答システムを導入し、以下のような効果を実現しました。
- 導入前:夜間は電話問い合わせに対応できず、住民が不便を感じていた。
- 導入後:従来対応時間外であった夜間も問い合わせに自動対応し、必要な情報を発信元の電話番号宛てにSMSで送信することが可能に。住民は時間を選ばずに必要な情報を取得できるようになった。
自治体でのAIの活用は、災害時や緊急対応など、さらなる発展が期待される分野といえるでしょう。
参考サイト:名古屋市が、新型コロナ対応強化のためAI電話自動応答システム「mobiVoice」を採用 対応時間外だった夜間も住民からの電話問い合せに自動応答可能
その他業界のAI電話導入事例
AI電話自動応答サービスの導入は、さまざまな業界で業務効率と顧客満足度のアップにつながっています。ここでは、ホテルと病院の事例を紹介します。
24時間予約可能な体制を実現
株式会社東急ホテルズでは、自動音声応答サービスを導入し、電話予約の対応体制の強化を実現しました。
- 導入前:予約センターの営業時間外には電話予約の受付ができず、機会損失や顧客満足度の低下が課題となっていた。
- 導入後:自動音声応答サービスの導入により、24時間体制で顧客の電話予約の受付が可能に。顧客は音声案内に従って直接予約ができるようになり、利便性もアップ。さらに、土曜日の電話対応を自動転送に切り替えることで、オペレーターの人員配置を平日に集中させ、稼働の偏りを解消した。
東急ホテルズでは、自動音声応答サービスは運用コストも低く抑えられているため、利用を続け、今後予定されているホテルの新規開業でも運用するとのことです。
参考サイト:オペレーター稼働の平準化でさらなるサービス向上を目指す。お電話でも24時間ご予約を受けられる体制を実現!株式会社東急ホテルズ
患者さんへの丁寧な対応&電話応答ストレスの解消を実現
香川県高松市にある「古新町こころの診療所」では、AI電話代行サービスを導入し、以下のような電話対応の効率化と患者対応の質向上を実現しました。
- 導入前:受付スタッフが電話に対応しきれず、ストレスを感じていた。
- 導入後:電話がつながらないことで何度もリダイヤルが発生する状況を解消。患者は用件を録音することで、スタッフは折り返しの際に事前に内容を把握でき、電話対応の時間短縮と質の向上を実現した。
「スタッフが1名でも休むと、電話が鳴り止まない状態だったので、AI電話代行サービスを導入して助かっています」と、診療所の方は語っています。
参考サイト:AI電話代行の活用で、患者さんへの丁寧な対応と電話応答ストレスの解消を同時に実現!【古新町こころの診療所】
AI電話導入のメリット・デメリット
AI電話の導入時には、知っておくべきメリットとデメリットがあります。そこで、AI電話導入のメリット&デメリットについて、それぞれ3つずつ紹介します。
AI電話導入のメリット
AI電話の導入は、以下のような3つのメリットを企業にもたらします。
- 業務効率化
- コスト削減
- 顧客満足度アップ
AI電話は、音声認識や自然言語処理技術を活用して24時間365日稼働できます。これにより、オペレーターはルーティン業務から解放され、より複雑な業務に集中しながら、運用コストも削減することが可能です。
AI電話導入のデメリット
AI電話の導入にはいくつかの課題もありますが、適切な対策を講じることで、その効果を十分に活かせるでしょう。
- 初期費用が負担になる場合がある
対策:導入前に費用対効果を綿密に分析し、必要に応じて段階的な導入や無料トライアルの活用を検討することが重要です。
- 複雑な問い合わせには対応が難しいことがある
対策:AIと人間のオペレーターのハイブリッド体制を構築し、AIが対応困難なケースは迅速に人間に転送する仕組みの整備が効果的です。
- 不満を感じる顧客が出る可能性がある
対策:顧客にAI対応と人間対応の選択肢を提供し、顧客の希望に応じて対応方法を柔軟に選べるようにすることで、満足度の低下を防げるでしょう。
AI電話の導入で業務を効率化しましょう
AI電話システムの導入は、コールセンター、自治体、物流、医療、小売など多くの業界で活用され、業務効率化、コスト削減、顧客満足度向上に大きく貢献しています。
一方で、初期導入コストや複雑な問い合わせへの対応力といった課題も存在します。企業・組織でのAI電話導入時の注意点として、顧客の多様なニーズや状況を想定したシナリオを設計する、AIの得意分野と苦手分野を理解しておくなどもポイントです。
各業界の成功事例を参考に、自社の課題解決に適したAI電話システムを導入し、業務改善を実現しましょう。