近年、特定技能や留学生の雇用をはじめ、外国人採用が増加しています。しかし、入社時に求められる「身元保証人」について十分に理解していない企業も少なくありません。
外国人採用における身元保証人とは、外国人労働者が勤務中に会社へ損害を与えた際、本人が弁償できない場合に備えて一定の道義的責任を負う保証人のことです。
また、身元保証人は在留資格やビザ申請時にも必要になります。
本記事では、外国人採用での身元保証人の役割や保証人がいない場合の対応方法や注意点・書類例までわかりやすく解説します。
外国人採用における身元保証人とは?
外国人採用における身元保証人とは、従業員が会社に損害を与えた場合、本人に代わって責任を負う人物のことです。また、外国人は在留資格申請や就労ビザ取得時にも身元保証人が必要となります。
身元保証人制度は、法的な連帯保証とは異なり、あくまで道義的・社会的責任を示すものです。
- 外国人採用で身元保証人が必要となるタイミング
- 在留資格(ビザ)取得で身元保証人が必要となるタイミング
ここでは、外国人の身元保証人が必要になる上記のタイミングについて、保証内容の違いを解説します。
外国人採用で身元保証人が必要となるタイミング
外国人採用で身元保証人が必要となるのは、採用活動が実施されるタイミングです。
身元保証人の有無に法的拘束はなく、身元保証人を必要とするかの判断は企業に委ねられています。また、身元保証人の条件も企業ごとに異なる傾向にあり、トラブルの回避や信頼性の担保を目的に求めるケースは少なくありません。
従業員が勤務中に会社へ損害を与えたにもかかわらず、本人が十分な補償を行えない場合に備えて、一定の責任を代わりに引き受ける立場として設けられています。
このように、外国人を採用する際、企業によっては身元保証人の提出を求めるケースがある点を知っておきましょう。
在留資格(ビザ)取得で身元保証人が必要となるタイミング
在留資格(ビザ)取得時には、外国人本人の滞在目的や身元を確認するため、身元保証人の提出を求められることがあります。
とくに「短期滞在ビザ」や「永住ビザ」の申請では、滞在費・帰国旅費・法令遵守を保証する人物として身元保証人を立てなければなりません。
身元保証人がいない場合でも、企業が代わりに身元保証人となる、または行政書士の支援を受けるなど、実務上の代替手段も存在します。
外国人採用での身元保証人の条件とは?誰がなれるのか

外国人採用における身元保証人は、日本国籍を持つ成人、または永住者ビザを保有し、安定した収入と社会的信用を備えた人物であることが望まれます。これは、保証人としての信頼性・経済的安定性・国内での居住継続性を確保するためです。
たとえば、国内在住者であれば、緊急時の連絡や対応が迅速に行えます。入管や企業とのやり取りもスムーズに進むでしょう。国外との連絡・やり取りと比べて円滑に対応できるため、トラブル発生時や賃貸契約時などの保証人が必要となる場面で重要視されます。
万が一急な対応が必要になっても、国内在住者であればやり取りがスムーズに行えるためです。そのため企業は、身元保証人の責任範囲を明確に定めて書面で管理する形で、リスクの最小化に努めています。
【外国人採用】身元保証書のサンプル・記載ポイント

外国人を採用する際に提出を求める身元保証書は、企業と従業員双方の信頼関係を可視化する重要な書類です。
- 外国人採用時の身元保証書
- 在留資格(ビザ)取得時に必要な身元保証書
上記の場面で必要な身元保証書の書き方のポイントについて解説します。
外国人採用時の身元保証書
外国人採用時の身元保証書には、保証人・保証事項・期間・署名などを正確に記載することが求められます。
日本人の入社時における身元保証書を参考とした、外国人の入社時に追記を考慮すべき事項は以下のとおりです。
- 身元保証人は、「日本人・日本国内の永住者・在留資格(ビザ)取得時の身元保証人と同一の人物」のいずれかの人物が望ましいことを記載する
- 外国人本人または身元保証人が母語話者でない場合、日本語訳併記や翻訳を添える
- 身元保証書と雇用契約書・在留資格支援計画などとの整合性を取る(身元保証書だけで対応せず、就労支援体制を別途示すことが望ましい)
身元保証書に加えて、保証人変更届・更新書式も準備しておきましょう。保証人の住所移転・変更・死亡などに備える条項を設けておくことも重要です。
在留資格(ビザ)取得時に必要な身元保証書
外国人が在留資格(ビザ)取得時に提出する身元保証書の主な記載項目は以下のとおりです。
- 被保証人の氏名・国籍
- 保証人の住所・職業
- 保証内容(滞在費・帰国費用など)
- 署名・押印
誤記や印影の不一致は審査遅延の原因となるため、正確に記入しましょう。
在留資格(ビザ)取得時の身元保証書は、行政書士が申請書類とあわせて作成するケースもあります。
法務省による身元保証書のサンプルは、以下をご覧ください。
参照:身元保証書
採用する予定の外国人に身元保証人がいない場合の対応方法
外国人採用時に身元保証人がいない場合でも、以下のような複数の手段で外国人を採用することも可能です。
- 企業(雇用主)が保証人になる
- 社内で身元保証書を提出しない代替措置を取る
- 身元保証代行サービスを利用する
それぞれの方法について解説します。
企業(雇用主)が保証人になる
外国人が就職時に企業へ提出する身元保証人がいない場合、企業や代表者が代わりに保証人になることが可能です。
企業が保証人を引き受ける場合、勤務中の損害や法令遵守、生活支援に関する道義的責任を持つ形となります。
この場合、会社が保証契約を締結し、保証期間(3年以内)や極度額(上限金額)を明示しておくと安心です。契約内容は書面化し、社内承認を経て保管しておきましょう。
企業が身元保証人になることで、外国人本人が安心して就労を開始できるため、雇用側の信頼性向上にもつながります。
社内で身元保証書を提出しない代替措置を取る
外国人が就職時に身元保証人を確保できないときは、社内で身元保証書の提出を免除し、代わりに本人作成の理由書や誓約書を提出してもらう方法も有効です。
理由書には、保証人を立てられない事情や、入社後の責任・法令遵守に関する本人の意思を明記します。
加えて、緊急連絡先届や外国人在留支援センターなどの支援体制も併用すれば、企業の管理責任を補完できるでしょう。外国人在留支援センターとは、外国人が日本で安心して生活・就労できるよう、在留手続や生活支援、雇用相談などを一体的に行う公的支援機関です。
このような公的機関の支援も活用し、身元保証人がいなくても、書面で本人の責任を明確化する代替措置を活用して信頼性を確保する選択肢もあります。
身元保証代行サービスを利用する
採用予定の外国人に身元保証人がいない場合、信頼性のある身元保証代行サービスを利用して身元保証契約を結んでもらうことで、入社時の身元保証書に代わる対応ができます。
身元保証の代行サービスとは、行政書士事務所や民間保証会社が、道義的責任の範囲で身元保証を引き受ける制度です。利用時は契約期間・保証内容・費用を事前に確認しましょう。
たとえば、以下のような身元保証代行サービスがあります。
参照:あかり保証
企業が直接保証できない場合でも、身元保証代行を活用すれば採用リスクを抑えつつ、入社手続きを円滑に進められます。信頼できる代行機関を選び、利用する際は契約書の内容を丁寧に確認することが重要です。
外国人の採用時に困りごとや不明点がある場合は、以下の記事で紹介している相談先も参考にしてみてください。
参考記事:【店舗経営者向け】外国人採用の相談先一覧|公的・自治体の相談窓口・相談時のポイント
外国人採用では身元保証人の確認も重要
外国人従業員の身元保証人制度は、法的義務ではなく信頼性とリスク管理を補う仕組みです。
保証人がいない場合も、企業が保証人になる・理由書を作成する・代行サービスを活用するなどで柔軟な対応ができます。
外国人雇用を円滑に進めるには、企業の誠実な姿勢と明確なルール設計が重要です。この機会に、自社の採用体制を見直してみてはいかがでしょうか。
