飲食店や小売店など、現場での人手不足を補う手段として「外国人採用」が注目を集めています。しかし、在留資格の確認や労働条件の整備、雇用管理など外国人採用における確認事項は多岐にわたり、確認を怠るとトラブルにつながることも少なくありません。
そこで本記事では、店舗経営者が安心して利用できる公的な相談窓口や自治体の支援サービス、さらに相談前の準備ポイントについて解説します。
【外国人採用の相談】公的な相談窓口一覧
外国人採用を進める際、最初に頼れる公的な相談窓口は以下のとおりです。
窓口名 | 主な相談内容 |
---|---|
外国人雇用サービスセンター | 職業相談・紹介、雇用管理支援 |
ハローワーク | 求人紹介・求人掲載・助成金案内 |
出入国在留管理庁・総合窓口 | 在留資格・ビザ手続き |
外国人在留支援センター(FRESC) | 在留相談・雇用・安全衛生・労務相談全般 |
労働条件相談「ほっとライン」 | 多言語で労働条件の電話相談 |
労働基準監督署 | 労働条件・解雇・安全衛生の相談 |
以下では、企業が安心して外国人材を雇用するために欠かせない、公的な相談先それぞれの詳細について紹介します。
外国人雇用サービスセンター(厚生労働省)
外国人雇用サービスセンターは、外国人材の採用や雇用管理に関する相談を専門的に支援する公的窓口です。外国人雇用サービスセンターでは、企業と外国人労働者双方に安心を提供できる体制が整っています。
外国人雇用サービスセンターは、東京にある東京外国人雇用サービスセンターを始め、名古屋・大阪・福岡に設置されている公的機関です。外国人留学生や高度外国人材の就職相談・職業紹介を行うと同時に、企業に対して雇用管理アドバイザーによる指導や在留資格確認のサポートを行っています。
多言語対応も整備されているため、企業と外国人労働者双方が安心して、 労働条件について相談することも可能です。そのほか、雇用保険の相談も無料で行えます。
外国人採用についての相談先を探す企業にとって、外国人雇用サービスセンターはまず頼るべき窓口です。
ハローワーク(公共職業安定所)
外国人採用を検討する際、外国人雇用サービスセンターへの相談とともに、求人募集や雇用保険の手続きはハローワークを併用すると良いでしょう。
ハローワークは、日本人だけでなく外国人労働者や企業にも開かれた総合的な雇用相談窓口です。具体的には、求人登録、職業紹介、雇用保険の申請、助成金の案内など幅広いサービスを無料で提供しています。
ただし、在留資格や外国人雇用管理に関する専門的な相談については外国人雇用サービスセンターが適しているため、両者をうまく使い分けることが、採用から雇用管理までを円滑に進めるためのポイントです。
まずは外国人雇用サービスセンターで在留資格や外国人雇用管理に関する専門的な助言を受け、その後にハローワークを活用する流れを押さえれば、安心して外国人採用を進められるでしょう。
出入国在留管理庁
出入国在留管理庁は、外国人採用に欠かせない在留資格の審査・更新を担う機関で、採用時の法令遵守とトラブル防止に直結する重要な相談先です。
地方出入国在留管理局や出張所は、外国人労働者の在留資格認定や変更、更新の手続きに対応しています。企業が外国人を雇用する際は、在留カードや在留資格の確認が必須であり、不備があると不法就労につながりかねません。
出入国在留管理庁の公式サイトでは全国の窓口一覧や連絡先が公開されており、相談や申請に備えて所在地を確認できます。
在留資格の確認は外国人採用の第一歩です。出入国在留管理庁の窓口を活用して正しい手続きを踏 んだうえで、外国人労働者を雇用しましょう。
参照:出入国在留管理庁
外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)
外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)は、在留資格や労働相談、生活支援を一括で行う公的窓口です。出入国在留管理庁が運営する機関であり、雇用者・外国人双方の相談に対応しています。
外国人在留支援センターでは、具体的に在留資格の確認・更新、雇用条件や労働トラブルの相談、外国人材の受け入れ方法に関する情報提供などをワンストップで実施しているのが特徴です。
さらに、多言語による電話相談や専門家による支援も行っており、初めて外国人を雇用する企業に対する支援体制も整備されています。
労働基準監督署
労働基準監督署は、外国人労働者を含むすべての労働者の労働条件や安全衛生を守る機関です。労務管理や労働トラブルを未然に防ぐための重要な相談窓口です。
労働基準監督署では、労働時間・賃金・残業代・解雇などの労働条件や、職場の安全衛生に関する相談を受け付けています。
適切な雇用管理や雇用保険加入の確認により、労働基準法を遵守する企業として、外国人従業員の安心と信頼を高めるうえで、欠かせない相談機関です。
参照:労働基準監督署
【外国人採用の相談】自治体の外国人雇用支援サービス
東京都や大阪府などの自治体も、外国人材の採用や定着をサポートする窓口を設けています。
窓口名 | 主な相談内容 |
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東京外国人材採用ナビセンター | 外国人採用相談、雇用管理支援、合同説明会、専門家によるコンサルティング |
大阪外国人材採用支援センター | 採用相談、留学生とのマッチング、説明会・交流イベント、在留資格アドバイス |
MEET IN OSAKA | オンライン説明会、交流イベント、定着支援、採用相談、雇用者向けセミナー |
自治体独自の支援サービスを知ることで、自社に合った採用ルートを見つけられます。
東京外国人材採用ナビセンター
東京外国人材採用ナビセンターは、東京都が運営する公的相談窓口として、外国人材の採用から定着まで無料で支援を行う、中小企業向けのサポート拠点です。
同センターでは、外国人雇用に関する相談窓口を設け、専門家による個別アドバイスや訪問コンサルティングを実施しています。
さらに、外国人留学生や高度外国人材とのマッチング支援、合同企業説明会、就職セミナー、インターンシップ情報の提供など、採用から雇用管理、定着まで一貫したサポートも提供しているのも特徴です。
とくに、初めて外国人を雇用する企業にとって、雇用条件の整備や相談内容の具体化を進める上で東京外国人材採用ナビセンターは最適な相談先といえます。
大阪外国人材採用支援センター
大阪外国人材採用支援センターは、大阪府と大阪市が設立した公的窓口で、外国人採用を希望する企業に向けて相談・マッチング・定着支援を無料で提供しています。
また、合同企業説明会や交流イベント、外国人留学生とのマッチング支援を通じて、採用から定着までを後押ししているのも特徴です。
さらに、外国人雇用に関するセミナーや相談会も定期的に開催し、初めて外国人を採用する事業者に対しても手厚いサポート体制を整えています。
外国人採用を検討している大阪府内の企業は、大阪外国人材採用支援センターへの相談で、必要な情報や支援を効率的に得られるでしょう。
外国人材受入加速化支援事業(MEET IN OSAKA)
外国人材受入加速化支援事業(MEET IN OSAKA)は、大阪府が運営する無料支援プログラムで、外国人採用を目指す企業にマッチングから定着支援までを一括提供する事業です。
この事業では、オンライン合同企業説明会や交流イベントを通じて、外国人留学生や高度外国人材と企業をつなぎます。
また、雇用条件や在留資格に関する相談にも対応しており、外国人材の採用後も定着支援を行っている点が特徴です。
さらに、セミナーや雇用管理に関する情報提供を組み合わせることで、初めて外国人を採用する中小企業でも、安心して迎え入れられるよう支援する環境が整えられています。大阪で外国人材を採用する企業にとって、MEET IN OSAKAは頼れる公的支援制度です。
参照:外国人材受入加速化支援事業(MEET IN OSAKA)
窓口や支援サービスで対応できる外国人採用に関する相談内容
外国人採用の相談窓口や支援サービスでは、在留資格の確認や労働条件の整備、外国語対応など、外国人雇用に関する以下のような具体的な悩みや問題解決の支援を行っています。
- 在留資格に関する相談
- 労働条件の整備(労働基準法に基づく労働時間・賃金・残業の適正化など)
- 外国語での対応手法
- 雇用管理について(社会保険・雇用保険の手続きや雇用契約書の作成)
上記のような外国人の採用時に生じやすい在留資格や労働条件、言語の壁などは、公的窓口の活用により解決に近づくでしょう。
登録支援機関・外国人材の紹介会社・監理団体の違いと選び方
外国人採用に関わる機関には、登録支援機関、紹介会社、監理団体といった異なる役割の組織があります。それぞれの特徴を理解し、自社の採用目的に応じて選ぶのがポイントです。
区分 | 主な役割 | 強み | 対応する在留資格・制度 |
---|---|---|---|
登録支援機関 | 特定技能1号の外国人材に対し、生活支援・雇用管理・在留相談などを代行 | 企業の負担を軽減し、生活支援や定着支援を専門的に行える | 特定技能1号 |
外国人材の紹介会社 | 外国人労働者や留学生を企業へ紹介し、採用マッチングを支援 | 即戦力人材の採用に強く、幅広い業種の求人ニーズに対応 | 高度外国人材、留学生、一般就労 |
監理団体 | 技能実習制度の下で、実習生の労働条件や安全を監督し、適正な実習環境を確保 | 実習生を守る仕組みが整い、法令遵守を徹底できる | 技能実習制度 |
それぞれの役割をまとめると、以下のように使い分けられます。
- 採用と生活支援を一括で依頼したいなら → 登録支援機関
- 即戦力となる人材の紹介が欲しいなら → 紹介会社
- 技能実習生を受け入れるなら → 監理団体
各機関の特徴を具体的に紹介します。
登録支援機関:特定技能1号の在留資格に対応する支援専門機関
登録支援機関は、特定技能1号の外国人材に必要な生活支援や雇用管理を代行する専門機関で、企業が安心して採用・定着を進めるための重要なパートナーです。
特定技能1号で外国人を採用する際、企業には生活オリエンテーションや住居確保、日本語学習機会の提供、定期面談などの支援が義務付けられています。
このような支援を自社で対応できない場合、登録支援機関へ委託することで、在留資格に沿った適切な雇用管理を代行してもらうことが可能です。
登録支援機関を活用すれば、外国人採用にともなう在留相談や雇用管理の負担を軽減できます。
外国人材の紹介会社:採用マッチングに特化した仲介業者
外国人材の紹介会社は、企業と外国人労働者のマッチングを専門とする仲介業者で、即戦力となる人材を効率的に採用できる点が強みです。
紹介会社は、外国人応募者と企業のニーズを結びつけ、採用プロセスをサポートします。履歴書の確認や面接の設定だけでなく、外国人留学生や高度外国人材といったさまざまな外国人材の紹介にも対応しているのが特徴です。
一方で、労務管理や在留資格の相談支援まで外国人材の紹介会社は担わない場合が多くあります。そのため、必要に応じて、登録支援機関や社会保険労務士との連携を検討することが不可欠です。
外国人材の紹介会社は外国語での対応が可能な場合も多く、飲食店や小売店など即戦力を求める現場にも適しています。
監理団体:技能実習制度で外国人実習生を守る非営利団体
監理団体は、技能実習制度の下で外国人実習生を適切に保護し、受け入れ企業が法令を守って雇用できるよう監督・支援を行う非営利団体です。
監理団体では、技能実習生の労働条件や労務管理をチェックし、不当な扱いや労働トラブル防止のための活動を行っています。
さらに、外国人技能実習機構と連携して実習内容の適正化の指導を行い、在留資格や相談支援にも対応しているのも特徴です。外国語での相談窓口を設け、生活や安全衛生管理に関するサポートを行うため、外国人実習生と企業の双方をつなぐ役割を担っています。
監理団体から適正な支援を受けることで、実習生を守りながら企業も安心して国際人材を受け入れられるでしょう。
外国人採用について相談するときの3つの準備ポイント
外国人採用について相談する際は、以下3つの準備を行うことで、専門窓口から的確な支援を受けられます。
- 在留資格と職務の整合性を確認する
- 雇用契約書や必要書類を整備する
- 相談内容を整理した上で専門家・窓口に臨む
採用予定の外国人の職務が在留資格に適合しているかどうかは必ず確認し、不法就労のリスクを防ぐ必要があります。雇用条件を明記した契約書や在留カードなどの書類を揃えておけば、相談や申請がスムーズになるでしょう。
また、不安や知りたい内容を事前にまとめておくことで、専門家からのアドバイスを効率的に受けやすくなります。
相談の一歩が、外国人採用を成功に導く
外国人採用を成功させるには、在留資格の確認や労働条件の適正化だけでなく、信頼できる相談窓口の活用が重要です。公的機関や自治体の支援は無料で利用でき、多言語対応や専門家による雇用相談にも対応しています。各窓口への相談方法は、それぞれの機関の公式サイトで確認してください。
外国人採用で迷ったら「自分たちだけで悩まない」のがポイントになります。相談窓口の活用により、外国人採用に関する不安が解消され、外国人材の定着と店舗経営の安定につながるでしょう。