新規出店のための店舗開発や、既存店舗の商圏エリア内におけるマーケティング戦略立案など、店舗経営の戦略を立てる上で重要になるのが商圏分析です。
スーパーも例外ではなく、商圏分析でスーパーの商圏エリアにおける現状を整理し、商品の仕入れ量や品揃えを変えて収益向上を図る必要があります。
では、エリアマーケティングを実施するためにスーパーで商圏分析を行う際、商圏は何km範囲のエリアを設定すれば良いのでしょうか。
本記事では、スーパーの商圏分析を実施する際に基礎知識として知っておきたい、商圏エリアの設定方法や範囲の目安について解説します。
商圏分析とは
商圏分析とは、店舗や施設、企業のマーケット状況を把握するために商圏調査を行って分析する手法のことです。
商圏内に在住あるいは通勤通学などで通行する人の属性情報を収集し、変化や傾向を読み解いてマーケティング戦略立案に活用します。
具体的には、年齢や性別・家族構成・世帯年収などの経済状況などです。また、人流データや統計データと組み合わせれば、時間帯や季節による通行量や通る人の属性変化なども分析できます。
店舗を新規出店する際は、出店場所の選定や開業直後の経営戦略に活用することが一般的です。また、既存店舗の場合は商圏エリア内の顧客情報から動向の変化をいち早くキャッチして、マーケティング戦略に反映します。
参考記事:商圏分析とは?目的や重要性・無料で使えるツールも紹介
商圏分析で活用するつ5の範囲設定
商圏分析では、以下5つのうちいずれかの商圏範囲・商圏距離を設定することが一般的です。
- 足元商圏
- 一次商圏
- 二次商圏
- 三次商圏
- オンライン商圏
また、移動手段によって1分間に移動できる距離が異なるため、ここでは以下の速度で目安を算出しています。
移動手段 | 1分あたりの移動距離 |
---|---|
徒歩 | 80m |
自転車 | 250m |
車 | 400m |
電車 | 1km |
それぞれ、具体的にどの程度の範囲で商圏設定を行うのか、詳しく解説します。
足元商圏
足元商圏は、顧客が店舗に訪れる際にかかる時間が5分程度の範囲です。徒歩の場合は店舗からの距離が320m~400m程度、自転車の場合は1km~1.25km程度の範囲が該当します。
基本的に、小規模~中規模程度のスーパーやコンビニエンスストアなどの場合は、近隣住人が利用することを想定して分析するケースが多い傾向です。
そのため、車や電車ではなく、徒歩や自転車移動を念頭において、足元商圏の範囲を定めます。
一次商圏
一次商圏では、足元商圏よりも広い店舗から10分~15分程度のエリアを設定します。
店舗までの距離が、徒歩で800m~1.2km、自転車で2.5km~3.8km、車で4~6kmほどの範囲です。
一次商圏は「最寄品商圏」とも呼ばれており、日用品や生活雑貨・食料品などを購入する顧客が多い商圏範囲を指します。
足元商圏と同様に、スーパーやコンビニエンスストアを中心とした業態の商圏分析で、活用されるケースが一般的です。
一次商圏内の人口密度が高く商圏人口が多いほど、スーパーやコンビニエンスストアなどの出店に適したエリアだと言えるでしょう。
二次商圏
二次商圏では、さらに範囲を拡大して自転車や車移動で10分~15分程度のエリアを設定します。週に2~3回利用するような、いわゆる「まとめ買い」の顧客を想定した店舗での商圏分析で設定される範囲です。
二次商圏は「中間品商圏」とも呼ばれており、ある程度日常的に利用する機会があるような、商品やサービスを提供している店舗が対象としています。
ドラッグストアや書店、趣味用品などを取り扱っているような店舗です。
三次商圏
三次商圏は、店舗まで移動する顧客が車や電車で30分~40分かかるエリアのことです。「専門店商圏」とも呼ばれており、月に数回~数カ月に1回程度利用するような店舗を指します。
例えば、美容院やサロン、大規模ショッピングセンター、家具・家電量販店などです。距離の遠さだけでなく日常的には利用しないものの、生活上なくてはならない商品・サービスを提供している店舗が該当します。
オンライン商圏
オンライン商圏は、もっとも範囲の広い商圏エリアを設定します。おもに、ECサイトやオンライン上で提供できるクラウドサービスを提供している企業が設定する商圏範囲です。
オンライン商圏の場合、顧客が直接店舗に足を運ぶ必要がないため、距離での商圏範囲を設定しないケースも少なくありません。日本全国だけでなく、多言語表記に対応すれば世界中を商圏として定められるためです。
オンライン商圏における商圏分析では、Webサイトからの購入者・アプリからの購入者・ポータルサイトを経由した購入者など、流入ルートごとに分析します。
具体的には、顧客の年齢や性別のほか、ページごとのアクセス数や離脱率・滞在時間・ 購入商品などを分析し、購入に至ったルートや顧客属性を分析する手法が一般的です。
スーパーの商圏範囲は何kmが適切?設定方法について
スーパーの商圏範囲は、スーパーの店舗規模によって異なります。
店舗規模 | 商圏範囲 |
---|---|
小規模~中規模 | 400m~2.5km |
大型スーパー | 2.5km~8km |
総合スーパー(GMS)・まとめ売り業態のスーパー | 10km~20km |
このように、店舗の規模が異なれば商圏範囲も異なるため、まずは規模で判断してみると良いでしょう。
大規模店舗の場合は、車で来店する顧客をターゲットにすることから、新規出店の際は駐車スペースなども考慮しなければなりません。
また、小規模店舗~中規模店舗の場合は、徒歩や自転車での来店を考慮して、大型商品やまとめ売り商品仕入れを調整しましょう。
スーパーの商圏が変動する要因
スーパーの商圏は、店舗の規模だけでなく以下のような要因でも変動することがあります。
- 顧客の移動手段の違い
- 「商圏バリア」の有無
- 競合店と商圏エリアの重複状況
- 知名度の高さ
ここからは、具体的にどのような理由で商圏範囲が変動するのか、要因ごとに詳しく解説します。
顧客の移動手段の違い
スーパーの商圏が変動する要因の1つとして、顧客の移動手段の違いが挙げられます。
上述のように、店舗へ向かう移動手段が徒歩であれば数百m程度の範囲ですが、車や電車になれば数km~数十kmに広がるケースも少なくありません。
既存店舗の場合は顧客の移動手段をリサーチした上で、商圏範囲を定めると良いでしょう。
新規出店・店舗開発の場合は、開業する店舗の規模や品揃え・サービスの内容に応じて、想定した移動手段での商圏範囲を設定することが大切です。
「商圏バリア」の有無
「商圏バリア」の有無でも、商圏範囲は変動します。商圏バリアとは、顧客が店舗に来店する際に障害となる要素のことです。
具体的には、大きな幹線道路や山・川・橋、急な坂道、渋滞の多い道路などが挙げられます。このような要素が商圏内にあるなど立地条件に含まれている場合、顧客は店舗に来店するために迂回を余儀なくされるでしょう。
直線距離よりも店舗までの迂回距離の方が長くなるため、来店頻度が低下する要因になりかねません。
商圏範囲を設定する際は、このような商圏バリアがエリア内にないか確認しておくことも重要です。
競合店との商圏エリアの重複状況
商圏範囲は、競合店との商圏エリア重複状況によって変動することがあります。
競合店と商圏範囲が重複していると、顧客の奪い合いになるため商圏範囲の設定を見直さなければなりません。
例えば、自店舗から見て南側のエリアが競合店舗の商圏範囲と重複している場合、北側に商圏エリアを広げてマーケティング戦略を打ち出すような方法です。
また、エリア設定を変えるのではなく商品やサービスを競合とは異なるものにするなど、戦略の方向転換が必要になる場合もあると考えておきましょう。
知名度の高さ
店舗の知名度によって、商圏範囲が変動することもあります。テレビや雑誌などのメディアで取り上げられたり、SNSで話題になったりして、遠方からの顧客が来店するケースです。
あえて遠方からの顧客を取り込みたい場合は、話題性のある商品を開発するなどして、商圏範囲を広げる戦略も打ち出せます。
また、行列ができることへの想定として、人員配置を増やしたり整理券の配布を行ったりするなど、コスト負担が増加することにも対策を講じておかなければなりません。
そのため、知名度の高さによっては、商圏分析の実施範囲を調整し、マーケティング戦略に反映していく必要があります。
まとめ
商圏分析は、新規出店・店舗開発の際だけでなく、既存店舗の集客実施やマーケティング戦略を左右する重要な分析手法です。
定期的に実施して、競合店の出店や人流の変化、地域特性を把握する必要があります。スーパーの場合は、店舗の規模感や扱っている商材などに応じて設定しましょう。
商圏エリア内の状況を正確に把握することが、効果的なマーケティング戦略立案のカギになります。
商圏分析に役立つツールについては、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。