近年、小売店や飲食店などで広まっている会計設備といえばセルフレジです。しかし、セルフレジにはさまざまな種類のものがあり、新たなシステムも開発されています。
そもそも、セルフレジはどのような仕組みで会計ができるようになっているのでしょうか。今回は、セルフレジの違いやそれぞれの仕組みと、活用している企業の事例を紹介します。
セルフレジとは?種類ごとの違いについて
セルフレジとは、店舗や施設を訪れた顧客が、自ら操作して決済を行う設備のことです。小売業の場合、顧客が商品バーコードをレジのスキャナーで読み取って登録し、決済を行います。
飲食店であれば、モバイルオーダーやテーブルオーダーなどのセルフオーダーシステムと連携させ、顧客ごとに会計できる設備が導入されているのも特徴です。
また、広義では券売機や自動精算機などもセルフレジに該当します。決済をセルフ化するために、自動釣銭機機能が搭載されたものや、キャッシュレス決済が利用できる設備もあるなど種類は豊富です。
商品登録から会計まですべてのレジ作業を顧客が行うものをフルセルフレジ、商品登録などのレジ操作を店員が行って会計のみを顧客が行うものをセミセルフレジと呼びます。
参考記事:セルフレジとは?仕組みや使い方・導入するメリット・費用についてまるごと解説
セルフレジの導入率
一般社団法人全国スーパーマーケット協会が実施した調査では、2023年度時点でセルフレジを設置している企業の割合(「半数以上の店舗に設置」と「半数未満の店舗に設置」の合計)が、31.1%となりました。
セルフレジが誕生した2003年から約20年経ちますが、現在も導入率は3割程度に留まっていることがわかります。
しかし、セルフレジの導入率は2021年度で23.5%、2022年度は25.2%と微増しており、小売業における導入率が増加していることは事実です。
参考サイト:2023年 スーパーマーケット年次統計調査 報告書|一般社団法人全国スーパーマーケット協会
また、飲食店やアミューズメント施設などでも幅広く導入されており、今後さらに増加していくことが予想されます。
セルフレジの仕組み【バーコード読み取りタイプ】
バーコード読み取りタイプのセルフレジは、商品1点ずつに記されているバーコードをレジのバーコードスキャナーで読み取って登録し、決済を行う仕組みです。
バーコードのスキャン漏れを防ぐために、袋詰め台の部分が重量センサー付きになっている製品や、AI防犯カメラで商品の読み取りを認識する機種もあります。
登録した商品の合計金額が自動的に算出され、任意の決済手段で清算できる仕組みです。有人レジと組み合わせて決済のみをセルフ化する「セミセルフレジ」や、データ管理・分析が可能なPOSレジ搭載型の設備もあります。
参考記事:セルフレジの種類と特徴は?メリット・デメリットと導入で解決できる課題・注意点
セルフレジの仕組み【RFIDタグ方式】
RFIDタグ方式のセルフレジは、商品1点ずつにRFIDタグを付けておき、読み取り場所に置くことで自動的にタグが読み取られて商品登録できるレジです。
バーコードを1つずつ読み取る必要がなく、スムーズに商品登録できるメリットがあります。
RFIDタグをワイヤレス通信で読み取れるので、商品の登録漏れが発生する心配もありません。セルフレジのほか、倉庫における在庫管理などにも活用されているシステムです。
セルフレジの仕組み【ショッピングカート連動型】
ショッピングカート連動型のセルフレジは、ショッピングカートのハンドル部分に商品の登録機が付属している仕組みの設備です。
従来のバーコード読み取りによるセルフレジの場合、レジ待ち列が長くなる課題もありました。ショッピングカート連動型の設備を導入することにより、買い物をしながら商品のバーコード読み取りが行えるようになります。
レジでは、登録した商品の清算・支払いを行うだけで済むため、会計の待ち列解消に役立つ仕組みです。スーパーマーケットでの導入が進んでいます。
セルフレジの仕組み【リストバンド方式】
リストバンド方式のセルフレジは、アミューズメント施設・温泉施設・スポーツ施設などで活用されている設備です。顧客は、施設内のサービスを利用したり飲食したりする際に、リストバンドを登録します。
これにより同一リストバンドで利用したサービスの金額が加算されていき、施設を退館する際にまとめて清算・支払いが行える仕組みです。
プールや温泉などでも、現金やカードを持ち歩くことなくサービス利用できるメリットがあります。また、グループや家族のリストバンドをまとめて会計することも可能なため、支払いもスムーズに行える点が特徴です。
セルフレジの仕組み【レジレスタイプ】
セルフレジの中には、「レジレス」と呼ばれる決済・支払いを行うことなく会計が完了できるシステムもあります。
事前にクレジットカードや電子マネー決済などを登録しておくと、店舗で顔認証による個人特定が行われ、手に取った商品が決済される仕組みです。
商品棚に重量センサーが搭載されていたり、店内のさまざまな角度から撮影できる防犯カメラで商品を手に取る様子が撮影されたりして、購入した商品が認識されます。
レジスタッフ不要の無人レジが特徴で、小規模なコンビニエンスストアや自社ビル内・大学構内の売店などで導入されている設備です。
セルフレジで会計を完了するまでの流れ
小売店のセルフレジ(フルセルフレジ)で会計を完了するまでの一般的な流れは、以下の通りです。
- 商品カゴをセルフレジの所定エリアに置く
- 買い物袋を指定された場所にセットする
- 会員証・ポイントカードなどを登録する
- 商品のバーコードを読み取って登録する
- 表示された合計金額の支払いを任意の方法で行う
- 発行されたレシート・領収書を受け取る
一方で、セミセルフレジの場合は、上記1~4の動作をレジスタッフが行います。決済のみを顧客が行えば良いため、フルセルフレジの操作に慣れていない高齢者世代が多い店舗におすすめです。
セルフレジを導入している企業の成功事例
ここからは、実際にセルフレジを導入・活用している企業の事例をセルフレジのタイプごとに紹介します。自店舗でどのようなセルフレジを活用したいのかをイメージしながら、参考としてお役立てください。
【バーコード読み取りタイプ】株式会社大創産業(ダイソー)
100円均一ショップを運営する株式会社大創産業では、バーコード読み取りタイプのフルセルフレジを導入しています。店舗スタッフのレジ業務負担軽減や接客サービスの向上など、店舗業務の効率化やサービスの質アップに活用している事例です。
セルフレジを導入した結果、商品を探しているお客様の案内や迷子にいち早く対応するなど、売場業務に人的リソースを集中できるようになりました。
参考サイト:株式会社寺岡精工|導入事例:株式会社大創産業
【RFID方式】株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)
アパレル店のユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングでは、Avery Dennison Japan株式会社と共に開発した、RFIDタグ方式のセルフレジを導入しています。
一般的なセルフレジとは異なり、買い物カゴをレジ横の読み取りエリアに置くだけで、購入商品がレジに登録される仕組みです。メディアでも取り上げられ、話題となりました。
RFIDタグを活用したセルフレジの導入は、お客様の感動につながるサービスの1つという位置付けであり、カスタマーエクスペリエンスのさらなる向上に日々尽力しています。
参考サイト:Avery Dennison Japan株式会社
【ショッピングカート連動型】イオン株式会社(レジゴー)
スーパーマーケットや小売店などを展開するイオン株式会社では、運営している店舗の一部でショッピングカート連動型のセルフレジ「レジゴー」を提供しています。
ショッピングカートに商品の読み取り端末が付属しているため、買い物をしながら商品登録ができる仕組みの設備です。夕方などの混雑時間帯におけるレジの待ち列解消につながり、導入店舗も随時拡大しています。
参考サイト:イオン株式会社|レジゴー
【リストバンド方式】大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社
温泉施設を提供している大江戸温泉物語では、リストバンド方式のセルフレジを導入しています。施設内の飲食店のみならず、マッサージや整体などのサービス、縁日の利用などでもリストバンドで支払いができるため、手荷物なく館内で過ごせる点が魅力です。
退館時に利用したサービスの合計金額をまとめて清算でき、スムーズなサービス利用や現金支払いによる人的ミスの軽減などにつなげています。
参考サイト:大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ株式会社
【レジレスタイプ】日本電気株式会社(NEC)|本社内レジレス店舗
日本電気株式会社の本社内にある社員向けの売店では、自社開発したレジレスタイプのセルフレジシステムを試験導入しています。
人手不足が深刻化する昨今において、レジスタッフなしで店舗運営が可能になるシステムかつ、レジに並ばずに決済ができるシームレスな買い物体験を提供している事例です。
また、昼休憩などの限られた時間に利用する社員の買い物時間を最小限に抑えられることから、入店から買い物完了まで最短5秒で済む驚異的な利便性を生み出しています。
参考サイト:日本電気株式会社(NEC)
まとめ
セルフレジの仕組みは多様化しており、技術の進歩によりさまざまなサービスが提供されています。店舗によって適しているスタイルは異なるものの、多様かつスピーディーな決済方法の実現と人手不足への対応や業務効率化に役立つ手段として、導入に踏み切る店舗は少なくありません。
しかし、個人店舗や小規模店舗では費用負担がネックとなり、なかなか導入に踏み切れない方も多いでしょう。近年では、導入コストが抑えられるレンタルやサブスクで利用できるセルフレジも増えており、それらを活用するのもおすすめです。
自店舗の業務オペレーションに即したセルフレジサービスを導入し、会計業務の効率化や顧客体験の向上を実現しましょう。