セルフレジを導入すべきか検討する際、初期費用がかかることが気になる方は多いのではないでしょうか。
近年、政府や自治体主導でさまざまな業種でDX化が促進されており、セルフレジの導入に利用できる補助金や助成金制度があります。
ただし、補助金や助成金制度を利用するには、申請要件を満たさなければなりません。誰でも利用できる制度ではない点に注意が必要です。
本記事では、セルフレジを導入する際に利用できる補助金や助成金制度について、詳しく解説します。
また、補助金や助成金制度が利用できなかった場合に、セルフレジの導入コストを抑える方法についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
セルフレジ導入に利用できる補助金・助成金とは
セルフレジを導入する際に利用できる補助金・助成金とは、政府や自治体が行っている事業者向けの支援制度のことです。
どちらも返済不要の給付金として資金面で援助してくれる制度ですが、制度の目的が異なります。
補助金は、政府や自治体が推進するビジョンの達成に向けて尽力してくれる事業者に対し、条件に合致する場合にのみ支給される給付金です。
一方で、助成金は労働環境や雇用状況の改善を目的に導入された制度です。どちらを利用する場合でも、給付を受けるには申し込み条件を満たしている必要があります。
セルフレジ導入に利用できる補助金・助成金制度5選
国や自治体が提供している補助事業の中で、セルフレジ導入に利用できる補助金・助成金制度は、以下の通りです。
- IT導入補助金
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 働き方改革推進支援助成金
- 業務改善助成金
それぞれ利用するために必要な条件や支給金額、申請期間など、制度ごとの概要について紹介します。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、業種を問わずさまざまな企業の経営課題を解決するために、ITツールを導入した企業に支給される補助金制度です。
機器を導入した場合は「デジタル基盤導入型」、クラウドサービスなどのITツールのみを導入した場合は「通常型」を利用できます。
小売店のセミセルフレジや飲食店の発券機・券売機、サービス業・クリニック向け自動精算機でも活用できる点が特徴です。
適用条件 | 補助率 | 上限金額 |
---|---|---|
ソフトウェア導入費 | 3/4以内 (小規模事業者は4/5以内) | 50万円 |
ソフトウェア導入費 (50万円超の部分) | 2/3以内 | 50万円〜350万円 |
ハードウェア購入費 | 1/2以内 | PC・タブレットなど: 10万円 発券機・レジなど: 20万円 |
※上記は「デジタル基盤導入型」の補助率
また、通常型の場合は補助率が1/2以内となり、課題解決のプロセス1つ以上で50万円~150万円以下が支給されます。
4プロセス以上導入した場合は、150万円~450万円以下が補助額の上限です。
IT導入補助金の適用を受けながらセルフレジを導入したい場合は、IT導入支援事業者に補助金申請をサポートしてもらう方法もあります。
参考サイト:IT導入補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業や小規模事業者が相次ぐ制度変更に対応するために導入したツールや、設備に適用される補助金です。ものづくり補助金と呼ばれています。
生産性向上に向けてセルフレジや自動釣銭機、自動精算機、POSレジ導入などの設備投資を行った場合も、補助対象です。
適用条件 | 補助率 | 上限金額 |
---|---|---|
従業員 5人以下 | 1/2 (小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は2/3) | 750万円 |
6人~20人 | 1,000万円 | |
21人以上 | 1,250万円 |
※製品・サービス高付加価値化枠の補助率
単価で50万円(税抜)以上の設備投資を行った場合に、活用できる点が特徴です。支給の可否は審査により判断されるため、支給対象とならない場合もあります。
また、中小企業における生産性向上や業務効率化のためにセルフレジや自動精算機を導入する場合、中小企業省力化投資補助金の利用も可能です。
ものづくり補助金と比べて補助金額の上限が低いため、ものづくり補助金が活用できない場合の手段として検討しておくと良いでしょう。
参考サイト:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、常勤従業員数が少ない小規模事業者の販路拡大や生産性向上にかかる経費を補助してくれる制度です。
従業員数の多い企業では利用できませんが、これから事業を大きくしていきたい小規模事業者であれば、サービス業や小売業などで利用できます。
適用条件 | 補助率 | 上限金額 |
---|---|---|
通常枠の利用 | 2/3 | 50万円 |
ただし、Webサイト関連費の場合は、申請補助金額の1/4が上限になります。
そのほか、賃金引上げ枠、卒業枠、創業枠、インボイス枠、後継者支援枠などの特別枠があるのも特徴です。
セルフレジや自動釣銭機導入と同時に、インボイス制度への対応や従業員の賃金引上げなどを行う場合は、特別枠の利用も検討すると良いでしょう。
事業の立て直しを図るためにセルフレジを導入する場合は、事業再構築補助金が活用できます。
参考サイト:小規模事業者持続化補助金
働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金は、従業員の働き方改革を積極的に進める企業を後押しするために作られた制度です。
働き方改革推進支援助成金には、以下の4つのコースがあります。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間適正管理推進コース
- 団体推進コース
このうち、セルフレジの導入は「労働時間短縮・年休促進支援コース」もしくは「勤務間インターバル導入コース」に該当します。
ただし、適用されるのは労働災害補償保険が適用される中小企業の事業者のみです。業種によって、中小企業に該当する要件が異なるため、確認しておきましょう。
給付を受けるための条件には、業務効率化などを実現し、時間外労働時間を80時間以下もしくは60時間以下にする、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する、などがあります。
助成される金額は、最大480万円までです。事業規模や成果目標の達成状況などによって、支給額は変動します。
- 成果目標1から3の上限額および賃金加算額の合計額
- 対象経費の合計額×補助率3/4
- 常時使用している労働者数が30人以下かつ、特定の取組にかかった金額が30万円を超える場合の補助率は4/5
参考サイト:働き方改革推進支援助成金
業務改善助成金
業務改善助成金は、生産性向上につながる設備への投資などを行った際に、助成金が受け取れる制度です。支援を受けるには、事業所内の最低賃金を一定以上引き上げる必要があります。
コース区分 | 事業場内最低賃金の引上げ額 | 引き上げる労働者数 | 助成上限額 右記以外の事業者 | 助成上限額 事業場規模30人未満の事業者 |
---|---|---|---|---|
30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | 60万円 |
2〜3人 | 50万円 | 90万円 | ||
4〜6人 | 70万円 | 100万円 | ||
7人以上 | 100万円 | 120万円 | ||
10人以上 | 120万円 | 130万円 | ||
45円コース | 45円以上 | 1人 | 45万円 | 80万円 |
2〜3人 | 70万円 | 110万円 | ||
4〜6人 | 100万円 | 140万円 | ||
7人以上 | 150万円 | 170万円 | ||
10人以上 | 180万円 | 180万円 | ||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | 90万円 |
2〜3人 | 90万円 | 120万円 | ||
4〜6人 | 150万円 | 190万円 | ||
7人以上 | 230万円 | 230万円 | ||
10人以上 | 300万円 | 300万円 | ||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | 150万円 |
2〜3人 | 150万円 | 240万円 | ||
4〜6人 | 270万円 | 290万円 | ||
7人以上 | 450万円 | 450万円 | ||
10人以上 | 600万円 | 600万円 |
※10人以上の上限額区分は、<特例事業者>でなければ対象外です。
また、適用される助成率は、最低賃金額によって異なります。
- 900円未満:9/10
- 900円以上950円未満:4/5もしくは一定の生産要件を満たすと9/10
- 950円以上:3/4もしくは一定の生産要件を満たすと4/5
生産性要件とは、助成金の支給申請を行う際に、会計年度の「生産性」が3年度前と比較して直近の年度で1%~6%以上伸びているか、という点です。
支給要件を満たしていれば、最大で600万円の助成が受けられます。
参考サイト:業務改善助成金
セルフレジ導入に補助金・助成金制度を使う場合の注意点
セルフレジや自動精算機、自動釣銭機導入にあたり、補助金や助成金制度を利用する際には、申請要件を満たしているか、必要書類がそろっているかを確認することが大切です。
確認できておらず不備を見落としたまま申請すると、支給対象外になったり再申請が必要になったりする可能性があります。
また、制度によっては申請できる期間が定められている場合もあります。期間を過ぎてしまわないように早めに必要書類を整え、期間内に申請手続きを行いましょう。
補助金・助成金以外でセルフレジの導入費用を抑える方法
補助金や助成金が利用できなかった場合でも、セルフレジの導入費用を抑える方法はあります。
ただし、店舗の経営が長期になると、導入費用を負担してセルフレジを購入した方が、結果的に安く済む場合もあるので注意してください。
中古で購入する
セルフレジは、新品で購入する方法以外に、中古での購入もできます。
新品で購入する場合は、1台100万円~400万円程度必要です。一方で、中古であれば数十万円程度で購入できるため、大幅に導入費用を削減できます。
ただし、中古のセルフレジを購入するのはあまりおすすめできません。中古品は、メーカーのメンテナンス対象外となることが多いためです。
購入後に機器のトラブルが発生した際に、修理費用が高額になる可能性があります。中古のセルフレジを購入する場合は、信頼できる相手に限定するなど、慎重に判断することが大切です。
レンタルやリースを利用する
補助金や助成金が使えないときに、初期費用を抑えてセルフレジや自動釣銭機を導入したいのであれば、レンタルやリース契約での利用がおすすめです。
レンタルであれば、1日~数カ月だけ利用したい場合にも対応できます。一方で、リース契約の場合は数年単位での契約が必要になりますが、レンタルよりも月額費用が抑えられる点が特徴です。
短期利用ならレンタル、中長期利用ならリースなど、利用したい期間に合わせて使い分けると良いでしょう。
ただし、数年~数十年単位で契約するのであれば、購入した方が安く済む場合があります。
定期的に最新機種に入れ替えたい、初期費用をとにかく抑えたいなど、レンタルやリースを利用するメリットが大きい場合におすすめです。
参考記事:セルフレジの価格はどれくらい?導入費用を抑える3つのポイント
まとめ
セルフレジの導入に活用できる補助金や助成金制度は、制度ごとに利用条件が異なります。
条件を満たしていない場合は、制度を利用できないため、条件を満たしているかを申請前に確認しておくことが大切です。
また、利用条件を満たしていることに気付かず、申請をしていないと補助金や助成金の支給は受けられません。利用条件を満たしているかを確認し、利用できる制度を見逃さないように情報収集を行いましょう。