飲食店の業態やジャンルは多岐にわたりますが、中でも居酒屋は開業数も多く、人気の飲食店ジャンルの1つです。しかし、居酒屋を開業しても、成功率は低いと言われていることをご存知でしょうか。
居酒屋の開業にこぎつけても、思うように経営が軌道に乗らず、閉業になってしまうのを避けるためには、居酒屋の成功率が低い原因を正しく理解しておくことが重要です。
そこで今回は、居酒屋開業の成功率に関する情報と、成功率が低い原因に加え、居酒屋開業の成功率をアップさせるためのポイントについて解説します。
居酒屋開業の成功率は低い?
居酒屋開業を検討している方にとって、居酒屋の成功率は気になる情報の1つでしょう。まずは、居酒屋開業・経営における現状と、成功率について各種調査データをもとに考察します。
3年以内に約6割が閉店している
出典:飲食店.comリサーチ
飲食店.comが同社の会員に実施した「閉店した飲食店の営業年数」に関する調査によると、居酒屋・ダイニングバー業態の約6割が3年以内に閉店していたことが分かりました。
この調査結果から、開業から3年以上経営が続く居酒屋は、半数以下にとどまっていることが推察されます。
居酒屋の成功率が低いとされているのは、このような数年以内の廃業率が高いことも影響しているでしょう。
参照:出典:閉店した飲食店の営業年数 業態別割合|飲食店.comリサーチ
2024年度には居酒屋の倒産件数が過去最高に
出典:株式会社帝国データバンク
居酒屋の開業成功率が低いことを示すデータとして、帝国データバンクが実施した倒産動向調査も挙げられます。
2024年度、居酒屋の倒産件数は過去最多を更新しました。この背景には、2020年以降に政府が実施していた新型コロナウイルス流行時の給付金制度が、終了した影響もあります。
コロナ流行後の顧客ニーズの変化に順応できず、給付金が終了したタイミングで廃業したケースは少なくありません。また、飲食店を取り巻く経費負担の大幅な増加も、経営を難しくしている要因と考えられます。
出典:「居酒屋」の倒産動向(2024年1-11月)|株式会社帝国データバンク
居酒屋の成功率が低い原因
居酒屋の成功率が低い原因として挙げられるのは、以下4項目です。
- 開業率が高く競争が激しい
- 人件費の高騰と人手不足による経営困難
- 原材料仕入れ価格・光熱費の高騰による収益低下
- リピーターを獲得する難易度が高い
それぞれ、具体的にどのようなことが理由で居酒屋の経営難易度を上げているのか、詳しく解説します。
開業率が高く競争が激しい
居酒屋の成功率が低い原因として、開業率が高く競争が激しいことが挙げられます。株式会社Reviewの独自調査によると、2024年10月~12月期に開業した飲食店のうち、居酒屋はもっとも数が多いことが分かりました。
次いで、バーやカフェが続いている状態です。居酒屋は、廃業率の高さも影響して入れ替わりが激しい業態であることが分かります。
開業率が高い業態であるにもかかわらず、閉業率も高いため、居酒屋は経営の持続・安定化が課題であるといえるでしょう。
参照:【独自調査】全国の飲食店開業数が16,000件超 全国の開業ランキング公開|株式会社Review
人件費の高騰と人手不足による経営困難
人件費の高騰と人手不足による経営困難も、居酒屋開業の成功率が低い原因の1つです。政府主導で最低賃金の引き上げが推進されている影響もあり、アルバイト・パート雇用の人件費も増加しています。
また、人口減少・高齢化社会による現役世代の減少により、人材の確保そのものが難化しているのも現状です。
このような人件費の高騰や人手不足は、店舗経営において大きな障壁となります。結果的に居酒屋のみならず、飲食店全体で「人手不足倒産」が増加している傾向です。
原材料仕入れ価格・光熱費の高騰による収益低下
原材料仕入れ価格や光熱費の高騰も、居酒屋の成功率を押し下げている原因です。昨今の物価高により、居酒屋で提供している料理や飲料の仕入れ値も高くなっています。
また、光熱費も高騰していることから、販売価格に転嫁できないまま、収益が減少しているケースは少なくありません。
価格転嫁した場合も、これまでと同様に来店が見込めるとは限らず、客離れによって閉業に追い込まれることがあります。
リピーターを獲得する難易度が高い
リピーターを獲得する難易度が高いことも、居酒屋の開業成功率が低い原因の1つです。居酒屋は、基本的に新規顧客の来店が多い業態であり、リピーターの獲得は経営課題にも挙げられます。
例えば、オフィス街であれば就業後の飲みや、歓送迎会・忘年会新年会などの宴会などの需要が中心です。立地条件や店舗のコンセプトによって左右される面もありますが、固定客が見込めない店舗の場合、経営が安定せず閉店につながる可能性があります。
居酒屋開業を成功させる3つのポイント
居酒屋開業を成功させるには、以下3つのポイントを意識することが重要です。
- 商圏分析を行ってから出店場所を決める
- 店舗のDX化を推進する
- 業界のトレンドをいち早くキャッチする
それぞれ、具体的にどのような取り組みを実施すれば良いのか、なぜこれらのポイントが成功につながるのか、詳しく解説します。
商圏分析を行ってから出店場所を決める
商圏分析を行ってから出店場所を決めるのは、居酒屋開業を成功させるポイントの1つです。
商圏分析とは、特定のエリアの人流データや周辺情報を活用し、売り上げ見込みや通行する人の属性情報(年代や性別、経済状況、家族構成など)から、売上を予測する分析手法を指します。
商圏分析は、「飲食店の開業成功は出店場所で決まる」ともいわれているほど重要なプロセスです。商圏分析によって売り上げ見込みを事前に算出しておくことで、コンセプト設計やターゲットの絞り込みも容易になります。
商圏分析について詳しくは、以下の記事で解説していますのでこちらもぜひ参照ください。
参考記事:商圏分析とは?目的や重要性・具体的なやり方と無料の商圏分析ツールを紹介
店舗のDX化を推進する
店舗のDX化を推進するのも、居酒屋開業を成功させるポイントです。DX化とは、デジタルトランスフォーメーションのことで、デジタル技術を活用した企業・店舗の業務変革を意味します。
居酒屋の場合、セルフレジやモバイルオーダーシステム、配膳ロボット、デジタル会員証の導入などがDX化の例です。店舗をDX化すれば、業務効率化が実現できるため、人手不足の解消につながります。
また、最小限の人員で店舗を運営できるようになることから、人件費削減にも効果的です。導入に費用はかかるものの、長期的視点で見れば投資効果は高いといえるでしょう。
業界のトレンドをいち早くキャッチする
居酒屋の開業を成功させるには、業界のトレンドをいち早くキャッチすることも大切です。
居酒屋のメニューに対する需要は年々変化しており、そのような顧客ニーズをいち早くキャッチし、店舗の経営戦略に反映することが長期的な経営の安定化につながります。
近年の居酒屋のトレンド傾向は、以下の例です。
トレンド名称 | 内容 |
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せんべろ | 千円でべろべろに酔えるメニューのこと。つまみになる料理とお酒2~3杯のセットメニューが多い。 |
昼飲み | 昼間からお酒を提供する業態。不規則勤務や夜勤労働者、観光客などの需要が見込める。 |
0次会 | 飲み会前の「軽く1杯」のニーズを満たす業態。待ち合わせまでの時間や仕事帰りの一人飲みなどの需要がある。 |
ノンアル居酒屋 | ノンアルコールカクテル・ビールなどを提供する業態。食事が美味しい店舗も多く、妊娠中の女性やお酒が苦手な人も楽しめる。 |
このようなニーズへの対応により、新たな顧客層の開拓やリピーターの獲得につながる可能性があります。
まとめ
居酒屋の開業成功は、決して楽な道のりではありません。開業数が多い反面、廃業率が高い業種であることを理解した上で、具体的にどのような戦略で戦っていくのかを検討する必要があります。
トレンドをいち早くキャッチすることはもちろん、まずは開業前に商圏分析を入念に行い、店舗の出店場所選びを慎重に行うことから着手しましょう。