居抜き物件は初期費用を抑えて開業できる一方、退去時には一般の店舗より注意すべき点が多くあります。
造作譲渡の扱い、原状回復範囲、解約予告の期限などを誤ると、予想以上の出費やトラブルにつながるケースも少なくありません。
特に飲食店や美容室のように設備が多い業態では、退去費用の差が大きくなりがちです。
本記事では、居抜き物件の退去時に発生しやすい費用や注意点、トラブルを防ぐための実践策を店舗オーナー向けに詳しく解説します。
居抜き物件の退去時に発生するリスクとは?

居抜き物件は開業コストを抑えられる反面、退去時には独自のリスクが発生します。
原状回復の範囲や設備の扱い、造作譲渡契約の条件など、スケルトン物件とは異なるルールが適用されるためです。
退去段階で高額な請求が発生する事例も多いため、契約内容の確認と事前準備が欠かせません。
居抜き契約の「退去時負担」の特徴
居抜き物件の契約では、入居時に設備や内装を引き継ぐ代わりに、退去時の負担範囲が広く設定されているケースがあります。
例えば、「現状のまま返却」「設備は残置」「造作は撤去」など、契約書の文言によって求められる対応が異なります。
特に飲食店や美容院のように設備量が多い業種では、撤去費用が高額になる場合も少なくありません。
事前に原状回復区分の確認と、管理会社とのすり合わせが重要です。
退去時に必要な費用の種類
居抜き物件の退去時に発生する費用は、原状回復工事費、設備撤去費、廃棄処分費、クリーニング費用など多岐にわたります。
厨房設備やガス・排気設備、固定什器が残っている場合、それらを撤去するだけで数十万円規模になることもあります。
また、造作譲渡契約で引き継いだ設備が故障している場合、修繕を求められるケースも。
費用が膨らみやすいため、退去前に見積もりを取って負担額を把握しておきましょう。
居抜き物件特有のトラブル例
居抜き物件の退去時は、「設備の所有権」「原状回復の範囲」「造作の残し方」を巡るトラブルが多く発生します。
前テナントが設置した設備をそのまま使っていた場合でも、退去時に撤去を求められるケースや、劣化した設備の修繕費を負担させられる事例もあります。
また、造作譲渡が成立していない状態で設備を残すと、無断残置とみなされ追加費用を請求されることも。
契約書の確認と、入居時の設備リスト化がトラブル防止の鍵です。
居抜き物件退去時にかかる費用|項目別にシミュレーション

居抜き物件は初期費用を抑えられる一方、退去時には思わぬコストが発生する場合があります。
特に原状回復の範囲や設備の扱いは契約内容によって大きく異なるため、解約前に詳細を把握しておくことが重要です。
ここでは、居抜き物件を退去する際に必要となる主な費用項目を整理し、店舗オーナーが想定しやすいかたちでポイントをまとめています。
飲食店・美容院・小売店など業態別でも大きく差が出るため、自店舗にあてはめながら確認しておきましょう。
原状回復工事費(壁・床・電気設備など)
居抜き物件でも、退去時には契約書で定められた範囲の原状回復が求められます。
壁紙の張り替えや床材の補修、換気設備やダクトの撤去など、施工範囲が広いほど費用は高額になりやすい項目です。
特に飲食店の場合は油汚れの蓄積が原因で追加清掃が必要になるケースも多く、工事費用が想定以上に膨らむこともあります。
一般的な原状回復費は30万円から100万円前後を目安にされることが多いですが、厨房設備の撤去を含むと数百万円に達することもあります。
契約前に「原状回復の範囲」を細かく確認しておくことが重要です。
設備・什器撤去費用
前テナントから設備を引き継いで営業していた場合、その設備を退去時に撤去しなければならないケースがあります。
厨房機器、エアコン、照明、棚、カウンターなど大型設備は撤去費用が高くなりがちで、機器の重量や設置場所によっては搬出作業の追加料金が発生します。
飲食店では厨房機器一式を撤去すると20万円〜80万円ほどが相場で、状態や搬出方法によってはさらに上がる場合も多いです。
買取業者に売却して撤去費用を相殺する方法もあるため、早めの査定依頼がポイントとなります。
解約時の敷金・保証金返還条件
居抜き物件の契約では、退去時の原状回復費用として敷金や保証金が差し引かれることがよくあります。
工事費用が敷金額を超える場合、追加で負担が必要となるため注意が必要です。
また「経年劣化による修繕は貸主負担」「造作撤去は借主負担」など、返還条件は物件ごとに異なります。
敷金が全額返ってくるケースは少なく、半額程度の返還、またはゼロという例も珍しくありません。
契約前に返還条件を明確にしておくことが退去時トラブルを防ぐ重要なポイントです。
造作譲渡に失敗した場合の撤去費負担
居抜き物件では、自身が導入した設備や内装を次の借主へ売却できる造作譲渡が可能です。
しかし買い手が見つからなかった場合、売却収入が得られないだけでなく撤去費用を自費で負担する必要があります。
特に飲食店の厨房設備や大型什器は撤去コストが高く、数十万円以上が必要になることも。
造作譲渡の募集は早めに開始し、複数の仲介会社や専門サイトを活用して買い手の確保を進めておくことがリスク回避につながります。
清掃費用・残置物処分費
退去時には、店内のクリーニングや残置物の処分費用も発生します。
特に飲食店は油汚れや排気設備の汚れが蓄積しやすく、通常清掃の範囲を超える特別清掃が必要になることもしばしばあります。
清掃費の相場は5万円〜20万円ほどですが、排気ダクト内部清掃や配管清掃が必要な場合は追加費用が発生します。
残置物が多いと廃棄費用も増えるため、不要な什器や備品は営業中から計画的に整理しておくとコストを抑えられるのです。
退去時に活用したい「造作譲渡」|引継ぎで撤去費用を節約

居抜き物件を退去する際、もっとも大きな負担になりやすいのが原状回復や設備撤去にかかる費用です。
これらを大幅に抑える方法として注目されているのが、造作譲渡です。
内装・設備を次の入居希望者へそのまま引き継ぐことで、撤去費用の節約だけでなく、譲渡金の獲得につながるケースもあります。
造作譲渡とは?
造作譲渡とは、退去する店舗が現在使用している内装・設備・什器などを次の入居者へ有償で引き継ぐ契約を指します。
厨房設備、空調、照明、セット面、間仕切りなど、現場ごとに対象は異なります。
大きなメリットは撤去工事が不要になるため退去費用を抑えられる点と、譲渡金を受け取れる可能性がある点です。
また、次の入居者にとっても初期投資を抑えて開業できるため、双方にメリットがある仕組みと言えます。
譲渡金額の相場と設定の仕方
造作譲渡の金額相場は、物件の場所・設備の状態・耐用年数・レイアウトの汎用性などによって大きく変動します。
飲食店の場合は50万〜300万円、美容院は20万〜150万円程度が一般的です。
金額を設定する際は、購入時の設備価格だけでなく「次の入居者がどれほど費用を節約できるか」を軸に設定すると成約しやすくなります。
高額すぎると候補者が減り、撤去負担が残るリスクもあるため、相場と需要のバランスが重要です。
造作譲渡を成立させやすい業種
造作譲渡が特に成立しやすいのは、設備投資が大きく、業種特有の内装が必要とされる店舗です。
代表例は飲食店(厨房機器・ダクト・排水設備)、美容院(セット面・シャンプー台)、整体・整骨院(ベッド・仕切り・照明)などです。
これらは新規開業者にとって初期費用が重くなりやすいため、状態の良い設備が残っている居抜き物件は非常に魅力的です。
結果として譲渡が成立しやすく、退去時のコスト削減につながります。
退去トラブルを防ぐポイント|契約前〜退去後のチェックリスト
居抜き物件は開業コストを抑えられる反面、退去時の条件次第では大きな費用負担につながるケースがあります。
特に原状回復範囲や設備の扱いは誤解が生まれやすく、オーナー同士のトラブルに発展しやすい部分です。
契約前から退去後までの流れを把握し、事前の確認と交渉で不要なリスクを避けることが重要です。
契約書の「原状回復範囲」確認の重要性
居抜き物件の退去時トラブルの多くは、「原状回復の範囲」を契約書でしっかり確認しないまま契約したことが原因です。
前テナントが残した設備がそのまま使用されていても、退去時にすべてを撤去しなければならないケースがあります。
また、壁・床・天井などの修繕義務がどこまで含まれるかも契約によって大きく異なります。
契約前の段階で不動産会社に詳細を確認し、曖昧な点は文面に残すことで、後の費用トラブルを避けられるでしょう。
引き継いだ設備の撤去義務と交渉例
居抜きで引き継いだ設備は前テナントの所有物と判断され、退去時に撤去の義務が生じる場合があります。
特に厨房設備や什器などの大型設備は撤去費用が高額になりやすく注意が必要です。
契約前に「設備はこのまま残置物扱いで良いか」「退去時の撤去義務は発生するか」を明確にし、可能であれば残置物として認めてもらう交渉を行うと負担を軽減できます。
物件によっては譲渡契約を組むことで撤去義務を回避できるため、早い段階で交渉しておくことが大切です。
賃貸人・管理会社とのコミュニケーション方法
居抜き物件の退去手続きをスムーズに行うには、賃貸人や管理会社との定期的なコミュニケーションが欠かせません。
設備の扱い、退去立ち会い、撤去範囲などは事前に共有し、記録として残しておくことで後の認識違いを防げます。
特に原状回復の範囲は担当者によって解釈が異なることもあるため、メールや書面で確認内容を残すことが効果的です。
疑問点は早めに相談し、退去直前ではなく余裕を持って打ち合わせすることでトラブル発生のリスクを最小限に抑えられます。
こんなときどうする?居抜き物件退去の実例と対応策
居抜き物件の退去時には、思わぬ費用負担や設備トラブルが発生しやすく、契約前の想定を大きく超えるケースもあります。
特に原状回復範囲や設備の扱いを曖昧にしたまま開業していた場合、退去時にトラブルへ発展しやすく注意が必要です。
ここでは、実際によく起きる退去トラブルの事例と、その対応策をわかりやすく紹介します。
次のテナントが見つからず「撤去費用全額負担」となったケース
居抜き物件では、次の入居者が設備をそのまま使ってくれる前提で造作譲渡を期待するケースが多くあります。
しかし、退去時点で後継テナントが見つからなかった場合、設備一式を撤去し原状回復する義務が発生することがあります。
特に厨房機器や給排気設備などは撤去費用が高額になりやすく、想定を超える負担につながるのです。
対策として、契約時に次テナント募集期間の取り決めや造作譲渡前提の合意内容を明記し、撤去条件を明確化しておくことが重要です。
入居時の設備老朽化が原因で撤去トラブルになった例
前テナントから引き継いだ設備が老朽化していると、退去時に「故障した設備は撤去して返却するように」と求められるケースがあります。
特に、空調・給排気・配管設備は内部劣化が進んでいることが多く、引き継いだ時点では正常に見えても、退去時に交換や撤去を求められトラブルに発展しがちです。
これを避けるには、入居前に設備点検をおこない、契約書に既存設備の撤去義務の範囲や故障時の責任分担を明確に記載しておくことが有効です。
造作譲渡がスムーズに成功した例
一方で、造作譲渡が上手く成立したケースでは、退去費用を大幅に削減できるだけでなく、譲渡額を得て資金回収につながることもあります。
例えば飲食店では、厨房設備が整っている物件は需要が高く、次のテナントがすぐに見つかりやすい傾向があるのです。
事前に設備リストを整理し、清掃・動作確認を徹底しておくことで譲渡交渉がスムーズに進みます。
また、仲介会社に造作譲渡優先で募集を依頼することで成功率も高まります。
居抜き物件を退去する際のコスト・トラブルを賢く回避しよう
居抜き物件の退去には、一般的な原状回復とは異なる費用やトラブルが発生しやすく、事前準備が極めて重要です。
契約段階で原状回復範囲を明確にし、設備の撤去義務や譲渡条件を確認しておくことで、無駄な負担を避けられます。
造作譲渡をうまく活用すれば、撤去費用を大幅に抑えることも可能です。
退去時のリスクを正しく理解し、計画的に管理すれば、撤退コストを最小限に抑え、次の展開へスムーズに移行できます。
