マッサージ店の開業を検討する際、初期費用や開業スピードに不安を感じる方は少なくありません。特に内装工事や設備投資に多額の資金が必要となる新規出店では、資金計画が大きなハードルになります。そこで注目されているのが、既存設備を活用できる居抜き物件での開業です。
施術ベッドや内装が残る物件を選べば、開業費用を抑えながら短期間で営業を開始できる可能性があります。本記事では、マッサージ店向け居抜き物件の特徴から、選び方、注意点、失敗事例までを実務目線で解説します。
マッサージ店の居抜き物件とは

マッサージ店の居抜き物件とは、前テナントが使用していた内装や設備を引き継いで利用できる物件のことです。施術ベッドや間仕切り、給排水設備などが残っているケースが多く、スケルトン物件と比べて工事費用や準備期間を大幅に削減できます。開業コストを抑えながらスピーディーに店舗運営を開始したい方に向いている選択肢といえます。
- マッサージ店と居抜き物件の相性
- スケルトン物件との違い
マッサージ店と居抜き物件の相性
マッサージ店は、居抜き物件との相性が比較的高い業種のひとつです。なぜなら、施術ブースの区切り、洗面設備、電源配置など、基本的な店舗構造が業態と一致しやすいためです。
特に、もともと整体院やエステサロンとして使われていた物件であれば、内装の大幅な変更が不要となり、設備投資を最小限に抑えられます。空調や給排水、床材などもそのまま利用できるケースが多く、開業準備期間を短縮できる点も大きな利点です。さらに、内装が整っている分、開業資金の余力を広告宣伝費や人材採用に回しやすくなり、集客強化にもつながります。
スケルトン物件との違い
居抜き物件とスケルトン物件の最大の違いは、内装や設備が残っているかどうかです。スケルトン物件は、内装がすべて撤去された状態から店舗を作る必要があり、内装工事費が高額になりやすい傾向があります。一方、居抜き物件であれば、設備や間取りを活かした開業が可能で、工事費用と工期の両方を抑えやすくなります。
ただし、居抜き物件では設備の劣化や規格の古さが問題になる場合もあるため、事前の現地確認や見積比較が重要です。初期コスト重視なら居抜き、自由な設計を優先するならスケルトンといった選び方が現実的です。
マッサージ店の居抜き物件の仕組み

マッサージ店の居抜き物件には、通常の賃貸契約とは異なる引き渡し条件が設定されるケースが多く、設備や内装の取り扱いを正しく理解しておかないと想定外の費用やトラブルにつながります。どこまでが引き継ぎ対象なのか、誰が修繕や撤去を担当するのかといった役割の整理こそ、契約時に確認しておくべき最重要項目です。
- 引き継がれる設備の範囲
- 貸主と借主の役割
引き継がれる設備の範囲
居抜き物件で引き継がれる設備の範囲は、物件ごとに大きく異なります。一般的には、施術ベッド、間仕切り、照明、エアコン、給排水設備、内装材などが対象になりますが、すべて必ず残るわけではありません。
契約時には、設備一覧表を必ず確認し、どの設備が譲渡対象なのかを明文化しておく必要があります。また、譲渡される設備は中古品扱いになるため、故障時の修理費用を誰が負担するのかも重要な確認事項です。追加で機器を入れ替える必要がある場合、想定以上にコストが膨らむこともあるため、現地確認を行い、使用年数や動作状況を事前にチェックすることが欠かせません。
貸主と借主の役割
居抜き物件では、貸主と借主それぞれの役割を正確に理解しておく必要があります。貸主は、建物の構造体や共用部分の維持管理をおこなう義務を負う一方、店内設備については原則として借主の責任範囲になります。
特に、前テナントから引き継いだ内装や設備については、修繕や更新が借主負担になる場合がほとんどです。また、退去時の原状回復義務についても確認が不可欠です。
居抜きの状態での返却が可能なのか、スケルトン戻しが必要なのかで撤去費用に大きな差が生じます。契約書における負担区分を事前に把握することで、開業後のトラブルを未然に防げます。
居抜き物件を活用して開業費用を抑えるコツ

居抜き物件は初期費用を削減しやすい物件形態ですが、契約方法や使い方次第でコスト削減効果に大きな差が出ます。設備をそのまま使うだけではなく、不要な資産の整理や改装範囲の見極め、支払い方法の工夫まで踏み込むことで、開業資金をさらに圧縮可能です。資金に余裕をもたせた状態で開業するための考え方を整理します。
- 不要設備を売却する
- 最低限の改装に絞る
- 初期費用の分割・後払いを検討する
不要設備を売却する
居抜き物件には、業態に合わない家具や設備が残っている場合があります。こうした不要設備は、そのまま置いておくのではなく売却を検討することで、初期費用の回収に役立ちます。施術に使用しない大型什器や古い機器は、リサイクル業者や中古機器買取業者に依頼することで、状態によっては現金化できる可能性があります。
また、撤去費用がかかる設備についても、買取業者に引き取ってもらえれば処分コストの削減につながります。売却益を追加工事や広告費に充てることで、開業後の集客対策にも活かせます。
最低限の改装に絞る
開業時に内装を一新したくなる気持ちは自然ですが、過度な改装は資金を圧迫する要因になります。まずは営業に支障がある部分のみを優先して改修し、デザイン性の向上は売上が安定してから段階的に行う方法が現実的です。
例えば、壁紙の張替えや照明交換、床の補修など、コストを抑えながら印象を改善できる工事から着手します。水回りや電気系統といった安全性に関わる部分のみを重点的に整備することで、開業リスクを抑えながら営業開始が可能になります。
初期費用の分割・後払いを検討する
内装工事費や設備費用を一括で支払うのが難しい場合、分割払いや後払いサービスの活用も選択肢のひとつです。施工業者によっては分割対応が可能な場合があり、資金負担を平準化できます。
また、請求書カード払いを利用すれば、対応サービスや利用条件を満たす場合に限り、工事費や備品費をクレジットカードで支払い、支払期日を先送りすることも可能です。現金の持ち出しを抑えながら準備を進められるため、運転資金を確保した状態で開業できる点がメリットです。支払い方法まで含めて設計することで、資金繰りの安定につながります。
マッサージ店の居抜き物件のメリット
マッサージ店で居抜き物件を選ぶ最大の利点は、開業時にかかる負担を総合的に軽減できる点にあります。内装工事や設備導入にかかる時間と費用を抑えられるため、開業資金の確保がしやすく、事業スタート時のリスクも下げられるでしょう。限られた予算の中で効率的に開業したい店舗オーナーにとって有力な選択肢です。
- 初期投資の削減
- 開業スピード向上
- 設備投資リスクを軽減できる
初期投資の削減
居抜き物件では、前テナントが使用していた設備や内装を引き継げるため、工事費や設備購入費を大幅に抑えられます。施術ベッドや間仕切り、照明、空調などを流用できれば、新規で揃える必要がなくなり、物件規模や設備内容によっては、数十万円から数百万円単位で初期費用に差が出る場合もあります。
初期費用が抑えられれば、資金を広告宣伝費や運転資金に回しやすくなり、売上が安定するまでの経営リスクも軽減されます。無理のない資金計画が立てられる点は、店舗運営を長く続けるうえで重要な要素です。
開業スピード向上
居抜き物件は内装工事が不要または最小限で済むため、契約から開業までの期間を短縮しやすいのが特長です。スケルトン物件では設計から施工までに数か月かかる場合もありますが、居抜きであれば清掃や軽微な補修のみで営業を開始できることもあります。
開業までの期間を短縮できれば、賃料の空期間を減らせるだけでなく、競合よりも早く営業を開始できる点でも有利です。好立地の物件ほど早期判断が求められるため、スピード感をもって行動できる体制が整います。
設備投資リスクを軽減できる
新規開業では、どの設備が本当に必要か判断が難しく、過剰投資に陥りやすい傾向があります。居抜き物件であれば、最初から基本設備が整っているため、必要性を見極めながら段階的に追加投資が可能です。
まずは既存設備で運営し、売上動向や来店客層を確認したうえで設備更新を検討できるため、無駄な出費を抑えやすくなります。初期段階で大きな投資を避けられる点は、開業後の資金繰り安定にも直結します。
マッサージ店の居抜き物件のデメリット
居抜き物件はコスト面でメリットが大きい反面、見落としやすいリスクも存在します。設備の状態や店舗の印象、間取りの制約などによっては、かえって追加費用が発生したり、集客に影響したりするケースもあります。安さだけで判断せず、実務上のデメリットを理解したうえで物件選定を行うことが重要です。
- 設備劣化リスク
- 自由設計の制限
- 前テナントのイメージを引き継ぐリスク
設備劣化リスク
居抜き物件に残されている設備は、すでに数年使用されている中古品であることが多く、想定より早く故障する可能性があります。空調や給排水設備、電気系統などは見た目では劣化状況が分かりにくく、開業後に不具合が顕在化するケースも少なくありません。
修理や交換が必要になれば、当初想定していなかった出費が発生し、資金繰りを圧迫する要因になります。契約前には必ず動作確認を行い、使用年数やメンテナンス履歴を確認したうえで、必要に応じて専門業者の点検を依頼することが大切です。
自由設計の制限
居抜き物件は既存の間取りや設備を前提とするため、店舗レイアウトの自由度が低くなります。理想とする動線設計や施術スペースの配置が実現できない場合もあり、業態に合わない間取りを無理に使うと、作業効率や顧客満足度に影響を及ぼします。
また、大幅な改装を行うと、居抜きのメリットであるコスト削減効果が薄れてしまう点にも注意が必要です。利用目的に合った設計かどうかを事前に確認し、妥協点と優先事項を明確にしたうえで判断することが求められます。
前テナントのイメージを引き継ぐリスク
居抜き物件では、外観や内装に前テナントの印象が強く残ることがあります。以前の店舗の評価が悪い場合、そのイメージが新店舗にも影響を与え、集客に不利に働く可能性がある点に注意しましょう。
また、内装や看板が似たままだと、地域住民に旧店舗と誤解されるケースも少なくありません。こうしたリスクを回避するためには、必要に応じて内装の一部を変更したり、看板やロゴを刷新したりする対策が有効です。店のコンセプトを明確に伝え、新しい店舗としての認知を早期に確立する必要があります。
居抜き物件でマッサージ店を開業する際のチェックポイント
居抜き物件は初期費用を抑えられる反面、設備の状態を見誤ると追加工事が発生しやすい点に注意が必要です。契約後に想定外の修繕が発覚すると、開業資金やスケジュールに大きな影響を及ぼします。物件選定の段階で設備の実状を把握することが、安定した店舗運営の第一歩になります。
- 給排水設備の状態
- 電気容量と空調環境
- 防音性とプライバシー対策
給排水設備の状態
マッサージ店では、洗面台やトイレ、簡易的な洗髪設備など水回りを使用する場面が多く、給排水設備の確認は必須項目です。配管の老朽化や水漏れがある場合、営業開始後に修繕工事が必要となり、営業停止や追加費用が発生することがあります。現地確認の際には水圧や排水の流れを実際にチェックし、異臭や詰まりがないか確認しましょう。
また、給湯設備が十分に機能しているかも重要です。必要に応じて専門業者による点検を行うことで、トラブルを未然に防げます。
電気容量と空調環境
マッサージ店では、照明、空調、電動ベッド、加湿器など複数の電気機器を同時に使用するケースが多く、電気容量の確認が欠かせません。容量が不足しているとブレーカーが頻繁に落ち、営業に支障をきたす恐れがあります。事前に契約電力や分電盤の状況を確認し、設備導入に支障がないかを把握しておく必要があります。
併せて空調設備の性能も確認します。冷暖房が効きにくい店舗では、顧客満足度の低下につながるため、能力不足や故障の有無をチェックすることが重要です。
防音性とプライバシー対策
マッサージ店では施術中の会話や機器音が外部に漏れない環境が求められます。防音対策が不十分な場合、近隣からの苦情につながる恐れがあります。壁や天井の遮音性を現地で確認し、必要であれば追加の防音工事を検討しましょう。
また、施術スペースの区切りが不十分だと、顧客が安心して施術を受けられません。カーテンやパーテーションの設置状況を確認し、プライバシーが確保されているかを見極めることが大切です。快適な施術環境の整備が集客とリピートにつながります。
居抜き物件の契約前に確認すべき重要事項
居抜き物件の契約では、通常の賃貸借契約に加えて、設備や内装の取り扱いについての確認が不可欠です。内容を理解しないまま契約すると、想定外の費用負担や返却時トラブルにつながります。開業準備と並行して、契約条件の精査を行うことが、安心して店舗を運営するための前提条件になります。
- 造作譲渡契約の有無
- 原状回復義務の範囲
- 設備の所有権の確認
造作譲渡契約の有無
居抜き物件では、前テナントの設備や内装を引き継ぐために「造作譲渡契約」が結ばれるケースがあります。この契約がある場合、譲渡の対象となる設備や価格、引き渡し状態が明文化されます。例えば、施術ベッドや什器、照明、配管設備などが対象になる場合もあれば、一部のみ譲渡されるケースも少なくありません。
契約内容を十分に確認せずに引き継いでしまうと、不要な設備まで購入することになり、開業コストが膨らむ原因になります。必ず譲渡リストを確認し、必要な設備だけが含まれているか確認することが重要です。
原状回復義務の範囲
居抜き物件では、退去時にどこまで原状回復する必要があるかを事前に確認しておく必要があります。契約内容によっては、居抜き状態での返却が認められる場合もあれば、スケルトン状態に戻す義務がある場合も少なくありません。後者の場合、撤去工事費が数十万円から場合によっては数百万円かかることもあり、想定外の支出につながります。
貸主との取決め事項は契約書に必ず明記してもらい、口頭での説明に頼らないことが重要です。将来の撤退費用を見越した資金計画が求められます。
設備の所有権の確認
居抜き物件では、設置されている設備が誰の所有物かを明確にする必要があります。前テナントの所有物なのか、貸主の所有物なのかによって、修理費用や処分費用の負担先が変わります。
特に造作譲渡契約がないまま設備を利用した場合、故障時の責任が曖昧になりやすく、トラブルに発展することも少なくありません。契約時には設備ごとの所有者を明記し、管理責任の所在をはっきりさせておくことが重要です。設備一覧表の作成と確認が、後々の紛争防止につながります。
マッサージ店に向いている居抜き物件の特徴
居抜き物件はすべての物件がマッサージ店に適しているわけではありません。設備内容や立地条件、建物構造によって、開業後の集客力や運営効率は大きく変わります。初期費用の安さだけに注目せず、自店舗の運営スタイルに合っているかを見極めることが、長く安定した経営につながります。
- 前テナントが整体・エステ業態
- 駅近・路面立地
- 個室区画が多い構造
前テナントが整体・エステ業態
前テナントが整体院やエステサロンであった居抜き物件は、マッサージ店との親和性が非常に高い物件といえます。施術スペースの区切り、待合スペース、洗面設備、照明設計などがそのまま活用できるケースが多く、内装工事がほとんど不要になる点が大きな利点です。
ベッド設置を想定した床補強や、防音対策がすでに施されている場合もあり、開業までの準備期間を短縮できます。結果として、改装費用を抑えつつ、即営業できる状態を整えやすくなります。
駅近・路面立地
マッサージ店は、来店のしやすさが売上に直結しやすい業種です。そのため、駅から近い立地や、視認性の高い路面店は集客面で有利になります。人通りが多い場所に店舗を構えることで、新規顧客の獲得がしやすくなり、広告に頼らずとも一定の集客が見込めます。
また、ビルイン店舗であっても、エレベーター完備や看板設置が可能な物件であれば来店ハードルを下げられる可能性があるのが特徴です。立地条件は後から変更できないため、最優先でチェックすべき項目です。
個室区画が多い構造
マッサージ店では、プライバシーを重視する顧客が多いため、個室区画が多い構造の居抜き物件は適性が高いといえます。カーテンで簡易的に仕切られているだけでなく、壁で区切られた個室が複数ある物件では、施術中の会話や音漏れが軽減され、顧客満足度が向上します。
また、複数名の施術スタッフが同時に対応できるため、回転率の向上にもつながるのが特徴です。個室構造は後から変更すると工事費がかかるため、最初から整っている物件を選ぶ方が効率的です。
居抜き物件活用がマッサージ店開業の成否を左右する
居抜き物件は、マッサージ店の開業コストと準備期間を大きく抑えられる有効な選択肢です。ただし、設備の状態や契約条件を十分に確認しないまま契約すると、想定外の修繕費や原状回復費が発生し、結果的に負担が増えるケースもあります。
立地、設備、契約内容を総合的に確認し、業態に適した物件かどうかを見極めることが重要です。また、不要設備の処分や改装範囲の調整、支払い方法の工夫などを組み合わせることで、さらに開業コストの最適化が可能になります。居抜き物件の特性を正しく理解し、計画的に準備を進めることが、長期的に安定した店舗経営につながります。
