居抜き物件を契約したあと、「どこまでクリーニングすべきか」「そのまま使って問題ないのか」と悩む店舗オーナーは少なくありません。前テナントが使用していた設備や内装には、見えない汚れやにおいが残っていることも多く、そのまま開業してしまうと衛生面のトラブルやイメージ低下につながる恐れがあります。一方で、すべてを新品同様にする必要があるわけではなく、必要な清掃範囲を見極めてコストを抑えることも重要です。
本記事では、居抜き物件におけるクリーニングの基本的な考え方から、費用相場、作業内容、業者選びのポイント、注意点までを整理します。無駄な出費を抑えつつ、安心して開業を迎えるための実務的な判断材料として活用してください。
居抜き物件にクリーニングが必要な理由

居抜き物件は設備や内装を引き継げる反面、前テナントの使用環境をそのまま受け継ぐリスクもあります。目に見える汚れだけでなく、換気設備や排水内部などに汚れが残っているケースも多く、クリーニングを怠ると衛生面や営業面で問題が生じる可能性があります。開業前に、必要な清掃範囲を把握することが重要です。
- 居抜き物件クリーニングに関する法律と基準
- トラブル防止のためのチェックポイント
居抜き物件クリーニングに関する法律と基準
居抜き物件におけるクリーニングは、単なる見た目の問題ではなく、法律や業界基準とも関係します。飲食店を営む場合は、食品衛生法に基づく保健所の基準を満たす必要があり、厨房内の油汚れ、排水設備、換気扇の清掃が不十分だと営業許可が下りない可能性もあります。
また、害虫防除やカビの除去が求められるケースもあり、清掃不備によって改善指導を受けることもあるのです。美容室や医療関連施設であれば、業法に基づく衛生基準が別途設けられていることも多く、クリーニングの重要性はさらに高まります。業種ごとの基準を把握し、開業前に必要な清掃レベルを理解しておくことが、トラブルを未然に防ぐための第一歩です。
トラブル防止のためのチェックポイント
クリーニング不足によるトラブルは、営業開始後に顕在化するケースが少なくありません。悪臭の発生、害虫の再発、排水詰まりなどは代表的な例です。こうした問題を防ぐためには、床や壁だけでなく、エアコン内部、ダクト、グリストラップ、排水管といった目に見えない部分の確認が欠かせません。
また、前テナントの業態によって汚れの種類も異なるため、居酒屋跡であれば油分、美容室跡であれば薬剤残留など、業態ごとの確認が重要です。契約前に状態を把握し、見積り時に清掃範囲を明確にしておくことで、開業後の追加費用や工期遅延といったリスクを回避できます。
居抜き物件クリーニングの主な内容

居抜き物件のクリーニングは、単なる掃除ではなく、業態に合わせた専門的な作業が求められます。厨房設備から客席、空調機器にいたるまで、場所ごとに汚れの性質が異なるため、的確な清掃を行わなければ十分な効果は得られません。開業前に、どこまで対応するかを把握しておくことが大切です。
- 厨房設備の清掃
- 客席・内装の清掃
- 空調・換気設備の清掃
厨房設備の清掃
厨房は居抜き物件の中でも特に汚れが蓄積しやすい場所です。コンロやフライヤー、レンジフードには長期間の使用による油汚れや煤が付着していることが多く、通常の清掃では落としきれません。専門業者は業務用洗剤や高圧洗浄機を使用し、内部にこびりついた汚れまで除去します。
また、グリストラップや排水溝の洗浄も重要で、放置すると悪臭や害虫発生の原因になるのです。営業開始後のトラブルを防ぐためにも、見た目だけでなく衛生面に配慮した徹底的な清掃が求められます。
客席・内装の清掃
客席や内装部分は来店客の印象を大きく左右する要素です。床や壁、天井は一見きれいに見えても、長年の利用によってタバコのヤニやほこりが蓄積していることがあります。カーペットやソファは臭いを吸着しやすく、簡易清掃では落としきれない場合も少なくありません。
専門業者による洗浄では、素材に合わせた清掃方法が採用され、傷を付けずに美観を回復させることが可能です。清潔な空間づくりは、集客やリピートにも直結する重要な準備のひとつです。
空調・換気設備の清掃
エアコンや換気扇、ダクト内部は目に見えない分、清掃が後回しにされがちですが、実は衛生面に大きな影響を与える部分です。内部にカビやほこりが溜まったまま使用すると、悪臭やアレルギーの原因になることもあります。業務用エアコンは構造が複雑なため、専門業者による分解洗浄が推奨されます。
換気設備が正常に機能すれば、店内の空気環境が改善され、従業員や来店客の快適性も向上。長期的な店舗運営を考えるうえでも、空調設備の清掃は欠かせません。
居抜き物件クリーニングで得られるメリット

居抜き物件は設備や内装が残っている反面、前の使用者の汚れや劣化もそのまま引き継ぐことになります。見た目は問題なさそうでも、内部に汚れや雑菌が蓄積しているケースは多く、放置すれば営業開始後のトラブルにつながりかねません。開業前に適切なクリーニングをおこなうことで、店舗環境をリセットし、安心して営業をスタートできる基盤を整えられます。
- 衛生状態を整え、安全に営業開始できる
- 内装や設備を長く使えるようになる
- 開業後のトラブルを未然に防げる
衛生状態を整え、安全に営業開始できる
居抜き物件には、目に見える汚れだけでなく、換気扇やエアコン内部、排水設備などに目に見えない汚れや菌が蓄積している場合があります。これらを放置したまま営業を開始すると、悪臭や害虫発生、食中毒リスクなどの原因になることがあります。
開業前にプロのクリーニングを実施することで、店舗全体の衛生レベルを引き上げられ、従業員も安心して働ける環境を整えることが可能です。また、保健所の立入検査対策としても有効で、余計な修正工事や再検査の手間を減らす効果も期待できます。
内装や設備を長く使えるようになる
油汚れやホコリ、湿気の蓄積は、設備や内装の劣化を早める原因になります。特に厨房機器や空調設備は、定期的な清掃を行わないと性能が低下し、故障リスクも高まります。
開業時に一度しっかりとクリーニングをおこなうことで、設備本来の性能を回復させ、故障や修理のリスクを抑えられるでしょう。結果的に、入替費用や修繕費を抑えながら長く設備を使い続けられるため、開業後の固定費削減にもつながります。長期的に見れば、初期クリーニングはコストではなく投資として機能します。
開業後のトラブルを未然に防げる
開業後に「臭いが取れない」「排水が詰まる」「空調が効かない」といった問題が発生すると、営業に支障をきたすだけでなく、顧客満足度の低下にもつながります。これらのトラブルは、実は開業前のクリーニング不足が原因であることが少なくありません。
事前に徹底した清掃を実施することで、こうしたトラブルの芽を未然に摘み取れます。結果として、開業直後から安定した運営がしやすくなり、余計な修繕対応やクレーム処理に時間を取られるリスクを減らせます。
居抜き物件クリーニングの費用相場
居抜き物件のクリーニング費用は、広さや設備の種類、汚れの度合いによって大きく変わります。開業準備の中でコスト管理は重要なポイントとなるため、事前に相場感を把握しておくことが欠かせません。想定外の出費を防ぐためにも、全体の目安と項目別の費用感を理解し、見積内容を適切に判断できるようにしておきましょう。
- 全体相場感
- 項目別費用目安
全体相場感
居抜き物件全体のクリーニング費用は、小規模店舗であればおおよそ5万円〜15万円程度、中規模以上になると20万円〜50万円程度まで幅があります。飲食店の場合は厨房設備やダクト清掃が必要になるため、同じ広さでも事務所用途より高額になりやすい傾向です。
また、汚れがひどい物件や長期間使用されていなかった店舗では、通常の清掃に加えて特殊洗浄や消臭作業が追加され、費用が跳ね上がるケースもあります。単に価格の安さだけで判断せず、作業範囲と内容をしっかり確認したうえで業者を選ぶことが大切です。
項目別の費用目安
項目ごとに見ると、厨房機器の分解洗浄は1台あたり1万円〜5万円程度、換気扇・ダクト清掃は3万円〜10万円前後が目安です。エアコン内部洗浄は1台1万円〜3万円程度、床洗浄やワックスがけは坪あたり1,000円〜3,000円程度が相場になります。
さらに、グリストラップ清掃は2万円〜5万円程度、消臭・除菌処理は規模に応じて1万円〜数万円ほど追加されることもあります。これらの費用は積み上げ式になるため、見積書では単価と作業内容の内訳を細かく確認し、不要な作業が含まれていないか確認することが大切です。
居抜き物件クリーニング業者選びのポイント
居抜き物件のクリーニングは業者選びによって仕上がりやコスト満足度が大きく変わります。価格だけで選ぶと、必要な作業が含まれていなかったり、清掃品質に不満が出たりすることも少なくありません。安心して開業準備を進めるためにも、信頼できる業者を見極めるためのポイントを把握しておくことが大切です。
- 居抜き物件・店舗清掃の実績が豊富か
- 作業範囲と料金が明確に提示されているか
- アフター対応や保証があるか
居抜き物件・店舗清掃の実績が豊富か
居抜き物件のクリーニングは、一般住宅とは異なり、厨房設備・空調・排水設備など専門性の高い清掃が求められます。そのため、過去の施工実績や対応してきた業種の幅を必ず確認しましょう。飲食店・美容室・オフィスなど、どの業態を多く手がけているかによって対応力が異なります。
実績豊富な業者ほど、汚れの特性を理解しており、短時間で適切な方法を提案できる傾向があります。ホームページの事例紹介や口コミを確認し、類似物件の対応実績があるかを見極めることが大切です。
作業範囲と料金が明確に提示されているか
優良なクリーニング業者ほど、作業内容と料金を明確に提示してくれます。見積時には、どの範囲をどの方法で清掃するのか、追加料金が発生する条件は何か、細かく説明があるかを確認しましょう。「一式」など曖昧な表現が多い場合、後から追加費用を請求されるリスクがあります。
設備別、面積別など内訳が分かりやすく記載された見積書であれば、予算管理もしやすく、他社との比較もしやすくなります。価格だけでなく、内容の透明性を重視する姿勢が大切です。
アフター対応や保証があるか
クリーニング後に不具合や清掃漏れが発覚するケースもゼロではありません。その際に、無償で再対応してくれるかどうかは重要なチェックポイントです。保証期間の有無、再清掃の対応条件、問い合わせ窓口の明確さなどを事前に確認しておくと安心です。
また、作業後のアドバイスや定期清掃の提案がある業者は、長期的な店舗運営まで見据えたサポートが期待できます。単なる作業業者ではなく、店舗運営のパートナーとして対応してくれるかを基準に選ぶと失敗しにくくなります。
居抜き物件クリーニングを自分で行う場合の注意点
居抜き物件のクリーニングを自分で行えば、業者費用を抑えられるというメリットがあります。しかし実際には、専門的な清掃が必要な箇所も多く、十分な衛生環境を整えるのは簡単ではありません。作業前に課題やリスクを把握しておかないと、思わぬ手間や追加費用につながるおそれがあります。
- 専門機材がなく清掃品質に限界がある
- 時間と労力が想像以上にかかる
- 事故や破損リスクがある
専門機材がなく清掃品質に限界がある
店舗の居抜き物件では、家庭用掃除機や市販の洗剤だけでは落としきれない汚れが多く見られます。特に厨房の油汚れや排気ダクト内部の汚れ、エアコン内部のカビなどは、業務用の高圧洗浄機や専用薬剤がなければ十分な清掃ができません。
表面だけをきれいにしても内部に汚れが残っていれば、悪臭や害虫の発生につながるおそれがあります。見た目は整っていても衛生基準を満たせていなければ営業に悪影響が出るため、専門機材がない状態での清掃には限界があることを理解しておく必要があります。
時間と労力が想像以上にかかる
居抜き物件のクリーニングは、一般的な自宅の掃除とは比べものにならないほどの労力が掛かります。厨房の油汚れ除去、床や壁の洗浄、水回りの除菌作業など、作業範囲は非常に広く、丸一日掛けても終わらないことも珍しくありません。
開業準備と並行して行う場合、清掃作業に時間を取られてしまい、本来注力すべき仕入れや人員手配、販促準備がおろそかになる可能性もあります。結果的に開業スケジュールが遅れることもあるため、作業に必要な時間と労力を過小評価しないよう注意が必要です。
事故や破損リスクがある
慣れない清掃作業では、思わぬ事故や設備の破損が起こる可能性があります。高所の換気扇や照明器具を清掃する際の転倒、薬剤の取り扱いによる皮膚トラブル、誤った分解による機器破損などは代表的なリスクです。
居抜き設備を破損させてしまうと、修理費用が発生するだけでなく、場合によっては貸主や前テナントとのトラブルにつながることもあります。安全対策や養生を十分におこなわずに作業を進めると、結果的に業者依頼より高いコストになるケースもあるため、無理な自己対応には注意が必要です。
居抜き物件でクリーニングを省略した場合のリスク
居抜き物件は、内装や設備がすでに整っているため、初期費用を抑えられる点が魅力です。しかし、クリーニングを省略すると、見えない場所に潜むリスクを抱えたまま開業することになります。開業後のトラブルを防ぐためにも、掃除を省くことの影響を正しく理解しておくことが大切です。
- 衛生事故
- 設備故障
衛生事故
居抜き物件のクリーニングを行わずに開業すると、食中毒や異物混入といった衛生事故が起こる可能性が高まります。前テナントの汚れや菌が設備内部に残っていると、調理中に食材へ付着し、顧客の健康被害につながるおそれがあります。特に飲食店では、厨房機器や排水口、換気扇、冷蔵庫の内部など見えにくい部分こそ汚染されやすいポイントです。
万が一、保健所の立ち入り検査で衛生不良が指摘されれば、営業停止や改善命令を受ける可能性もあります。短期的なコスト削減のために清掃を省略した結果、営業継続が困難になるケースもあるため注意が必要です。
設備故障
適切なクリーニングをおこなわずに設備を使用すると、機器の性能低下や突然の故障を引き起こすリスクがあります。例えば、エアコン内部にホコリやカビが詰まっていると、冷暖房効率が低下するばかりか、モーターへの負荷が高まり故障につながります。
また、厨房機器に油汚れが残ったまま使用を続けると、着火トラブルや異常加熱などの危険も少なくありません。設備が停止すれば営業に直接影響が出るだけでなく、修理費や交換費用が発生することで想定外の出費にもつながるのです。結果として、初期段階で清掃を省いたことが長期的なコスト増加を招く可能性が高いといえます。
居抜き物件クリーニングを業者に依頼するメリット
居抜き物件のクリーニングを業者に依頼することで、店舗の衛生レベルと開業後の安全性を一気に高めることが可能です。表面上の掃除では取りきれない汚れまで処理できるため、トラブル予防と品質向上の両立が実現します。結果として、初期コスト以上の価値を得られるケースも少なくありません。
- 専門知識と機材で徹底清掃が可能
- 開業準備をスムーズに進められる
- 清掃品質がそのまま店舗価値につながる
専門知識と機材で徹底清掃が可能
清掃業者には、業務用厨房や店舗設備に特化したノウハウが蓄積されています。一般的な掃除道具では落としきれない油汚れやカビ、配管内部の汚れまで専用機材を使って対応できる点が強みです。高温スチームや強力な洗浄剤を適切に使い分けることで、素材を傷めずに汚れを除去できます。
特に換気ダクトやグリーストラップなど、自力では手を出しにくい部分まで対応してもらえるため、店舗全体の衛生環境を一段階引き上げることが可能です。結果として、営業開始後の衛生不安を大きく減らすことにつながります。
開業準備をスムーズに進められる
清掃を業者に任せることで、オーナーは内装工事や仕入れ、スタッフ採用など他の準備作業に集中できます。開業前はやるべきことが多く、清掃作業に時間を取られると全体スケジュールが遅れがちです。専門業者に依頼すれば、決められた日程で作業が完了するため引き渡しから開業までの流れが安定します。
また、短期間で広範囲の作業が完了するため、無理な人手調整や残業を避けることも可能です。結果として、精神的・時間的な負担が軽減され、余裕をもって店舗準備が進められます。
清掃品質がそのまま店舗価値につながる
店舗の第一印象は、内装の清潔感で大きく左右されます。業者による高品質なクリーニングによって床や壁、設備がきれいに整えば、来店客に安心感と信頼感を与えやすくなります。
さらに、衛生管理が行き届いている店舗は、従業員の意識向上にも好影響を与え、日常清掃の質も高まりやすくなるのです。清掃が行き届いた状態でスタートできることは、長期的なブランド価値の形成にも寄与します。開業時点の状態が良いほど、後々の修繕コストや衛生トラブルの回避にもつながり、経営面でも安定要素となります。
居抜き物件クリーニングは開業成功を左右する重要要素
居抜き物件のクリーニングは、単なる掃除ではなく、店舗経営の成否に直結する準備工程のひとつです。厨房設備や空調、内装に残る汚れや臭いを放置すると、衛生リスクや設備故障につながり、開業後に思わぬ出費が発生する原因になります。
事前に適切な清掃を行うことで、安全な営業環境を確保できるだけでなく、店舗の印象や信頼性も向上します。費用は発生しますが、長期的に見れば修繕費やトラブル対応を抑える効果も期待できるでしょう。開業準備の一環として、クリーニングを軽視せず、専門業者の活用も視野に入れた計画的な対応が重要です。

