「厨房機器の更新や導入に助成金が使えると聞いたけれど、本当なの?」
こんな疑問を持つ飲食業界の方は多いのではないでしょうか。厨房機器を導入する際、条件を満たせば、国や自治体の助成金・補助金で費用負担を軽減できます。
本記事では、2025年最新版の制度情報として助成金・補助金5選や申請時の注意点などをまとめて解説します。厨房機器の導入前にチェックすべき内容ですので、ぜひご覧ください。
厨房機器導入時に利用できる助成金・補助金制度とは
厨房機器を導入・更新する際には、補助金や助成金制度を活用することで初期費用を大きく抑えられます。
助成金・補助金制度とは、事業支援や環境改善を目的として、国や自治体が交付する資金です。特に、中小企業や小規模事業者を対象とした制度が充実しており、省力化・生産性向上を目的とした設備投資には高い補助率で支援が行われています。
厨房機器の導入費用に対しては、複数の公的支援制度が活用可能であり、経営効率の改善や店舗運営の省力化にもつながります。
助成金・補助金は返済不要ですが、制度の目的・条件・対象経費が異なるため、事前の確認が大切です。導入を検討している場合は、現在公募中の助成金・補助金制度の募集要項や申請受付期間を早めに確認し、計画的に申請準備を進めましょう。
厨房機器導入にかかる費用の目安
厨房機器の導入には数十万円から数百万円の費用がかかることが一般的です。予算は、飲食店や施設の規模・業態・目的に応じて大きく変動します。
例えば、小規模な飲食店で最低限の厨房機器をそろえる場合の費用例は以下のとおりです。
業務用冷凍冷蔵庫 | 約30〜60万円 |
業務用ガステーブル | 約10〜30万円 |
業務用食器洗浄機 | 約40万円 |
ステンレス作業台やシンク | 約10万円 |
上記に加えて、調理内容に応じてスチームコンベクションオーブンやフライヤーなどを加えると、導入費用全体で100万〜300万円を超える場合もあります。
厨房機器の導入費用は、設備内容だけでなく設置場所の条件や施工の有無によっても変動するため、あらかじめ相見積もりを取得し、総額の把握と助成金・補助金制度の活用を並行して検討しましょう。
飲食店を開業する際に必要な開業資金や自己資金の目安や、自己資金0円での開業は可能か否かについては、以下記事にて解説しています。
参考記事:飲食店開業の資金はいくら必要?資金調達方法と自己資金の目安や補助金・助成金制度まとめ
厨房機器の導入に使える主要助成金・補助金5選
ここからは、厨房機器の導入に使える主要助成金・補助金5選を紹介します。
- 中小企業省力化投資補助金
- 省エネルギー投資促進支援事業費補助金
- 小規模事業者持続化補助金
- 飲食事業者向け経営基盤強化支援事業
- ものづくり補助金(大規模設備導入向け)
制度によって申請要件が異なるため、該当するかどうか必ず確認しましょう。
中小企業省力化投資補助金
出典:中小企業省力化投資補助金
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために、省力化投資を支援する制度です。中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを事業目的としています。
この補助金は、「カタログ注文型」と「一般型」の2つの類型で申請可能です。
カタログ注文型 | 一般型 | |
---|---|---|
投資内容 | 簡易で即効性のある省力化投資を支援 | オーダーメイド性のある多様な省力化投資を支援 |
補助対象 | カタログに掲載された省力化効果のある汎用製品の選択・導入 | 個別の現場や事業内容に合わせた設備導入・システム構築など |
補助上限額 | 最大1500万円 | 最大1億円 |
申請期間 | 第2回公募:2025年4月15日(火)~5月30日(金)まで | 第2回公募:申請ポータルでの受付は2024年4月25日(金)10:00開始 |
注意点として、一般型の第1回公募の申請者は、第2回公募へは申請できません。
申請に必要なIDの取得には一定の期間を要するため、未取得の場合は早めに手続きを行いましょう。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金
省エネルギー投資促進支援事業費補助金は、様々な業種で横断的に使われる汎用的な15設備の更新に対応する補助金です。省エネルギー投資の促進を目的としています。
補助対象となる主な設備は以下のとおりです。
ユーティリティ設備 | 高効率空調、産業ヒートポンプ、業務用給湯器、高性能ボイラ、高効率コージェネレーション、低炭素工業炉、変圧器、冷凍冷蔵設備、産業用モータ、制御機能付きLED照明器具 |
生産設備 | 工作機械、プラスチック加工機械、プレス機械、印刷機械、ダイカストマシン |
このうち、厨房機器は「冷凍冷蔵設備」に該当します。また、上記に該当しない「その他SIIが認めた高性能な設備」も対象となる場合もあるので確認してみましょう。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金には、以下の2つの類型があります。
設備単位型 | SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たす設備(指定設備)の導入を支援。 申請には、更新範囲内において省エネ率10%以上、省エネ量1kl以上、または経費当たり計画省エネルギー量1kl/千万円のいずれかの要件を満たす必要あり。 省エネ法に基づく定期報告義務がない事業者(特定事業者等以外の事業者)は、エネルギーの合理化に関する中長期計画の策定が求められる。 |
エネルギー需要最適化型 | SIIに採択されたエネマネ事業者と登録されたEMSを用いて、より効果的に省エネルギー化を図る事業を支援。 この類型を単独で申請する場合は、「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」での申請となり、設備単位型と組み合わせた場合のみ補助対象となる。 中小企業者等の補助率は1/2以内、大企業等は1/3以内であり、補助金限度額は上限1億円、下限30万円。 省エネルギー率2%改善を目安とした省エネ計画の作成と、成果報告・公表が求められる。 |
申請期間は複数回設けられており、2025年は以下の公募期間が予定されています。
1次公募期間: 2025年3月31日(月)~4月28日(月)
2次公募期間: 2025年6月上旬~7月上旬(予定)
3次公募期間: 2025年8月中旬~9月下旬(予定)
補助金額については、事業全体の上限額が1億円、下限額が30万円であり、補助率は1/3以内です。複数年度(全体2年)にわたる投資計画も支援の対象となります。
小規模事業者持続化補助金
出典:小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金(一般型)は、従業員数5人以下といった小規模事業者等の持続的な経営に向けた経営計画に基づく販路開拓や業務効率化の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助する制度です。
補助対象は、持続的な経営に向けた経営計画に基づく販路開拓や業務効率化の取り組みに必要な経費となります。飲食業では、厨房機器のほか開発費や広告費などが対象になるケースがあるので要確認です。
申請期間については、第8回から第13回受付締切回は既に終了しているため、今後の予定を公式サイトで随時確認してみてください。
飲食事業者向け経営基盤強化支援事業
飲食事業者向け経営基盤強化支援事業は、東京都内の中小飲食事業者の経営基盤の安定化や収益の確保に向けた取り組みを支援する事業です。この事業では、専門家によるコンサルティング(専門家派遣支援)のほか、経営基盤強化に資する取り組み経費の一部を助成する「助成金支援」が行われています。
助成金支援には、「Ⅰ専門家派遣実施コース」「Ⅱ厨房機器等改修コース」の2コースがあります。両方のコースで厨房機器等に関する経費(厨房機器等購入費、厨房等工事費)が助成対象となる可能性があるので確認してみましょう。
補助金額は、コースによって以下のように異なります。
助成限度額 | 助成率 | |
---|---|---|
Ⅰ専門家派遣実施コース | 200万円 | 助成対象経費の2/3以内 |
Ⅱ厨房機器等改修コース | 50万円 | 助成対象経費の2/3以内 |
令和6年度以降の申請期間については、今後の予定を公式サイトで随時確認してみてください。
ものづくり補助金(大規模設備導入向け)
出典:ものづくり補助金
「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」は、中小企業・小規模事業者等が、今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するため、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援する制度です。
ものづくり補助金は飲食業も申請でき、厨房機器購入のほか、メニュー開発やオーダーシステム構築にかかる費用も対象になる可能性があります。
申請期間については、令和7年4月11日(金)より、19次締切の電子申請が開始されているので要確認です。
過去の締切回として、18次締切(令和6年3月11日電子申請開始)、17次締切、16次締切、15次締切などの採択結果が公表されています。
厨房機器導入時に助成金・補助金を申請する際の注意点3つ
厨房機器の導入にあたり助成金や補助金を活用する場合、申請前後の行動や書類の不備によって交付対象から外れるケースが少なくありません。以下のポイントに注意しましょう。
- 助成金・補助金の交付決定前に厨房機器を購入しない
- 申請受付期間に間に合うように準備する
- 申請書類の不備や誤記に注意する
申請時には、制度の仕組みや注意点を正確に理解することが不可欠です。それぞれ説明します。
助成金・補助金の交付決定前に厨房機器を購入しない
助成金・補助金を活用して厨房機器を導入する際、交付決定日より前に発注・購入・設置を行うと、補助対象外になるため注意しましょう。交付決定前に厨房機器の購入や設置を済ませた場合、導入費用のすべてが補助対象経費と認められなくなる可能性が高くなります。
導入計画は、助成金・補助金の交付スケジュールと連動させることが大切です。導入を急ぐ場合でも、事前着手の可否を事務局に確認してから進行しましょう。
申請受付期間に間に合うように準備する
助成金・補助金の申請には厳格な受付期間が設定されているため、提出期限に間に合うよう計画的に準備を進めましょう。
多くの助成金・補助金制度では、公募期間が年に数回のみ設定されており、それぞれの締切後には一切の受付が行われません。厨房機器の導入時期と申請タイミングがずれると、導入費用が補助対象にならず、全額自己負担になるリスクがあります。助成金・補助金を活用するには、導入計画段階から補助制度のスケジュールを把握しておくことが大切です。
申請書類の不備や誤記に注意する
助成金・補助金申請時の提出書類には、記載ミスや不備があると審査を通過できない可能性があるため、内容の精査が欠かせません。
助成金・補助金の申請には、申請書類・見積書・納税証明書・事業計画書・導入費用明細書などの複数書類が必要です。これらの情報に不一致や漏れがあると、交付審査の段階で減点要因となり、不採択につながる恐れがあります。
正確で整合性の取れた書類の提出は、助成金・補助金申請の基本です。不安がある場合は、行政書士や補助金サポート専門窓口のアドバイスを受けることで、書類不備によるトラブルを未然に防げます。
専門窓口の参考として、ホシザキ株式会社が展開する「補助金サポートデスク」では、補助金対象製品の選定から書類作成のアドバイスまで一貫した支援が提供されており、申請についての疑問を相談できます。
参考サイト:ホシザキ補助金サポートデスク
厨房機器導入の助成金・補助金は、早めの準備を
厨房機器の導入にあたっては、適切な助成金・補助金制度を活用することで初期費用を大幅に軽減できます。中小飲食店や個人事業主でも利用できる制度は多く、事前の準備と正確な情報収集が重要です。
制度の特性や対象経費を正しく理解し、専門家のサポートも活用すると、申請成功の可能性が高まります。コスト削減と経営効率化の両立を図るためにも、早めの情報収集と計画的な申請を行いましょう。