人手不足が慢性化する中、飲食・小売・施設業界では外国人採用が現実的な選択肢として定着しつつあります。実際、製造業やサービス業をはじめとするさまざまな分野で外国人労働者数が増えており、特定技能や技能実習といった在留資格制度を活用する企業も少なくありません。
一方、業界によって外国人の受け入れ可否や可能な業務範囲が異なり、また労働基準法や社会保険への対応を誤ると雇用上のリスクが高まるため、注意が必要です。
本記事では、外国人採用が進んでいる業界のランキングを紹介し、飲食・小売・施設分野で外国人材を採用するメリットや主な在留資格のポイントについて整理、解説します。
外国人労働者が多い業界ランキング

出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和6年10月末時点)丨厚生労働省
厚生労働省の調査によれば、令和6年10月末時点で、国内の事業所に雇用されている外国人労働者数は約230万人を超えました。これは前年から12.4%増加しており、過去最多となったことが明らかになっています。
産業別で見ると、製造業が全体の26%を占めて1位となっています。次いで、サービス業、卸売業、小売業、宿泊業、飲食業が、それぞれ13%から15%ほどの割合で続いているのが特徴です。このことから、飲食や小売、施設の現場でも外国人材の雇用が広がっていることがわかります。
1位:製造業
2位:宿泊・サービス業
3位:小売業
4位:飲食業
5位:介護サービス業
ここでは、外国人労働者が多い上記の業界をランキング形式で整理し、各業界の特徴や外国人採用が進む背景についても解説します。
1位:製造業
製造業は、外国人労働者の数が最も多い業界です。製造現場では技能実習制度や特定技能制度を活用した雇用が進み、作業内容が比較的明確なため、計画的な勤怠管理や給与計算がしやすい環境といえます。
また、製造業は地方工場で通勤に車が必要なケースや、夜勤のような特殊な労働形態から慢性的な人手不足となっており、外国人採用に舵を切る企業が多いことも推察されます。
ただし、就業規則や労働条件があいまいなままだと、退職やトラブルのきっかけになってしまうため注意が必要です。製造業で外国人を採用する際は、制度と現場業務を正しく結び付けることが安定した労働力確保につながります。
2位:宿泊・サービス業
宿泊・サービス業は、多言語対応力を活かせるため外国人労働者の需要が高い分野です。ホテルや観光施設では、訪日外国人の増加を背景に外国人材を積極的に活用しています。
製造業同様、人手不足や特殊な勤務形態も外国人採用が増えている理由の一つです。具体的には、土日やGW・年末年始などの暦上の休日が繁忙期にあたること、夜勤対応が必要になること、地方の宿泊施設における通勤の不便さなどが挙げられます。
また、宿泊・サービス業で外国人労働者を採用する場合、労働時間管理や有給休暇、社会保険の加入条件があいまいだと、従業員との認識にズレが生じやすい点には注意が必要です。この業界では業務内容と在留資格の適合性を整理し、雇用管理を可視化することが安定運営のポイントになります。
3位:小売業
小売業は、外国人労働者が接客・販売の現場で活躍しやすく、外国人雇用が拡大している業界です。
コンビニやスーパーでは、留学生や外国人材を中心に人材確保が進んでいます。レジ業務や品出しなどはマニュアル化しやすく、勤怠管理や給与計算方法を統一しやすい点が特徴です。
長時間労働や土日、早朝・深夜勤務など、日本人労働者の採用活動が難しいことも、小売業で外国人採用が増えている要因として推察されます。
小売業における外国人採用では、資格外活動の時間制限や残業手当、社会保険料の扱いに誤りがあると、制度違反が起きる可能性があるため注意が必要です。小売業で外国人を採用する際は、労働条件通知書や雇用契約書を明確にし、制度に沿った運用が求められます。
4位:飲食業
飲食業も外国人労働者が多く働く分野で、人手不足対策としての外国人採用が定着しつつあります。
外食産業では慢性的な人手不足が続き、特定技能外国人や留学生アルバイトなどの雇用が増えているのが現状です。調理補助やホールスタッフといった業務は内容が明確なため、外国人労働者の勤怠管理や給与体制も整えやすくなっています。
しかし、労働基準法や社会保険、雇用保険の条件を誤るとトラブルにつながるため、雇用管理には特に注意が必要です。飲食業で外国人を雇用する際は、在留資格のチェックと就業規則の整備を前提に、現場の業務と制度をしっかり結び付けましょう。
5位:介護サービス業
介護サービス業は、特に外国人労働者への依存度が高く、制度的にも外国人採用が前提となりつつある業界です。少子高齢化が進行し、現役世代の減少や過酷な労働条件による人材不足が深刻になっているため、特定技能外国人や技能実習生の受け入れが進んでいます。
また、高齢者の増加に伴う急速なニーズの増加に、人材採用が追い付いていないことも要因です。介護業務には資格や研修が必要なため、雇用管理や育成体制の整備も欠かせません。
介護分野で外国人採用を行う場合は、社会保険や労働保険の制度に基づく採用と人材育成を両立させることが、外国人雇用のポイントとなります。
参考記事:【2025年版】外国人採用の成功事例9選|飲食・小売・施設の実例を紹介
【在留資格別】外国人労働者を採用できる業界

外国人労働者を採用できる業界は、製造業や建設業、農業、介護・サービス業、小売業など多岐にわたります。しかし、在留資格によっては採用できない人材もいるため、在留資格ごとに認められている従事可能な業種を把握しておくことが重要です。
- 技能実習生を受け入れられる業界
- 特定技能1号の受け入れが可能な業界
- 特定技能2号の受け入れが可能な業界
外国人を採用する際は、業界や職種だけでなく、在留資格ごとに従事できる業務範囲を正しく理解しておきましょう。
ここでは、特定技能や技能実習など在留資格ごとに採用できる業界と、実務での注意点をまとめます。
技能実習生を受け入れ可能な業界
技能実習生を受け入れ可能な職種は、「移行対象職種」と呼ばれており、以下の8業界になります。
- 農業・林業
- 漁業
- 建設
- 食品製造
- 繊維・衣服
- 機械・金属
- その他(自動車整備、ビルクリーニング、介護、宿泊、溶接など)
- 社内検定型
技能実習生の受け入れの際は、技能実習計画の認定審査で業務内容の適合性などが判断されるため、基準に従うことが必要です。
特定技能1号の受け入れ可能な業界
特定技能1号の外国人労働者を受け入れ可能なのは、以下の17業界になります。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 自動車運送業
- 鉄道
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業
- 木材産業
特定技能1号は、国内人材の確保が困難な分野において、一定の専門性や技能を有する外国人労働者の就労を認める在留資格です。
特定技能1号の外国人労働者が各分野で従事できる業務内容が明確に定められているため、適切な雇用管理と受け入れ体制の整備が求められます。
各分野の詳しい仕事内容については、以下のリンク先をご覧ください。
特定技能2号の受け入れ可能な業界
特定技能1号の外国人労働者を受け入れ可能なのは、以下の11業界になります。
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
特定技能2号は、特定技能1号で一定期間働き、より高度な技能を身につけた外国人労働者に認められる資格です。現場の中核人材として長期での活躍が期待できます。
各分野の詳しい仕事内容については、以下のリンク先をご覧ください。
参照:特定技能2号の各分野の仕事内容│出入国在留管理庁
外国人労働者の業種ごとの割合

出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和6年10月末時点)丨厚生労働省
外国人労働者の業種別割合を見ると、製造業が26%で最多、続いてサービス業15.4%、卸売・小売業が13.0%でした。これは外国人雇用が人手不足の深刻な分野を中心に、さまざまな業界へ広がっていることを示しています。
特にサービス業や卸売・小売業では、留学生や外国人労働者が接客・販売業務に従事し、勤怠管理や給与計算、社会保険対応の重要性が増しています。中小企業や店舗経営者は、制度や労働基準法、雇用管理を踏まえたうえで、自社の業界特性に合った外国人雇用戦略を立てることが大切です。
飲食・小売・サービス業で外国人材を採用する3つのメリット
飲食・小売・サービス業で外国人材を採用することで、以下3つのメリットが得られます。
- 人手不足の解消
- 多文化のコミュニケーション力アップ
- 多言語による顧客対応力アップ
上記の業界で外国人材を採用することで得られる代表的な3つのメリットを整理し、経営や現場に与える効果を具体的に解説します。
人手不足の解消
飲食・小売・サービス業において外国人材を採用するメリットは、慢性的な人手不足を補える点にあります。
飲食・小売・サービスの業界では労働力不足が深刻化しており、特定技能や留学生アルバイトを含む外国人労働者が重要な雇用の担い手となっているのが現状です。
この業界では業務内容が比較的定型化されているため、勤怠管理や給与計算の仕組みを整えれば、安定した労働力として活用しやすいでしょう。
多文化のコミュニケーション力アップ
外国人材の受け入れでは、職場に多文化の視点を取り入れ、コミュニケーション力を高める効果が期待できます。
外国人労働者は異なる文化や価値観を持っており、職場内での情報共有や業務の進め方に新たな気づきをもたらす場合があるのもメリットです。
多文化コミュニケーションの蓄積は、現場対応力の向上だけでなく、組織全体の人材育成にも良い影響を与えるでしょう。
多言語による顧客対応力アップ
外国人材の採用は、多言語による顧客対応力を高め、サービス品質の向上につながるメリットもあります。
訪日外国人や在住外国人が増加する中、外国人従業員が母語や英語を活かして対応すれば、接客の幅が広がり、企業の信頼性やブランド価値の向上が期待される点もメリットの一つです。
多言語対応を人材面から強化することは、競争力のある店舗運営を実現する有効な施策といえるでしょう。
飲食・小売・サービス業で外国人材を採用するデメリットと対策
外国人材の採用には多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットも存在します。
- 言語・文化に差がある
- 労働法違反に注意する必要がある
ここでは、飲食・小売・サービス業で想定される主なデメリットと、その具体的な対策について整理します。
言語・文化に差がある
外国人材を採用する際に想定されるデメリットは、言語や文化の違いによる意思疎通の難しさです。
飲食・小売・サービス業では接客やチームワークが重要であり、日本語理解や業務慣習の差が業務ミスや誤解を招く場合があります。特に勤怠管理、指示伝達、労働条件の理解が不十分だと、従業員の不安や定着率低下につながりかねません。
対策として、多言語マニュアルの整備や業務の可視化、定期的なフォローを加えることで、文化や言語の違いがあっても円滑な雇用管理を実現できます。
労働法違反に注意する必要がある
外国人材を採用する際、日本人と同様の労働基準法を適用できていないと、法令違反にあたる点に注意する必要があります。
在留資格や制度への理解不足があると、残業代未払い、社会保険未加入、就業規則の未整備といった問題が発生しかねません。これらは企業側の責任とされ、行政指導や雇用トラブルに発展する可能性があります。
このような手続きの煩雑さ、法令遵守の難しさは、外国人採用のデメリットの一つです。
雇用契約書や労働条件通知書を整備し、社会保険・雇用保険の加入条件を確認することで、適正な外国人雇用につなげる必要があります。
外国人採用は業界特性の把握がポイント
外国人採用は人手不足の解消だけでなく、業界特性や制度を理解したうえで行うことで、会社の持続的な成長にもつながります。特に飲食・小売・サービス業では、在留資格ごとの業務範囲を整理し、勤怠管理・給与計算・社会保険手続きなどを正確に行うことが大切です。
また、外国人労働者を一時的な労働力と捉えるのではなく、長く活躍できる人材として、定着や育成までを見据えた雇用管理を行うことが、現場の安定や企業成長につながります。

