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2026/01/07

居抜き物件の固定資産とは?会計処理・減価償却・注意点を解説

  • 居抜き物件
居抜き物件の固定資産

居抜き物件を契約した際、「この設備は経費なのか」「固定資産として計上すべきか」で迷う店舗オーナーは少なくありません。内装や厨房機器、備品などが一式そろっている居抜き物件は便利な反面、会計処理を誤ると、税務上のトラブルや想定外の税負担につながる可能性があります。特に固定資産の扱いを間違えると、減価償却の計算や費用計上のタイミングがずれ、利益や資金繰りに影響を与えることもあります。

本記事では、居抜き物件における固定資産の考え方から、会計処理の基本、減価償却の仕組み、注意すべきポイントまでをわかりやすく解説。開業後も安心して経営に集中するために、実務に役立つ知識として押さえておきましょう。

※本記事では、「会計上の固定資産(減価償却)」と「固定資産税(償却資産)」を分けて解説します。両者は制度が異なるため、混同しないようご注意ください。

目次

居抜き物件における固定資産の基本理解

居抜き物件における固定資産の基本理解

居抜き物件では、内装や設備をまとめて引き継ぐため、それぞれが固定資産に該当するのか経費として処理できるのかを正しく見極める必要があります。判断を誤ると、減価償却漏れや経費過多といった問題が生じ、税務調査で指摘を受ける可能性もあります。まずは固定資産の考え方を理解し、自社の状況に照らして整理することが大切です。

  • 固定資産に該当するもの
  • 経費として処理できるケース

固定資産に該当するもの

固定資産とは、事業のために長期間使用する資産のことを指します。居抜き物件では、厨房設備、冷蔵庫、エアコン、給排水設備、造作棚、カウンター工事などが代表的な該当例です。取得価額が一定金額を超え、かつ耐用年数が複数年にわたるものは、原則として固定資産として資産計上し、減価償却によって毎年費用化していきます。

また、内装工事や電気工事など、物件に付随して使用される設備も「建物附属設備」として固定資産扱いになるケースが多く見られます。居抜き物件では、譲渡契約に含まれる設備が一式まとめて記載されていることもあるため、内容を一つずつ確認し、固定資産かどうかを判別する作業が欠かせません。

経費として処理できるケース

すべての設備が固定資産として扱われるわけではありません。取得金額が少額なものや、使用期間が短いと判断される物品については、経費として処理できるケースがあります。

一般的には、取得価額が10万円未満の備品は、少額減価償却資産として消耗品費などで処理されることが多いとされています。ただし、これは法令上の一律ルールではなく、企業の経理方針や資産管理の考え方によって、減価償却を行うケースも少なくありません。また、取得価額が10万円以上20万円未満の資産については、一括償却資産として3年間で均等償却する方法を選択できる点も押さえておく必要があります。

さらに、青色申告をしている中小事業者等であれば、一定の要件を満たすことで、30万円未満の資産を少額減価償却資産として一括で費用処理できる特例を利用できる場合があります。これらは任意償却の制度であり、必ず適用しなければならないものではありません。

加えて、修繕や補修を目的とした支出で、設備の性能や価値を実質的に高めていない場合には、修繕費として経費計上できるケースもあります。一方で、設備の交換や機能追加をともなう工事については、資産計上が必要となる可能性があるため注意が必要です。

内容に応じて「少額減価償却資産」「一括償却資産」「修繕費」などを適切に区分し、曖昧な判断のまま処理をおこなわないことが、税務上のリスク回避につながります。

居抜き物件の固定資産税が課税されないケース

居抜き物件の固定資産税が免除されるケース

居抜き物件で店舗を開業する場合、固定資産税が発生するかどうかは重要な確認事項です。居抜きで設備を引き継いだからといって、必ずしも固定資産税が課税されるわけではありません。

実際には、所有関係や資産の種類、評価額、制度の適用状況によって、課税されないケースも存在します。ここでは、固定資産税が発生しない代表的なパターンを整理します。

  • 建物や土地を所有していない場合
  • 設備が償却資産に該当しない場合
  • 課税標準額が免税点未満の場合
  • 新規取得で申告対象に該当しない場合
  • 国・自治体の特例措置に該当する場合

建物や土地を所有していない場合

居抜き物件を賃貸で借りて営業している場合、建物や土地の固定資産税は原則としてオーナーが負担します。テナントは建物を使用しているだけであり、所有者ではないため、固定資産税の納税義務はありません。権利金や保証金を支払っている場合でも、所有権が移転していなければ課税対象にはなりません。

物件を取得するのではなく借りている状況でも、設備の一部を買い取った場合は、その部分については別途課税対象になる可能性がある点に注意してください。建物と設備の所有関係を区別して理解しておくことが大切です。

設備が償却資産に該当しない場合

固定資産税のうち、設備に対して課税されるのは、あくまで償却資産に該当するものに限られます。そのため、居抜き物件に含まれるすべての設備が固定資産税の対象になるわけではありません。

一般的な会計処理では、取得価額が10万円未満の備品や使用期間が1年未満と想定される物品については、固定資産として計上せず、経費処理されるケースが多く見られます。ただし、償却資産税の判定基準は、会計上の固定資産基準と必ずしも一致しません。

償却資産税においては、取得価額が少額であっても事業の用に供され、反復継続して使用される設備や備品は、償却資産として申告対象となる場合があります。そのため、「10万円未満で取得したから申告不要」と一律に判断することは適切ではありません。

一方で、事業用と家庭用の区別が明確でないものや、消耗性が高く短期間で使い切る物品については、課税対象外とされるケースもあります。一般什器や消耗品が中心であれば、結果として固定資産税が発生しない場合も少なくありません。

設備ごとに用途・使用実態・継続性を確認し、償却資産に該当するかを一つずつ判断することが、不要な申告漏れや過剰申告を防ぐポイントになります。

課税標準額が免税点未満の場合

償却資産には免税点が設けられており、評価額の合計がこの基準を超えなければ課税されません。償却資産の場合、原則として150万円未満であれば固定資産税はかかりません。複数の設備がある場合は、個別ではなく合算で判断されます。

小規模な店舗で最低限の設備のみを引き継いで開業したケースでは、結果的に課税されないこともあります。免税点を超えていないかを判断するためにも、設備の評価額を把握しておくことが大切です。特に複数年度にわたって設備を追加する場合は注意が必要です。

新規取得で申告対象に該当しない場合

固定資産税は、毎年1月1日時点で保有している資産に対して課税されます。居抜き物件を年の途中で契約し、設備を取得した場合、その年の1月1日時点で所有していなければ、その年度の課税対象にはなりません。

ただし、翌年の1月1日までに保有していれば、原則として翌年度から課税されます。開業年度に課税されなかったとしても、恒久的な免除ではない点に注意が必要です。翌年度以降の課税も見越したうえで、資金計画を立てることが重要です。

国・自治体の特例措置に該当する場合

一部の地域では、創業支援事業や地域活性化を目的として、固定資産税の減免制度が設けられていることがあります。一定条件を満たせば、期間限定で税額が軽減されるケースもあります。

また、災害復旧を目的とした設備投資に対して、税制優遇措置が適用される場合も少なくありません。ただし、これらの制度は自動的に適用されるものではなく、申請が必要です。制度の存在を知らずに申請を逃してしまうと、本来受けられるはずの軽減措置を受けられなくなるため、事前の情報収集が不可欠です。

居抜き物件における固定資産として計上する際の基準

居抜き物件における固定資産として計上する際の基準

居抜き物件で取得した設備や内装は、すべてを経費として処理できるわけではありません。金額や使用期間の条件によっては、固定資産として計上し、減価償却で費用化する必要があります。ここを誤ると、経費の過大計上や申告漏れにつながる可能性があります。正しい基準を理解し、開業時から適切な会計処理を行うことが重要です。

  • 金額基準
  • 耐用年数基準

金額基準

固定資産として計上するかどうかは、取得金額が大きな判断基準となります。一般的に、取得価額が10万円以上の資産は固定資産として処理するのが原則です。一方で、青色申告を行っている中小事業者などは30万円未満の資産について、一定の条件を満たせば一括で経費計上できる特例が設けられています。

ただし、この特例には年間の上限額が設定されており、無制限に使えるわけではありません。居抜き物件では複数の設備をまとめて取得するケースも多く、請求書の内訳を確認せずに一括処理すると、適用条件を逸脱する恐れがあります。設備ごとの金額を把握し、固定資産として分けるべきものと経費処理が可能なものを区別することが重要です。

耐用年数基準

固定資産のもう一つの判断基準は、使用予定期間が1年を超えるかどうかです。たとえ金額が10万円未満であっても、長期間使用する前提の設備については固定資産として管理するケースもあります。厨房設備やエアコン、造作工事などは、数年単位で使用されることが前提となるため、減価償却の対象です。

耐用年数は、税法上定められた基準年数に基づいて設定され、業種や設備種類によって異なります。居抜き物件の場合、取得時点ですでに中古資産となるため、残存耐用年数を考慮した計算が必要になることも少なくありません。耐用年数の設定を誤ると、償却額にも影響するため、正確な分類が求められます。

居抜き物件における減価償却の考え方

居抜き物件で取得した設備や内装は、取得時に全額を経費処理するのではなく、原則として減価償却によって複数年に分けて費用化する必要があります。減価償却の方法や耐用年数の設定を誤ると、税務上の指摘や想定外の税負担につながることも少なくありません。ここでは、居抜き物件に特有の減価償却の考え方を整理します。

  • 耐用年数の設定
  • 償却方法の選択

耐用年数の設定

減価償却をおこなう際には、資産ごとに耐用年数を設定する必要があります。耐用年数は税法で定められており、厨房機器、空調設備、内装工事など、資産の種類ごとに異なります。居抜き物件の場合、新品ではなく中古資産を取得するケースが多いため、未使用の資産と同じ年数をそのまま適用できない場面も少なくありません。

その場合は、経過年数や残存期間を踏まえて耐用年数を再計算する必要があります。例えば、法定耐用年数が10年の設備を5年使用済みの状態で取得した場合、残りの5年を基準に設定することになります。耐用年数の見積りを誤ると、償却額が過大または過少になり、税務上のリスクにつながる可能性があるため、合理的な算定が重要です。

償却方法の選択

減価償却の方法には、主に定額法と定率法があります。定額法は毎年同じ金額を償却する方法で、費用が安定しやすく、資金計画を立てやすい特徴があります。

一方、定率法は初年度の償却額が大きく、年数が経過するにつれて償却額が減少する方法です。開業初期に利益が出にくい場合や、早期に費用化したい場合には、定率法のほうが適しているケースもあります。

ただし、法人と個人事業主では選択できる方法が異なる場合があるため、適用条件の確認が必要です。減価償却方法の選択は、税務戦略にも影響を与えるため、安易に決めず、事業の利益見通しに応じて検討することが求められます。

居抜き物件における実務でよくある誤り

居抜き物件では、開業準備に追われる中で会計処理が後回しになりやすく、結果的に誤った処理をしてしまうケースが多く見られます。固定資産と経費の区別や減価償却の管理を誤ると、税務調査で修正を求められるだけでなく、想定外の納税負担が生じる可能性もあります。ここでは、居抜き物件における実務でよくある誤りについて解説しますので、参考にしてください。

  • 一括経費処理
  • 償却漏れ

一括経費処理

居抜き物件で取得した設備一式をすべて開業費や消耗品費として一括で経費処理してしまうのは、よくある誤りのひとつです。厨房機器や内装設備など、長期間使用する資産は原則として固定資産に分類し、減価償却によって費用化する必要があります。一括で経費処理してしまうと、当期の利益が過度に圧縮され、税務調査で修正指摘を受ける可能性が高くなります。

また、資産計上をしていないために、後年の減価償却ができず、節税の機会を失うことにもつながるでしょう。契約書や見積書の内訳を確認し、設備ごとに正しく分類する姿勢が重要です。

償却漏れ

固定資産として計上はしたものの、減価償却の処理を忘れてしまうケースも少なくありません。特に開業初年度は、別の業務に追われて償却処理が後回しになることが多く、気づいたときには数年分の償却が未処理のままになっていることもあります。償却漏れが発生すると、本来経費として計上できるはずの金額を反映できず、結果的に税負担が増加します。

さらに、後からまとめて修正しようとすると、帳簿の作り直しや追加申告が必要になる可能性もあるでしょう。固定資産台帳を作成し、毎期見直す体制を整えることで、こうしたミスは防げます。

居抜き物件契約時の注意点

居抜き物件の契約では、設備の引き継ぎ内容だけでなく、会計処理や退去時の責任範囲まで確認しておくことが重要です。契約書の確認を怠ると、想定外の設備撤去費や会計処理の修正を迫られる可能性があります。特に資産の扱いと原状回復の条件は、後々のトラブルを防ぐためにも、契約段階で明確にしておくべきポイントです。

  • 資産区分明記
  • 撤去責任の確認

資産区分明記

居抜き物件では、引き継ぐ設備がどのような資産として扱われるのかを、契約書上で明確にしておく必要があります。設備一式といった曖昧な表現だけでは、どこまでが無償譲渡で、どこからが有償取得かが不透明になります。その結果、会計処理や減価償却の判断が難しくなり、税務上のリスクが高まるのです。契約書には、設備の名称、数量、所有権の帰属、評価額などをできるだけ具体的に記載してもらうことが大切です。

また、建物附属設備に該当するのか、器具備品として処理すべきなのかを、事前に整理しておくことで、会計処理をスムーズに進められます。

撤去責任の確認

居抜き物件では、退去時に設備を撤去する必要があるのか、そのまま引き渡してよいのかを確認しておくことが大切です。契約内容によっては、居抜きで入居したにもかかわらず、原状回復義務として設備の撤去に多額の費用が発生することもあります。設備の撤去責任が借主側にあるのか、貸主側にあるのかによって、将来的なコストが大きく変わります。

特に大型厨房設備などは撤去費用が高額になる傾向があるのです。契約締結前に、原状回復の範囲や撤去義務の対象となる設備を明確にし、書面で確認しておくことが、想定外の支出を防ぐために欠かせません。

居抜き物件における税務上の論点

居抜き物件では、物件取得時に発生する費用の税務上の取り扱いが、通常の賃貸契約とは異なる点が多く見られます。権利金や造作譲渡料、設備取得費などの扱いを誤ると、消費税や固定資産税の申告漏れにつながる可能性があるのです。ここでは、居抜き物件特有の税務面での注意点を整理します。

  • 消費税の扱い
  • 固定資産税の対象可否

消費税の扱い

居抜き物件で支払う費用のすべてが消費税の課税対象になるわけではありません。例えば、物件の賃料は原則として課税取引ですが、敷金や保証金のうち返還される部分は不課税とされます。一方で、造作譲渡料や設備の取得費用は、課税取引に該当するケースが一般的です。

譲渡内容が複合的な場合、契約書の内訳が曖昧だと、課税範囲の判断が難しくなり、申告ミスを招く原因になります。消費税の扱いは、支出の性質ごとに異なるため、内訳を明確にした契約書の作成が重要です。税区分を正確に把握することで、仕入税額控除の適用漏れを防ぐことにもつながります。

固定資産税の対象可否

居抜き物件における固定資産税は、建物や土地の所有者に課税されるのが原則です。そのため、テナントとして入居している場合は、オーナーが建物・土地の固定資産税を負担します。ただし、店舗オーナーが設備を取得した場合は、その設備が償却資産に該当すれば、別途固定資産税の申告が必要になることがあります。

厨房機器や事業用の空調設備などは、償却資産として課税対象になるケースが一般的です。課税対象かどうかを判断するには、設備の種類や取得価格、使用目的を確認し、適切に区分する必要があります。誤った判断は過少申告や追徴課税のリスクを高めるため注意が必要です。

居抜き物件の固定資産管理が向いている事業者

居抜き物件は初期投資を抑えられる反面、設備管理や会計処理が複雑になりやすい特徴があります。そのため、固定資産を適切に管理できる体制があるかどうかが経営の安定性を左右します。

すべての事業者に同じ運用が適しているわけではなく、事業形態によって向き不向きが分かれるのです。ここでは、固定資産管理と相性が良い事業者の特徴を整理します。

  • 複数店舗運営企業
  • 長期運営前提の事業者

複数店舗運営企業

複数店舗を運営している企業は、固定資産管理に向いている傾向があります。各店舗ごとに設備を保有するため、どの資産がどの店舗に属しているのかを一元管理する仕組みが必要になりますが、すでに管理体制が整っているケースが多いため、居抜き物件特有の設備管理にも対応しやすいといえます。

また、複数店舗で同種の設備を使用している場合、資産区分や耐用年数の設定を統一しやすく、会計処理の効率化にもつながるでしょう。設備の移設や再利用が可能な場合には、無駄な投資を抑えられ、結果として経営の柔軟性が高まります。固定資産の仕組みを理解した担当者がいる企業ほど、居抜き物件の利点を最大限に活かせます。

長期運営前提の事業者

特定の店舗を長期間運営する予定の事業者にとって、固定資産管理は大きなメリットがあります。設備を長く使用するほど、減価償却による費用配分の効果を実感しやすくなり、収支の管理もしやすくなります。

短期間で撤退する可能性が高い場合は、償却が進まないまま設備を処分することになり、結果としてコスト回収が難しくなりますが、長期運営が前提であればそのリスクは小さくなるのです。

また、設備更新のタイミングを計画的に管理できる点も、長期運営型の事業者にとって大きな利点です。資産管理を経営戦略の一部として捉えることで、事業の安定性を高めることが可能になります。

居抜き物件の固定資産管理が経営判断の精度に影響する

居抜き物件の固定資産は、単なる設備管理の話ではなく、経営の安定性に直結する重要なテーマです。設備を正しく資産区分し、会計処理や減価償却を適切に行うことで、税務リスクを回避しながら資金計画を立てられます。一方、固定資産と経費の区別を誤ると、償却漏れや過大経費計上につながり、税務調査での指摘を受ける可能性も高まります。

また、固定資産税の対象可否や免税点の確認を怠ることで、無駄な納税や申告漏れが生じる恐れもあるでしょう。居抜き物件特有の会計上のポイントを理解し、契約段階から適切な管理体制を整えることで、開業後も安心して店舗運営に集中できる環境が整います。

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