働き方が多様化する中で、企業研修や社員教育の方法も大きく変化しています。特に中小企業では、限られた予算と人員の中で効率的に教育を進める必要があり、その解決策としてクラウド型eラーニングシステムが注目されています。
クラウド型eラーニングシステムは、自社サーバーが不要で初期費用もかからず、月額制プランで手軽に導入できる点が魅力です。
本記事では、クラウド型eラーニングシステムの導入メリットや比較ポイントに加え、中小企業におすすめのクラウド型サービス5選を紹介します。
クラウド型eラーニングシステムとは?仕組みとオンプレミス型との違い
クラウド型eラーニングシステムとは、自社でサーバーを構築する必要がなく、初期費用を抑えて導入できる学習管理システムのことです。
クラウド型eラーニングシステムは、オンプレミス型eラーニングシステムに比べて導入・運用の負担が軽く、月額制や従量課金制で柔軟に利用できます。PCやスマホなどマルチデバイスに対応しており、場所や時間を問わず学習可能です。
なお、「クラウド」という言葉は、2006年にGoogleのCEOが、インターネット上で提供されるサービス群を「雲のように見えない場所に存在する仕組み」と表現したことが由来です。この比喩から、データやシステムを自社に置かず、インターネット経由で利用する形態を「クラウド」と呼ぶようになりました。
クラウド型eラーニングシステムとオンプレミス型eラーニングシステムの比較表を以下にまとめています。
| 項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
|---|---|---|
| 導入コスト | 初期費用無料~数万円、月額制プランあり | 初期費用数百万円~、高額な投資が必要 |
| 導入スピード | 数日~数週間で導入可能 | 数カ月以上かかる場合が多い |
| システム構築 | 不要(ベンダー側で管理) | 自社サーバー構築が必要 |
| 運用・保守 | ベンダーが実施、IT部門不要 | 自社IT部門で管理・メンテナンス |
| セキュリティ | 標準でSSL・ID管理などセキュリティ対策あり | 自社ポリシーに合わせた高度な管理が可能 |
| カスタマイズ性 | 限定的(ベンダー提供の機能に依存) | 自由度が高く、自社仕様に合わせやすい |
| 利用環境 | インターネット環境必須 | 自社サーバー環境で運用 |
| 適している企業 | 中小企業、スピード重視の企業 | 大企業、セキュリティやカスタマイズ重視の企業 |
セキュリティや細かなカスタマイズを重視するならオンプレミス型が適しています。
一方、低コストかつスムーズに成果を出したい中小企業には、クラウド型がおすすめです。
参考記事:【比較表あり】オンプレミス型eラーニングシステムとは?クラウド型との違い・メリット・デメリット・おすすめ製品を解説
クラウド型eラーニングシステムが選ばれる理由と4つの導入メリット

クラウド型eラーニングシステムは、低コストで始められる料金体系や、IT部門がなくても導入可能な手軽さがメリットです。
- 初期費用無料・月額制プランで導入しやすい
- 自社でのサーバー管理が不要=IT部門がなくても導入可能
- 研修進捗・受講履歴・動画教材の管理が一括でできる
- セキュリティ対策済のシステムが多数ある(SSL対応・ID管理など)
ここでは、企業が注目すべきクラウド型eラーニングシステムの4つの導入メリットを具体的に解説します。
初期費用無料・月額制プランで導入しやすい
クラウド型eラーニングは初期費用が無料で導入できるサービスがあるうえに、月額プランでスタートできるため、中小企業でも少ない負担で導入しやすい学習管理システムです。
多くのクラウド型eラーニングシステムが初期費用を0~20万円程度に抑え、1ユーザーあたり月額200~1,000円ほどの従量課金や、5~20万円ほどの固定料金プランでサービスを提供しています。そのため、オンプレミス型に比べて導入コストが約5分の1以下になるケースもあり、費用面でのハードルが低いのも特徴です。
初期費用や契約コストを気にして導入をためらうより、少額スタートで試せる手軽さが、クラウド型eラーニングシステムのメリットといえます。
自社でのサーバー管理が不要=IT部門がなくても導入可能
サーバーの設置や保守・システム運用が不要なクラウド型eラーニングシステムは、IT部門を持たない中小企業でも導入や運用がしやすいメリットがあります。
クラウド型eラーニングシステムは、ベンダーがシステムの構築・メンテナンス・アップデートをすべて担うためです。導入までの期間が短く済むうえに、管理者の負担も最小限で済みやすい傾向にあります。サーバー監視やトラブル対応を外部に任せられるため、研修担当者は学習コンテンツの作成や教育施策に集中することが可能です。
「ITの専門知識がない」状況でも、クラウド型を選ぶことで安心かつスムーズにeラーニングの運用を始められます。
研修進捗・受講履歴・動画教材の管理が一括でできる
クラウド型eラーニングシステムを導入すると、研修の進捗状況、受講履歴、動画教材の配信を一元管理でき、教育担当者の業務効率が劇的に改善するメリットもあります。
受講者ごとの学習進捗や受講履歴をリアルタイムで可視化できるため、社内教育の見える化が図られます。
CSVやExcel形式で進捗状況を出力できるeラーニングシステムもあり、受講状況の分析や未受講者へのリマインドも自動化可能です。その結果、集合研修にかかる時間やコストを削減しながら、PDCAを回せる体制が整えられます。
学習管理に必要な学習進捗や受講履歴を見える化できる点は、運用効率の向上に留まらず、教育の品質と成果を高めるうえでも重要なポイントです。
セキュリティ対策済のシステムが多数ある(SSL対応・ID管理など)
クラウド型eラーニングシステムを導入するメリットとして、セキュリティ対策済みのシステムが多数ある点が挙げられます。SSL/TLSによる暗号化やIP制限、ID認証・シングルサインオンなど、クラウド型eラーニングシステムには高度なセキュリティ機能を標準搭載したサービスも多く、安心して導入することが可能です。
クラウド型eラーニングシステムには通信の暗号化(TLS/SSL)が基本搭載されている場合が多く、IPアドレス制限や二段階認証を活用すればアクセス制御を強化できます。
クラウド型eラーニングシステムは高度な安全対策が整っているため、「セキュリティが不安」という方でも安心して導入を進められる点が魅力です。
【中小企業向け】クラウド型eラーニングおすすめサービス5選を比較
クラウド型eラーニングシステムは、初期費用を抑えて導入できるため、場所や時間を選ばずに学習を進められる点が中小企業におすすめの理由です。
- LearnO
- CloudCampus
- AirCourse
- manebi eラーニング
- ひかりクラウド スマートスタディ
ここでは、導入しやすさや導入費用などを比較した中小企業におすすめのクラウド型eラーニングサービスを5つ厳選して紹介します。
LearnO

LearnO(ラーノ)は、初期費用が0円かつ最短1カ月、月額4,900円の業界最安値帯料金から提供されている点が、コストを重視する中小企業にとって大きなメリットです。
- 月額4,900円の低価格帯から利用可能
- 1カ月からの短期契約OK
- 3,800社、月間60万人以上が利用
専任スタッフによる手厚いサポート体制が整っているため、中小企業で教育担当者が不足している場合でも安心です。
また、LearnOの導入時に、IT導入補助金の対象となる中小企業や小規模事業者は最大で2分の1の補助金を受けられる可能性があります。
LearnOはセキュリティ事故がゼロである点も特徴で、2013年にプライバシーマーク、2022年には情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO27001認証を取得しました。セキュリティと情報資産の取り扱いにおいて、細心の注意が払われている信頼性の高いクラウド型eラーニングシステムです。
CloudCampus

CloudCampus(クラウドキャンパス)は、ソフトバンクグループが運営するサイバー大学で独自に開発されたeラーニングプラットフォームです。実績の高さと柔軟な料金体系から、特にコストと運用リソースに制約のある中小企業での導入に適しています。
Cloud Campusの最大の特徴は、利用ユーザー数が増えても費用が変わらない定額制である点です。この定額制は、従業員数の変動や今後の事業拡大を見込んでいる中小企業にとって、コスト予測が容易になるという大きなメリットがあります。
また、独自の学習教材がない、または外部研修のコストを抑えたいという中小企業にとって、働くすべての人に必須のIT・ビジネススキルなど、厳選コンテンツが見放題なのもポイントです。
AirCourse
AirCourse(エアコース)は、「受け放題の動画研修」と「充実した管理機能」を兼ね備えつつ、初期費用0円で月額低コストを実現しているクラウド型eラーニングシステムです。そのため、特にコストや運用リソースに制約のある中小企業にとって導入しやすいクラウド型eラーニングとなっています。
また、新入社員から管理職まで、各階層に必要な研修を網羅した1,000コース、6,000本以上の動画研修「標準コース」が提供されている点も特徴です。自社で研修コンテンツを開発するリソースがない中小企業でも、すぐに教育を開始できる学習環境が整っています。
manebi eラーニング
manebi eラーニングは、6,300超の豊富な教材とAI搭載LMSを組み合わせたクラウド型eラーニングシステムです。教育担当者のリソースが限られがちな中小企業に対して、最適な研修プログラムの迅速な構築と手厚いサポートを提供しています。
豊富な学習コンテンツとAIによる研修設計の効率化により、中小企業が個別に教材を準備する手間やコストを大幅に削減し、必要な研修をすぐに開始できる環境が整っている点が特徴です。
導入事例では、99%の受講率達成や管理コスト75%削減、入社時研修の工数40%削減など、具体的な成果も示されています。
ひかりクラウド スマートスタディ

クラウド型システムのeラーニング導入が初めての中小企業におすすめなのが、ひかりクラウド スマートスタディです。
1ID月額198円~でユーザー数は1人から始められる定額料金のため、従業員が少人数規模の中小企業でも導入しやすい料金体系になっています。
無料の2週間トライアルができるため、使用感を手軽に試せます。
社内向け研修だけでなく、社外や個人向けのコンテンツ提供にも利用できる点も特徴です。
クラウド型eラーニングシステムのデメリットと注意点
メリットが多く導入しやすいクラウド型eラーニングシステムですが、すべてが万能というわけではありません。
- オフラインでは学習できない(ネット環境依存)
- カスタマイズや細かいシステム構築は難しい場合もある
上記の導入前に知っておきたいデメリットや注意点を整理し、失敗しない選定につなげましょう。
オフラインでは学習できない(ネット環境依存)
クラウド型eラーニング教材はインターネット環境に依存しているため、通信が不安定な場所では学習が継続しづらくなります。事前に利用環境を確認しておくことが重要です。
クラウド型eラーニングシステムは学習教材や進捗データをすべてクラウド上で処理するため、ネット接続が不安定だと教材のロードや受講履歴の記録に支障が生じかねません。そのため、通信が届きにくいオフィスや工場など、オフラインの現場での利用には工夫が求められます。
学びの柔軟性では魅力的なクラウド型eラーニングシステムですが、ネット環境が安定しない現場には、「オフライン対応」や「ダウンロード機能」の有無を確認しておくことが不可欠です。
カスタマイズや細かいシステム構築は難しい場合もある
クラウド型eラーニングシステムでは、システムの細かなカスタマイズ性において限られる場面が多く、自社独自の学習環境を構築しながら導入することが難しい点に注意しましょう。
クラウド型eラーニングシステムは汎用機能が中心のため、UI変更や独自ロジック追加など細かなカスタマイズは難しい場合があります。オリジナル教材や管理機能を導入したい場合は、事前にカスタマイズ対応の有無を確認することが重要です。
クラウド型eラーニングシステムは低コストで導入しやすい一方、自社に最適化した研修の運用を実現するには柔軟性をチェックしておく必要があります。
クラウド型eラーニングシステムはこんな企業におすすめ
クラウド型eラーニングシステムは、以下4点のどれか1つでも該当する企業での導入におすすめのサービスです。
- 新人教育・アルバイト研修を短期集中で行いたい
- 拠点ごとに学習管理を効率化したい
- 教育担当者の負担を減らしたい
- 社員数30名〜300名の中小企業・事業所である
クラウド型eラーニングシステムは、標準で教材や動画、テスト機能が備わっており、短期集中の新人教育やアルバイト研修もスピーディーに開始できます。さらに、インターネット経由での学習では支店や事業所をまたいで利用者を一括管理できるため、拠点間で統一されたeラーニング研修を容易に実現できる点も特徴です。
また、管理者ID機能や進捗・受講履歴の自動取得により、教育担当者の運用負担や管理工数が劇的に減少します。
クラウド型eラーニングは「教育コスト」と「業務効率」の両立を実現する
クラウド型eラーニングは、利用料金を抑えつつ短期間で導入でき、研修管理や受講履歴の把握を効率化できる強力な仕組みです。一方で、ネット環境依存やカスタマイズ性の制約があるといったデメリットも存在します。
重要なのは、自社の規模や目的に合ったサービスを見極めることです。従業員の教育や業務効率化の成果を選ぶなら、クラウド型eラーニングシステムをぜひ検討してみてください。
