店舗照明の色は、単に空間を明るくするだけでなく、来店客の印象や購買行動に直結する重要な要素です。色温度や演色性によって商品の見え方や雰囲気が大きく変わり、快適さや信頼感を左右します。飲食店や小売店、美容室など業種ごとに適した照明色を取り入れることで、来店動機を高め、売上や集客の向上にもつながります。本記事では、エリアや業種別に最適な照明色の選び方を解説します。
店舗照明の色は重要？
店舗照明の色は、空間の雰囲気や商品・サービスの見え方を左右し、顧客体験に直結する重要な要素です。まず色温度の違いによって印象が大きく変わります。昼白色は自然光に近く清潔感を演出し、作業性や正確さを求める場に適しています。
電球色は温かみやリラックス感を与え、飲食店や居心地を重視する空間に好まれます。両者の中間にある温白色は、落ち着きと明るさのバランスが取れるため、多くの店舗で採用されています。さらに、演色性（Ra）も欠かせない視点です。これは照明に照らされた対象物がどれだけ自然に見えるかを示す指標で、数値が高いほど色再現性が良く、商品の魅力を正しく伝えられます。
特にアパレルや飲食では、色や鮮度を忠実に表現するためにRa90前後が推奨されます。また、照明色には心理的な効果もあり、暖色は安心感を与え購買意欲を高め、寒色は清潔感や集中力を促します。つまり、照明の色は単なる明るさの調整ではなく、顧客の行動や店舗の成果に直結する戦略的な要素なのです。
エリア別にマッチする店舗照明の色とは？
本項では、エリア別にマッチする店舗照明の色について解説していきます。
入口・外観におすすめの照明色
店舗の入口や外観は、通行人が最初に目にする部分であり、第一印象を決める大切な場所です。ここで重要となるのが「入りやすさ」と「視認性」です。昼白色を使えば明るさと清潔感が強調され、店舗の信頼感を高められます。
一方、飲食店やカフェでは温かみのある電球色を取り入れると、リラックスできる雰囲気を演出し「ちょっと立ち寄りたい」という気持ちを喚起します。また、イベントや夜間営業では、色温度を切り替えることでより印象的な外観を作り出せます。入口の照明は「招き入れる光」として、業種や立地に合った工夫が不可欠です。
商品棚・ディスプレイに適した照明色
商品棚やディスプレイは、来店客に商品を魅力的に見せるための重要なエリアです。ここでは、商品本来の色や質感を正確に伝える必要があるため、自然光に近い昼白色が最適です。特にアパレルや雑貨では、演色性の高い照明を使うことで、素材の質感や微妙な色合いを忠実に再現できます。
食品売り場では、果物や野菜を鮮やかに見せるために電球色を部分的に取り入れると効果的です。また、ディスプレイの一部を強調したい場合は、スポットライトで色温度を変えて配置すると、視線を誘導できます。照明は単なる明るさではなく「商品の魅力を引き出す演出」として活用することが重要です。
レジ・カウンターで使うべき照明色
レジやカウンターは、顧客とスタッフが直接やり取りを行う場であり、安心感や信頼感を与える照明が求められます。ここでは温白色や昼白色を用いると、顔色が自然に見え、清潔感を損なわずに快適なコミュニケーションが可能です。
過度に暗い照明は不安感を与え、反対に強い白色光は冷たく事務的な印象を与えるため避けた方が良いでしょう。
また、カウンター周辺を柔らかく照らすことで、会計時に緊張を和らげる効果も期待できます。さらに、レジ上部に明るめのスポットライトを配置することで視認性を確保し、スタッフの作業効率も高まります。レジの照明は「最後の接点」を快適に演出する工夫がポイントです。
【店舗別】最適な照明色の選び方
本項では、店舗別に最適な照明色の選び方について解説していきます。
飲食店
飲食店では「料理を美味しそうに見せること」が照明選びの最大の目的です。電球色は温かみを与え、食欲を刺激する効果があるため、レストランや居酒屋で多く採用されています。高級店では落ち着きある暗めの電球色で非日常感を演出し、カフェやファストフードでは温白色を取り入れて清潔感と居心地の良さを両立させます。
また、料理本来の色を正しく見せるためには演色性の高い照明が不可欠です。特にRa90以上の照明を使えば、食材の鮮やかさが引き立ち、視覚からも美味しさを感じられます。照明は料理を「魅せる演出」の一部として戦略的に活用すべきです。
アパレル・小売店
アパレルや小売店では、商品の色を正確に見せることが顧客満足につながります。そのため、自然光に近い昼白色の照明が基本です。特に試着室では「店内で見た色と屋外で見た色が違う」といった不満を防ぐため、演色性の高い照明が求められます。
雑貨やアクセサリー売り場では、全体を昼白色で統一しつつ、一部に電球色を用いると高級感や温かみを演出できます。また、スポットライトを使って商品に陰影をつければ、立体感や素材感が際立ちます。全体照明と部分照明を使い分けることで、商品がより魅力的に映り、購買意欲を高めることが可能です。
美容室・クリニック
美容室やクリニックでは、清潔感と安心感を重視した照明選びが必要です。美容室では、髪色や肌色を自然に見せるために昼白色の照明が最適です。特に鏡越しに見える色味は顧客の満足度に直結するため、演色性の高さが欠かせません。Ra90以上の照明を採用すれば、カラーリングやメイクの仕上がりが正確に伝わります。
クリニックでは昼白色に加えて、柔らかさを感じられる温白色を部分的に組み合わせると、患者の緊張を和らげる効果があります。医療的な精度と快適性を両立する照明設計は、信頼感のある環境づくりに直結します。
店舗照明の色は売り上げや集客に関係する？
本項では店舗照明の色が売り上げや集客にもたらす影響について解説していきます。
顧客の購買意欲
照明の色は、顧客の心理や購買意欲に直接作用します。暖色系の光はリラックス感を与え、長居しやすい環境をつくり、結果的に追加購入や滞在時間の延長につながります。例えば飲食店では、電球色が料理を美味しそうに見せ、自然と注文数を増やす効果があります。
一方で昼白色は、商品を正確に見せることができ、アパレルや雑貨店に適しています。色の選び方を誤ると「印象が暗い」「商品が魅力的に見えない」と感じさせ、購買意欲を下げるリスクもあります。つまり、照明色は商品と顧客を結びつける「無言の販売員」として機能するのです。
店舗の雰囲気づくり
店舗の雰囲気は照明色によって大きく変化し、集客やリピート率にも影響します。電球色を中心に使えば落ち着きと温かみを与え、高級感のある空間を演出できます。反対に昼白色は清潔感や明るさを強調し、活気ある雰囲気を生み出します。温白色はその中間で、幅広い業種に対応できる柔軟さを持ちます。
さらに、エリアごとに照明色を変えることで「入口は招き入れる光」「商品棚は魅力を引き出す光」「レジは安心感の光」といった役割を持たせられます。雰囲気づくりを意識した照明設計は、店舗のブランドイメージを強め、顧客に「また来たい」と思わせる重要な要素となります。
まとめ
店舗照明の色は、空間の印象を形づくるだけでなく、顧客の購買意欲や滞在時間に大きな影響を与えます。入口や商品棚、レジなど場所に応じた適切な色を選ぶことで、来店客に心地よい体験を提供できます。また、業種に合わせた照明色の活用は、店舗の強みを引き出し、集客力を高める効果も期待できます。照明は内装の仕上げではなく、経営戦略の一部と捉えることが成功のカギとなるでしょう。
