近年、スーパーやコンビニエンスストアなどで一般的となったセルフレジですが、飲食店でも広まりを見せています。
小売業界にあるセルフレジと言えば、商品のバーコードスキャンから支払いまで顧客が行う機種が一般的です。また、有人レジで商品のレジ登録を行い、決済・支払いのみを顧客が行う機種もあります。
飲食店では、具体的にどのような機種が使われているのでしょうか。また、飲食店でセルフレジを導入するメリットはあるのでしょうか。
本記事では、飲食店でセルフレジを導入するメリット・デメリットや、おすすめの機種を紹介しながら、導入時に意識しておきたいポイントについて解説します。
飲食店で導入されているセルフレジの種類
飲食店で導入されているセルフレジとは、お客様に注文や会計操作の一部、あるいはすべてを行ってもらうタイプのレジのことを指します。
セルフ会計POSシステム、セルフPOSレジシステムなどと呼ばれるタイプの製品です。飲食店向けのセルフレジには、大きく分けて2種類の製品があります。
- 前払いタイプのセルフレジ
- 後払いタイプのセルフレジ
また、利用者に決済をしてもらうセルフ決済・セルフ会計機能だけでなく、セルフオーダーに対応している機種があるのも特徴です。
まずは、それぞれのセルフレジが具体的にどのような機能をもっているのか、特徴や違いについて解説します。
前払いタイプのセルフレジ
前払いタイプのセルフレジは、飲食する前に会計を行う機種のことを指します。
発券機や券売機とも呼ばれる機種で、メニュー数が比較的少ない業種(ラーメン店、牛丼店など)で導入されていることが多い点が特徴です。
金銭のやりとりを従業員が行わずに済むため、感染症対策や釣り銭のミスが防げます。従業員がレジ業務を行う必要がなく、業務負担が軽減できるのもメリットです。
前払いタイプのセルフレジは、会計・決済を行うことで注文が成立します。そのため、後払いによる食い逃げ(無銭飲食)の防止にも効果的です。
ただし、シンプルな機種の場合は、決済方法が現金に限定される製品もあるので注意しましょう。
後払いタイプのセルフレジ
後払いタイプのセルフレジは、飲食後に清算を行う機種です。
レジで従業員が来るのを待つ必要がないため、お客様の待機ストレスを緩和できるメリットがあります。
後払いタイプのセルフレジは、回転寿司やカラオケ店、居酒屋チェーンなどで導入されていることが多い傾向です。
また、各テーブルのタブレットやタッチパネル、顧客のスマートフォンから注文をしてもらうなど、オーダーの受注業務をセルフ化できる機種もあります。
飲食店でセルフレジを導入するメリット
飲食店におけるセルフレジ導入のメリットは、以下の3点です。
- 従業員の業務負担軽減につながる
- 人件費が削減できる
- 感染症対策ができて衛生的
これらのメリットを得たい場合には、セルフレジの導入を検討してみると良いでしょう。
従業員の業務負担軽減につながる
飲食店でセルフレジを導入すると、会計処理などのレジ操作を従業員が行わずに済むため、業務負担の軽減につながるメリットがあります。
例えば、バイト従業員に会計業務を付きっ切りで指導する必要がなく、スタッフを商品提供に関するオペレーションに集中できる点が特徴です。
また、契約するサービスによっては、オーダーシステムもセルフ化できます。
データ収集と連動しているシステムも多く、オーダー、会計・決済、売上管理・在庫管理などの業務負担の大幅な軽減につながるでしょう。
従業員の業務負担が軽減できれば、余裕が生まれて接客サービスの向上にもつながるなど、波及的効果も期待できます。
人件費が削減できる
レジに割くスタッフを確保する必要がないため、人件費削減につながるのも飲食店でセルフレジを導入するメリットです。
最小限の人員配置で店舗運営ができるようになり、採用コストの抑制にもつながります。
オーダーの受注もセルフ化すれば、飲食物の調理や提供、テーブルの後片付けなど、人の手で行う業務の範囲が狭くなるためです。
また、レジ締め作業もスムーズになるため、釣り銭が合わず残業が発生するリスクも避けられるでしょう。結果的に定時で終業しやすい環境になり、残業代の抑制にもつながります。
感染症対策ができて衛生的
飲食店でセルフレジを導入すると、従業員がお金に触れる頻度が減少し、衛生的に店舗運営ができるメリットもあります。
不特定多数が触れるお金は、感染症が広まる原因の1つです。食事を提供する従業員がお金に触れるのは、衛生面で懸念があります。
セルフレジで決済・支払いをお客様に任せるのは、従業員がお金に触れる頻度の抑制に効果的です。手洗いの不備などによる衛生面でのリスク軽減につながります。
また、オーダー業務もセルフ化すれば、従業員とお客様の接触頻度がさらに下がるでしょう。セルフレジの導入は、感染症対策に効果的です。
飲食店でセルフレジを導入するデメリット
飲食店でセルフレジを導入する場合、メリットだけでなくデメリットがあることにも注意しなければなりません。
- 食い逃げ行為(無銭飲食)が発生する恐れがある
- セルフレジの設置に費用がかかる
セルフレジのデメリットは、導入する際に対策を講じていれば回避できる可能性があります。どのようなデメリットがあるのか、セルフレジを導入する前に把握しておくことが大切です。
食い逃げ行為(無銭飲食)が発生する恐れがある
飲食店でセルフレジを導入すると、会計を行わずに退店する「食い逃げ行為」が発生するリスクがあります。
とくに、お客様のタイミングで支払いができる後払いタイプでは注意が必要です。精算機を設置しているだけでは、会計を行ってから退店したかを従業員が見ていない可能性があります。
そのような場合には、先払いタイプのセルフレジを導入する、監視カメラを導入するなどして、リスクを軽減することが大切です。
セルフレジの設置場所を決めるときは、店舗スタッフの目が届きやすい場所を選ぶのも良いでしょう。
セルフレジの設置に費用がかかる
設置に費用がかかるのも、飲食店でセルフレジを導入するデメリットの1つです。
セルフレジの設置には、1台あたり100万円~300万円ほどの費用がかかると言われています。
また、会計用のレジだけでなく、各テーブルに注文用のタブレットを設置すると、さらに導入コストが増加する点に注意しなければなりません。
初期費用の負担を軽減するには、セルフレジのレンタルやリース、サブスクを活用するのもおすすめです。
飲食店向けセルフレジの価格相場
飲食店向けセルフレジの価格相場は、約100万円~300万円です。フルセルフレジよりも、セミセルフレジタイプの方が高くなる傾向にあります。
飲食店向けセルフレジの価格が高くなるのは、自動釣銭機の購入が必要になるためです。
例えば、レンタル利用や対面決済に対応するタブレットPOSレジなどであれば、初期費用不要で月額数万円~十数万円程度に抑えられます。
自動釣銭機の有無で価格に大きな差が出るため、初期費用を抑えたい場合はコンパクトな設備を選ぶか、対面決済に対応する方法も検討すべきでしょう。
参考記事:セルフレジの価格はどれくらい?導入費用を抑える3つのポイント
飲食店での導入におすすめのセルフレジ3選
飲食店での導入におすすめのセルフレジは、小売店で導入されている機種とは異なります。飲食店向けの機種を選び、導入することが重要です。
ここでは、飲食店向けセルフレジについて、機種ごとの料金や設置費用、保守費用の目安を紹介します。
導入を決定する前に、機種ごとの特徴や他社との違い、前払いタイプ・後払いタイプのどちらなのかも確認しておきましょう。
スマレジ
出典:株式会社スマレジ
スマレジは、さまざまな業種で導入できるセルフレジシステムです。飲食店向けの機能に特化したタイプの機種もあります。
前払いタイプのセルフレジ(発券機・券売機)、後払いタイプのセルフレジのどちらでも選択することが可能です。(別途導入費用がかかるケースもあります)
プラン名 | 利用料金 |
スタンダード | 0円 |
プレミアム | 5,500円(月額) |
プレミアムプラス | 8,800円(月額) |
フードビジネス | 12,100円(月額) |
スマレジは、月額定額制で利用できる複数のプランの中から、店舗に合うサービスを選んで利用できる点が特徴です。レジ機能はすべてのプランで利用できます。
オプションも種類が豊富で、保守管理やテーブル用オーダー端末の運用、セルフレジ・セミセルフレジ端末の利用も可能です。
オプションを利用する場合は、プラン料金とは別で追加費用がかかります。また、オプションが適用できるプランが限られているものもあるので注意しましょう。
参考サイト:スマレジ公式サイト
POS+(ポスタス)
出典:ポスタス株式会社
POS+(ポスタス)は、業種特化型の機能が備わったセルフレジ対応POSレジなどの設備を提供している企業です。飲食店はもちろん、小売業やアパレル業、美容サロン、クリニックなどでも導入できるプランがあります。
プラン名 | 利用料金 |
飲食店向けの料金プラン | 月額10,000円~ ※2024年9月26日までのキャンペーン価格 (通常価格:月額14,000円~) |
レジ機能だけでなく、キッチンでの伝票出力や売上管理・在庫管理のほか、飲食チェーン店に便利な複数店舗連携も可能です。
また、他社ではオプションに含まれることが多い、無制限の駆けつけサポートもプランに含まれています。(地域によっては費用別途)
モバイルオーダーやテイクアウトオーダー、順番待ちシステムなどのオプションの利用も可能です。(費用別途)
参考サイト:POS+公式サイト
MAIDO SELF REGI
出典:まいどソリューションズ株式会社
MAIDO SELF REGIは、とくにインバウンド(外国人旅行者)の顧客が多い飲食店での導入におすすめのセルフレジです。
日本語・中国語・英語・韓国語の4カ国語表記に対応しており、インバウンドの顧客でもスムーズに利用できます。
プラン名 | 利用料金 |
MAIDO SELF REGI ※フルセルフレジ | 月額5,980円~ |
MAIDO SELF ※電子メニューブック | 月額1,560円~ |
また、MAIDO SELFも導入すると、テーブルでのコード決済が可能になるため、レジの混雑が回避できるのも特徴です。「Wechat」や「Alipey」などの中国系決済サービスにも対応しています。
そのほか、モバイルオーダーやキャッシュレス決済も導入可能です。売上管理・在庫管理や、タイムカード、分析ツールなど、豊富な機能が利用できます。(料金要問い合わせ)
導入後最大2カ月間は、すべてのサービスが無料で利用できるのも魅力です。お試し導入をしたい方にも適しています。
参考サイト:MAIDO SELF REGI公式サイト
飲食店の課題解決におすすめのシステム
飲食店における業務負担の増加や人的ミスなどの課題を解決するには、セルフレジだけでなく店舗設備や店内オペレーション全体を見直すことが大切です。
ここからは、飲食店のさまざまな課題解決に役立つおすすめのシステムや設備について解説します。
券売機・セルフオーダーKIOSK
飲食店でセルフレジを導入しても、オーダー受注業務はスタッフが行わなければなりません。釣銭ミスやホールスタッフの業務負担が増えるなど、さまざまな課題が解消できない場合があります。
そこでおすすめなのが、セルフレジ券売機・セルフオーダーKIOSKと呼ばれる前払いセルフレジの導入です。
券売機は、ラーメン店や定食屋などで導入されているイメージがある方も多いかもしれません。しかし近年、タッチパネルタイプの券売機(セルフオーダーKIOSK)も登場し、幅広いメニューやオーダー方式に対応できるようになりました。
キッチンプリンターやキッチンディスプレイとの連携が可能な機種もあるため、オーダー業務の負担軽減やミス抑止に最適です。
また、タッチパネル式券売機は多言語表示機能も備わっている機種が多く、インバウンド対策にも役立つメリットがあります。前払いレジなら、後払いセルフレジによる食い逃げなどのリスクも抑制できるのでおすすめです。
モバイルオーダーシステム
飲食店における業務フローの見直しを行うなら、セルフレジと一緒にモバイルオーダーシステムを導入すると良いでしょう。
セルフレジ機能と連携可能なモバイルオーダーシステムを活用すれば、オーダー受注や清算・会計業務をセルフ化できるため、料理のサーブにスタッフが集中できるようになります。
また、スタッフがオーダーを取りに来てくれるのを待つ必要がなくなることから、顧客満足度向上につながるのも魅力です。
飲食店向けのモバイルオーダーシステムについては、以下の記事でおすすめシステムを紹介していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
参考記事:モバイルオーダーシステムの飲食店向けおすすめサービス10選を徹底比較
まとめ
飲食店向けのセルフレジは、セルフレジ本体だけでなくオーダーのセルフ化に対応しているシステムが多い点が特徴です。
これまで従業員の手でオーダーを受注したり、会計・決済に対応したりしていた場合、導入によって大幅な業務工数削減につながるでしょう。
飲食店向けのセルフレジシステムは、機能が豊富にあります。しかし、すべて導入すると費用も高額になるため注意しなければなりません。必要な機能を明確にした上で、利用を検討することが大切です。