セルフレジは、小売店や飲食店、クリニックなど、さまざまな店舗や施設で導入されている会計設備です。
会計を顧客にセルフで行ってもらうことにより、レジ業務の効率化や人件費の削減・レジの回転率向上によるレジ待ち列の解消など、幅広いメリットが得られます。
しかし、セルフレジの導入にはデメリットがあることも把握しておかなければなりません。
本記事では、セルフレジが求められる背景と、導入によって想定されるデメリットや課題について詳しく解説します。
また、デメリットをカバーしながら、セルフレジを導入する方法についても解説していますので、セルフレジを導入する際のヒントとしてぜひご活用ください。
セルフレジが求められる理由
出典:厚生労働省
セルフレジの導入が求められているのは、企業における人手不足の深刻化に対する手段として検討されていることが理由の1つです。
厚生労働省が行った労働経済分析調査では、2013年度には300件未満だった人手不足が原因での倒産が、2022年度には485件に大幅増となりました。この件数は、ほかの理由を含む倒産件数全体のうち、7.5%を占める数値です。
2013年度には3%未満だったため、約10年あまりで数値が2倍以上に増えていることがわかります。
参考サイト:令和5年版 労働経済の分析|厚生労働省
日本は少子高齢化による労働人口の減少が、国全体における課題です。今後ますます人手不足が加速すると予想されていることから、解決手段の1つとしてセルフレジなどの設備による対策が求められています。
セルフレジ導入のデメリットと課題
セルフレジを導入する際、事前に把握しておきたいデセルフレジのメリットや課題は以下の4点です。
- セルフレジ担当スタッフの負担が大きい
- 未払いや万引きのリスクがある
- 客離れが起こる原因になる
- 導入コストがかかる
それぞれ、具体的にどのような影響を及ぼすのか、対策をせずにセルフレジを導入した際のリスクについて解説します。
セルフレジ担当スタッフの負担が大きい
セルフレジを導入すると、セルフレジを担当するレジスタッフの負担増につながるデメリットがあります。
セルフレジは、操作やキャッシュレス決済のサポートを行うスタッフを数台に1名程度配置しながら、導入することが一般的です。しかし、導入直後は顧客が操作方法に慣れていないため、ひっきりなしに声がかけられるケースも少なくありません。
結果的に1台の有人レジを担当するよりも、レジスタッフにかかる負担が大きくなり、セルフレジの担当を嫌煙するあまり人手不足が加速する場合もあるでしょう。
未払いや万引きのリスクがある
セルフレジを導入すると、未払いや万引きのリスクがあるのもデメリット・課題の1つです。
とくに、小売業で導入されているフルセルフレジは、顧客が自ら商品のバーコードを読み取って登録するため、未登録商品が発生するケースも少なくありません。
顧客が気づかないまま、支払いができていない状態になってしまうだけでなく、登録したふりをして万引きする故意による犯罪行為も発生することがあります。
このようなリスクを知らないままセルフレジの導入に踏み切ると、防犯設備や防犯対策の不足により、収益の減少につながる可能性が高くなるため注意が必要です。
客離れが起こる原因になる
セルフレジを導入したことが原因で、客離れが起こる原因になるのもデメリットの1つです。
セルフレジの操作に苦手意識がある顧客が多い店舗に発生する現象で、欧米ではセルフレジによる客離れが原因で、店舗のレジ設備を有人レジに戻す動きも出ています。
とくに、有人レジをすべて撤去して、完全にセルフレジへ移行した場合、サポート体制が整っていないと顧客が嫌煙する原因になりかねません。
高齢者世代が多い地域など、店舗の顧客層によってはこのようなリスクがあることを把握しておく必要があります。
導入コストがかかる
導入コストがかかるのも、セルフレジを導入するデメリットや課題の1つです。
セルフレジを導入するには、以下の金額がかかります。
- セミセルフレジ:80~200万円
- フルセルフレジ:100~300万円
- レジレス:1,000~1,500万円
小規模店舗や個人店舗でこれだけの費用を捻出することは難しく、導入にかかるコスト負担が原因でセルフレジが導入できずにいる事業者もいるでしょう。
本体の購入金額に加えて、設備の設置工事費用、Wi-Fi設置費用なども必要です。
また、上記に加えて保守点検やシステムのアップデートなど、定期的なメンテナンスにかかる費用も発生します。
このような費用負担をどのように軽減するかを検討しなければ、導入コストが負担となって経営を圧迫する要因になるでしょう。
参考記事:セルフレジの価格はどれくらい?導入費用を抑える3つのポイント
セルフレジのデメリットをカバーする対策方法
セルフレジを導入する際に発生するデメリットをカバーする手段として、以下4つの対策法が挙げられます。
- セルフレジ担当スタッフの負担を分散する
- 防犯対策システム・防犯カメラを導入する
- 操作方法がわかりやすいセルフレジを選ぶ
- 補助金制度やレンタル・リースを利用する
ここからは、セルフレジ導入時に意識しておきたい、導入リスクを軽減する対策の方法について見ていきましょう。
セルフレジ担当スタッフの負担を分散する
セルフレジの担当スタッフに負担がかかるデメリットを解消するには、セルフレジ担当スタッフの負担を分散するために工夫を講じることが大切です。
例えば、セルフレジの導入直後は配置人数を増やして対応する、対応に追われる状況になった際、応援に入るスタッフを決めておくなどの方法があります。
セルフレジ担当スタッフがとくに大きくなる導入直後を乗り切れば、顧客がセルフレジの操作に慣れてくるため、サポート要請の回数も減少するでしょう。
もっとも負担の大きい導入直後に対策を講じておけば、問題なくセルフレジを導入できます。
防犯対策システム・防犯カメラを導入する
セルフレジにおける未払い・万引きなどの課題をカバーする手段として、防犯対策システムや防犯カメラを導入するのも選択肢の1つです。
近年では、セルフレジにAIカメラを搭載して、商品の登録漏れを通知してくれる製品も登場しています。
また、有人レジやサービスカウンターなどにいるスタッフの目線の先に、セルフレジの設置エリアを設けるのも防犯対策に効果的です。
ただセルフレジを導入するのではなく、どのようにして防犯を進めていくか、顧客の商品登録・スキャン漏れを万引き行為と間違えないためにも、防犯カメラなどの導入を検討しておきましょう。
参考記事:セルフレジの防犯対策方法まとめ!万引きを防ぐ導入のポイントとは
操作方法がわかりやすいセルフレジを選ぶ
操作方法がわかりやすいセルフレジを選んで導入するのも、セルフレジのデメリットをカバーする対策方法としておすすめです。
大きく表示された画面や、わかりやすいデザインになっていれば、初めてセルフレジを利用する人でもレジ作業を進めやすいでしょう。
とくに、このような機器類に慣れていない高齢者が多い地域の店舗では、導入するセルフレジを選定する際に重視すべきポイントの1つです。
セルフレジ導入による客離れを防ぐためにも、一目で操作しやすい機種を導入しましょう。
参考記事:セルフレジによる客離れを防ぐには?顧客が嫌がる理由と改善策を紹介
補助金制度やレンタル・リースを利用する
セルフレジを導入する際にかかる費用負担を軽減するには、国や自治体の補助金・助成金制度を活用したり、レンタル・リースで設備の導入コストを抑えたりする方法が効果的です。
ただし、補助金や助成金制度を活用するには、支給要件を満たしている必要があるため、すべての事業者が利用できるとは限りません。
セルフレジの導入時に活用できる補助金・助成金制度について、詳しくは以下の記事で解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
参考記事:【2024年最新】セルフレジ(自動精算機)導入に利用できる補助金制度まとめ
レンタルやリースでセルフレジを導入する場合、導入コストが抑えられる反面、長期的に利用すると購入金額よりも高い支出になる可能性があります。
初期費用の負担・運用コストの負担などを比較した上で、購入するかレンタル・リースを活用するか検討すると良いでしょう。
自店舗に最適なセルフレジの選び方
自店舗に最適なセルフレジを選ぶには、店舗の状況にマッチする設備を選ぶ必要があります。しかし、どのような設備が自店舗に適しているのか、判断基準がわからない方も多いのではないでしょうか。
ここからは、具体的にどのようなポイントで比較すれば、自店舗に合うセルフレジを選定できるのか、選び方と比較項目・基準について解説します。
価格を比較する
導入するセルフレジを選定するには、価格で比較することが大切です。数十万円から数百万円単位の費用がかかるセルフレジは、予算内の金額で抑えられる製品の中から選ぶ必要があります。
とくに、店舗によってはセルフレジを複数台導入するケースもあるため、価格比較は重要です。
また、価格を比較するのと同時に、活用できる補助金・助成金制度はないか確認しておくと良いでしょう。どうしても初期費用の負担が大きいと感じる場合は、レンタル・リースでの導入もおすすめです。
保守点検や研修などのサポートサービスで選ぶ
自店舗に導入するセルフレジを比較検討するときは、保守点検や研修などのサポートサービスが整っているセルフレジの事業者を選ぶのもおすすめです。
セルフレジは、硬貨や紙幣の詰まりが発生したり、システムエラーで利用できなくなったりして、レジ会計が中断するなどのトラブルが発生することもあります。
また、スタッフが操作方法を理解できていなければ、お客様の操作をサポートできません。
そこで、保守点検や導入研修を実施してくれるなどのサポートサービスがある事業者を選べば、セルフレジがスムーズに導入でき、利用中のトラブルにも安心して対応できます。
ただし、保守点検や研修などのサポートサービスは、別途料金がかかる事業者も多いため、サービス利用料金も確認しておくことが大切です。
デモ機で実際に操作を試してみる
導入するセルフレジを選ぶときは、デモ機を使って実際に操作を体験してみるのもポイントです。事業者によっては、デモ機を送付してくれるところもあれば、ショールームで体験できる場所を提供している場合もあります。
また、操作画面をオンラインで体験できる、デモ画面をホームページ上に掲載しているケースもあるので、実際に操作を体験して使いやすいかを確かめてみるのも効果的です。
デモ機を操作してみて、問題なく使用できる製品であれば、利用客もレジ操作しやすい機種であると判断できます。
まとめ
セルフレジにはさまざまなメリットがある反面、デメリットがあることにも注意が必要です。一方で、デメリットをうまくカバーしながら導入できれば、セルフレジのメリットを最大限に引き出せます。
レジの人手不足に困っている、レジに長蛇の列ができるのをなんとかしたい、などのレジに関する課題解決の手段として、セルフレジの導入を検討してみてはいかがでしょうか。