飲食店を開業する際、資格取得や各種許認可申請手続きなどさまざまな対応に追われ、慌ただしく準備することになるケースは少なくありません。
とくに、飲食店開業に必要な店内の設備は意外に見落としが多く、開業後になってから追加投入することが多いのも特徴です。
そこで本記事では、飲食店開業に必要な設備を厨房・ホールに分けて一覧で紹介します。店舗の規模や業種・業態によって必要なもの、不要なものが異なるため、自店舗になにが必要かを具体的にイメージするための参考としてご活用ください。
飲食店開業に必要な設備はどうやって選定すべき?
飲食店開業に必要な設備を選定するには、店舗の業種や業態に合わせて必要なものをリストアップすることが大切です。その上で、必要な設備のデザインや組み合わせなどは、店舗のコンセプトに応じてピックアップすると良いでしょう。
また、同じ業種や業態の飲食店でも、提供するメニューによって必要になる設備は異なります。例えば、お酒類を提供するか、デザート類はキッチン・ホールどちらで対応するか、など状況に応じて判断することが大切です。
さらに、設備を選定しているとあれもこれもと導入したくなりますが、予算との兼ね合いを見ながら優先順位の高いものを選定する必要があります。
このように、飲食店の開業に必要な設備は店舗によって異なるため、まずは自店舗になにが必要なのかを具体的にイメージしておくことが、スムーズに開業準備を進めるポイントです。
【厨房】飲食店開業に必要な設備一覧
ここからは、飲食店開業に必要な設備の中で、厨房で使用するものをまとめて紹介します。店舗の規模や業種・業態によっては不要なものもあるので、適宜自店舗に必要なものを選定してください。
業務用冷蔵庫・冷凍庫
業務用冷蔵庫や冷凍庫は、飲食店になくてはならない設備です。大型のものが多いため、設置スペースや容量などを考慮した上で選定する必要があります。
また、保管温度を設定できる製品があるのも特徴です。業務用冷蔵庫や冷凍庫を購入せず、倉庫に冷蔵設備をつける選択肢もあります。費用を抑えるのであれば、レンタルやリースを利用したり、中古で購入したりするのもおすすめです。
ガスレンジ・コンロ
ガスレンジ・コンロも、飲食店に必要な設備の1つです。取り扱うメニューによっては、必要ない場合もありますが、どのような方法で調理するかを具体的にイメージしながら導入するものを選びましょう。
また、店舗の規模や提供するメニューによっては、ガステーブルを複数台導入するケースもあります。
そのほか、焼き鳥店であれば業務用の木炭コンロ、たこ焼き店であればコンロが一体型になっているたこ焼き器など、特殊な設備が必要になるケースもあるので注意しましょう。
作業台・コールドテーブル
作業台・コールドテーブルは、設備の上面が平らで、腰あたりの高さになっている設備です。さまざまな種類の製品があり、調理台とも呼ばれています。作業台は、下部に食器や調理器具などが収納できるものがあるのも特徴です。
コールドテーブルは、作業台を兼ねている冷蔵・冷凍庫のことで、大型の業務用冷蔵庫とは異なり、比較的コンパクトな製品が多くあります。
業務用冷蔵庫や収納棚を置くスペースの確保が難しい店舗の場合は、収納として活用できる作業台やコールドテーブルを活用すると良いでしょう。
シンク・業務用食洗器
シンク・業務用食洗器は、食材や食器類の洗浄作業に必要な設備です。食品衛生法に基づいて保健所に営業許可申請を行う際、基本的にシンクは二槽式のものが導入されているかをチェックされるので、導入する設備を選ぶ際は注意しましょう。
これは、食中毒を予防する観点から、洗浄設備は食材を洗う槽と食器を洗う槽を分ける必要があるためです。業務用食洗器を設置する場合でも、予洗いを行うシンクが必要になると考えておきましょう。
食器棚
食器棚は、食器を保管しておくための設備です。提供するメニューによって食器の種類が異なるほか、店舗の規模によって数にも差があります。自店舗のメニューや席数に応じて収納力のある食器棚を選定しましょう。
可能であれば、店舗の内装工事を行う際に吊り下げラックを導入して、食器棚として活用するのもおすすめです。
食器棚を設備として導入するスペースがない場合や、調理後のサービングを意識してスムーズな動線を確保したい場合に適しています。
製氷機・ウォータークーラー
製氷機は、ドリンクや刺身類の提供に活用できる氷を自動で作ってくれる設備です。取り扱うメニューによって必要か否かは異なりますが、本体サイズや氷の形状もさまざまな種類があるので、事前に比較検討しておくと良いでしょう。
また、お冷を出すためのウォータークーラーの中には、氷も一緒に出るタイプがあるので、製氷機の導入が不要であればウォータークーラーを導入するのもおすすめです。
スチームコンベクション・オーブン
飲食店の業態によっては、スチームコンベクションやオーブンなどの調理設備が必要になる場合があります。種類によって対応できる調理方法は異なるものの、蒸す・焼く・煮る・揚げるなど、1台で複数の調理方法に対応している機種があるのも特徴です。
スチームコンベクションやオーブン調理に特化すれば、ガスレンジやコンロなしで営業できる場合もあるでしょう。
【ホール・店舗全体】飲食店開業に必要な設備一覧
ここからは、飲食店開業時に厨房以外のホール・店舗全体に必要な設備を紹介します。厨房機器とは異なり、営業設備として顧客の目に触れるものも多いため、店舗のコンセプト設計にマッチする設備を揃えることがポイントです。
POSレジ・券売機・決済端末・オーダー設備
POSレジ・券売機・決済端末・オーダー設備など、店舗DX関連の設備は飲食店開業時に欠かせない設備です。組み合わせ次第では、業務効率化や人件費削減につながるものも多いので、積極的に活用しましょう。
Bizcanでは、多種多様な店舗設備の選び方やおすすめの製品を多数紹介しています。「こんなニーズに合う設備を教えて欲しい」「A社とB社の資料を一括請求したい」など、店舗設備の導入に関するお問い合わせは無料です。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
参考記事:製品・サービスから探す|Bizcan
食器・カトラリー
食器やカトラリー類は、飲食店に欠かせない設備・備品の1つです。店舗の業態に合わせて、さまざまなサイズや形状の食器・カトラリーから選択する必要があります。
また、お箸は使い捨ての割り箸を導入するのか、繰り返し使えるものを選ぶのかなど、店舗の営業フローを具体的にイメージしながら選定しましょう。
食器は割れることも多いため、余裕をもって確保しておくと安心です。
ドリンクサーバー
ドリンクサーバーも、飲食店によっては必要になる設備です。ドリンクのサービングはキッチンではなく、ホールスタッフが行う場合も多いため、設置場所はきちんと確保しておきましょう。
ソフトドリンクのほか、ビールサーバーや酎ハイサーバーなどもあります。提供するドリンクメニューに応じて、必要なものを導入すると良いでしょう。
テーブル・椅子
テーブルや椅子も、飲食店に必要な設備です。立ち飲み・立ち食いの店舗であれば、飲食用のカウンターなどがあれば良いですが、着席して飲食する店舗の場合は導入する必要があります。
また、カフェのような滞在時間が長い店舗の場合は、ソファ席を設けるのも良いでしょう。掘りごたつや座敷席を設ける場合は、内装工事が必要になるので早めに決定しておくことが大切です。
卓上備品
卓上備品は、顧客満足度に影響する重要な店舗備品の1つです。メニュー表や調味料類、紙ナプキン・爪楊枝など、提供メニューに応じて設置しておくと良いでしょう。
また、モバイルオーダーやテーブルオーダーを導入する場合、メニュー表を設置しない店舗もあります。しかし、店員によるハンディオーダーも残したいのであれば、アナログのメニュー表も設置しておくことが大切です。
看板・のれん
看板やのれんも、飲食店開業時に必要な設備です。店舗の外装工事・設備工事にも関わる場合があるので、早めにコンセプトに合わせたデザインで作成依頼しておきましょう。
そのほか、店舗アプリやLINE公式アカウント・LINEミニアプリへ誘導したい場合は、卓上POPを準備しておくのもおすすめです。
電話
電話も、飲食店に欠かせない設備の1つです。固定電話を設置する方法だけでなく、近年は電話転送サービスを活用してスマホや携帯電話で通話できるサービスもあります。
予約受付や問い合わせ対応などで必要になることが多いので、忘れず準備しておきましょう。スマホを店舗用電話として活用する場合は、電話転送サービスや自動応答電話などの導入もおすすめです。
飲食店開業にかかる初期費用の目安
飲食店開業にかかる初期費用の目安は、約1,000万円です。しかし、近年物価や建築資材の高騰もあり、設備投資や物件取得費が高額になることから、1,500万円以上必要になるケースも少なくありません。
一方で、地方や駅から遠いエリアなど、比較的物件取得費が安く抑えられる店舗であれば、開業費用も目安金額以内で収まる可能性があります。
また、スケルトン物件ではなく居抜き物件を利用すれば、内装工事費も抑えられるので探してみると良いでしょう。
飲食店開業にかかる資金の目安については、以下の記事で詳しく解説しています。こちらもぜひ参考にしてください。
参考記事:飲食店開業の資金はいくら必要?資金調達方法と自己資金の目安や補助金・助成金制度まとめ
飲食店開業用の設備を選定する際の注意点
飲食店開業用の設備を選ぶ際は、以下の点に注意が必要です。
- 店舗全体のレイアウト・サイズは慎重に判断する
- 動線を意識して配置できるようにする
- 排煙・換気・防火設備なども導入する
- 業態やメニューに応じて容量や設備のレベルを検討する
店舗の設備は、防火・衛生面なども意識しながら選定する必要があります。また、効率良く料理をサーブできるように、従業員の動線も具体的にイメージしておくことが大切です。
費用を抑えたい場合は、中古やレンタル・リースを活用して設備を導入する方法もあります。店舗に必要な設備と予算のバランスを見ながら、自店舗に合う設備を導入しましょう。
まとめ
飲食店開業時の設備選定は、パッケージ化されているサービスも豊富にあります。厨房設備がまとめて導入できるサービスや、防火設備の導入から点検・保守まで依頼できるサービスなどさまざまです。
一方で、POSレジや決済端末などのレジ設備であれば、無料で導入できて決済手数料のみの負担で利用できるサービスもあります。
コストを抑えられる設備はなるべく費用をかけずに導入し、厨房機器類のような高額な費用がかかる設備に費用を投入するなど、コストをかける部分の取捨選択を行いましょう。