飲食店を開業する際、保健所や消防署、税務署などさまざまな場所に届出を提出する必要があります。しかし、届出の種類によって提出するタイミングが異なることから、どのような書類をいつどこに出せば良いのか、混乱してしまう方も多いでしょう。
そこで今回は、飲食店の開業時に必要な届出について、提出先や提出のタイミング・期日を紹介します。また、業種によって追加で提出が必要になる届出に関しても詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
飲食店開業に必要な届出の一覧表
飲食店開業時には、主に以下の届出を提出する必要があります。
届出の種類 | 提出場所 | 提出期限 |
---|---|---|
開業届(個人事業主の開業廃業など届出書) | 出店場所管轄の税務署 | 開業から1カ月以内 |
飲食店営業許可申請 | 出店場所管轄の保健所 | 店舗完成の10日前まで |
防火対象物使用開始届 | 出店場所管轄の消防署 | 建物の使用を開始する7日前まで |
火を使用する設備等の設置届 | 出店場所管轄の消防署 | 建物の使用を開始する7日前まで |
所得税の青色申告承認申請書 | 出店場所管轄の税務署 | 開業から2カ月以内 |
給与支払事務所の開設届 | 出店場所管轄の税務署 | 給与支払事務所を開設してから1カ月以内 |
社会保険加入手続き | 日本年金機構 | 開業後すぐ |
雇用保険の加入手続き | 公共職業安定所 | 従業員の雇用開始から10日以内 |
労災保険の加入手続き | 労働基準監督署 | 雇用開始翌日から10日以内 |
食品衛生責任者の届出※要資格 | 出店場所管轄の保健所 | 管理者設置から15日以内 |
防火・防災管理者選任届※要資格 | 出店場所管轄の消防署 | 開業まで |
深夜酒類提供飲食店営業開始届出 | 出店場所管轄の警察署 | 開業の10日前まで※深夜0時以降も営業する場合 |
それぞれ、提出場所や提出期限が異なる点に注意してください。個人で店舗を経営する場合、雇用関連の届出は必要ありません。しかし、雇用する際には、届出を提出する必要があることを覚えておきましょう。
また、届出として提出する義務はありませんが、事業計画書を作成しておくのもおすすめです。日本政策金融公庫の創業融資を活用したい場合に、スムーズに申請できます。
飲食店開業に欠かせない「開業届」とは?
飲食店の開業時に必要な開業届とは、個人事業主・フリーランスがなんらかの事業を始める際に、税務署に提出する書類のことです。そのため、法人の場合、開業届を提出する必要はありません。
飲食店を問わず、どのような事業であっても開業時に提出する必要があります。
開業届を提出して事業を営んでいた者が、事業を廃業する場合は、廃業届を提出しなければなりません。
開業届は、窓口での提出のほか、郵送やe-Tax(国税のオンライン手続きシステム)でも提出できます。
飲食店開業時に「開業届」を出すタイミングと手続きの流れ
飲食店開業時に開業届を出すタイミング・期限は、開業から1カ月以内です。提出期限が土日祝日の場合は、週明け最初の平日が期限となります。開業する店舗のエリアを管轄している税務署で、提出しましょう。
開業届を提出する際の流れは、以下のとおりです。
- 管轄の税務署で「個人事業の開業・廃業等届出」の書類を受け取る
- 書類に必要事項を記載する
- 管轄の税務署窓口で提出する
- 控えを保管しておく
開業届を提出しておくと、確定申告の際に、白色申告よりも税制面で優遇が多い青色申告が利用できるようになります。青色申告を利用したい場合は、青色申告承認申請書も提出しておきましょう。
青色申告特別控除が適用されたり、赤字の翌年繰り越しができたりするので、飲食店を開業する際は提出しておくことをおすすめします。
また、地方税(個人事業税)に関わるため、個人事業開始申告書の提出も必要です。
参考記事:飲食店開業までの流れと必要資格|開業準備はいつ始めるのがベスト?
【業種別】飲食店開業時に必要な届出
ここまで紹介してきた届出の情報は、飲食店全般で必要になるものについてです。ここからは、業種や業態ごとに必要な届出について、それぞれ詳しく解説します。
菓子・パン類の販売・テイクアウトを行う場合の届出
飲食店で、菓子・パン類の販売やテイクアウトを行う場合は、「菓子製造業許可」の申請が必要です。飲食店のデザートやカフェのように、店内飲食(イートイン)での提供のみであれば、飲食店営業許可証のみで対応できます。
ただし、持ち帰り・テイクアウトも行うのであれば、飲食店営業許可証と菓子製造業許可証の両方が必要になるので注意しましょう。
キッチンカー・イベント出店など移動出店・販売を行う場合の届出
キッチンカー・イベント出店など、移動出店・販売を行う場合、出店場所すべての飲食店営業許可書の提出が必要です。管轄している保健所のエリアが変わる場合は、都度出店するエリアで営業許可申請書を提出しましょう。
また、移動販売の場合、車両を運転するための運転免許が必要になります。そのほか、車両をキッチンカー仕様にカスタマイズする場合、車両の構造変更申請も必要です。
酒を販売する場合の届出
飲食店で酒類を販売する場合は、酒類販売業免許の取得が必要です。ただし、飲食店の店内でグラスやジョッキに注いだ状態で提供する場合は、酒類販売業免許がなくても飲食店営業許可証があれば問題ありません。
酒類販売業免許が必要になるのは、瓶や缶など酒をそのまま販売するケースです。飲食店で酒類をそのまま販売する場合は、酒類販売業免許の中の「酒類小売業免許」を取得しておきましょう。
猫カフェ・小動物カフェなどを開く場合の届出
飲食店の中でも、猫カフェや小動物カフェなどの動物とのふれあいができる店舗を開業する場合は、第一種動物取扱業の届出が必要です。
第一種動物取扱業の届出を行う場合、動物取扱責任者の選任が必要になるので研修を受けておきましょう。
また、動物系のカフェを開業する場合、調理・飲食スペースと動物を飼育するスペースを分けて、衛生管理を徹底するように求められます。
店舗の内装工事を行う際や、厨房設備・シンクなどを導入するときは、スタッフや顧客の動線をイメージしながら設計することが重要です。
法人設立する場合も「開業届」は必要?
個人事業主ではなく法人を設立する場合、開業届を提出する必要はありません。代わりに、法人設立届出書の提出が必要になります。
また、青色申告を予定している場合は青色申告承認申請書、従業員を雇用する場合は給与支払事務所等の開設届出書や社会保険関連の届出も必要です。
個人事業で開業し、収益が伸びてから法人化(法人成り)する場合は、まず「個人事業の開業・廃業等届出」の書類を出して個人事業を廃業したことを届出ましょう。
その上で、法人設立届出書を提出する必要があります。
飲食店開業時に必須の資格
飲食店開業時に必須の資格は、以下の2つあります。
- 食品衛生責任者
- 防火・防災管理者
食品衛生責任者は、食品を取り扱う際の衛生管理に関する知識を有していることを証明する資格です。食品衛生責任者の届出や飲食店営業許可申請を行う際、食品衛生責任者の資格を事前に取得しておく必要があります。
防火・防災管理者は、火災や地震などの災害を防止・防災するための知識を有していることを証明する資格です。また、災害が発生した際に、従業員や顧客を安全に避難誘導も行います。
飲食店開業時に必要な防火・防災管理者選任届を提出する際も、防火管理者の資格が必要です。店舗の収容人数が30人を超える場合、選任して届出を提出しておきましょう。
飲食店開業時に必要な資格について、詳しくは以下の記事で解説していますので、こちらもぜひ参考にしてください。
参考記事:飲食店開業に必要な資格一覧|調理師免許の有無や届出の申請についても解説
まとめ
飲食店開業時に必要な届出は、店舗の規模や業態によって必要なものが異なります。そのため、自店舗でどのような届出を出さなければならないのか、事前にリストアップしておくことが大切です。
また、届出の種類によって、提出先や提出期限が異なる点にも注意しなければなりません。資格を取得していなければ提出できない届出もあるので、資格取得や届出の提出は、計画的に進めていく必要があります。
飲食店開業にあたり、準備の見落としを防ぐためには、チェックリストを活用するのもオススメです。以下の記事を参考にしながら、スムーズかつ過不足のないよう、開業に向けた準備を整えていきましょう。