訪日外国人観光客の増加により、小売業にとってインバウンド対策は急務になっています。本記事では、言語対応・SNS活用・決済・免税など、今すぐ実践できる7つの施策と成功事例を紹介します。
インバウンド市場の今|小売業が向き合うべき現実とは?
近年、訪日外国人観光客の増加により、日本の小売業は新たな市場機会に直面しています。インバウンド需要は一時的な流行ではなく、今後の成長を左右する重要な柱となりつつあ流でしょう。
観光庁の統計では、2024年の訪日外国人数はコロナ前の水準を超え、小売業への影響も顕著に表れています。
訪日外国人が「モノ」から「体験」へと価値を求める中、小売業にも“接客・情報提供”の質が求められるようになっており、消費傾向の変化が進んでいます。
対応が不十分な店舗は「買いたいのに買えない」「言葉が通じず不安」などの理由で機会損失を生み、競合に顧客を奪われる可能性があるでしょう。
東京や大阪など都市部だけでなく、地方でもインバウンド消費が広がっており、“地方の小さな店舗”でも対策が必須になっています。
小売業にとってインバウンド対応は今後の売上を左右するカギとして、規模に関係なく全店舗が向き合うべき課題です。それでは、すぐにできるインバウンド対策にはどのようなものがあるのでしょうか。
参考:
日本政府観光局:訪日外客数(2024年12月および年間推計値)
訪日外国人の消費動向:2024 年 年次報告書
今すぐできる!小売業のためのインバウンド対策7選
インバウンド市場が活性化する中、小売業が競争に乗り遅れないためには、実践的かつ即効性のある対策が求められます。ここでは、すぐに取り組める7つのインバウンド対策を厳選してご紹介します。
これらの対策は大がかりな設備投資を必要としないものも多く、今すぐ取り組める内容ばかりです。まずは気軽に取り入れられるものから始めてみましょう。
多言語対応の強化
英語・中国語・韓国語での案内表示に加え、音声翻訳機や多言語対応アプリの導入で、外国人観光客の不安や戸惑いを軽減し、安心して買い物ができる環境を整えましょう。
免税対応の整備
パスポート読み取りや電子化された免税手続きツールを活用し、短時間で免税対応が完了する仕組みを整備することで、購買意欲を逃さず満足度も向上します。
キャッシュレス決済の導入
AlipayやWeChat Pay、銀聯カードなど外国人旅行者に馴染みのある決済手段を導入することで、ストレスのないスムーズな支払い体験を提供できます。
SNS・口コミサイトでの情報発信
小紅書(RED)やInstagramなどのSNSや旅行者向け口コミサイトに情報を発信することで、訪日前・滞在中の外国人の来店動機を高め、集客につなげましょう。
スタッフの接客研修と外国語フレーズ共有
「Hello」「Thank you」などの基本的な外国語フレーズや、笑顔・ジェスチャーを交えた接客をスタッフ全員で共有し、フレンドリーで印象に残る接客を実現します。
多国籍ニーズに応じた商品ラインナップの見直し
ハラールやベジタリアン対応商品、海外でも人気の高い和雑貨・食品など、宗教・文化・嗜好に配慮した商品構成にすることで、購買機会を広げられます。
地域連携による導線強化
近隣の観光地やホテル、飲食店と連携し、マップ配布や回遊ルートの提案を通じて小売店への来店導線をつくり、地域全体の集客力を高める取り組みが効果的です。
インバウンド対策を行なっている小売店の事例
この章では、実際にインバウンド対策を行なっている小売店の事例を見てみましょう。
株式会社ロフト
株式会社ロフトは、文房具からコスメ、キャラクター雑貨やインテリアなどを取り扱う生活雑貨の専門店です。平成26年より新店を中心に順次免税カウンターを設けています。免税件数も渋谷店で153%(前年同月比)、関西のなんば店では190%(前年同月比)を記録し、免税カウンターの利用者が増加してることが伺えます。
参考:
株式会社ロフト:ニュースリリース
酒造会社「梅乃宿酒造」
奈良県にある酒造会社「梅乃宿酒造」。奈良県は日本酒発祥の地とされており、試飲や蔵見学、梅酒づくり体験など、蔵でしか楽しめないような体験を提供しています。同社によると、インバウンドのうちなんとフランス人が9割。団体ツアーの訪問先としても人気です。
現在は多言語での接客対応を行なっており、大阪・関西万博が開幕にあわせ、トイレに多言語で使い方の説明板を設置予定。生活文化の違いにも対応し、顧客満足度の向上を図ります。
参考:
産経新聞:2025年3月14日 ブランドロゴ変更に容量2倍の水筒…インバウンド需要、あの手この手で取り込みへ
千日前道具屋筋商店街
大阪ミナミの中心地にある、商店街の組合が対応した事例です。
こちらは商店街でのインバウンド対策として、留学生の受け入れ、観光マップ&アプリの開発、中国人向けAlipay WechatPay、スマホ決済導入など様々な対策を行なっています。
多数の小売店が集まっている商店街では、組合としてインバウンド対策をする事例も存在します。
このように、インバウンド対策の工夫次第では、売上や集客に大きな効果が期待できるでしょう。
まとめ:まずは“できること”から始めよう
インバウンド対策は、小さな取り組みの積み重ねが成果につながります。訪日外国人のニーズに応える姿勢が、信頼と売上向上を生み出しています。
多言語対応や決済手段の整備、SNS発信など、まずは“今できること”から着実に始めてみましょう。