企業研修や社員教育に欠かせないeラーニングシステムには、オンプレミス型とクラウド型の2種類があります。
中でもオンプレミス型eラーニングシステムは、自社サーバー上で運用できるため、セキュリティレベルの高さや自由なカスタマイズ性を強みに、多くの企業や教育機関で採用されているのが特徴です。一方、クラウド型eラーニングシステムは導入スピードやコスト面で優位性があり、どちらを選ぶべきか悩む担当者は少なくありません。
「導入後に後悔したくない」「自社のセキュリティ要件を満たしつつ、効率的な学習環境を整えたい」と考えるなら、両者の違いやメリット・デメリットを理解したうえで比較検討することが重要です。
本記事では、オンプレミス型eラーニングシステムの特徴とクラウド型との違いを比較表でわかりやすく解説します。導入時の判断材料となる情報をまとめていますので、eラーニングシステムを導入する際の参考としてご活用ください。
オンプレミス型eラーニングシステムとは?
オンプレミス型eラーニングシステムとは、企業や教育機関が自社サーバーやネットワーク環境に構築・運用する、セキュリティと自由度に優れた学習管理システムです。Learning Management Systemの頭文字を取って、LMSとも呼ばれています。
このシステム最大の特徴は、学習管理や受講者管理、進捗管理などの機能を自社内で一貫して運用できる点です。とくに、情報漏えいリスクの軽減や内部統制の強化が求められる大手企業や金融・医療・自治体においては、クラウド型では実現が難しい高いセキュリティ性が評価されています。
また、オンプレミス型はカスタマイズ性に優れており、自社独自のeラーニング教材や動画コンテンツの組み込み、既存のシステム管理(例:Active Directory)との連携にも柔軟に対応可能です。
オンプレミス型eラーニングシステムは、「セキュリティポリシーでクラウド利用が制限されている」「自社でeラーニングを内製化したい」といった要望がある企業にとって、有効な選択肢となります。クラウド型にはない「システムの所有権」と「拡張性」を持てるのが、オンプレミス型最大の魅力です。
このように、オンプレミス型eラーニングシステムは、「教育の質を守りながら自社環境で柔軟に運用したい」という企業・組織にとって有効なソリューションとなり得ます。
【eラーニングシステム】オンプレミス型とクラウド型との違いを表で比較
eラーニングシステムには、自社サーバー上に構築するオンプレミス型と、インターネット経由で利用するクラウド型の2つの導入方式があります。それぞれの方式には、セキュリティ性・コスト負担・カスタマイズ性・導入スピードといった観点で明確な違いが存在します。
比較項目 | オンプレミス型 | クラウド型 |
---|---|---|
セキュリティ | ◎ 自社で制御可能 | ○ ベンダー依存(対策次第で高水準) |
初期費用 | 高(サーバー構築・設置費用含む) | 低(初期導入コストを抑えやすい) |
ランニングコスト | 中〜低(長期的には抑えられる) | 月額費用制(利用ID数により変動) |
カスタマイズ性 | ◎ 高い(学習内容や受講画面も自由) | △ 限定的(ベンダー仕様に依存) |
導入スピード | 遅め(設計・構築・検証が必要) | 速い(数日〜数週間で利用開始可能) |
運用体制 | 社内で保守・アップデートが必要 | ベンダーが運用を一括対応 |
利用環境 | 社内ネットワーク・VPN対応 | インターネット接続が前提 |
オンプレミス型は、自社管理下のセキュリティ対策が可能で、カスタマイズ性が高く、独自の学習管理機能や教材配信方式を柔軟に構築できる特徴があります。
一方、クラウド型は、初期費用が低く導入は迅速で、学習教材や動画の配信、学習者管理、進捗管理といった基本機能を手軽に活用できるのが魅力です。また、クラウド型では、自動アップデートやベンダーによるサポートが受けられる点も評価されています。
「費用を抑えたいならクラウド型、セキュリティと自由度を求めるならオンプレミス型」と明確な棲み分けがあるため、自社の優先課題を軸に選定するのがポイントです。
オンプレミス型eラーニングシステム導入で得られる4つのメリット
オンプレミス型eラーニングシステムは、セキュリティ・カスタマイズ・コスト最適化といった面で、クラウド型にはない独自の強みを発揮します。
- インターネット環境がなくても利用できる
- 自社完結の高いセキュリティ体制
- カスタマイズ性が高く、独自運用が可能
- 長期的には運用コストの最適化につながりやすい
それぞれのメリットについて解説します。
インターネット環境がなくても利用できる
オンプレミス型eラーニングシステムは、自社ネットワーク上で運用できるため、インターネット環境がない場所でも安定した学習提供が可能です。
工場や医療現場など、インターネット接続が制限される環境ではクラウド型システムが使いにくい場合があります。
オンプレミス型なら社内LANやVPNを利用した閉域環境でも稼働でき、受講者管理機能や学習コンテンツの配信、進捗管理を自社内で完結させられます。外部サーバーを経由しないため、アクセス制限や回線障害の影響を受けにくいのも強みです。
通信環境の影響を受けないオンプレミス型は、安定した学習環境を確保したい企業にとって安心できる選択肢になります。
自社完結の高いセキュリティ体制
オンプレミス型は、自社サーバーでデータを管理できるため、外部への情報流出リスクを最小限に抑えられます。
クラウド型では外部サーバーを利用するため、企業がデータ保管に不安を感じる場合もあるでしょう。
一方オンプレミス型は、自社が設定したセキュリティポリシーに沿って、アクセス制限やバックアップ運用を構築することが可能です。機密性の高い研修データを扱う企業には、自社管理できるオンプレミス型が適しています。
カスタマイズ性が高く、独自運用が可能
オンプレミス型は、研修内容や受講者ニーズに合わせて自由にカスタマイズできる柔軟性を備えています。学習コンテンツの構成やテスト機能、管理画面のUIなどを自社仕様に変更できるのがオンプレミス型の魅力です。
たとえば、自社オリジナルの動画eラーニング教材の配信、学習進捗レポートの自動出力など、クラウド型では難しい設定も可能です。これにより、社員教育や企業研修の効率化に直結するオリジナルLMSを構築できます。
「他社と同じシステムでは物足りない」と感じる企業には、柔軟なカスタマイズに対応できるオンプレミス型eラーニングシステムがおすすめです。
長期的には運用コストの最適化につながりやすい
導入費用や初期費用は高くても、長期的な運用コストを考えるとオンプレミス型の方が有利になるケースがあります。
クラウドサービス型は利用人数に応じた月額費用が発生するため、大規模な利用では総コストが膨らむ場合もあるでしょう。
オンプレミス型はサーバー構築など初期投資が必要ですが、ライセンスを買い切るため、長期利用や数千人規模での導入ではコストにおいてメリットが出やすいといわれています。
長期的な教育投資を考える企業にとって、オンプレミス型は安定したコスト運用を可能にする選択肢です。
オンプレミス型eラーニングシステムのデメリット
オンプレミス型のeラーニングシステムは自由度とセキュリティに優れる一方で、初期構築や運用面において複数のハードルがあるため、導入前には慎重な判断が求められます。
- 初期構築コストと導入工数が大きくなりやすい
- サーバー保守やアップデートが自社責任になる
それぞれについて解説します。
初期構築コストと導入工数が大きくなりやすい
オンプレミス型eラーニングシステムは、クラウド型と比べて初期費用と導入工数が大きくなる傾向があります。これが、導入の障壁となりやすい点です。
自社サーバー構築には、機器調達やネットワーク設定、LMS自体の設計などが必要になるため、専門知識を持つ人材や外部ベンダーへの協力要請も欠かせません。数百万円規模の初期投資や、数カ月単位の準備期間が必要な場合もあります。
導入を検討する際は、初期投資を回収できる運用規模かどうかをシミュレーションすることが重要です。
eラーニングシステムの構築方法については、以下の記事で紹介しているのでぜひご覧ください。
参考記事: eラーニングシステムの構築方法とは?意識すべきポイントも解説
サーバー保守やアップデートが自社責任になる
オンプレミス型eラーニングシステムは、自社サーバー運用が前提のため、保守・アップデート・障害対応がすべて自社責任となる点に注意しましょう。
クラウド型では、ベンダー側がシステムのメンテナンスやバージョンアップ、セキュリティパッチの適用を自動的に行ってくれます。しかし、オンプレミス型の場合、サーバー監視やセキュリティ対策を怠るとリスクが高まります。外部委託を利用する場合でも、追加費用や対応遅延が発生する可能性がある点に注意が必要です。
社内のITリソースが限られる場合は、クラウド型との比較検討を行いましょう。
オンプレミス型eラーニングシステムが向いている業種・企業の特徴
オンプレミス型eラーニングシステムは、外部にデータを預けられないほど高い情報統制を求める企業や、独自教材を活用したい組織におすすめの学習管理システムです。具体的には、以下のような特徴をもつ業種・企業での導入に向いています。
- 情報統制が厳しい業界(金融・医療・自治体)
- 独自研修を内製化している大企業
- 教育機関(大学・専門学校)のLMS導入
- クラウド禁止のセキュリティポリシーがある組織
オンプレミス型のeラーニングシステムは、自社サーバーでの運用により、外部漏えい対策を強化し、法令遵守や内部監査要件に対応できる強みがあります。また、自社仕様の学習コンテンツや進捗管理機能の採用により、自社の価値観や業務フローに合わせて、内容や進め方を調整した独自仕様の教育体制を構築することも可能です。
このように、セキュリティ最優先・独自教材重視・自社運用体制が整った企業・組織でeラーニングシステムを導入する場合は、オンプレミス型eラーニングシステムがマッチするでしょう。
オンプレミス型eラーニングシステムの導入ステップ
オンプレミス型eラーニングシステムの導入は、要件整理から運用開始まで5段階のプロセスで進めると、スムーズに進行しやすくなります。
1. 自社要件の整理
教育目的・対象者・教材や進捗管理要件を明確化し、オンプレミスが適切な導入形態か判断します。
2. 情報収集
オンプレミス対応eラーニングシステムの導入形態、学習管理機能、セキュリティ対策を比較検討してください。
3. システム・業者の選定
Active Directory連携や教材作成機能など、必要機能と社内技術リソースに応じて選択します。
4. 契約~導入準備
サーバー設置・ネットワーク設定・教材アップロード・テスト運用・社内トレーニングを実施しましょう。
5. 運用開始
管理者・受講者への権限付与、運用マニュアル作成、進捗管理や保守体制を整備して、本稼働に入ります。
オンプレミス型eラーニングシステムの導入では、上記の最初の5ステップを丁寧に踏むことがプロジェクトの成功に欠かせません。とくに自社インフラ連携や教材準備、社内浸透を見据えた計画を立てることで、安定した運用と効果的な学習展開が実現できます。ぜひ社内体制を整え、段階的な導入を進めていきましょう。
おすすめのオンプレミス型eラーニングシステム3選
おすすめとして厳選したオンプレミス型eラーニングシステムを3つ紹介します。
- KnowledgeDeliver
- 学びばこ
- Generalist®/LM
KnowledgeDeliver(ナレッジデリ)
出典: KnowledgeDeliver
eラーニング専業で29年の実績を持ち、3000以上の導入実績がある株式会社デジタル・ナレッジが提供する学習管理システム(LMS)がKnowledgeDeliverです。
- 自社のセキュリティ要件に合わせて、ファイアウォールや侵入検知システムなどの必要な対策を自由に構築できる柔軟性
- 長期的な利用を見据えることで、クラウド型よりもコスト効率が高くなる可能性あり
KnowledgeDeliverはインターネット回線に依存しないため、ネットワーク障害の影響を受けにくく、安定した運用ができます。製造業の工場内や研究開発拠点など、特定のネットワーク環境下での利用が求められる人材育成に適したオンプレミス型eラーニングシステムです。
学びばこ
出典:学びばこ
株式会社テクノカルチャーが提供するeラーニングシステム「学びばこ」は、オンプレミス型とクラウド型、2種類の方式でサービスを提供しています。
- パソコンに慣れていない方でも使いやすいポップなアイコンやインターフェースが特徴のeラーニングシステム(LMS)
- 多様なビジネス利用
- 既存のシステムとの連携にも対応
学びばこは教育に限らず、社内での情報共有やアンケート機能の使用、外部向けコンテンツ販売など、多様なビジネス用途で利用できます。
Generalist®/LM
出典: Generalist®/LM
Generalist®/LMは、東芝デジタルソリューションズが提供する人財管理ソリューション「Generalist」シリーズの学習管理システム(LMS)です。eラーニングによる教育実施や集合研修の管理ができます。
- PowerPoint、PDF、動画など既存の資料を使って簡単にコンテンツを作成できる
- テスト・アンケート、データ分析、IPアドレス制限など13の標準機能
Generalist®/LMは東芝グループ10万人のパフォーマンスを想定して生まれたシステムであり、簡易なサーバー構成でスムーズな受講環境を実現します。ライセンス購入による導入となるため、利用ユーザー数による費用変動はありません。
オンプレミス型eラーニングシステムは「高セキュリティ+自由設計」志向の企業におすすめ
オンプレミス型eラーニングシステムは、セキュリティ性の高さや柔軟なカスタマイズ性、長期的なコスト最適化など、クラウド型にはない強みを持ちます。一方で、初期構築費用や保守運用の負担が大きく、導入スピードが遅いという課題も避けられません。
Eラーニングシステムの選定ポイントは、自社の研修目的・セキュリティ要件・ITリソースの有無を明確化し、投資回収可能な運用規模かを見極めることです。最適なeラーニング環境を構築するために、本記事で紹介した比較表や製品情報を参考に、オンプレミス型eラーニング導入を検討してみると良いでしょう。