近年、蛍光灯からLED照明への切り替えが急速に進んでいます。電気代の削減や環境配慮といったメリットが注目されている一方で、「工事が必要かどうか」「費用がどれくらいかかるのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。実際には、蛍光灯器具の種類や設置環境によって、工事の有無や対応が大きく異なります。本記事では、蛍光灯をLEDに交換する際の工事の必要性、メリットとデメリット、そして導入の流れまでをわかりやすく解説します。失敗しないLED化のための基本知識を押さえておきましょう。
蛍光灯をLEDに交換するには工事が必要?
蛍光灯をLEDに交換する際、工事が必要かどうかは使用している照明器具の種類によって異なります。グロー球式の蛍光灯であれば、一部のLEDランプは工事不要で交換できるタイプもありますが、ラピッドスタート式やインバータ式など安定器を使用している器具の場合は、電源直結工事(バイパス工事)が必要です。
この工事では、安定器を取り外し、電源を直接LEDランプに接続します。誤って工事不要タイプのLEDを無理に取り付けると、点灯不良や発火リスクにつながる恐れもあるため、施工には専門の電気工事士に依頼するのが安心です。見た目が同じでも内部構造が異なるため、器具の型番や仕様を事前に確認しておくことが重要です。
蛍光灯をLEDに交換するメリット
本項では、蛍光灯をLEDに交換するメリットについて解説していきます。
電気代の削減と長寿命によるコストカット
LEDは蛍光灯に比べて消費電力が約30〜50%低いため、電気代の削減効果が非常に大きいのが特徴です。さらに、LEDは約4万〜5万時間の長寿命を誇り、蛍光灯の約2〜5倍の寿命を持ちます。これにより、ランプ交換やメンテナンスの頻度が減り、手間とコストの両方を抑えることが可能になります。
特に多くの照明を設置しているオフィスや工場、商業施設では、年間を通して大きなコスト削減が期待できます。また、寿命末期でも急に切れることが少なく、照度が徐々に低下するため、計画的な交換がしやすい点もメリットといえるでしょう。
発熱が少なく安全性が高い
LEDは蛍光灯に比べて発熱が非常に少ないため、照明周辺の温度上昇を抑えることができます。特に密閉型器具や天井裏など熱がこもりやすい場所では、発火リスクを軽減できるのが大きな安心材料となります。また、ガラス管ではなく樹脂製カバーを使用したLED製品も多く、落下時の破損や飛散によるケガのリスクも小さくなります。
加えて、蛍光灯に含まれている水銀が不要なため、環境面でも安全性が高く、人体への影響も少ないとされています。照明器具の安全性を重視する施設や教育現場でも、LEDの採用が進んでいる理由の一つです。
環境負荷の軽減
LED照明はエネルギー効率が高く、消費電力が少ないため、CO₂排出量の削減につながります。従来の蛍光灯は水銀を含んでおり、廃棄時の環境負荷が問題視されてきましたが、LEDは水銀フリーでリサイクルもしやすいため、地球環境への影響を大幅に抑えることが可能です。
さらに、省エネ法やSDGsへの取り組みが求められる今、LEDへの切り替えは企業の環境配慮姿勢を示すうえでも効果的です。脱炭素社会の実現に向けた第一歩として、照明のLED化は重要な選択肢となっています。
蛍光灯をLEDに交換するデメリット
続いて本項では、蛍光灯をLEDに交換するデメリットについて解説していきます。
初期導入コストが高い
LED照明の導入には、照明本体の購入費用に加えて、工事費や器具交換費用が発生することがあります。特に既存の蛍光灯器具が古い場合は、電源直結のバイパス工事が必要になるため、初期投資が高額になりがちです。
また、安価な製品を選ぶと故障や不点灯といったトラブルが起きやすく、結果的にコストがかさむこともあります。中長期的にはコスト削減につながるとはいえ、初期段階での費用負担は検討材料の一つとなるでしょう。予算に応じて、段階的な導入を検討する企業も少なくありません。
既存器具との互換性トラブルが発生しやすい
LEDランプの中には、既存の蛍光灯器具との互換性がないものも多く存在します。とくに、安定器の種類によってはLEDが正常に点灯しなかったり、チラつきが発生したりするケースがあります。見た目は似ていても、内部の配線方式が異なるため、器具ごとに適合製品を選ばなければなりません。
誤って不適合な製品を取り付けると、電気トラブルや機器の損傷を引き起こす恐れもあるため注意が必要です。製品購入前には、器具の型番や仕様を確認し、メーカーが推奨する製品かどうかをチェックすることが重要です。
光の色味や広がり方の相性
LED照明は蛍光灯に比べて光の指向性が強く、照らしたい方向に集中的に光が届くという特性があります。このため、広い範囲を均一に照らしたい場所では、光のムラや暗部ができてしまうことがあります。
また、色温度(ケルビン)の違いによって、白さや暖かみの感じ方にも差が出やすく、既存の照明環境と異なる印象を与えることもあります。オフィスや店舗では、空間の雰囲気に直結するため、事前にテスト点灯を行ったり、調光機能付き製品を選ぶなどの工夫が必要です。
LED化の工事内容と流れは?
本項では、LED化の工事内容と流れを解説していきます。
既存器具の取り外しとバイパス工事
蛍光灯器具からLED照明へ切り替える際、安定器を使用している器具は「バイパス工事」が必要です。これは、照明器具の中にある安定器を取り外し、電源を直接LEDに接続する作業を指します。安定器をそのままにしておくと、LEDランプが正しく動作しなかったり、無駄な電力消費が発生したりする原因になります。
また、安定器自体が故障しているケースも多く、安全上のリスクが高まります。バイパス工事は電気工事士の資格が必要なため、専門業者に依頼して行うことが基本です。確実で安全な導入のためにも、適切な工事が欠かせません。
新しいLED照明器具の取り付け
バイパス工事後、既存器具を流用する場合もあれば、器具ごとLED一体型の製品に交換するケースもあります。特に天井直付けタイプやベースライトなどは、LED器具に取り替えることで、見た目もスッキリし、配光も最適化されます。
LED一体型器具は発光効率が高く、長寿命設計のためメンテナンスの頻度も少なくなります。取り付け作業には、配線の確認や天井構造への適合などのチェックも必要です。設置環境に応じた器具の選定が、後々のトラブル回避につながります。
試運転・照度チェック・安全確認
LED照明の取り付けが完了した後は、試運転を行い、正常に点灯するかを確認します。点灯の有無だけでなく、照度のバランスやチラつきの有無、周囲への影響なども含めてチェックが必要です。特に高所に取り付ける場合は、あとから修正作業を行うのが難しいため、この段階での確認は非常に重要です。
また、電源回路や配線の絶縁状態など、安全性の確認も欠かせません。施工後のトラブルを防ぐためにも、工事業者とのチェックリスト共有や写真記録を残しておくと安心です。
まとめ
蛍光灯をLEDに交換することで、電気代やメンテナンスコストの削減、安全性の向上、環境への配慮といった多くのメリットが得られます。一方で、初期費用や器具との相性、光の違和感といったデメリットにも注意が必要です。導入にあたっては、事前に既存設備の状態を確認し、適切な製品と工事プランを選定することが重要です。LED化は長期的な投資と捉え、コストだけでなく使い勝手や信頼性も踏まえて判断しましょう。専門業者への相談も、スムーズな導入のカギとなります。