~はじめに~
店舗や施設に対するクチコミは、その店舗の印象や来店の意思決定に大きな影響を与えます。
では、良質なクチコミを獲得するためには、どのような方法を取るべきでしょうか?
今回は、クチコミ獲得をサポートするツール「キキコミ」を提供している株式会社ユニヴァ・ジャイロンの代表取締役社長CEO、島津久厚様にお話を伺いました。
まず、「キキコミ」の特徴や機能について教えてください。
「キキコミ」は、サービスを利用した顧客からアンケートを収集し、それを基にクチコミ作成を支援するツールです。
主な機能として、アンケートの回答内容をAIが分析し、自然なクチコミ文章案を自動生成します。
具体的には、アンケートの内容に基づいて「このようなクチコミができますが、いかがでしょうか?」とお客様に提案する形です。
ただし、生成されたクチコミがすぐに投稿されるわけではありません。まず、お客様に内容が提示され、ご本人の編集や確認を経た後、クチコミページへ遷移し、お客様自身が投稿する仕組みです。このプロセスにより、フィードバックを柔軟に調整でき、より正確で信頼性の高いクチコミを提供できるようになっています。
さらに、このツールの重要な役割は、アンケートを通じてリアルな顧客の声を集め、それを店舗やサービス事業者が業務改善やサービス向上に活かせる点です。
「キキコミ」は、クチコミ生成とアンケートによるフィードバックを一体化させた、店舗や事業者にとって非常に有用な支援ツールです。
「キキコミ」を提供することになった背景もお伺いできますでしょうか?
弊社は2019年から、Googleビジネスプロフィール(Googleが提供する店舗情報掲載プラットフォーム)の運用を支援する、ローカルSEO、いわゆるMEO領域での事業を行っております。
MEOにおいて重要な要素の一つが、クチコミの充実です。
飲食店などの業種では比較的クチコミが集まりやすい傾向にありますが、医療機関や整骨院のように、サービスの提供期間が長い施設では、クチコミが集まりにくいという課題があります。
これらの施設では「質の良いクチコミがなかなか入らない」「星評価のみでコメントがない」「そもそもクチコミを書いてもらえない」など、クチコミ獲得に大きな課題を抱えているケースが多いです。
特に医療施設では、クチコミが集まりにくいだけでなく、放置すると悪評が目立ちやすくなり、その結果、来院者が減少することもあります。私たちのもとにも、このようなご相談が数多く寄せられています。
一方で、一部の店舗では、良いクチコミを人工的に作成して投稿したり、事前アンケートで高評価をつけた方のみをクチコミページに誘導し、低評価の方はクチコミ以外の別の窓口へ誘導するようなケースもあります。これは、ゲーティングと呼ばれる景品表示法やGoogleガイドラインに違反する行為です。
これに関する知識がない店舗様が、その施策の違法性に気づかずに採用してしまうことも少なくありません。
こうした背景から、私たちは、ゲーティングにもならず、それでいてユーザーのをイチから考えて書くという手間を軽減させて、しっかりとした内容のクチコミを店舗様に提供できないかと考え、「キキコミ」を開発しました。
それは店舗側も理解しておくべき重要なポイントですね。そもそも、良いクチコミが集まりにくい業種や施設はありますか?
飲食店の場合、「おいしかった」「見た目がきれい、かわいい」など、感想をダイレクトに書きたくなる心理が働きます。しかし、先ほど触れたように、医療機関やクリニックなどはポジティブなクチコミが集まりにくい傾向があります。
例えば、診察を受けて数日後に症状が改善したとしても、そのタイミングで感謝の意をクチコミに書き込むという強い動機には、なかなかつながりにくいものです。
それよりも、診療中に感じた小さな不満をクチコミに書き込みがちで、その結果、悪評が目立ってしまうという現状があります。
このような問題を抱えるクリニックは多いですが、だからといって人工的に作成したクチコミを書き込むのは避けるべきです。
ポジティブなクチコミを集められないという場合はどのようにサポートされていますか?
もちろん、店舗や施設を利用した方全員がクチコミを書くわけではありません。その中でも「文章を書くのが面倒」「何を書けば良いのかわからない」と感じる方がほとんどです。これがクチコミが集まりにくい主な原因の一つです。この課題を解消することが、非常に重要だと考えています。
そこで「キキコミ」では、アンケートを通じて詳細な感想や意見を収集し、AIを活用して、ユーザーがより簡単にクチコミ文章を作成できるようサポートしています。
アンケートでユーザーの感想や意見を吸い上げるということでしょうか?
そうですね。アンケートといっても、5段階評価などの選択形式では、画一的な感想になりがちで、リアルさが失われてしまいます。そのため、たとえAIを活用しても、ユーザーの意向を十分に汲み取れず、まるで捏造されたようなクチコミになってしまうことがあります。
なぜなら、「良かった」「悪かった」といった単純な評価では、本当の生の声を反映できないからです。その結果、AIがニュアンスを正確に理解できずに勝手に文章を肉付けしてしまい、ユーザーの意図とは異なるクチコミが生成されてしまいます。
弊社では、正しい利用者の声が反映されることを重視しているため、アンケートの回答はほとんどを自由記述形式にしています。
利用者に“問い”を提供することで、自身の感想をより具体的に書けるようになり、その内容をもとにAIが自然でリアルなクチコミ文章にします。
このプロセスにより、嘘のない文章が生成され、ユーザーは文章を考える手間なく正しいクチコミを投稿できますし、店舗側にとってもそのクチコミは信頼を築く材料となります。
非常に便利なツールだと思いますが、注意すべき点はありますか?
アンケートに関しては、景品表示法の優良誤認に抵触しないよう、質問内容を店舗側で自由に決めることはできないようにしています。もちろん、収集したい質問に関してはご要望をいただき、それをある程度反映させることは可能ですが、基本的にはフラットで偏りのない質問にしていきます。
また、クチコミはそのお店を探している、あるいは来店を検討している第三者が参考にするものです。そのため、たとえネガティブな感想や意見が含まれていたとしても、それをクチコミ文章から排除することはありません。
「ここは良かったけれど、ここは改善してほしい」といったポジティブとネガティブが混じり合う情報こそがリアルであり、価値のある情報だと考えています。その結果、利用者から信頼され、集客にも好影響を与え、最終的にはGoogleの評価向上にもつながります。
キキコミを提供されている中で、印象に残っている解決事例があれば教えてください。
ヤマハバイクレンタル様の事例が印象に残っています。
2023年末に東京大森店がオープンした際にはクチコミが1件しかありませんでした。
そこで「キキコミ」を導入いただき、クチコミ獲得に取り組みました。バイクレンタルでは、車両を返却する際、車両チェックの時間が発生します。その時間を活用し、アンケートを依頼するオペレーションを組み込んでいただきました。
利用者の方は、車両チェックの待ち時間にアンケートに回答していただくのですが、皆さん協力的で、アンケートに答えた内容が自然なクチコミ文章案として生成されると、写真まで添えてクチコミを投稿してくれる方も多くいらっしゃいます。
もちろん全員に投稿していただけるわけではありませんが、それでもわずか2ヶ月で20件を超えるクチコミを獲得することができました。
通常、クチコミを集めるためにはスタッフがお客様に「クチコミをお願いします」と案内する必要がありますが、これがスタッフにもお客様にも負担になりがちです。しかし、アンケートの依頼であれば、比較的スムーズにお願いでき、お客様も好意的に対応してくれます。
オペレーションまでご提案いただけるのは心強いですね。お客様から喜ばれているポイントを教えてください。
文章量が多く、質の高い自然なクチコミを集められる点です。
通常のクチコミでは「おいしかった」「とても良かった」といった、簡単な感想で終わってしまうことが多いですが、「キキコミ」のアンケートはさまざまなトピックについて質問されるため、自然と内容が深まり、文章量も増え、他のユーザーにとっても有益な情報が得られます。
さらに、内容が充実していることで多くのキーワードが含まれるため、Googleの評価にも良い影響を与えるという二重のメリットがあります。
「キキコミ」で成果を上げるためには、何が必要でしょうか。
まず、店舗の特長に対して精度の高いアンケートの内容を作り上げることが重要です。弊社では、ご依頼時にヒアリングシートでお店の状況や特長、ご要望を細かくご記入いただいています。それをもとに営業や設定担当のスタッフが、お客様のサービスを深く理解しながら、どのような質問をすればその店舗やサービスの魅力を回答者から引き出せるか?景品表示法やGoogleガイドラインに抵触するゲーティングやステマになってしまう危険がある質問になっていないか?といった観点で慎重にアンケートを作成しています。
ただをお願いするだけではお客様ご自身も気づきにくい「店舗やサービスの魅力的な部分」を引き出すためのサポートを、私たちは非常に重視しています。場合によっては、ネガティブな回答につながるような質問も含まれることがありますが、景品表示法などの法的知識もお客様に共有してご理解をいただいており、その点でもお客様に喜ばれています。
サポートスタッフの努力があってこその成果ということですね。
まさにその通りです。
弊社では、Googleビジネスプロフィールのダイヤモンド プロダクトエキスパートである永山卓也氏を顧問として迎えています。また、クチコミマーケティング協会にも所属して、外部から正しい知識や最新情報を常に取り入れています。これらの情報はサポート部門や営業部門が積極的にインプットし、開発にも反映させています。
そんな貴社を一言であらわすとどのような会社ですか?
弊社を一言で表すと「マーケティング専門家集団×開発力」という言葉に集約されます。これは標語にもしています。
「キキコミ」をはじめ、MEOやSEO、エントリーフォーム最適化(EFO)、データフィード最適化(DFO)など、さまざまなマーケティングプロダクトを提供していますが、全てにおいて専門的な知識を常にインプットし続けています。
弊社の製品を導入いただく際には、専門的な質問にも対応できる体制を整え、単なる導入支援に留まらず、マーケティング施策全体を見据えたサポートを行っています。
私たちは、専門的な知識を持つ集団であり、それを製品に反映できる開発エンジニアがいるという点が、弊社の最大の強みです。
最後に、今後の展望を教えてください。
正しい知識と正しいローカルSEOの施策をどのようにお客様に啓蒙していくかが、私たちの一つの大きなミッションだと考えています。
これまで、景品表示法に抵触してしまう施策を知らずに進めていた企業様に対しても、「キキコミ」を通じて正しいクチコミを獲得するお手伝いをさせていただきました。
クチコミは多くの人が参考にするものですので、嘘や事実と異なる内容が書かれたクチコミは、信頼を失う原因となります。
そうした状況が広がる社会は非常に残念なものです。
私たちは、「キキコミ」を通じて、信頼できるクチコミ文化の形成に貢献できればと思っています。
―――本日はありがとうございました。