eラーニングシステムの導入を検討するにあたって、導入する目的や、導入前の検討事項について明確化することは重要です。
運用する中で目的が曖昧になってしまい、十分な効果が得られない、という事態を避けるうえでも、慎重に必要事項を検討することは重要といえます。
そこで本記事では、eラーニングシステムの導入目的や導入前の検討ポイントについて解説していきます。
eラーニングシステムの導入目的とは?
本項ではまず、eラーニングシステムの導入目的について解説していきます。
社内研修・教育の機会を確保する
eラーニングシステムの導入目的の一つは、社内における研修・教育機会の確保です。リモートワーク、ハイブリッドワークを採り入れている企業も多いなか、社員研修・教育の機会確保は課題の一つといえるでしょう。
eラーニングシステムはインターネット環境のある場所であれば社員が学習できる環境を提供できるため、社員の教育や研修の機会を確保することに繋がります。
社員のスキルアップを図る
eラーニングシステムを導入することで、社員のスキルアップを図る狙いもあります。忙しく業務をこなすなか、社員個人のスキルアップに向けた時間を確保するのは簡単ではありません。eラーニングシステムであれば、社員がスキルアップを図るきっかけになります。
eラーニングシステムであれば業務に関連する教材を使った学習が可能なため、個人個人の業務領域に合わせてスキルアップを図ることができます。
学習の進捗を記録・管理する
eラーニングシステムであれば利用している社員の学習進捗を記録・管理することができます。社員に個人での学習を推奨しているものの、進捗が分からない、実際に効果が出ているのか把握できない、という課題を覚えている企業も多いでしょう。
eラーニングシステムであれば、個人の学習進捗を記録・管理する機能を搭載しているものも多いため、社員たちが実際にどの程度学習を進めているのか、管理側も把握することができます。
eラーニングシステムを導入することで社員の学習機会を確保しつつ、進捗の管理を行うことが可能です。
eラーニングシステムの導入方法とは?
ではeラーニングシステムの導入にあたって、具体的にどのような方法があるのでしょうか。
本項で解説していきます。
既存のeラーニングシステムを導入する
最も手軽なのは、既存のeラーニングシステムを導入する方法です。出来上がっているシステムを導入するだけでよいため、社内に専門知識・スキルを持った人材がいなくても実現可能です。
なお、eラーニングシステムには教材を利用できるコンテンツ型と、学習できる環境だけを提供するプラットフォーム型の2種類に分かれます。どちらが自社にマッチするか検討し、ニーズを満たせる製品を導入しましょう。
開発企業に委託する
eラーニングシステムの構築や導入支援を行っている開発企業に委託するのも導入方法の一つに挙げられます。開発企業に委託する場合、まず費用感がマッチしているかどうか、保守運用まで任せられるかといった点を確認したうえで依頼を行いましょう。
また、開発を依頼したのちは自社で思い描いているeラーニングシステムのイメージを開発会社とすり合わせることで、イメージの齟齬なく開発を進められます。
自社で構築する
自社でeラーニングシステムを構築する方法もあります。自社で構築する場合、eラーニングシステムの開発、保守、運用に関して知識やスキル、経験を持った専門人材が必要です。自社内にスキルの高い人材がいる場合には検討できますが、そうでない場合は自社でeラーニングシステムを構築するより、既存のシステムを導入する、開発企業に委託する方が無難でしょう。
eラーニングシステムを導入する方法はいくつかありますが、それぞれメリット・デメリットは異なります。
eラーニングシステムの導入前に検討すべきポイントとは?
続いて本項では、eラーニングシステムの導入前に検討しておくべきポイントを解説します。
導入形態
eラーニングシステムの導入形態は事前に検討しておくべきポイントの一つです。eラーニングシステムにはクラウド型とオンプレミス型の2種類があるため、どちらが自社に適しているかを慎重に検討する必要があります。
クラウド型はネット上にあるクラウドでeラーニングシステムを運用していくもので、オンプレミス型は自社のサーバー内にeラーニングシステムを構築し、運用していくものです。
導入費用
eラーニングシステムを導入する費用についても事前に検討すべき事項に含まれます。eラーニングシステムの中にも初期費用がかかるもの、かからないものがあります。初期費用や月々の運用にどの程度の予算を割けるのか明確にしておきましょう。
なお、サービスによってはユーザー単位で費用が増えていくものもあるため、事前にeラーニングシステムを利用する人数規模についても確認しておくのが無難です。
運用体制
運用後の体制についても事前にイメージを固めておくことが重要です、運用・保守に関しては自社で賄う場合と他社に委託する場合がありますが、自社の状況によって大きく異なります。たとえば自社にシステムの運用・保守に関する知識・技術を持った人材がいない場合、自社でeラーニングシステムの運用を行うのは難しいでしょう。
自社の人的リソース、業務リソースを慎重に検討したうえで、導入後の運用体制について決めていきましょう。
eラーニングシステムの導入前に、導入形態や費用、運用していく上での体制構築について検討しておきましょう。
機能
eラーニングシステムを選ぶ際は、「学習管理」「教材作成」「進捗可視化」といった基本機能が充実しているかを必ず確認しましょう。
学習履歴の管理や受講状況の把握は、人材育成の成果を見える化するために不可欠です。また、自社の業務に合ったeラーニング教材を作成・編集できる機能があると、柔軟な教育研修が可能になります。
さらに、スマホ対応やUIの分かりやすさも学習者の継続率を高める重要な要素です。教育担当者向けには、通知やレポート出力などの運用サポート機能もチェックしましょう。
トライアルを通じて、「使いやすさ」と「成果が出せる機能」を両立できるか見極めるのもポイントです。
eラーニングシステムの導入費用の相場は?
eラーニングシステムの導入費用は、初期費用で10万~100万円、月額費用で3万~10万円程度が相場です。
| 費用項目 | 費用相場(税込) | 内訳・内容例 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 約10万~100万円程度 | ・システム構築費 ・環境設定費用 ・アカウント設定 ・eラーニング教材テンプレート費用 など |
| 月額費用 | 約3万~10万円程度 | ・クラウド利用料(LMS) ・受講者数に応じた課金 ・サーバー保守費 ・学習履歴管理機能の使用料 など |
| オプション費用 | サービスにより変動 | ・動画教材の制作支援費用 ・カスタマイズ機能 ・テスト機能の追加 ・教育担当者・管理者アカウントの追加 など |
eラーニングシステムの導入にあたっては、学習者の人数や学習教材の質・量、さらには学習環境の整備状況、教材作成の外注有無などにより、必要なコストが大きく変動します。
クラウド型eラーニングシステムの場合、初期費用を抑えつつ、学習コンテンツの更新やオンライン研修の実施が容易です。オンプレミス型(自社サーバー設置型)は、初期コストは高いものの、長期運用では月額コストを抑えやすい仕組みです。
現在では、無料トライアルや初期費用0円プランを提供するサービスも増えており、まずは学習者の反応や運用担当者の負担感を試せる仕組みが整っています。スモールスタートから始めて、自社に適した学習管理システムを見極めていく方法も有効です。
迷ったときは、「最初は無料プランから試す」「導入事例のある企業に相談する」といったステップから始めてみましょう。
【飲食店・施設】eラーニングシステムの導入事例3選
ぎょうざの満洲
参照:ぎょうざの満洲丨eラーニングシステムの導入事例
老舗中華料理チェーンのぎょうざの満洲は、動画を活用したeラーニングシステムを導入し、店舗スタッフの教育や情報共有を行っています。
ぎょうざの満洲では、従来のLMSにおける動画アップロードの難しさや再生速度の遅さといった課題を抱えていました。
eラーニングシステムの導入後、「EQポータル」への刷新により、視聴ユーザー数は10倍に増加し、一部コンテンツでは視聴回数が3倍に向上。豊富なストレージ容量を活かし、店舗スタッフ教育だけでなく、工場向けや管理部門から店長への情報共有にも活用範囲が広がり、動画活用によるDX推進を実感しています。
掲載する動画はすべて自社内で制作し、凝った編集よりもスピードを重視しているのも特徴です。
株式会社プレナス(HottoMotto、やよい軒)
参照:株式会社プレナス(HottoMotto、やよい軒)丨eラーニングシステムの導入事例
持ち帰り弁当店「HottoMotto(ほっともっと)」、定食レストラン「やよい軒」を約3,000店舗運営する株式会社プレナスは、店長向け座学研修の移動負担や即戦力育成の課題を解決するため、業務知識をeラーニングで学び、従業員意識を集合研修で身につけ、実務能力を実務研修で育成するブレンド型研修を導入しました。
これにより、知識習得の効率化、社員・店舗の負荷軽減、費用削減を目指しました。
eラーニングシステムの選定においては、自己学習習慣のない受講者もスムーズに学べるよう、システムのデザインと操作性、そして導入費用を重視しました。製品導入の決め手は、初のeラーニング導入に対する充実したフォロー体制と、教材内製計画への前向きな対応です。
導入後は、定期的なバージョンアップにより使いやすさを実感しており、今後のさらなる進化にも期待を寄せています。
イトーヨーカドー
参照:イトーヨーカドー丨eラーニングシステムの導入事例
株式会社イトーヨーカ堂は、eラーニングシステムの導入により、全従業員の教育を平等化することに成功しています。
eラーニングシステムの導入前は、勤務場所・形態・時間に左右されない研修環境の整備、新入社員の技術教育、遠隔地の参加困難、パートナー社員の時間制約、そしてコロナ禍でのリアル研修実施の難しさや技術の継承といった課題に直面していました。
eラーニングシステムの導入では、肉や魚の切り方、接客応対など、動作を伴う技能教育や基本教育を中心に、動画コンテンツを制作。字幕や「切る人目線」での撮影など、分かりやすさを重視しました。
その結果、全従業員約2万7千人(導入当時)に平等な教育機会が提供され、eラーニング受講率は96%超を達成。事前学習としてeラーニングを活用することで、集合研修の質が向上し、知識の詰め込みから脱却しました。
また、メールアドレス不要でのID登録が可能となり、約7割を占めるパートタイマーを含めた全従業員の受講管理が効率化され、社内での認知度も高まっています。
まとめ
本記事では、eラーニングシステムの導入目的や導入前の検討ポイントについて解説しました。どういった目的で本記事では、eラーニングシステムを導入するか事前に明確化しておくことで、
導入後の運用についても迷いなく進めていくことが可能です。eラーニングシステムの導入を検討している場合、本記事の内容を参考にしつつ、導入目的の明確化や事前の検討を行ってみてください。
