今や、店舗経営において欠かせないツールの1つとなったセルフレジは、設置店舗数も増加傾向です。
在庫管理などに役立つPOSレジ機能を兼ね備え、小売店を中心に広まりを見せるセルフレジ。しかし便利な反面、あえて有人レジ店舗を好む顧客も多くいます。店舗によってはセルフレジの導入によって客離れが進むケースもあるほどです。
本記事では、セルフレジの導入状況を踏まえ、セルフレジ導入によって客離れが起こる原因やトラブルの事例、改善策、導入時のポイントについて解説します。
小売店におけるセルフレジの導入状況
小売店におけるセルフレジは、年々増加傾向にあります。セルフレジの導入は、レジを担当する店員の負担軽減や人件費削減に効果的であることが増加している要因の1つです。
日本国内の多くの企業では、少子高齢化にともなう労働人口の減少への対策が急務となっている現状があります。そのため、今後もセルフレジの導入店舗数は増加していくでしょう。
セルフレジの導入企業は3割超
一般社団法人全国スーパーマーケット協会の調査によると、2023年度にセルフレジを設置している企業の割合(「半数以上の店舗に設置」と「半数未満の店舗に設置」の合計)は、31.1%でした。
2021年度は23.5%、2022年度は25.2%だったことから、年々増加していることが分かります。
参考サイト:2023年 スーパーマーケット年次統計調査 報告書|一般社団法人全国スーパーマーケット協会
しかし、セルフレジの導入数は、まだ半数に満たない数値であり、今なお有人レジが多いのも現状です。今後も、セルフレジを設置する店舗は増加することが予想されます。
しかし、セルフレジの設置によって客離れが起きているケースもあるため、客離れを防ぐための対策を講じることが大切です。
セルフレジで客離れが起こる3つの原因
セルフレジの導入によって客離れが起こる原因は、以下の3つ挙げられます。
- 操作方法が分かりにくい
- バーコードスキャンが負担になっている
- 万引きが疑われることへの不安感がある
セルフレジ導入の効果を引き出すには、原因になる要素を取り除き、顧客が利用しやすい環境を提供することが重要です。
ここでは、セルフレジの導入によって客離れが起こるそれぞれの原因について、詳しく解説します。
操作方法が分かりにくい
セルフレジで客離れが起こるのは、操作方法が分かりにくいことが原因の1つです。
具体的には、店舗によって導入されている機種が異なっている、支払い方法の選択肢が多岐にわたる(QR決済やクレジットカード払い)などのケースが挙げられます。
とくに、最新機能への順応が難しい高齢者が多い地域では、有人レジでの現金支払いに慣れている顧客がほとんどです。
そのため、セルフレジを利用するメリットが感じられません。結果的に、有人レジがある店舗へ顧客が流れる事態を引き起こします。
誰にでも使いやすいように操作方法を明示することが、客離れを防ぐカギと言えるでしょう。
バーコードスキャンが負担になっている
商品のバーコードを1つずつスキャンしなければならない手間がかかることも、顧客がセルフレジを避ける原因です。
購入した商品が多いほど、スキャンに時間がかかります。自分で時間をかけてレジ操作をするよりも、レジ操作に慣れているレジスタッフに任せたくなる心理が働き、有人レジがある店舗に顧客が流れるのです。
場合によっては、セルフレジのスキャンが面倒で、買い控えにつながるリスクもあります。このような買い控えや商品のスキャンに対する抵抗感を下げるためにも、導入方法や有人レジを残すか否かを検討することが大切です。
万引きが疑われることへの不安感がある
セルフレジできちんと商品のスキャンができず、店舗スタッフに万引きを疑われる不安感から客離れが起こることもあります。
バーコードの読み込みエラーが発生や、レジ袋を登録し忘れる、どこまでスキャンをしたか分からなくなる、などの原因によるものです。
顧客の中には、万引きをしたのではないかと疑われるのを避けるために、有人レジを利用したい人も多くいます。そのため、セルフレジを導入する際には、不安感を取り除くための対策も必要です。
参考記事:セルフレジでよくあるトラブルの事例と対処法|導入を成功させる運用方法のヒント
セルフレジで客離れを防ぐための改善策
セルフレジの導入による客離れを防ぐためには、客離れを引き起こす原因を理解して対策を講じることが重要です。
ここからは、セルフレジの利便性を顧客に実感してもらい、客離れを防ぐための具体的な改善策について解説します。
操作方法を分かりやすく掲示する
セルフレジをただ設置するのではなく、画像やPOPなどで操作方法を分かりやすく示し、誰にでも使いやすい状態にすることが大切です。
顧客が使い方に慣れてしまえば、操作方法を見なくても操作できるようになるでしょう。複数台のセルフレジを担当するレジカウンター専任スタッフを配置して、初めて利用する顧客のレジ操作をサポートしてもらうのも改善策の1つです。
重要なポイントは、セルフレジに対するハードルを下げ、操作に慣れてもらうことにあります。
使った人に「思ったよりも簡単に操作できた」と感じてもらえる顧客体験を提供し、客離れを防ぎましょう。
セルフレジ利用者にポイント還元を行う
セルフレジ利用者に対して、ポイント還元の形でメリットを提供し、客離れを防ぐ方法もあります。セルフレジの客離れを防ぐポイントは、前述の通り操作に慣れてもらうことです。
ポイント還元があれば、セルフレジに苦手意識がある人への利用促進につながり、操作に慣れてもらうきっかけを作ることができます。
セルフレジに対する「難しそう」という先入観に対して、利用してみたくなるようなメリットを提供できるかが、客離れを防ぐためのポイントです。
参考記事:セルフレジを導入するメリット・デメリットは?効果を引き出す導入のヒント
セルフレジ導入時にできる客離れを防ぐ方法
セルフレジによる客離れを防ぐには、導入後だけでなく導入する時点で顧客目線に立って導入方法や運営方法を検討することが大切です。
ここからは、セルフレジを導入する際に意識しておきたい、客離れを抑止して導入効果を引き出す方法について解説します。
どこまでセルフレジ化するかを明確にする
セルフレジ導入にあたり、どこまで顧客にセルフ操作してもらうかを明確にすることが大切です。
商品登録から会計操作まですべてセルフで行う機種もあれば、決済レジのみの自動精算機や自動釣銭機が独立したセミセルフレジで、セルフ精算してもらう方法もあります。
また、近年話題となったAIによる顔認証で、自動的に商品代金の決済が行われる「レジレス」を導入する企業が増えているのも現状です。
店舗の立地や客層、セルフレジの設置スペースなどを考慮し、どこまでセルフ化すべきかを明確にした上で、機種や導入台数を検討しましょう。
業種に合うセルフレジの機種を選ぶ
経営している店舗の業種に合わせて、導入するセルフレジの機種を選ぶのも客離れを防ぐポイントです。
セルフレジの機種は、業種によって最適なものが異なります。
飲食店であれば自動精算機や事前決済機、アパレル業界ではRFIDシステムを利用して自動で商品のスキャンができる機種も良いでしょう。
また、クリニック向けの機種の中には、患者の受診データを管理する機能が備わった機種もあります。コスト面で負担が大きい場合は、補助金制度を活用すると選択肢が広がるでしょう。
セルフレジは、今やコンビニやスーパーなどの小売業だけに留まる設備ではなくなりました。さまざまな業種で活用できるため、それぞれの業種に特化した機種を選ぶことが大切です。
参考記事:【2024年最新】セルフレジ(自動精算機)導入に利用できる補助金制度まとめ
まとめ
セルフレジを導入したことがきっかけで客離れが起きると、場合によってはセルフレジ撤去に追い込まれることがあります。
セルフレジの導入には費用もかかるため、導入前に機種選びや運用方法について検討しておくことが失敗を防ぐポイントです。
人手不足解消や人件費削減などの導入効果を得るためにも、顧客目線に立って使いやすいセルフレジの運用方法を考えましょう。