ラーメン屋を開業する際、開業資金のほかにも準備しておかなければならないものがあります。それが「資格」「許認可」であり、取得していないと開業できないものも含まれているため、準備段階で取得しておくことが重要です。
本記事では、ラーメン屋開業時に必要な資格・許認可について、詳しく解説します。また、調理師免許の必要性や、資格・許認可を取得する際の注意点についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
ラーメン屋開業時に必ず必要な資格・許認可
ラーメン屋開業時に、必ず取得しておかなければならない資格・許認可は、以下の4つです。
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
- 飲食店営業許可
- 運転免許・車両の構造変更申請(移動販売の場合)
それぞれ、取得方法やなぜ取得しておかなければならないのか、その理由について詳しく解説します。
食品衛生責任者
ラーメン屋を開業するには、食品衛生法を遵守するため、食品衛生責任者の資格が必須です。店舗開業だけでなく、屋台やキッチンカーなどの移動販売で開業する場合でも取得しておく必要があります。
食品衛生責任者は、食品を取り扱う際の衛生管理に関する知識を有していることを証明する資格です。全国の「食品衛生協会」が講習・試験を実施しており、基本的には1日講習を受けて試験をパスすれば取得できます。
オンライン受講に対応している場合もあるので、詳しくは出店予定地を管轄している食品衛生協会の情報を確認してください。
講習は約6時間受講するケースが一般的で、受講料・受験料は約1万円です。地域によって講座の開講日や受講料・受験料に差があるため、受講予定地の情報をチェックしておきましょう。
防火管理者
防火管理者も、ラーメン屋を開業する際に必要な資格の1つです。ラーメン屋の場合、飲食店(特定防火対象物)に該当するため、30人以上収容可能な店舗では必ず選任しなければなりません。
東京消防庁によると、防火対象物の収容人数は、以下の基準で算出するように定められています。
次に掲げる数を合算して算定する。 1.従業者の数 2.客席の部分ごとに次のイ及びロによつて算定した数の合計 数 イ 固定式のいす席を設ける部分については、当該部分にあるいす席の数に対応する数。 この場合において,長いす式のいす席にあつては,当該いす席の正面幅を 0.5 メートル で除して得た数(1未満のはしたの数は切り捨てるものとする。)とする。 ロ その他の部分については,当該部分の床面積を3平方メートルで除して得た数 |
この算出方式で収容人数が30人以上となる店舗を開業するときは、必ず防火管理者講習を受講しましょう。
食品衛生責任者と同様に、オンライン受講に対応しているところもあります。新規取得講習の場合、2日間の日程で講習が実施されるケースが多く、講習受講料(テキスト代込み)は約10,000円です。
飲食店営業許可
飲食店営業許可は、店舗出店エリアを管轄している保健所で申請が必要な許認可です。飲食店営業許可の申請を行う際は、食品衛生責任者の有資格証明書が必要になります。
そのため、まずは食品衛生責任者の資格を先に取得しておきましょう。提供するメニューによって区分けされていたものが、現在は「飲食店営業許可証」に統一されています。
飲食店営業許可は、屋台やキッチンカーなどの移動販売の場合、移動先でもそれぞれ取得する必要がある点に注意してください。
【移動販売の場合】運転免許・車両の構造変更申請
ラーメン屋を店舗ではなく、屋台やキッチンカーで開業する場合は、運転免許や車両の構造変更申請が必要になります。
屋台・キッチンカーを販売場所まで移動させる際には、「運転免許」が必要です。また、車両にラーメンを調理するための厨房設備を搭載する場合、以下の要件を満たした状態で車両の構造変更申請も行いましょう。
- 加工作業に必要な加工台、流し台、加工するための用具を収納する棚等を屋内に有し、かつ、当該設備は屋内において使用することができるものであること。
- 加工作業を行う場所には、照明及び換気装置を有すること。
- 火気等熱量を発生する場所の付近は、発生した熱量により火災を生じない等十分な耐熱性・耐火性を有し、その付近に換気装置を備え必要な換気が行えること。
- 1の設備の付近には一辺が30cmの正方形を含む0.5㎡以上の加工作業用の床面積を有し、かつ、当該床面から上方1,600mm(1の設備の端部と乗降口との車両中心線方向の最遠距離が2m未満である場合は、1,200mm)以上が確保されていること。
- 物品積載設備を有していないこと。
引用:「自動車の用途等の区分について(依命通達)」の細部取扱いについて|国土交通省
ラーメン屋開業は調理師免許不要でできる?
ラーメン屋を開業する際、調理師免許の取得は不要です。店舗経営者として開業する場合だけでなく、ラーメンの調理・提供を担当する場合も必要ありません。
一方で、調理師免許を取得していると、顧客からの信頼を得やすくなるメリットがあります。また、調理師免許所持者は、食品衛生責任者の資格取得に際し、講座の受講が免除されるのも特徴です。
ラーメン屋開業に合わせて、調理師免許を取得する必要はありません。しかし、すでに取得しているのであれば、うまく活用して集客や食品衛生責任者の資格取得簡略化などに役立てると良いでしょう。
ラーメン屋開業で資格取得・許認可申請を行う際の注意点
ラーメン屋開業で、資格取得・許認可申請を行う際は以下の3点に注意が必要です。
- 提出期間・期限を確認する
- 必要書類の抜け・漏れがないかチェックする
- 提出先を間違えないように注意する
これらの点を意識しておくべき理由や、具体的な注意項目について詳しく解説します。
提出期間・期限を確認する
ラーメン屋開業時に、資格取得・許認可申請を行う際は、それぞれの提出期間・期限を確認しておくことが重要です。
とくに、許認可申請は開業後1週間以内に提出が必要なもの、2週間以内に提出が必要なものなど、期限が異なるため混同しないように注意しましょう。
資格取得に関しては、食品衛生責任者の資格がなければ飲食店営業許可証が取得できないように、許認可申請に必要なものもあります。
開業までのスケジュールを具体的にイメージしながら、申請期限間近になって慌てることがないように準備しておきましょう。
必要書類の抜け・漏れがないかチェックする
ラーメン屋開業時に資格取得・許認可申請を行う場合は、必要書類の抜け・漏れがないかをチェックしておく必要があります。
必要書類に不備があると、申請をやり直さなければならなくなったり、修正対応が必要になったりするためです。
店舗開業に向けた準備では、対応しなければならないことが数多くあります。準備の負担を最小限に抑えるためにも、資格取得や許認可申請をスムーズに進められるように備えておきましょう。
提出先を間違えないように注意する
ラーメン屋開業に際し、資格取得・許認可申請を行う際は、必要書類・申請書の提出先を間違えないように注意が必要です。
ラーメン屋を開業する場合、一般的には以下のような許認可申請が必要になります。
届出の種類 | 提出場所 | 提出期限 |
---|---|---|
開業届(個人事業主の開業廃業など届出書) | 出店場所管轄の税務署 | 開業から1カ月以内 |
飲食店営業許可申請 | 出店場所管轄の保健所 | 店舗完成の10日前まで |
防火対象物使用開始届 | 出店場所管轄の消防署 | 建物の使用を開始する7日前まで |
火を使用する設備等の設置届 | 出店場所管轄の消防署 | 建物の使用を開始する7日前まで |
所得税の青色申告承認申請書 | 出店場所管轄の税務署 | 開業から2カ月以内 |
給与支払事務所の開設届 | 出店場所管轄の税務署 | 給与支払事務所を開設してから1カ月以内 |
社会保険加入手続き | 日本年金機構 | 開業後すぐ |
雇用保険の加入手続き | 公共職業安定所 | 従業員の雇用開始から10日以内 |
労災保険の加入手続き | 労働基準監督署 | 雇用開始翌日から10日以内 |
食品衛生管理者の届出※要資格 | 出店場所管轄の保健所 | 管理者設置から15日以内 |
防火・防災管理者選任届※要資格 | 出店場所管轄の消防署 | 開業まで |
深夜酒類提供飲食店営業開始届出 | 出店場所管轄の警察署 | 開業の10日前まで※深夜0時以降も営業する場合 |
上記の許認可申請は、それぞれ申請書・届出の提出場所や提出期限も異なります。また、店舗の規模や従業員雇用の有無によっても、提出が必要な書類の種類が変わるので注意しましょう。
ラーメン屋開業までの流れ
ラーメン屋を開業する際は、以下の流れで準備を進めていきます。
- コンセプト設計を行う
- ラーメン屋として事業計画書を作成する
- 商圏分析や人流データ分析を行って出店エリアを決定する
- 必要な資金から逆算して自己資金を貯める
- 必要資格を取得する
- 資金調達や融資の申請を行う
- 店舗物件(費用を抑えるなら居抜き物件)を探す
- メニューを開発する
- 店舗物件を契約する
- 店舗の内装工事・外装工事を発注・施工する
- 厨房設備を選定する(購入・リース)
- 什器・備品類を調達する
- 必要な届出や申請の手続きを行う
- 店舗スタッフを採用・教育する
- チラシ配布やポスティングで宣伝・集客する
- プレオープンする
- 業務オペレーションを改善する
- ラーメン屋として開業する
これらの流れはあくまで一般的なものであり、状況に応じて順番が前後するケースも少なくありません。ラーメン屋を開業するまでの流れについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事:ラーメン屋を開業するには?必要な資金や準備の流れと成功につなげる3つのポイント
ラーメン屋開業に必要な自己資金の目安
ラーメン屋開業に必要な自己資金の目安は、約300万円~500万円です。屋台やキッチンカーであれば、約100万円~300万円で開業できる場合もあります。
ただし、これはあくまで「自己資金」の目安です。ラーメン屋を開業する場合開業資金は、1,000万円~1,500万円程度必要になります。屋台・キッチンカーの場合でも、300万円~800万円程度必要です。
基本的に、ラーメン屋を開業する際、開業資金を全額自己資金でまかなうことは難しいため、日本政策金融公庫の創業融資制度を活用して資金調達を行います。
融資申請を行う場合、自己資金を融資金額の3割程度準備しておくと審査に通りやすくなる傾向です。
そのため、自己資金は初期費用+運転資金を合算した開業資金のうち、約3割を目安に貯めておくと良いでしょう。
参考記事:ラーメン屋開業資金はいくら必要?店舗規模ごとの目安や資金調達の方法を解説
まとめ
ラーメン屋の開業には、必須の資格や許認可があることを事前に把握しておく必要があります。開業に向けた準備を進める中で、開業予定日のどれくらい前に取得しておけば良いか、スケジュールを立てておきましょう。
とくに、許認可申請は種類によって提出先や提出期限に違いがあります。必要書類に過不足がないか確認するだけでなく、提出するタイミングにも注意が必要です。