人流分析によって収集された人流データは、数多くの団体や企業で幅広い施策に活用されています。
企業だけでなく自治体でも、地域活性化や防災、防犯、観光業におけるオーバーツーリズムへの対策などを行っており、活用方法はさまざまです。
本記事では、人流データをマーケティングで有効活用する方法や、活用する際の注意点について解説します。
記事後半では、実際にマーケティングで人流データを利用している活用事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
人流データとは?
人流データとは、人の流れや動き、混雑状況の変化などの人流解析を行い、数値や色でデータ化したものを指します。
駅や観光地、オフィス、イベント会場、店舗など、さまざまな場面で活用されているビッグデータと呼ばれる情報源の一種です。
身近なところでは、流通の効率化や防災、イベント運営の計画、店舗の集客など、多くの企業や団体で幅広く活用されています。企業や自治体の施策に欠かせない統計データの1つです。
AIカメラや車載器、スマホのGPSデータなどを用いて人流把握と分析を行い、人の行動傾向の把握と予測を立てる際に活用されています。
参考記事:人流データとは?取得方法やメリット・活用事例などを紹介
人流データを利用したマーケティングの方法
人流データは、企業のマーケティング活動でも活用できます。
活用方法はさまざまで、人流データをどのように活用していくかがマーケティングを成功させるポイントです。
ここでは、人流データを利用してマーケティングを行う際の具体的な施策アイデアや、マーケティング活動に役立てる方法について解説します。
ポスティングやサンプル配布でのアプローチ
人流データを活用したマーケティングでは、ポスティングやサンプル配布が効果的に行えます。
例えば、店舗への来店機会が多い顧客が多数いるエリアに限定してポスティングを行ったり、帰宅時間帯に合わせてサンプル配布を行ったりするような方法です。
人流データを活用すれば、人の流れや動きの変化を分析・予測できます。活用すれば、効果的な範囲・タイミングでマーケティングが行えるでしょう。
競合店舗における顧客行動の分析
人流データは、競合店舗における顧客行動の分析にも活用できます。
自店舗の顧客行動と、競合店舗の顧客行動を比較し、どのような違いがあるのかを分析する方法です。
来店時間の違いや曜日、客層の違いが分析できれば、アプローチすべきターゲットが明確になります。
違いを活かして差別化を図る、競合店舗の客層にもマッチするような商品・サービスの提供を行って店舗の経営を優位に進めるなど、状況に応じたマーケティング戦略の実現が可能です。
タイムセールの広告・クーポン券の効果的な配布
人流データを活用すると、タイムセールの広告やクーポン券を効果的なタイミングで配布できます。
具体的には、家族連れの顧客が多い時間帯にお子さま限定クーポンを発行したり、帰宅ラッシュの時間帯にタイムセールを行って店舗へ集客したりする方法です。
店舗に足を運びやすいタイミングを狙って、訴求力の高い情報を提供することで、より効果的に顧客を店舗へ誘導できます。
タイムセールの広告やクーポン券は、それだけで訴求力が高い施策です。人流データと組み合わせて打ち出すことにより、その効果を最大限に引き出せるでしょう。
顧客ニーズの変化に合わせた商品開発・サービスの提供
顧客ニーズの変化に合わせて、新たな商品やサービスを導入するのも人流データを活用したマーケティング方法の1つです。
2020年頃から、新型コロナウイルスの感染症対策のために、テイクアウトやキャッシュレス決済サービスに対する顧客のニーズが高まりました。
顧客のニーズ変化に合わせて、テイクアウトやキャッシュレス決済を導入した店舗は少なくありません。
このような顧客の購買行動の変化は、人流データでいち早くキャッチできます。スピーディーに対応できるため、販売機会の獲得につながります。
エリア特性を見極めた商品の仕入れ
人流データは、エリア特性を見極めた商品の仕入れにも活用できます。
商圏分析でも活用されているもので、そのエリア独自の習慣や風習による購買行動の変化に対応するマーケティング方法です。
例えば、節分に恵方巻を食べる文化がほとんどない地域があったり、北海道では煎り大豆ではなく落花生を撒く地域があったりするようなケースです。
このほかにも、さまざまな地域で独自の習慣や風習が残っており、目に見えるものばかりではありません。
人流データを活用すれば顧客の行動パターンから、地域ならではのマーケティングに活用できる情報が集められます。
人流データをマーケティングに活用する際の注意点
人流データをマーケティングに活用する際は、以下の点に注意する必要があります。
- 個人情報漏洩に注意する
- どのような施策に活用するのかを明確にしておく
- 効果が出るまでに時間がかかることがある
- 専門的な知識がなければ分析は難しい
人流データの収集方法はさまざまです。しかし、街中の防犯カメラやAIカメラを活用する場合、通行人の顔が映ります。
顔がはっきりとわかる状態で資料として活用したり、Webサイトなどで公開したりするのはプライバシー保護の観点から避けなければなりません。
人流データを活用したマーケティングは、効果が出るまでに時間がかかることも多いため、中長期的な視点で実施する必要があります。
また、人流データの分析には、専門的な知識が必要です。そのため、人流データ分析機関に依頼する、分析ツールを活用するなど、効率良く分析する方法も検討しておきましょう。
マーケティングにおける人流データの活用事例3選
マーケティングに、人流データを活用している企業は少なくありません。
実際に人流データを活用してマーケティングを行う際、活用事例を見て参考にするのも選択肢の1つです。
ここでは、マーケティングに人流データを活用している企業の事例を3選紹介します。
デンソー・NTTデータ
出典:株式会社NTTデータ
株式会社デンソーと株式会社NTTデータは、共同で車流データと人流データを組み合わせ、運転者の属性情報における車移動の変化に関する実証実験を行いました。
車での移動体験やサービスの向上、行動変化による購買行動への誘導、見込み客の獲得などを図るためのものです。
車載器から収集した車流データと、スマホのGPSの位置情報データなどによる人流データを掛け合わせ、個人の特性や好みに応じた行動の変化を追いました。
これにより、運転状況の推定と個人の好みを把握、予測して、アプリにおすすめの店舗情報を通知した結果、送客支援の有効性が立証されています。
人流データの検証に基づく新たな価値や、サービスの提供につなげている事例です。
参考サイト:デンソーとNTTデータ、車流×人流データを活用した移動体験変革の実証を完了|株式会社NTTデータ
コニカミノルタ・丸紅ネットワークソリューションズ
出典:コニカミノルタ株式会社
コニカミノルタ株式会社と丸紅ネットワークソリューションズ株式会社は、スマートシティや商業施設の来訪者・来店者を分析する分野で協業しています。
丸紅ネットワーク株式会社が提供しているAI映像監視サービス「TRASCOPE-AI」に、コニカミノルタ株式会社の画像IoTプラットフォーム「FORXAI」の機能を搭載したものです。
これまで、商業施設内を回遊する顧客情報を従来の監視カメラの情報から、詳細に分析できないことが課題でした。マスクや日傘などを使用していると精度が低下するためです。
服装や持ち物からも個人を特定できる「FORXAI」の機能によって特定精度を上げ、顧客行動の分析に活用しています。
これにより、来店者数の推移だけでなく、顧客行動の変化や時間帯ごとの属性情報が収集できるようになりました。
得られた情報をもとに、商品陳列や店舗の配置などのマーケティング戦略に活用しています。
参考サイト:コニカミノルタと丸紅ネットワークソリューションズ来店者分析ソリューション「人流マーケティング」で協業|コニカミノルタ株式会社
三菱地所株式会社
出典:株式会社unerry
三菱地所株式会社では、人流データを丸の内エリアのオープンイノベーションフィールド化の実現に役立てています。
具体的には、エリア内の流動人口データをもとに傾向を把握し、行動パターンの予測や来訪経路などの情報収集に活用しているケースです。
人流データ分析で得られた情報をダッシュボードで管理しながら、社内の部署間でシームレスに情報共有を行っています。
収集したデータを丸の内エリアの施設整備や、企業・店舗の集積、交流などに幅広く活用している事例です。
参考サイト:大丸有エリアの街行動データをダッシュボードで見える化|株式会社unerry
参考記事:人流データの活用事例10選|メリット・デメリットと分析・活用に役立つツールを紹介
まとめ
マーケティングにおける人流データ活用は、企業や自治体によってさまざまです。
人流データ解析を行うと、店舗周辺の情報収集やデータ比較による顧客行動の変化をキャッチし、店舗マーケティング施策に役立てられます。
人流データを活用して商圏分析を行えば、エリアマーケティングも実施できるでしょう。
人流データをマーケティングに活用する際に重要なのは、どのような活用方法をするために、どのデータが必要かを明確にしておくことです。
漠然と人流データを収集するのではなく、目的に合うデータを集めるように意識ましょう。