飲食店を開業する際、さまざまな準備が必要になります。資金の準備に始まり、店舗や設備の選定、必要な資格や許認可・届出の取得などです。
これだけの準備を開業までに終わらせるには、飲食店開業に必要なものを体系的に把握し、準備をスムーズに進めていく必要があります。
では、具体的に飲食店開業に向けて必要な準備には、どのような項目が挙げられるのでしょうか。
本記事では、飲食店の開業に向けて必要なものについて、資金や許認可・届出、資格、設備・備品にわけて体系的に紹介・解説します。
飲食店開業に必要なものとは
飲食店開業に必要なものは多岐にわたります。飲食店の業態や店舗の規模によっても差があるため、準備に着手する前に、全体像を把握しておくことが大切です。具体的には、以下のものが飲食店開業時に必要になります。
- 開業資金・運転資金
- 事業計画書の作成
- 許認可申請・届出
- 飲食店関連の資格
- 業態に応じた設備・備品類
このほか、必要に応じた従業員の雇用や広告・宣伝活動などへの備えも必要になりますが、まずは開業に向けたこれらの準備を計画的に進めていきましょう。
飲食店開業に必要な資金の目安
飲食店開業に必要な資金の目安は、1,000万円~1,500万円です。店舗の企業や業態によっても変動しますが、余裕をもった資金確保が必要になります。
基本的に、開業資金に加えて運転資金として半年~1年程度の費用を確保しておくことが重要です。生活費や水道光熱費、店舗賃料などを収益が伸びてくるまで支払い続けられる状態にしておきましょう。
自己資金で全額準備する必要はありませんが、基本的に自己資金ゼロで開業することはできません。必要な資金の30%程度は自己資金で賄えるように準備しておくことが大切です。
参考記事:飲食店開業の資金はいくら必要?資金調達方法と自己資金の目安や補助金・助成金制度まとめ
飲食店開業に必要な許認可・届出
飲食店開業に必要な許認可・届出には、以下のものが挙げられます。
届出の種類 | 提出場所 | 提出期限 |
---|---|---|
開業届(個人事業主の開業廃業など届出書) | 出店場所管轄の税務署 | 開業から1カ月以内 |
飲食店営業許可申請 | 出店場所管轄の保健所 | 店舗完成の10日前まで |
防火対象物使用開始届 | 出店場所管轄の消防署 | 建物の使用を開始する7日前まで |
火を使用する設備等の設置届 | 出店場所管轄の消防署 | 建物の使用を開始する7日前まで |
所得税の青色申告承認申請書 | 出店場所管轄の税務署 | 開業から2カ月以内 |
給与支払事務所の開設届 | 出店場所管轄の税務署 | 給与支払事務所を開設してから1カ月以内 |
社会保険加入手続き | 日本年金機構 | 開業後すぐ |
雇用保険の加入手続き | 公共職業安定所 | 従業員の雇用開始から10日以内 |
労災保険の加入手続き | 労働基準監督署 | 雇用開始翌日から10日以内 |
食品衛生管理者の届出※要資格 | 出店場所管轄の保健所 | 管理者設置から15日以内 |
防火・防災管理者選任届※要資格 | 出店場所管轄の消防署 | 開業まで |
深夜酒類提供飲食店営業開始届出 | 出店場所管轄の警察署 | 開業の10日前まで※深夜0時以降も営業する場合 |
個人事業主として開業する場合と、法人として開業する場合では、申請が必要な許認可や届出の種類に違いがあります。また、深夜種類提供飲食店営業開始届出は、深夜0時以降も営業する場合に限られているように、営業形態によっても必要な届出が異なるのも特徴です。
先に資格を取得しておく必要がある届出もあるため、資格取得や申請までの期間を念頭に置いて、計画的に申請・取得を進めていきましょう。
参考記事:飲食店開業に必要な届出一覧!開業届を出すタイミングと必須資格も紹介
飲食店開業に必要な資格
飲食店開業に必要な資格は、以下の2つあります。
- 食品衛生責任者
- 防火管理者
いずれの資格も飲食店開業に欠かせないものであり、とくに食品衛生責任者資格は、取得できていないと飲食店営業許可証の取得ができません。
ここからは、飲食店開業に必要な「食品衛生責任者」と「防火管理者」の資格について解説します。また、飲食店関連の資格として知られる「調理師免許」の必要性についても解説しますので、開業に向けた資格取得の参考として活用ください。
食品衛生責任者
飲食店経営に欠かせない資格として、食品衛生責任者の資格が挙げられます。食品衛生責任者は、飲食店を開業する際の営業許可証の取得時に申告が必要になるもので、各飲食店に1人以上の配置が必須です。
店舗型の飲食店だけでなく、キッチンカーのような移動販売を行う場合でも、飲食物を扱う際には届出が必要になります。飲食店経営者が自ら取得することも可能ですが、営業中に有資格者が配置されていなければなりません。
食品衛生責任者の資格は、資格の講座を受講した上で、確認試験を受けてクリアすれば取得することが可能です。基本的に対面による講座受講の場合、確認試験を1回でパスできれば即日中に取得できます。eラーニングによる講座受講に対応している場合も多いので、対面受講が難しい場合はそちらを活用するのもおすすめです。
防火管理者
防火管理者の資格は、従業員を含む収容人数が30人を超える物件・店舗・施設を開業する際に必要になるものです。飲食店以外にも、ホテルや劇場、他業種店舗などでも必要になります。
店舗の規模によって、取得しなければならない防火管理者資格の種別が異なる点に注意が必要です。
300㎡未満の小規模飲食店を開業する場合は「乙種防火管理者」、300㎡以上の場合は「甲種防火管理者」の資格を取得しましょう。
乙種は1日、甲種は2日間の講座を受講する必要があります。食品衛生責任者資格と同様に、eラーニングによる受講が可能なので、対面受講が難しい場合にはそちらの利用がおすすめです。
調理師免許の必要性について
飲食店開業時に必要な資格として、調理師免許の必要性に関して悩む方は少なくありません。結論から言えば、飲食店開業時に調理師免許は必須ではないため、取得しなくても開業できます。
一方で、食品衛生責任者資格を取得する際の講座受講が免除されたり、顧客からの信頼を得やすくなったりするメリットがあるのは調理師免許ならではの強みです。
調理師免許を取得していなくても、飲食店を開業することは可能ですが、すでに取得している場合は有効活用すると良いでしょう。
参考記事:飲食店開業に必要な資格一覧|調理師免許の有無や届出の申請についても解説
飲食店開業に必要な設備一覧
飲食店開業時に必要な設備には、以下のものが挙げられます。
- 調理台・コールドテーブル
- シンク・業務用食洗機
- 業務用冷蔵庫・冷凍庫
- ガスレンジ・フライヤー
- スチームコンベクション・オーブン
- 製氷機・ウォータークーラー
- 食器棚・調味料棚
- 炊飯器
- ハンディオーダー・オーダー(注文)用紙
- キッチンプリンター・キッチンディスプレイ
- モバイルオーダーシステム・テーブルオーダーシステムの導入
- セルフオーダーシステム・事前決済KIOSK端末・券売機の導入
- キャッシュレジスター・POSレジ・セルフレジ(自動精算機)の導入
- キャッシュレス決済端末の導入
これらは、店舗によって必要なもの、不要なものがあるため、自店舗の業務オペレーションにおいて必要な設備を選定することが重要です。
とくに、業務用の厨房機器類は、導入後の調理工程を意識しながら、スタッフの導線はスムーズに動ける状態かを見極めなければなりません。
飲食店におすすめの厨房機器については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらを参考にしてください。
参考記事:飲食店開業に必要な厨房機器リスト&費用ガイド|失敗しない導入ポイントと新品・中古のメリットも解説
飲食店開業に必要な備品一覧
飲食店を開業する際、必要になるのは大型の設備だけではありません。業務上必要になる備品類のほか、顧客が使用する客席備品なども揃えておく必要があります。
飲食店開業時に必要な備品としては、以下のものが挙げられます。
- 鍋・フライパン類
- まな板・包丁・計量器具
- ボウル・ザル・バット・タッパー
- 食器類
- 消毒用具・ビニール手袋
- ゴミ箱・ゴミ袋
- 清掃用具
- 釣銭トレー
- スタンプカード・ポイントカード
- 領収書・収入印紙・印鑑
- テーブル・椅子・お子様用椅子
- つまようじ・卓上調味料類
- 伝票立て・伝票ホルダー
- 水用グラス・ドリンク用グラス・ジョッキ類・ティーカップ・コーヒーカップなど
- カトラリー類(箸・スプーン・フォーク・ナイフ・お子様用食器など)
- コースター・箸置き
- 紙ナプキン・おしぼり・ダスター(台拭き)
- 荷物入れ・ひざ掛け
- メニュー表・メニューブック・メニュー立て・テーブルオーダー用タブレットなど
- 呼び出しベル・呼び出しボタン
- 時計・傘立て
- 清掃用具
- 入口マット
入口マットやおしぼりなど、定期的に交換若しくは補充が必要になる備品に関しては、開業前に依頼先の業者を選定することも重要です。
また、店内の備品は、店舗のコンセプトや雰囲気にも影響を与えるため、デザインやフォルム、使い勝手なども考慮して選定しましょう。
参考記事:飲食店開業に必要な設備一覧|準備すべき備品や選定時の注意点を解説
まとめ
飲食店の開業準備において必要なものは、店舗の規模や業態によって異なります。例えば、カフェであればコーヒーマシン、ラーメン店であれば製麺機のように、業態や提供するメニューによっては専門設備の導入が必要になるケースもあるためです。
また、資格や許認可に関しても、状況によって取得にかかる時間が異なる場合があります。計画的に改行準備を進めようとしても、思うように進まないことを想定し、余裕をもったスケジュールで準備を進めていきましょう。