店舗運営においてデータの活用は大切です。
いつどこで誰がどのようなビジネスを行っているか知ることで、仮説を立て最適な施策を立案することができます。
しかし、質の良いデータはどのように取得すれば良いのでしょうか?株式会社Review代表取締役CEO 藤本 茂夫様にお伺いしました。
ズバリ貴社が得意としている店舗施設の課題解決においてどのようなデータを提供しているのか教えてください。
「macci」というマーケティングや分析、セールス、さらには自社システムの強化に役立つデータを提供しています。
少し大きなテーマからのお話になりますが、たとえば、今、皆さんが東京にいて、その地域で先月新しく開店した飲食店の数をご存知でしょうか?そして、その地域に現在どれくらいの飲食店があるか把握されていますか?
という質問をしたときに、即答できる方は日本にはいなかったんです。
では、どこがその情報を一番把握しているかというと、許認可情報を持っている保健所などの行政です。じゃあ行政がどんな管理をしているのかというと紙で管理していたりするので、正確なデータがすぐに出てこなかったりするんです。
このITやAIの時代でありながら、実はリアルな情報を誰も把握していない状況なのです。もちろんインターネット上にも情報はありますが、正確性や信頼性は誰も証明できません。たとえば、飲食系のサイトに掲載されている焼肉店の情報が本当に正しいのかというと、更新日付が分からなければ誰も確証を持てませんし、そもそも情報が間違っている可能性もあります。
残念ながら、自分たちの住む町の情報ですら、誰も把握していないというのが現実です。
こうした課題は以前から存在しており、解決しようと地図会社なども挑戦してきましたが、なかなか解決策を見い出せなかったんです。
そこで、弊社ではコロナ前に、現地で何百人ものスタッフに稼働いただき、すべての道を回り、街中のデータを収集する取り組みを始めました。
ただそこからコロナ禍により外出が難しくなったことで、行政に代わって全国の店舗データを管理・更新しようと考えました。よく皆さまが使用される情報サイトのように1年に1回の更新ではなく、弊社独自の頻度で管理してしまおうと。
その際に「人がデータを集め、AIで連携し、さらに人の手で創りあげる」という基本のフォーメーションを作りました。
他の多くの企業では、インターネット上の情報をRPAやITツールを使って自動的に収集していますが、我々はデータの「正確性」「網羅性」「蓋然性」を重視し、100%の正確さを目指しました。
そのため、470か所ある保健所を含め、毎月手作業で各所に申請書を提出し、紙で管理されている公開情報を収集しています。これには非常に多くの工数がかかりますが、飲食店に限らず、理美容、宿泊、介護、病院など、あらゆる分野の情報を収集することで、正確性を担保しています。
確かに正確なデータは店舗マーケティングにおいて必須ですね。
そうですね。ただし、集めたデータは基本情報しかないんです。なので、収集した情報をAIを活用してあらゆる角度でデータリッチにしていきます。その結果、顧客から「これはすごいデータだね」と言っていただけるようになりました。
しかし、ここで終わりではなく、毎月人の手を使って何十万件、何百万件のデータを確認しています。
AIだけではどうしても8割の精度しか保てません。そこで、AIで集めたデータを人がチェックし、最終的に精度を高めています。このようにAIを人の手で挟むサンドイッチ方式でデータを整備し、1か月に1回のペースで更新しています。日本ではおそらく最速の更新速度です。
従来のデータサービスは、Webで集めたデータをきれいに整えるというものがほとんどでしたが、弊社はそのプロセスに人の手を大きく介在させています。「蓋然性」をしっかりと確保することで、店舗データを探される企業に対して、より精度の高い最新の情報をお届けしています。
これにより、マーケティングや分析にもご活用いただけるサービスとなっています。
お客様が抱える課題をどのように解決していますか?
飲食店が抱える課題として、まず店舗開業の段階で「どこに出店するか」という問題がよく挙げられます。たとえば、東京都の港区で店舗を出そうとしているとします。この場合、出店戦略のうえでは、そのエリアに競合店がどれだけ存在するか把握するためのデータ収集が課題になってきます。
また、フランチャイズのオーナーさんの場合は、未開拓のエリアで店舗出店したいとなった際、運営してくれる会社を探さないといけません。
インターネット上で調査をして店舗報を見ても、その店舗を運営している会社の情報って出てこないんです。行政からのデータ収集が必要なんですが、弊社はオリジナルでリストを作成しているので、その点については運営会社の情報も知ることができます。
データの正確性や蓋然性を担保しているので、出店戦略や競合他社の分析などマーケティングで使われていることが多いですが、10のお客様がいたら10使い方が違うというくらいさまざまなことで活用されていますね。
その中で各店舗のInstagramの分析も追加されたのでしょうか?
現在、大手コンサル会社と協力し、Instagramのフォロワー数や投稿数などをもとにした分析を進めています。
たとえば、Instagramでフォロワー数が多い店舗は、それだけ集客力があると見なされますし、SNSを活用したマーケティングに強い店舗だと考えられます。
データを活用して、フォロワー数が多いエリアや競合店を分析することも可能です。どの地域の飲食店がInstagramでの影響力が高いのかといった情報も可視化できますし実は、フォロワー数が多い店舗は渋谷ではなく、札幌に集中している、というようなこともわかります。
また、投稿数が多い店舗はインテリアや人材配置、インスタ映えを意識した取り組みに力を入れていることが多く、こういったデータから参考にもできますね。
このように、Instagramを活用することでSNSのリアルな分析ができ、マーケティング施策の精度を高めることができます。
確かに今日本で一番Instagramのフォロワー数が多い店舗どこかと聞かれてもわからないですよね。
そうですね。やっぱり今の時代に合わせたマーケティングを一生懸命やっている店舗は売上も伸ばしやすいので、データをうまく活用してみてほしいですね。
お客様から1番喜ばれているポイントを教えてください。
お客様からよく言われるのは、「よくこんなに尖らせた詳細なデータを集められましたね」ということです。ここまで精度の高いデータを、自分たちで収集しようとすると膨大な時間と労力がかかると思いますし、ITツールが整っている企業も少ないので、弊社が提供するデータの価値を実感していただけているようです。
「御社以外にはこのデータを持っている会社が見つからなかった」と言われることもあります。
今後、業界に対してどんな価値を提供していきたいと考えられていますか?
飲食業界だけでなく、不動産や衣食住といった生活に密着した業界全体が、もっと効率的に発展していくべきだと思います。
例えば、衣食住は絶対人間として必要な業界なのに、他の業界と比べてIT化が遅れており、非常にアナログな部分が多いですよね。
飲食店なんかでも情報をもっとオープンにして、隣のお店の状況や業績がわかるようにすれば、より効率的な経営ができると思います。たとえば、隣の店舗が利用しているシステムが店舗の効率化につながっているのであれば、「これが良かったよ」と情報共有できるようになれば他の店舗も効率よく選択ができるようになると思います。情報の力を使って1年かかっていたことを1分でできるようにしたいですね。そのためには、データテックの力が必要不可欠です。
今後、飲食店がもっと効率よく情報交換し、競争ではなく協業を進められるような世界をつくっていきたいと考えています。
貴社を一言で表すとどんな課題解決のプロですか?
「ビジネスを楽にするプロ」です。
データを提供し様々な会社のビジネスを楽にしてまいります。
最後に、今後の展望を教えてください。
弊社は「ビジネスをラクに、生活を楽に」という理念に基づいて、ビジネス面では効率化を進めています。ですが、まだ生活面での利便性向上には課題が残っています。
今回、飲食店を中心にお話ししましたが、弊社は現時点で168ジャンルの店舗データを保有しています。そこに法人情報やInstagramなどのSNSデータを含めて、最終的には市場全体を巻き込む形でデータプラットフォームを構築したいと考えています。
そうすることで、皆さんがいつでも弊社のデータを閲覧でき、ログインして生活やビジネスに活用できるようにすることが目標です。将来的には無料でデータを提供できる世界観をつくりたいですね。
たとえば、「今日は中華料理が食べたいな」という気分のときに、その瞬間に最適なレストランをAIが紹介し、予約までしてくれる、ということもデータとAIを組み合わせることで可能になります。
今の日本では、まだこのような取り組みが進んでいないので、大きな変革を起こしたいと考えています。
―――ありがとうございました。