企業や店舗では、業務の進め方や設備の使い方など、さまざまな場面でマニュアルが必要になります。
しかし、マニュアルを作成しても読み手に伝わらなければ、マニュアルとしての役割を果たせません。では、具体的にどのような流れでマニュアルを作成すれば、読み手に伝わりやすくなるのでしょうか。
本記事では、わかりやすいマニュアルを作成するための5つのコツを踏まえて、作成の手順をステップごとに解説します。
マニュアルを作成する目的
マニュアルは、作成する目的を明確にした上で、内容を検討することが大切です。
一般的には、以下の目的でマニュアルを作成します。
- 業務効率化を図る
- 業務クオリティの均一化につなげる
- ノウハウを蓄積・共有する
- 属人化を防ぐ
マニュアルは、単純な説明書や手順書ではありません。ノウハウを社内で共有しながら業務の品質を均一化し、効率の良い業務の進め方を社員全員が実践できるようにするものです。
また、社外向けとして取扱説明書やよくある質問などをまとめてマニュアル化し、問い合わせ対応の負担を軽減する狙いもあります。
マニュアルは企業の業務をまとめた資料であるのと同時に、業務効率化や品質維持に役立つ企業の資産であると言えるでしょう。
マニュアルの種類
マニュアルと言っても、さまざまな種類のものがあります。まずは、マニュアルの種類を知った上で、具体的にどのようなマニュアルを作成したいのかを明確にしておくことが大切です。
ここからは、マニュアルにはどのような種類のものがあるのか、内容や特徴について解説します。
作業手順書型マニュアル
作業手順書型マニュアルは、業務の進め方や作業の手順を解説したいわゆる業務マニュアルです。作業や業務全体の流れを把握し、具体的にどのような業務を行っていけば良いのかを明確にします。
また、作業や業務全体の流れに加え、進め方の手順や効率良く業務を進めるポイントなどを盛り込むことも可能です。
作業手順書型マニュアルは、業務に初めて取り組む従業員の研修資料としてだけでなく、既存社員の業務効率化を図る手段としても活用できます。
操作手順書型マニュアル
操作手順書型マニュアルは、業務で使用する機械や設備、ツール・ソフトなどの操作手順をマニュアル化したものです。
いわゆる取扱説明書のようなもので、業務に必要な機械やツールの操作方法を直接指導することなく、身につけてもらえるメリットがあります。
操作手順書型マニュアルを作成する際は、危険なポイントや注意点・チェックポイント、頻発しやすいエラーの対処法などを盛り込むと良いでしょう。
ナレッジ蓄積・共有型マニュアル
ナレッジ蓄積・共有型マニュアルは、社員それぞれがもつ知識や共有しておきたい情報をまとめ、情報源・データベースとして活用するマニュアルです。
社員がもつ専門知識や経験を蓄積・共有することで、企業の財産として活用できます。ノウハウを共有できるため、社内全体のスキルアップや業務レベルの均一化にも効果的です。
また、ナレッジ蓄積・共有型マニュアルは、よくある問い合わせに対する回答をまとめて、カスタマーサポート向けのマニュアルとして活用する方法もあります。
規範マニュアル
規範マニュアルは、社内の内部統制を目的に作成されるマニュアルです。どのような行為が違反にあたるのか、社内のルールを統一、周知する目的で作成されます。
企業の一員として守るべきルールや規範を明記するほか、違反することによってどのようなリスクがあるのかを伝えることが目的です。
チームとしてのまとまりを良くし、組織力向上につなげる狙いもあります。
動画マニュアル
動画マニュアルは、画像や文章では伝わりにくい情報を動画で説明するものです。口頭では伝わりにくい、実践的なスキルがもとめられる業種・業務での導入に適しています。
一度作成しておけば繰り返し視聴できるため、研修用としての活用もおすすめです。社員が好きなタイミングで振り返り視聴できるようにしておけば、不明点が出てきた際にも自己完結できます。
音声と映像でもっとも視覚的に伝えられるマニュアルのため、社内の重要情報を伝えたい場合にも活用できる点が特徴です。
マニュアル作成の基本的な流れ
マニュアル作成は、基本的に以下の流れに沿って進めていきます。
- 作成する目的を明確にする
- 作成するマニュアルの種類を決める
- マニュアル作成にかける予算を検討する
- マニュアル作成のスケジュールを設定する
- マニュアルに盛り込む内容の大枠を設計する
- マニュアル作成に活用するツールを選定する
- マニュアルを作成する
マニュアルを作成するときは、まずなにを目的にマニュアルを作成するのか、どのような場面で活用したいのかを明確にしておきましょう。
その上でマニュアルの種類や作成方法を選定し、スケジューリングや予算を決定していきます。スケジューリングや予算設定ができたら、マニュアルの作成手順に沿って作成を進めていきましょう。
マニュアルを作成したあとは、作成したマニュアルを活用しながら、内容をさらにブラッシュアップしていくことが大切です。
マニュアル作成の失敗を防ぐ5つのコツ
マニュアル作成の失敗を防ぐコツは、以下の5つあります。
- 全体像をイメージしやすい構成にする
- 要点はシンプルに伝える
- 専門用語を多用しない
- 画像や表・図解などで解説する
- 運用開始後もブラッシュアップしていく
マニュアル作りにおける失敗を防ぐには、失敗しやすいポイントを把握しておくことが大切です。
ここからは、それぞれ具体的に意識しておきたいコツや、失敗につながりやすいポイントについて解説します。
全体像をイメージしやすい構成にする
マニュアルを作成するときは、業務内容や業務手順、操作方法などの全体像をイメージしやすいように構成することが大切です。
マニュアルを読んだ後にどうなっていて欲しいのか、着地点を事前に決めておくと良いでしょう。例えば、基本業務の進め方が身に付く、設備の操作ができるようになる、などです。
着地点に向けて必要な内容を盛り込めば、マニュアル全体の流れに統一感が出てイメージしやすい構成になります。
要点はシンプルに伝える
マニュアルでは、要点をシンプルに伝えましょう。
複雑な表現にしたり、回りくどい説明を加えたりすると、読み手がうまく理解できない可能性もあるためです。
解説を加えたいときは、先に要点や結論を明示した上で、その理由や解説につなげる流れを意識する必要があります。
また、複数ページのマニュアルを作成する場合は、1ページに1つの要点を伝えるように意識し、複雑な内容にならないように配慮することが重要です。
専門用語を多用しない
マニュアルを作成するときは、専門用語を多用しないことも失敗を防ぐコツの1つです。
業務に慣れている人が普段使用している言葉でも、初心者には伝わりません。専門用語を読み解くだけで時間がかかってしまうなど、マニュアル学習の進捗に影響を与える場合もあるでしょう。
必要な専門用語を記載する場合は、用語解説の注釈を入れておくなど、誰にでもわかりやすい内容を意識することが大切です。
画像や表・図解などで解説する
文章だけでなく画像や表・図解などを用いて、視覚的にわかりやすく解説するのも、マニュアル作成のコツです。
文章だけで解説すると、読み取るのに時間がかかる上に、具体的にイメージすることが難しくなります。伝えたい内容とは異なる解釈をするなど、マニュアルの運用に失敗する原因にもなりかねません。
そのため、マニュアルを作成するときは、画像や表・図解などを効果的に活用して、業務の進め方や設備操作などがイメージしやすくなるような工夫を盛り込みましょう。
運用開始後もブラッシュアップしていく
マニュアルを作成して運用を開始したあと継続的にブラッシュアップしていくのも、マニュアル作成の失敗を防ぐコツです。
読んだ人がわかりにくいと感じたポイントや、読んでいて感じたことをヒアリングし、随時マニュアルに盛り込みましょう。
また、より良い伝え方を検討したり、古い情報を最新のものに差し替えたりして、内容を定期的に見直す必要があります。
マニュアルが完成したらそこで終了するのではなく、内容を充実させてよりわかりやすいマニュアルに改善し続けることが大切です。
まとめ
マニュアルは、業務指導の負担軽減や業務品質の均一化に役立つものです。
しかし、現状に即したマニュアルを作成していなければ、失敗するケースもあります。利用者にとって、読みにくく伝えたいことが正確に伝わらない内容になっていれば、結果的に直接指導する負担が生じるでしょう。
マニュアルを作成する際には、テンプレートやマニュアル作成ツールを活用したり、マニュアル制作代行サービスに依頼するのもおすすめです。
マニュアル作成に悩んだ際は、そのようなツールやサービスもうまく活用してみると良いでしょう。