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2024/09/30

人流データの活用事例10選|メリット・デメリットと分析・活用に役立つツールを紹介

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人流データの活用事例10選|メリット・デメリットと分析・活用に役立つツールを紹介

人流データは、人の流れや移動に関する「人流解析」を行う手段として、さまざまな業種で活用されています。

民間企業の経営戦略だけでなく、自治体や公的機関の施策でも活用されている点が特徴です。

本記事では、人流データの活用事例を10選紹介しながら、有効活用するために講じられている工夫や活用方法のポイントに迫ります。

また、人流データを活用するメリット・デメリットに加え、人流データの活用におすすめのツールも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

人流データの活用事例3選【自治体】

まずは、人流解析を活用して、地域創生や活性化につなげている自治体の事例を3選紹介します。

店舗経営で活用できるヒントもあるため、これから人流データを活用していく場合の参考にしてみると良いでしょう。

千葉県柏市:スマートシティの都市計画

千葉県柏市の人流データ活用事例

出典:柏の葉キャンパス地区とまちづくりのコンセプト|国土交通省

千葉県柏市では、スマートシティの都市計画に人流データを活用しています。

柏の葉キャンパス駅の2km圏内に商業施設や病院、大学が立地するようにすべく、駅周辺に29台のAIカメラを設置してデータ収集を行いました。

収集した人流データは、プラットフォーム「Dot to Dot」を通じてセキュリティにも配慮しながら、関係機関との連携に役立てています。

柏の葉エリアエネルギー管理システムと、人流データを連携させているのも具体例の1つです。人の流れに合わせて空調や照明の制御を実施し、CO2削減につなげています。

静岡県静岡市:地域活性化

静岡県静岡市の人流データ活用事例

出典:人流データ活用社会実験|静岡県静岡市

静岡県静岡市では、街中の空洞化や来訪者の減少にともない、街全体の賑わい低下が課題となっています。

地域活性化を実現すべく、人流データを活用した社会実験が行われ、集客ポイントとなるゾーン間の移動減少が要因の1つとの結果が出ました。

ゾーン間における来街者の移動を活発化させるために、官民が連携し「ウォーカブルなまちづくり」を実施しています。

人流データと土地利用・不動産情報を重ね合わせて街の特性を分析し、空き店舗や公園などのストックを活用したイベント実施、魅力的な飲食店舗の立地整備に役立てている事例です。

愛知県岡崎市:安全・快適なまちづくり

愛知県岡崎市の人流データ活用事例

出典:岡崎スマートコミュニティ推進協議会

愛知県岡崎市では、来街者が増加傾向にあるQURUWA地区(岡崎市中心市街地)の回遊を促進すべく、人流データを活用した取り組みが進められています。

回遊離脱ポイントの特定や、2次交通としてサイクルシェア事業の最適化、観光地におけるリアルタイム混雑状況の発信など、活用方法はさまざまです。

また、地域商店とも連携し、店内カメラと人流カメラデータを組み合わせて、通行者の年代・性別ごとの増減を分析しました。これにより、休日の売上向上や客単価増を見据えた新商品の開発につなげています。

人流データの活用事例【観光・防災・災害復旧】

人流データは、地域の観光促進や防災・災害復旧など、地域を守る取り組みにも幅広く活用されているのも特徴です。

ここからは、人流データを取り入れている自治体の中で、観光や防災・災害復旧に役立てている活用事例を3選紹介します。

栃木県佐野市:混雑解消と回遊促進

栃木県佐野市の人流データ活用事例

出典:人流データ利活用事例集|国土交通省

栃木県佐野市では、商店街や飲食店における人気店舗への観光客の過集中を回避すべく、混雑解消と回遊促進のために人流データを活用しています。

佐野市内のラーメン店約90店舗のうち、約20店舗でAIカメラやデジタル整理券システムを導入し、リアルタイムに店舗の混雑状況が確認できるようになりました。

ラーメン店の待ち時間を活用して、周辺地域の観光への回遊を促しながら、店舗が空いている時間帯の集客にもつなげている事例です。

福岡県久留米市:防災計画の見直し

福岡県久留米市の人流データ活用事例

出典:福岡県久留米市<活用事例>|Softbank株式会社

福岡県久留米市では、人流データを活用して防災計画の見直しを進めています。同市では、2019年と2020年度に避難が必要な災害が発生しました。

このときの避難行動を人流データで計測した結果、新型コロナウイルスの流行が拡大した2020年度にはホテルへの避難が増加していたことが判明しています。

このような変化を防災計画に盛り込むため、時代や状況の変化をいち早く把握するための手段として人流データを活用している事例です。

石川県能登半島地震:災害対応

石川県能登半島地震の人流データ活用事例

出典:人流データ活用事例集|国土交通省

令和6年に発生した石川県能登半島地震の災害対応・復旧の現場でも、人流データが活用されています。

初動対応を迅速化すべく人流データを導入し、指定避難所の稼働状況や孤立集落エリアの特定、市外避難者の把握に活用しました。

さらに道路の封鎖状況を把握し、支援部隊の現地入りルートの選定や道路の修復対応など、復旧支援にも人流データを活用した事例です。

人流データの活用事例【流通・小売業】

人流データは、民間企業でもさまざまな場面で活用されています。

とくに、流通関連や小売業では、配送時間の把握、在庫管理などの効率化を実現すべく、活用する企業は増加傾向です。

ここでは、流通・小売業における人流データの活用事例を2選紹介します。

CBcloud|配送業務の効率化

CBcloudの人流データ活用事例

出典:ラストワンマイル配送の業務効率化|株式会社ゼンリンデータコム

CBcloud株式会社は、フリーランスの軽貨物ドライバーと荷主をつなぐマッチングサービスを提供している事業者です。

同社では、物流の最終拠点から配送先までの「ラストワンマイル」の区間を効率化すべく、人流データを活用しています。

道路の混雑状況を把握し、最短の配達ルートを自動で算出するルーティング機能を導入したことにより、配送業務の効率化につなげている事例です。

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社|新店開発計画

U.S.MHoldings株式会社の人流データ活用事例

出典:説得力のある新店開発計画|株式会社データワイズ

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社は、マルエツ・カスミ・マックスバリュ関東を展開する企業です。

同社では、新店開発における商圏分析や売上予測の精度向上に、人流データを活用しています。

とくに、時間と人手を要する交通量調査において、確度の高いデータを効率良く抽出することは大きな課題でした。

人流データを活用することにより、複数エリアの同時調査や調査時間の短縮など、新店開発の効率化につなげています。

人流データの活用事例【飲食業】

人流データは、飲食業でも幅広く活用されています。売上予測や混雑状況のリアルタイム発信、仕入れの効率化など、活用方法はさまざまです。

ここからは、飲食業の中で人流データ解析を経営戦略に活用している事例を2選紹介します。

株式会社ジョイフル:ロイヤルユーザー化

Joyfulの人流データ活用事例

出典:活用事例<株式会社ジョイフル>|株式会社unerry

ファミリーレストランを展開する株式会社ジョイフルでは、人流データを顧客のロイヤルユーザー化に役立てています。

店舗アプリを活用したアプリマーケティングで、来店スタンプが貯まる機能を導入しました。

人流データにおける位置情報データを活用して、来店と同時に自動的にスタンプが貯まる仕組みで、店員の負担軽減と顧客の満足度向上につなげています。

アプリマーケティングで分析することが難しい「来店率」の把握に、活用している事例です。

タリーズコーヒージャパン株式会社|コロナ後の顧客行動分析

TULLY's COFFEEの人流データ活用事例

出典:活用事例<タリーズコーヒージャパン株式会社>|株式会社データワイズ

大手コーヒーチェーンのタリーズコーヒージャパン株式会社では、コロナ後の顧客行動の変化を把握するために人流データを活用した人流調査を実施しています。

同社では、新型コロナウイルスの流行による人流低下の影響を受け、売上が低下して休業を強いられる店舗もありました。

これまで経営戦略に活用していたデータが、軒並み参考にならなくなるほどの影響で、新たな分析ツールとして活用に踏み切ったのが人流データです。

人流データの交通量分析で車流データを活用し、郊外のロードサイドへのドライブスルー型店舗の出店分析に役立てています。

人流データを活用するメリット・デメリット

人流データを活用するメリットは多くある反面、デメリットを把握しておくことも大切です。

ここからは、人流データを活用することで得られるメリットや効果と、想定されるデメリットについて解説します。

メリット

人流データを活用するメリットには、以下の点が挙げられます。

  • 来店・購入までの顧客の動きがわかる
  • 顧客行動の変化をいち早くキャッチできる
  • 競合店舗・企業の顧客行動を分析できる
  • 顧客へのアプローチ効率がアップする

人流データは、人の流れや動きの分析に特化している情報源です。

人の流れを読むことで、混雑予想や売上予測も可能になり、仕入れ量の調整によるロス削減など、経費の無駄を減らすことにも役立ちます。

活用方法は多岐にわたるため、活用事例を通じてどのような課題解決に活用できるのかを具体的にイメージしてみると良いでしょう。

デメリット

人流データを活用するデメリットには、以下の点が挙げられます。

  • すぐに効果が出るとはかぎらない
  • 個人情報漏洩への対策が必要
  • 分析するにあたり専門知識が必要になる
  • 具体的な活用方法を事前に決めておかなければならない

人流データはいわゆるビッグデータに該当する情報源のため、どのような意図で活用するのかを事前に決めておかなければ膨大な情報量を持て余す原因になりかねません。

専門的な知識が必要になるため、知識なく分析をしても思うような成果が得られない場合もあるでしょう。

また、人流データには顔写真などが含まれていることも多く、活用する際には個人情報漏洩につながらないように配慮する必要があります。

個人での分析データ取得が難しい場合は、人流分析ツールや人流データサービスを導入するのもおすすめです。

人流データを取得する方法

人流データを取得する手段はさまざまです。

店舗のWi-Fi接続状況やGPS、街中の防犯カメラ、携帯電話の基地局などが挙げられます。

無料で使えるオープンデータを活用する方法もありますが、より詳細な情報や分析まで行いたい場合は、有料の解析サービスを活用するのもおすすめです。

参考記事:無料で使えるオープンデータはある?リアルタイムに人流データを分析!

まとめ

人流データの活用方法に決まりはなく、アイデア次第で豊富なデータ分析に利用できます。

人流データは、自治体でも活用されているほど精度が高い情報が得られるため、現状に即した経営戦略の立案に活用できる点が魅力です。

そもそも人流データ分析とはどのようなものなのか、データの取得方法について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

参考記事:人流データとは?取得方法やメリット・活用事例などを紹介