業務用の自動調理器は人手不足の厨房において、時短調理・大量調理・品質の安定化を同時に叶える、非常に有用な設備です。
近年では、自動調理モードと手動調理モードの切り替えや圧力調理機能、低温調理対応など多彩な機能を搭載した製品も増え、業態に合った選定が重要になっています。では、具体的にどのような製品を選べば良いのでしょうか。
本記事では、自動化による調理効率向上を目指す飲食店や施設の経営者向けに、おすすめ業務用自動調理器10選とその選び方をご紹介します。
業務用自動調理器とは?家庭用との違いや導入メリット
業務用自動調理器とは、厨房の調理を自動化し、効率化と品質安定を実現する専用機器のことです。主に飲食店や施設の厨房で使われています。
業務用自動調理器は、煮込み、炒め、蒸し、炊飯、無水調理、低温調理など多様な調理方法に対応し、調理容量も大きく設計されています。業務用自動調理器のメリットは「大量調理」「作業の自動化」「人手不足解消」に役立つ点です。
業務用自動調理器は厨房の効率化と調理品質の向上を実現するための重要な機器であり、現代の飲食業界や施設運営に欠かせない設備となっています。
業務用自動調理器の対応メニュー例
業務用自動調理器は、定番メニューとして知られる以下のような料理の多彩な自動調理に対応しています。
- カレー
- スープ
- 炊き込みご飯
- チャーハン
- パスタ
- 野菜炒め
- 煮魚
上記のように、多機能性と高い調理容量を備えている業務用自動調理器は、定番料理の大量調理に活躍します。
【自動調理器】業務用と家庭用の違いは?
自動調理器は、業務用と家庭用で以下のような違いがあります。
<業務用の自動調理器の特徴>
- 長時間の連続使用や大量調理に対応するため、高出力(例:200V電源対応)で設計
- 耐久性が高く、頻繁な使用にも耐えられる構造
- 攪拌機能や圧力調理機能など、多機能性を備えている
- 価格帯は高め
<家庭用の自動調理器の特徴>
- 100V電源で使用可能なモデルが多い
- コンパクトで操作が簡単
- 連続使用時間や調理容量には制限あり
- 手頃な価格
上記の違いから、業務用自動調理器は大量調理や効率化を重視する現場に、家庭用自動調理器は手軽さや省スペースを求める家庭に適しています。
種類別おすすめ業務用自動調理器10選
ここでは、以下4種の業務用自動調理器について、それぞれおすすめの製品をピックアップして紹介します。
- 電気式・ガス式の業務用自動調理器
- 圧力・自動回転釜タイプの業務用自動調理器
- オートクッカー・半自動タイプの業務用自動調理器
- 用途特化型の業務用自動調理器
業務用自動調理器選びの参考にチェックしてみてください。
電気式・ガス式の業務用自動調理器
電気式・ガス式の業務用自動調理器を紹介します。
電気式攪拌機付き回転釜 ヴェスタ HEK-VP(服部工業)
電気式攪拌機付き回転釜 ヴェスタ HEK-VPは、大量調理機器の老舗トップメーカーである服部工業株式会社による業務用自動調理器です。
- 直感的な操作と詳細なコントロール
- 多様な調理内容への対応
- 9種類の攪拌プログラムを標準搭載
ヴェスタ HEK-VPは、煮物、汁物、炒め物、スープ、茹で物、お湯沸かしといった一般的な調理から、ジャム、ソース、クリーム、あんこ、おかゆといった特殊な調理まで、幅広い内容に対応しています。
人混型攪拌ガス調理機(服部工業)
人混型攪拌ガス調理機は、調理物に優しく空気を取り込むように攪拌できる自動調理機です。そのため、和菓子製造への導入事例が多くあります。
- 人の手で混ぜるような攪拌方法
- 焦げ付きにくい設計
- 省スペースのコンパクト設計
和菓子の導入事例では、小豆の皮をすりつぶさないように調理できる点が評価されています。
圧力・自動回転釜タイプの業務用自動調理器
圧力・自動回転釜タイプの業務用自動調理器を紹介します。
業務用小型圧力調理器 OPCH(服部工業)
業務用小型圧力調理器 OPCHも、大量調理機器の老舗トップメーカー・服部工業株式会社の業務用自動調理器です。
- 調理時間の大幅な短縮
- 普通の鍋では難しい「魚の骨まで柔らかく仕上げる」ことが可能
- 惣菜・調理食品、パン・菓子などの分野が得意
特に大豆などの豆類調理では、一晩水に浸すなどの下処理が不要です。例えば、6リットルの大豆を煮る場合、普通の鍋では180分かかるところ、OPCH-40では80分に短縮できます。
カスタマイズ攪拌機付き回転釜 NH1(首振り式)(服部工業)
出典:カスタマイズ攪拌機付き回転釜 NH1(首振り式)(服部工業)
カスタマイズ攪拌機付き回転釜 NH1は、服部工業が長年の経験から培った回転釜のノウハウを活かした、省力化を実現するためのカスタム攪拌機です。
- 高いカスタマイズ性
- 調理物に優しい攪拌
- 多様な調理内容への対応
この製品は、汁物、炒め物、スープ、ジャム、ソース、クリーム、あんこ、あえ物といった幅広い調理に対応しています。
さらに、カレー、調味液体、各種あん、具材(コロッケ、ハンバーグなど)、麺類などの茹で物、佃煮、ミンチ肉の炒め物など、多岐にわたる調理・活用実績があり、食品以外の乾燥や消毒にも利用可能です。
オートクッカー・半自動タイプの業務用自動調理器
オートクッカー・半自動タイプの業務用自動調理器を紹介します。
スチームコンベクションオーブン クックエブリオ(ホシザキ)
出典:スチームコンベクションオーブン クックエブリオ(ホシザキ)
業務用冷機器で有名なホシザキは、業務用自動調理器も取り扱っています。
- 3つの調理モードで、加熱調理の約8割を実現
- 蒸気量は最大6段階で調整可能
- 電気・ガスの熱源が選べる
熱風(乾熱)とスチーム(湿熱)の両方を利用するスチームコンベクションオーブンは、野菜、肉、魚、パスタ、パン菓子といった様々な料理に対応可能です。クックエブリオは、凝縮熱を最大限に活用し、正確で安定した蒸気を供給する独自の機能と技術により、調理品質の向上を図っています。
多機能調理器 iVario(RATIONAL)
iVario(アイ・バリオ)は、業務用のフライヤー、ティルティングパン、鍋、フライパン、コンロ、深鍋、圧力調理器具といった従来の様々な調理器具を1つに統合した業務用自動調理器です。これにより、厨房スペースの節約とコスト削減につながります。
- 煮る、焼く、揚げる、低温調理、圧力調理、真空調理など様々な調理を1台でこなす
- 異なる食材をラックごとに同時に調理でき、味移りもなし
- 直感的なタッチディスプレイ
iVarioの自動調理を使えば、例えば、100人分の焼飯を20分で、1200人分のボロネーゼソースを90分で調理できます。少量の30食から大量の3,000食まで対応可能です。
iVarioが特に適している料理を調理法ごとに分類して紹介します。
煮る・煮込む:
- ボロネーゼソース
- 野菜スープ
- パスタ
- シチュー、ソース
- ゆっくり煮込む料理
- 牛乳を使った料理
焼く・炒める:
- チャーハンなどの米料理
- 肉、魚、野菜
- スクランブルエッグ
揚げる、茹でる:
- 野菜の天ぷら
- ブロッコリー
このように、iVarioは多機能性により非常に幅広い種類の料理に適しています。
コンビオーブン iCombi Classic(fujimak)
出典:コンビオーブン iCombi Classic(fujimak)
コンビオーブン iCombi Classicは一般的に「スチコン」と呼ばれる調理機器ですが、フジマックは25年前の発売以来、他のスチコンと一線を画す意味で一貫して「コンビオーブン」と称しています。
- マニュアル調理とプログラム調理に特化
- 3つの調理モードと質の高い仕上がり
- 最大12ステップ、100プログラムまで設定可能な独自の調理プログラミング機能
iCombi Classicの適している料理は、蒸し料理全般、肉や魚料理、焼き物、ロースト、ベーキング、パン菓子など幅広くあります。
ホテル、レストラン、特別養護老人ホーム、中学校の給食センター、病院、保育園、セントラルキッチン、社員食堂など多岐にわたる施設での導入実績があるため、様々な業態での活用が期待できます。
バリオ 大容量パンシリーズ(fujimak)
バリオ 大容量パンシリーズ(fujimak)は、煮る、焼く、炒める、茹でる、揚げるという調理に加え、圧力調理(FIV100P/150Pモデルで対応)もこれ1台で全て可能です。
- 一台多役の多機能性
- 高速加熱システムで、大量の食材を投入しても素早く設定温度に復帰
バリオ 大容量パンシリーズのWebカタログでおすすめの調理例としてスープやシチューなどの煮込み料理、ステーキ、パスタ、ハンバーガーが紹介されています。
こちらの自動調理器はシャワーとストレートの切り替え式ハンドシャワーで素早く清掃できます。装備傷や錆に強いステンレス製パンを採用しており、衛生的です。
用途特化型の業務用自動調理器
用途特化型の業務用自動調理器を紹介します。
IH式大型炒め機(チャーハン自動調理器) チャーカン(中井機械工業)
中井機械工業のIH式大型炒め機チャーカンは、主に大量調理における炒め物に特化しつつ、煮込みや混ぜる調理にも対応する多機能な調理機械です。
- IHでもガス直火に負けない均一な高火力
- 「二刀流撹拌」機能で、チャーハンには「あおり撹拌」、焼きそばや炒め物には「かき混ぜ撹拌」
- 撹拌速度、火力、温度を自動的に制御するため、材料を入れていくだけで常に同じ調理を再現
チャーカンは、チャーハンのほかに焼きそばなどの麺類、カレー、各種ソース、炒め物全般におすすめです。
その他のチャーハンに適した自動調理器は、以下の記事でも紹介しています。
参考記事:【業務用厨房機器】チャーハン用自動調理器おすすめ商品3選|新品・中古の選び方も解説
電気自動ゆで麺機(マルゼン)
業務用総合厨房機器メーカーで有名なマルゼンでは、自動ゆで麺機も複数型取り扱っています。
- 正確な茹で時間でリフトアップ
- 電気式でありながらパワフルで、クリーンな運用が可能
- 安全装置として空焚き防止装置(ハイリミット)が標準装備
マルゼンの自動ゆで麺機は2カゴを同時にリフトアップできるオートリフト機構を搭載しており、間口を取らず省スペースで設置できる、コストパフォーマンスに優れたモデルです。特にうどん、そば、ラーメン、パスタなどの麺料理の大量調理に適しています。
参考記事:【家庭用&業務用】自動調理器のおすすめ比較6選|ホットクック・ビストロ・電気圧力鍋を解説!
業務用自動調理器の導入前に確認すべきポイント
業務用自動調理器の導入を検討する際には、以下の7つのポイントを事前に確認しましょう。
- 設置スペースの確保
- 電源仕様と設備の対応可否
- 排気・排水・給水の設備状況
- 調理容量(L)とメニューの対応範囲
- 操作性・メンテナンス性
- 導入コストとランニングコスト
- メーカー保証・保守サポートの有無
上記のチェックポイントを事前に押さえておくことで、業務用自動調理器のスムーズな導入と運用トラブルの回避が実現します。
業務用自動調理器で厨房業務を自動化しよう
業務用自動調理器は「時短」「人手不足対策」「品質安定化」の三拍子を実現する重要機器です。加熱方式や調理工程、操作性で多様な選択肢があり、厨房の業態や規模に合った選定が成功の鍵となります。
特に、プログラム自動調理器やマルチクッカー型は高機能化が進み、省力化とクオリティ向上の両立が可能です。導入前は設置環境やコスト、用途適合性を見極め、自店舗で提供しているメニューの調理に最適な1台を選びましょう。